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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1177203
審判番号 不服2004-17736  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-26 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 平成11年特許願第326095号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月22日出願公開、特開2001-137466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年11月12日に出願した特願平11-322947号の一部を平成11年11月16日に新たな出願としたものであって、平成16年5月11日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年6月30日に手続補正がなされ、同年7月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年9月14日付け手続補正書によって明細書の一部が補正され、その後、当審において平成19年12月12日付けで、前記平成16年9月14日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年2月8日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、上記平成20年2月8日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 遊技媒体が流下可能な遊技領域に、遊技に関する表示を行うため、図柄表示部と立体表示部とを有する表示装置を備えており、前記図柄表示部に所定の図柄が表示された場合に大当たりを生起させる遊技機であって、
前記立体表示部を、前記図柄表示部に表示される遊技球が通過可能な間隔を空けて、前記図柄表示部の前方に立設してなる一対の柱状体とし、各柱状体の上面を相反方向へ下降傾斜する傾斜面とする一方、
正面視における前記柱状体の頂点同士の間隔を変化させる駆動源を設け、該柱状体の頂点同士の間隔の変化に応じて前記図柄表示部に表示された遊技球が前記柱状体間を通過する期待度を異ならせ、
大当たりが生起する場合には、前記図柄表示部に表示された遊技球が前記柱状体間へ流下する表示を行うことを特徴とする遊技機。」(以下「本願発明」という。)

第二.当審の拒絶理由
当審は、上記平成19年12月12日付けの拒絶理由通知で、本願の請求項1及び2に係る発明は、下記の刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を通知した。

第三.刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平7-289703号公報
刊行物2:特開平8-196699号公報
刊行物3:特開平8-141163号公報

当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平7-289703号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「【0006】
【実施例】図1はパチンコ機1の正面を示し、・・・又、遊技板3のほぼ中央部には図柄表示器18が配設され、該図柄表示器18には図示略の制御装置を介して各種の図柄が表示される液晶の図柄表示部Lが配設してあり、後記で詳述するが、図柄表示部L1、L2、L3を形成して停止図柄(例えば、数字、トランプ、花札等の10種類の図柄)を表示したり、リーチ状態となった後には図柄表示部L1、L2、L3に表示する図柄と異なる図柄を表示して、特別遊技状態を生起させるか否かを決定する。遊技板3には、普通入賞口10、11、13、前記図柄表示部L1、L2、L3の図柄を変動開始させる始動口15、16が適宜、配設されていて、各入賞口に入った遊技球は裏面側に設置の入賞球集合カバーを介して出口から排出される一方、所定数の景品球が上皿8又は下皿9に排出される。大入賞口19は図柄表示器18の下部に配設されていて、前記図柄表示部L1、L2、l3の図柄が所定時間変動後、停止して、該停止図柄が予め設定の図柄と一致して大当たり(特別遊技状態)となり、ソレノイド(図示略)が作動して一定時間、或は所定数の遊技球が入るまで開状態を維持して遊技球を受け入れる。尚、図柄表示部L1、L2の停止図柄が揃ったときをリーチとし、図柄表示部L1、L2、L3の図柄が揃ったときを特別遊技状態とする。」
(1b)「【0007】前記構成のパチンコ機の作用について説明すると、遊技球が始動口15、16の何れかに入ると、図柄表示部Lは、図2(A)に示す様に、図柄表示部L1、L2、L3に分割表示され、よく知られた制御方法でもって、図柄が変動し、最初に図柄表示部L1、そして、図柄表示部L2の図柄が停止する。この時、図柄表示部L1、L2の停止図柄が揃わなかったときには、特別遊技状態を生起する可能性がないため、図柄表示部L3の図柄を早めに停止する。他方、図柄表示部L1、L2の停止図柄が予め設定の図柄(本実施例では同じ図柄)となったとき、リーチ状態とし、図柄表示部L3は、従来の停止図柄と異なって、図2(B)に示すように、図柄表示部L1’、L2’、L3’とクルーンと称される転球入賞器50が表示される。このクルーン入賞器50は、遊技球Yが誘導路57を転球し、湾曲状の基台52に形成の旋回体60内を旋回し、旋回体60内に設けられている3箇の排出口58a、58b、58cの何れかに入る様に構成してあり、排出口58bに入ったとき特定入賞を発生させる。そこで、図柄表示部Lには、遊技球Yが、あたかも、ハードウエアで構成のクルーン入賞器と同じ様に転球する様子を描き、この表示中、図柄表示部L3’には、図柄が判明可能な速度で変動する。そして、遊技球Yが、前記クルーンの排出口58bに遊技球が入ったときには、特別遊技状態を発生させるため、図柄表示部L3’に図柄表示部L1(L2)と同じ図柄で停止させた後、図柄表示部Lの全体に特別遊技状態を生起した旨を表示して、遊技者に知らせる。この結果、大入賞口19は一定時間、或は所定数の遊技球が入るまで開状態を維持して遊技球を受け入れる。反対に、遊技球Yが排出口58a、58cに入ったときには、図柄表示部L3の停止図柄を図柄表示部L1(L2)と異なる停止図柄を表示して、外れ処理をする。以上のように、遊技者は、リーチとなったとき、クルーン(転球入賞器)を旋回する遊技球Yの行方に興趣を見いだして、従来、停止図柄をゆっくり変動させるのとは、異なる面白味を奏する。・・・」
(1c)「【0008】次に、前記と同様に、図柄表示部L1’、L2’の停止図柄画「5」で揃って、リーチとなったとき、特別遊技状態を生起するか否かを決定する図柄として、図2(C)に示す競馬のシーンを表示する。図柄表示部L1’、L2’の停止図柄は何れも数字「5」であるため、例えば、馬番号「5」を含む3頭の馬がゴールめがけて競り合っているシーンを表示する。この時、図柄表示部L3’には、表示中の馬番号に対応する数字「5」、「9」、「10」をゆっくりと変動させる。そして、馬番号「5」が他の馬を押えてゴールしたとき、特別遊技状態を生起し、図柄表示部L3’の停止図柄を「5」とする。尚、このリーチのとき、競走している馬数を2頭とすると、特別遊技状態を生起する確率を高くすることとなり、反対に、3頭以上とすると低くなり、確率変動を採用することもでき、遊技者に、その都度、特別遊技状態の生起確率を変動して、よりアピールすることができる。又、リーチ状態を奏したとき、図柄表示部に表示する図柄と異なる図柄として、前記したクルーン、競馬のシーン或は、野球の画面を描いてバッターがホームランを打てば特別遊技状態を生起、三振等の場合には外れとしたり、相撲、ボクシング等での勝敗で区別することなどであってもよい。この様に、リーチ状態となった後に、図柄とは異なる図柄でもって、特別遊技状態を生起するかの決定を行うことは、遊技者にとって、とても興味を引くこととなる。又、クルーン、競馬等、複数の図柄を表示可能としておき、遊技者が操作具を操作することによって、表示図柄の選択を可能とするように構成してもよい。」
(1d)また、図柄表示器の拡大図である【図2】中、【図2】(C)には「図柄表示部L1’、L2’、L3’と競馬のシーンを表示する図柄表示部L」が示されている。

したがって、(1c)記載の「リーチとなったとき、特別遊技状態を生起するか否かを決定する図柄として、(中略)競馬のシーンを表示する・・・」場合についてまとめると、引用刊行物1には、
「遊技板3のほぼ中央部には図柄表示器18が配設され、該図柄表示器18には各種の図柄が表示される液晶の図柄表示部Lが配設してあり、該図柄表示器18の下部に大入賞口19が配設されていて、
遊技球が始動口15、16の何れかに入ると、図柄表示部Lは、図柄表示部L1、L2、L3に分割表示され、前記図柄表示部L1、L2、L3の図柄が所定時間変動後、停止して、該停止図柄が予め設定の図柄と一致して大当たり(特別遊技状態)となると、大入賞口19は一定時間、或は所定数の遊技球が入るまで開状態を維持して遊技球を受け入れるパチンコ機1において、
図柄表示部L1’、L2’の停止図柄が「5」で揃って、リーチとなったとき、図柄表示部Lには、図柄表示部L1’、L2’、L3’と、馬番号「5」を含む3頭の馬がゴールめがけて競り合っている競馬のシーンが表示され、
馬番号「5」の馬が他の馬を押えてゴールしたとき、特別遊技状態を生起し、図柄表示部L3’の停止図柄を「5」とするものであって、
競走している馬数を2頭とすると、特別遊技状態を生起する確率を高くすることとなり、反対に、3頭以上とすると低くなり、遊技者に、その都度、特別遊技状態の生起確率を変動して、よりアピールすることができる、パチンコ機1。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平8-196699号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2a)「【0009】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
A.遊技盤の構成
図1は本発明の遊技機の第1実施例における遊技盤を示す正面図である。・・・また、遊技領域のほぼ中央部には複数の識別情報を表示可能な第1可変表示装置(情報表示装置に相当)13が配置されている。第1可変表示装置13は、例えば液晶表示装置(LCD)あるいはCRT表示装置が使用され、カラーで各種の図柄を表示するとともに、画像球を表示してゲームを行うことが可能になっている。画像球によるゲームの表示内容は後述する。」
(2b)「【0011】第1可変表示装置13の下方には、始動入賞口(特定入賞口)14が配置されており、始動入賞口14に玉が入賞すると、第1可変表示装置13における図柄表示部の図柄が変動を開始(つまり可変遊技を開始)するようになっている。なお、始動入賞口14に玉が入賞することによって第1可変表示装置13における図柄表示部が図柄変動を開始する状態は、大当り状態の発生を決定する始動遊技状態に相当する。・・・」
(2c)「【0020】C.第1可変表示装置の構成
次に、第1可変表示装置13について説明する。図3は第1可変表示装置13による画像球による遊技を示す図である。まず、図3(A)、(B)において、第1可変表示装置13の画面には画像球G、画像釘K、画像チューリップTU、記憶表示部60および5つの図柄表示部61?65が表示されるようになっている。・・・
【0021】図3(A)はワープ入口41から取り込まれた玉が第1ワープ流路51の方を流下したときに行われる画像球遊技を示すもので、特に、画像チューリップTUが閉鎖しているとき、画像球Gが画像釘Kの間を流下して左側から画像チューリップTUに入賞する様子を示している。一方、図3(B)はワープ入口41から取り込まれた玉が第1ワープ流路51の方を流下したときに行われる画像球遊技を示すもので、特に、画像チューリップTUが開放しているとき、画像球Gが画像釘Kの間を流下して右側から開放した画像チューリップTUに入賞する様子を示している。何れも始動入賞の当りに相当する画像球遊技に対応する。これに対して、ワープ入口41から取り込まれた玉が第2ワープ流路52の方を流下したときは、始動入賞の外れに相当する画像球遊技が行われ、画像チューリップTUの開放、閉鎖にかかわらず、画像球Gが画像釘Kの間を流下しても画像チューリップTUに入賞しないような画像の制御が行われる。第1可変表示装置13は画像球による画像遊技を行う第2遊技領域を構成する。
【0022】図柄表示部61?65は0?9の範囲で10種類の数字を表示可能である。なお、10種類に対して記号A、B、C、・・・等を加えて15種類の図柄を表示可能にしてもよい。図柄表示部61?65の図柄を特図という。図柄表示部61?65は始動入賞口(特定入賞口)14に玉が入賞したとき、図柄の変動を開始し、その図柄が斜め方向に揃って特別図柄(例えば、大当りのゾロ目状態:「777」など)になると(すなわち、少なくとも3つの図柄表示部61、63、65あるいは図柄表示部62、63、64の方向で図柄の同じものが揃うと)、大当り状態が発生して後述の普通電動始動口73が開放するようになっている。なお、図柄表示部61?65に表示可能な図柄は数字、記号に限らず、画像やキャラクタを用いたものでもよい。表示図柄は、左→右→中の順にスクロールして停止する。このとき、リーチスクロールも行われる。」
(2d)「【0049】(a)初期画像の出力
ワープ第1検出スイッチ53を通過したタイミングであれば、ステップS102に進んで第1可変表示装置13による画像球遊技を行うために、まず初期画像を出力する。これにより、第1可変表示装置13の画面には画像球遊技の初期画像が表示される。初期画像は、例えば図3(A)において、画像球Gが写し出される前の状態のような画面である。ステップS102を経ると、その後、メインルーチンにリターンする。」
(2e)また、可変表示装置による画像球による遊技を示す図である【図3】には「内側が略直線状に外側が略曲線状に表示された画像チューリップTU」及び「画像チューリップTUの開放時と閉鎖時とでは、頂点同士の間隔が変化する画像チューリップTU」が示されている。

したがって、引用刊行物2には、
「遊技領域のほぼ中央部には第1可変表示装置13が配置され、該第1可変表示装置13の画面には画像球G、画像釘K、画像チューリップTU、記憶表示部60および5つの図柄表示部61?65が表示されるようになっている遊技機であって、
始動入賞口14に玉が入賞すると、第1可変表示装置13における図柄表示部61?65は図柄の変動を開始し、その図柄が斜め方向に揃って特別図柄になると、大当り状態が発生して普通電動始動口73が開放し、
ワープ入口41から取り込まれた玉が第1ワープ流路51の方を流下すると、画像チューリップTUの開放、閉鎖にかかわらず、画像球Gが画像チューリップTUに入賞する、始動入賞の当りに相当する画像球遊技が行われ、
ワープ入口41から取り込まれた玉が第2ワープ流路52の方を流下したときは、始動入賞の外れに相当する画像球遊技が行われ、画像チューリップTUの開放、閉鎖にかかわらず、画像球Gが画像チューリップTUに入賞しないような画像の制御が行われ、
前記画像チューリップTUは、内側が略直線状に外側が略曲線状に表示され、その開放時と閉鎖時とでは、頂点同士の間隔が変化するよう表示される、遊技機。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平8-141163号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3a)「【0008】
【実施例】以下に、本発明の第1の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例においては、遊技機の一例として、パチンコ遊技機を示すが、本発明は、これに限られるものではなく、他にコイン遊技機やスロットマシン等のように、画像表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示状態となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であればすべてに適用することが可能である。」
(3b)「【0011】遊技領域3の中央には、複数種類の画像を変動表示するための可変表示装置24が設けられている。可変表示装置24の下方には、始動口5と、可変入賞球装置4とが設けられている。・・・」
(3c)「【0020】・・・始動口5に打玉が入賞したことをきっかけとして、可変表示装置24の表示部32において図柄の変動表示が開始される。この変動表示の停止時に特定の図柄の組合せが表示された場合に、可変入賞球装置4が第1の状態となる。・・・」
(3d)「【0022】図2は、可変表示装置24の構成を示す正面図である。可変表示装置24は、表示部32と取付基板25と可動部材34とで構成されている。表示部32は、LCD表示器の画像表示面である。LCD表示器は、窓部を介して表示部32が前方から見えるように取付基板25の背面側に装着される。
【0023】表示部32には、種々の画像が表示される。図示した表示例は、図柄停止時のデモンストレーション画面(以下、「デモ画面」という)である。具体的には、画面の上部に背景となる2つの建物およびその左右に2つの山が表示され、画面の下部には、2つの建物に続く道路が表示されている。また、道の幅を奥に行くほど狭くしているため、遠近感のある画像が表示されている。」
(3e)「【0026】取付基板25の下部には、レーシングカーのコックピットおよびバックミラー等で構成する構造物が形成されている。さらに、取付基板25の下部には、上記コックピットに対応したハンドルとなる可動部材34が、回転可能な状態で取付けられている。可動部材34は、表示部32に直進する道路が表示されているので、回転していない水平な状態で停止している。この結果、車が直進走行している状態を遊技者にリアルに伝えることができ、演出効果を高めるとともに臨場感を向上させることができる。・・・
【0027】次に、カーブ走行しているときの可変表示装置の状態について説明する。図3は、カーブ走行しているときの可変表示装置の状態を示す正面図である。カーブ走行時、表示部32の上部の背景画像は、左方向にスクロールされる。背景画像のスクロールに併せて、表示部32の下部に表示された道路も左方向に曲がった状態で表示される。さらに、ハンドル34も、後述するモータ45(図4参照)により左方向に回転駆動され、所定角度回転された状態で停止される。上記のように、表示部32の画像を変化させるだけでなく、可動部材34も併せて回転させることにより、遊技者はあたかも車が左方向に曲がったかのような感覚を受けることができ、演出効果を高めるとともに臨場感を向上させることが可能となる。
【0028】図4は、可変表示装置24の側面の構成を示す断面図である。なお、可動部材34の周辺については一部を破断して内部構造を示している。
【0029】・・・遊技盤1の後面には、表示装置取付板39(図5参照)が取付けられる。表示装置取付板39の後方には液晶表示装置35が取付けられる。液晶表示装置35の表示部32の前方には、モータ45が取付基板25に取付けられる。モータ45の回転軸には、可動部材34が固定される。可動部材34の前方には、透明カバー36が取付基板25に取付けられる。上記のように各部品を配設することにより、透明カバー36の後方でかつ表示部32の前方の空間37内に可動部材34が配設される。また、可動部材34は、遊技領域面3より後方に配置されている。」
(3f)「【0050】・・・また、本実施例では、カーレースの臨場感を出すため、走行状態に併せて回転可能な可動部材34および車内のコックピットを設けているが、構造物としてはこれらに限定されるものではなく、表示部32に表示される表示内容に併せて他の構造物を備えてもよい。・・・」

したがって、引用刊行物3には、
「遊技領域3の中央には可変表示装置24が設けられ、
該可変表示装置24は、表示部32と、取付基板25と、表示部32の前方の空間37内に配設される、ハンドルからなる構造物としての可動部材34とで構成されているパチンコ遊技機であって、
始動口5に打玉が入賞したことをきっかけとして、可変表示装置24の表示部32において図柄の変動表示が開始され、この変動表示の停止時に特定の図柄の組合せが表示された場合に、可変入賞球装置4が第1の状態となり、
図柄停止時のデモンストレーション画面として、表示部32には、画面の上部に背景となる2つの建物およびその左右に2つの山が表示され、画面の下部には2つの建物に続く道路が表示され、表示部32の画像を変化させるだけでなく、ハンドルからなる構造物としての可動部材34を走行状態に併せてモータ45により回転させることにより、演出効果を高めるとともに臨場感を向上させることが可能となり、
前記構造物としては表示部32に表示される表示内容に併せて他の構造物を備えてもよい、パチンコ遊技機。」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

第四.本願発明と引用発明1との比較・検討
(1)引用発明1の「遊技球」は本願発明の「遊技媒体」に相当し、以下同様に「図柄表示部L」は「図柄表示部」に、「図柄表示器18」は「表示装置」に、「パチンコ機1」は「遊技機」に、「大当たり(特別遊技状態)となる」及び「特別遊技状態を生起」は「大当たりを生起させる」及び「大当たりが生起する」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明1の「図柄表示器18」について検討すると、「遊技板3のほぼ中央部に配設され」、「各種の図柄が表示される液晶の図柄表示部Lが配設して」あるものであるから、引用発明1が、本願発明の「遊技媒体が流下可能な遊技領域に、遊技に関する表示を行うため、図柄表示部を有する表示装置を備え」に相当する技術事項を有していることは明らかである。
(3)引用発明1の「図柄表示部L1、L2、L3の図柄が所定時間変動後、停止して、該停止図柄が予め設定の図柄と一致して大当たり(特別遊技状態)となると、」の技術事項は、本願発明の「図柄表示部に所定の図柄が表示された場合に大当たりを生起させる」の技術事項に相当する。
(4)引用発明1の「馬番号「5」の馬が他の馬を押えてゴールしたとき、特別遊技状態を生起し、図柄表示部L3’の停止図柄を「5」とする」の技術事項と本願発明の「大当たりが生起する場合には、前記図柄表示部に表示された遊技球が前記柱状体間へ流下する表示を行う」の技術事項とを比較すると、「大当たりが生起する場合には、前記図柄表示部に特定の表示を行う」において一致する。

そうすると、両者は、
「遊技媒体が流下可能な遊技領域に、遊技に関する表示を行うため、図柄表示部を有する表示装置を備えており、前記図柄表示部に所定の図柄が表示された場合に大当たりを生起させる遊技機であって、
大当たりが生起する場合には、前記図柄表示部に特定の表示を行うことを特徴とする遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
表示装置が、本願発明では図柄表示部のほかに立体表示部を有し、該立体表示部を、図柄表示部に表示される遊技球が通過可能な間隔を空けて、前記図柄表示部の前方に立設してなる一対の柱状体とし、各柱状体の上面を相反方向へ下降傾斜する傾斜面とする一方、正面視における前記柱状体の頂点同士の間隔を変化させる駆動源を設け、該柱状体の頂点同士の間隔の変化に応じて前記図柄表示部に表示された遊技球が前記柱状体間を通過する期待度を異ならせるものであるのに対し、引用発明1では立体表示部を有さず、図柄表示部には複数頭の馬がゴールめがけて競り合っている競馬のシーンが表示され、競走している馬数の多寡により、期待度を異ならせる(特別遊技状態の生起確率を変動して、よりアピールする)ものである点。
相違点2
特定の表示が、本願発明では遊技球が柱状体間へ流下する表示であるのに対し、引用発明1では馬番号「5」の馬が他の馬を押えてゴールする表示である点。

上記相違点について検討する。
相違点1について
引用発明2には、「図柄表示部(第1可変表示装置13の画面)に表示される遊技球(画像球G)が通過(入賞)可能な間隔を空けて、前記図柄表示部に一対表示する一方、正面視における頂点同士の間隔を変化(開放、閉鎖)させる表示部(画像チューリップTU)」が記載されている。そして、当該表示部(画像チューリップTU)の頂点同士の間隔の変化(開放、閉鎖)に応じて前記図柄表示部に表示された遊技球(画像球G)が当該表示部間を通過する期待度を異ならせるものであることは、遊技機の技術分野における当業者にとって、当然の技術事項である。
また、引用発明3には、「図柄表示部(表示部32)の前方に立設(配設)してなる、図柄表示部の表示(走行状態)に併せて駆動源(モータ45)により変化(回転)される立体表示部(ハンドルからなる構造物としての可動部材34)」及び「立体表示部(構造物)としては図柄表示部(表示部32)に表示される表示内容に併せて他の構造物を備えてもよい、遊技機」が記載され、即ち、「図柄表示部の前方に立設され、図柄表示部に表示される表示内容に併せて変動される、立体的構造物」が記載されているといえる。
そして、遊技球の入賞部分の具体的な形状をどのようなものとするかは当業者が適宜採用できる設計上の事項である。
そうすると、引用発明1乃至3が大当たりを生起させるかどうかを表示する図柄表示装置を備えた遊技機において共通しているから、引用発明1の「図柄表示部(図柄表示部L)」に、引用発明2の「図柄表示部に表示され、頂点同士の間隔を変化(開放、閉鎖)させる表示部(画像チューリップTU)」を適用する際に、引用発明3の立体的な構造物を採用することにより、相違点1に係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点2について
引用発明2には、入賞の当りに相当する表示として「遊技球(画像球G)が表示部(画像チューリップ)間へ流下する(入賞する)表示を行う」技術が記載されている。また、引用発明3には、「図柄表示部(表示部32)と立体表示部(ハンドルからなる構造物としての可動部材34)とを有する表示装置(可変表示装置24)」が記載されている。
そうすると、引用発明1乃至3が大当たりを生起させるかどうかを表示する図柄表示装置を備えた遊技機において共通し、また、入賞部分の形状は適宜設計的に定めることができるものであるから、引用発明1の「馬番号「5」の馬が他の馬を押えてゴールする表示」に替えて、引用発明2の「遊技球(画像球G)が表示部(画像チューリップ)間へ流下する(入賞する)表示」を適用する際に、引用発明3の立体的な構造物を採用することにより、相違点2に係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして効果において、引用刊行物1には「遊技者に、その都度、特別遊技状態の生起確率を変動して、よりアピールすることができる。」((1c)の項を参照)と記載され、また、引用刊行物3には「表示部32の画像を変化させるだけでなく、可動部材34も併せて回転させることにより、遊技者はあたかも車が左方向に曲がったかのような感覚を受けることができ、演出効果を高めるとともに臨場感を向上させることが可能となる。」((3e)の項を参照)と記載されているから、本願発明による効果である「期待度を異ならせることが出来、」及び「リアリティーのある表示を行うことができる。」並びに「より変化に富んだ複雑な表示を行うことができる。」ことと相違せず、この点で格別のものは認められない。

第五.むすび
以上のとおり、本願発明は、当審の拒絶理由通知に引用された上記引用発明1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-25 
出願番号 特願平11-326095
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 小林 俊久
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 石田 喜樹  

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