現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1177209
審判番号 不服2005-671  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-12 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 平成11年特許願第341538号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月 9日出願公開、特開2000-126378〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月8日に出願した特願平6-242256号の一部を分割して、平成11年12月1日に新たな特許出願としたものであって、平成16年6月28日付けの最後の拒絶理由に対して、同年9月3日付けで手続補正がなされ、同年12月7日付けで、同年9月3日付けの手続補正を却下するとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成17年1月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「予め定められた種々の図柄を変動表示する複数の図柄表示部から成り、図柄の特定の状態を大当たりとする図柄表示装置と、
大当たりの発生確率として高確率状態と低確率状態とを備え、高確立状態で大当たりを発生させるための高確率乱数と低確立状態で大当たりを発生させるための低確率乱数とを保持し、高確率状態と低確率状態とからなる確率変動モードとして上位の確率変動モードと低位の確率変動モード(該低位の確率変動モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率が、該上位の確率変動モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率よりも低い)とを保持し、前記確率変動モードを切り換えるためのモード切替乱数に基づく抽選により当該上位の当該確率変動モードと当該低位の確率変動モードとの一方を選択し設定する確率設定手段と、
前記確率設定手段により設定された確率変動モードの高確率又は低確率に基づき、前記高確率乱数又は低確率乱数に基づく抽選により前記図柄表示装置の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段と、
所定の遊技状態の発生を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段による所定の遊技状態の発生の検出により、前記確率設定手段により設定される確率変動モードが再選択され設定され、
前記低位の確率変動モードの低確率状態の大当たりの発生確率を、前記上位の確率変動モードの低確率状態の大当たり発生確率よりも高めに設定したことを特徴とする遊技機。」と補正された。
(上記記載中、下線を付加した「高確立状態」及び「低確立状態」の記載は「高確率状態」及び「低確率状態」の明らかな誤記と認められるので、以下「高確率状態」及び「低確率状態」として扱う。)

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「大当たりの発生」について、「高確率状態で大当たりを発生させるための高確率乱数と低確率状態で大当たりを発生させるための低確率乱数とを保持し」と限定するとともに、「確率設定手段」について、「確率変動モードを切り換えるためのモード切替乱数に基づく抽選により(設定する確率設定手段)」と限定し、「大当たりを発生させ」について、「前記高確率乱数又は低確率乱数に基づく抽選により(大当たりを発生させ)」と限定するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用発明
引用刊行物
1.遊技日本 1993年8月号 株式会社近畿出版社
平成5年8月25日発行 第33巻第8号 第63頁
2.特開平3-37086号公報

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、上記の各刊行物には、それぞれ次の発明が記載されている。

引用刊行物1(遊技日本1993年8月号 株式会社近畿出版社
平成5年8月25日発行 第33巻第8号 第63頁)
引用刊行物1には、パチンコ機に関し、次の記載がある。
1-a 第1-2行目にパチンコ機の機種名として、
「京楽・一種 CR桃太郎」と記載されている。
1-b 中段に、確率の設定を示す表として、
「設定1、1/250(通常時)、1/75(変動時)
設定2、1/273(通常時)、1/50(変動時)
設定3、1/296(通常時)、1/50(変動時)」と記載されている。
1-c 下段に、
「大当たり中、昔話の桃太郎のストーリーが表示される、楽しい第一種。大当たり図柄は1?9及びサル、キジ、イヌ、桃太郎、オニの3つゾロ目で14通り。このうち3、5、7、桃太郎で当たると、次の大当たりまでメイン、電動チューリップ両方のデジタルが高確率となる。電チューはヘソ上GO通過で上方のミニデジタルが回転し、7で停止すると開放となる。変動中は頻繁に開き、持ち玉が殆ど減らない上、メイン図柄も時間短縮となり、どんどん消化となるため、次回の大当たりが早い。」と記載されている。
1-d 下方には当該パチンコ機の写真が掲載されており、それによれば、「一種」のパチンコ機に特有の変動入賞装置が見てとれる。

以上の記載によれば、引用刊行物1(遊技日本1993年8月号 株式会社近畿出版社 平成5年8月25日発行 第33巻第8号 第63頁)には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「3つの図柄を表示し、1?9及びサル、キジ、イヌ、桃太郎、オニの大当たり図柄が3つゾロ目で表示されたときを大当たりとするメインデジタルと、上記大当たり図柄のうち、3、5、7、桃太郎で当たると、次の大当たりまでメイン、電動チューリップ両方のデジタルが高確率となり、前記大当たりを発生させる通常時と変動時とからなる確率の3つの設定値1乃至3を備え、
設定1では 1/250(通常時)、1/75(変動時)、
設定2では 1/273(通常時)、1/50(変動時)、
設定3では 1/296(通常時)、1/50(変動時)
の確率が、それぞれ設定される第一種パチンコ機。」(以下、「引用発明」という。)

引用刊行物2(特開平3-37086号公報)
引用刊行物2には、パチンコ機に関し、次の記載がある。
2-a「遊技部内に弾発されて遊技に供された球を検出する遊技球検出手段と、該遊技球検出手段が予め設定した所定数の球を検出したことを条件として複数種類の識別記号を変換表示可能な第1可変表示器と、球が始動口に入ることを条件として複数種類の識別記号を変換表示可能であって、第1可変表示器の停止表示態様により選択された賞態様成立確率モードの範囲内で賞態様を成立可能な第2可変表示器と、該第2可変表示器が賞態様を形成したことを条件として遊技者にとって不利な第1状態から遊技者にとって有利な第2状態に変換する変動入賞装置と、第1可変表示器により選択した第2可変表示器の賞態様成立確率モードを可視表示する確率モード表示器とを備えたことを特徴とするパチンコ機。」(特許請求の範囲)
2-b「遊技者が・・・球を1個宛遊技部11内に弾発すると、・・・この球が始動口19に入ると始動スイッチ18が制御装置58に信号を送る。制御装置58は、・・・第2可変表示器15を作動して別遊技を開始し、遊技者が識別できない速さで3つの数字を可変表示する。」(第3頁右下欄第11行-第4頁左上欄第1行)
2-c「そして、遊技者がストップスイッチ7を操作するか又は制御装置58内のタイマに予め設定した時間が満了して停止信号が発生すると、確率設定値により乱数テーブル値を読み込んで、これにもとづいて第2可変表示器15の可変表示動作を停止して3つの数字を連続的に表示する。この停止したときの表示が予め設定してある賞態様、例えば「777」であるか否かを制御装置58の判定手段が判定し、賞態様が成立したと判定した場合(大当りの場合)には制御装置58が特別遊技を開始し、・・・」(第4頁左上欄第4-14行)
2-d「別遊技において賞態様が成立して特別遊技の権利が発生すると、制御装置58の制御の下で特別遊技が開始される。本実施例における特別遊技の実施例は、・・・変動入賞装置17の可動部材39,39が球を受け入れない第1状態から球を受け入れ易い第2状態に規定時間(例えば29秒間)変換することを1サイクルとし、・・・」(第4頁右上欄第4-11行)
2-e「別遊技において賞態様が成立する確率は、第1賞態様成立確率モードから第6賞態様成立確率モードとして第1可変表示器14の停止態様により予め選択され、第1乃至第6確率モード表示器20a,20b,…20fの点灯により可視表示される。本実施例では、第1賞態様成立確率モードの場合には第2可変表示器15の確率は1/120、第2賞態様成立確率モードの場合には1/150、第3賞態様成立確率モードの場合には1/180、第4賞態様成立確率モードの場合には1/200、第5賞態様成立確率モードの場合には1/220、第6賞態様成立確率モードの場合には…1/250の確率で賞態様が成立するようにコンピュータプログラムが構成されている。そして、第1可変表示器14は、遊技に供した球の数が予め設定した数量(例えば100個)に達することを条件として作動し、賞態様成立モードを選択する。」(第4頁左下欄第13行-右下欄第10行 )
2-f「本実施例では、第1可変表示器14の停止態様が「777」であれば第1賞態様成立確率モードを、「333」「555」であれば第2賞態様成立確率モードを、「000」「111」「222」「444」「666」「888」「999」であれば第3賞態様成立確率モード、いずれか2つの表示器が「7」を表示すれば第4賞態様成立確率モードを、左側の表示器と中央の表示器が同じ数字を表示すれば第5賞態様成立確率モードを、上記以外の組合せの場合は第6賞態様成立確率モードを選択するようにコンピュータプログラムを構成してある。」(第5頁右上欄第2-13行)

以上の記載によれば、引用刊行物2(特開平3-37086号公報)には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「遊技部内に弾発されて遊技に供された球を検出する遊技球検出手段と、該遊技球検出手段が予め設定した所定数の球を検出したことを条件として複数種類の識別記号を変換表示可能な第1可変表示器14と、球が始動口に入ることを条件として複数種類の識別記号を変換表示可能であって、第1可変表示器14の停止表示態様により選択された賞態様成立確率モードの範囲内で賞態様を成立可能な第2可変表示器15と、該第2可変表示器15が賞態様を形成したことを条件として遊技者にとって不利な第1状態から遊技者にとって有利な第2状態に変換する変動入賞装置17と、第1可変表示器14により選択した第2可変表示器15の賞態様成立確率モードを可視表示する確率モード表示器とを備えたパチンコ機であって、第2可変表示器15における別遊技において賞態様が成立する確率は、第1賞態様成立確率モードから第6賞態様成立確率モードとして第1可変表示器14の停止態様により予め選択され、第1賞態様成立確率モードの場合には第2可変表示器15の確率は1/120(第1可変表示器14の停止態様が「777」)、第2賞態様成立確率モードの場合には1/150(第1可変表示器14の停止態様が「333」「555」)、第3賞態様成立確率モードの場合には1/180(第1可変表示器14の停止態様が「000」「111」「222」「444」「666」「888」「999」)、第4賞態様成立確率モードの場合には1/200(第1可変表示器14のいずれか2つの表示器が「7」を表示)、第5賞態様成立確率モードの場合には1/220(第1可変表示器14の左側の表示器と中央の表示器が同じ数字を表示)、第6賞態様成立確率モードの場合には1/250(第1可変表示器14の停止態様が上記以外の組合せの場合)の確率で賞態様が成立するように構成されている、パチンコ機。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1について以下のことがいえる。

(i) 引用発明1は、「3つの図柄を表示し、1?9及びサル、キジ、イヌ、桃太郎、オニの大当たり図柄が3つゾロ目で表示されたときを大当たりとするメインデジタル」を備えており、同引用発明1における上記「1?9及びサル、キジ、イヌ、桃太郎、オニ(の図柄)」は本願補正発明における「予め定められた種々の図柄」に相当しており、同様に、「大当たり図柄が3つゾロ目で表示されたときを大当たりとする」は「図柄の特定の状態を大当たりとする」に、「メインデジタル」はその機能に照らすと「図柄表示装置」に、それぞれ相当しているといえる。
また、引用発明1における「メインデジタル」(「図柄表示装置」)は、「3つの図柄を表示」するものであり、同引用発明1は、実質上、本願補正発明における「図柄を変動表示する複数の図柄表示部」を備えているといえる。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する「予め定められた種々の図柄を変動表示する複数の図柄表示部から成り、図柄の特定の状態を大当たりとする図柄表示装置」の事項に相当する構成を備えている。

(ii) 引用発明1は、「大当り図柄のうち、3、5、7、桃太郎で当たると、次の大当たりまでメイン、電動チューリップ両方のデジタルが高確率とな」るものであり、「大当たりを発生させる」確率として、「通常時と変動時とからなる確率」を備えている。
そして、前記「通常時」の「確率」は、その技術的意義に照らすと、本願補正発明における「大当たりの発生確率」として「備え」る「低確率状態」に相当し、「変動時」の「確率」は同様に「高確率状態」に相当するものである。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する「大当たりの発生確率として高確率状態と低確率状態とを備え」の事項に相当する構成を備えている。

(iii) 引用発明1は、「大当たりを発生させる通常時と変動時とからなる確率の3つの設定値1乃至3を備え、
設定1では 1/250(通常時)、1/75(変動時)、
設定2では 1/273(通常時)、1/50(変動時)、
設定3では 1/296(通常時)、1/50(変動時)
の確率が、それぞれ設定される」ものである。
引用発明1における各「設定値」は、それぞれが「通常時」の「確率」(上記(ii)に記載したように、本願補正発明における「低確率状態」に相当する)と「変動時」の「確率」(同じく「高確率状態」に相当する)とを備えており、その技術的意義に照らすと、本願補正発明における「確率変動モード」に相当する概念であるということができる。
さらに引用発明1において、例えば「変動時」の「確率」(「高確率状態」)に着目すると、「設定1」では「1/75」に、「設定3」では「1/50」に、それぞれ設定されており、「設定1」が「設定3」よりも低く設定されていることから、「設定1」は本願補正発明における「低位の確率変動モード」に相当し、同じく「設定3」は「上位の確率変動モード」に相当するといえる。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する「高確率状態と低確率状態とからなる確率変動モードとして上位の確率変動モードと低位の確率変動モード(該低位の確率変動モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率が、該上位の確率変動モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率よりも低い)とを保持し」の事項に相当する構成を備えているといえる。

(iv) 上記(iii)に記載したように、引用発明1は、「設定3」(「上位の確率変動モード」)と「設定1」(「低位の確率変動モード」)とを備え、その一方を選択し設定することが可能とされており、同引用発明1は、確率を設定するための確率設定手段を実質的に備えているということができる。
さらに引用発明1は、各「設定値」(「確率変動モード」)における「変動時」又は「通常時」に基づき、「メインデジタル」(「図柄表示装置」)の大当たりを発生させ、変動入賞装置(引用刊行物1の記載事項1-d)の開閉を制御することで、遊技者に利益ある作動を提供する制御手段を備えているといえる。
以上より、引用発明1は、「設定3」(「上位の確率変動モード」)と「設定1」(「低位の確率変動モード」)との一方を選択し設定する確率設定手段と、前記確率設定手段により設定された「設定値」(「確率変動モード」)の「変動時」(「高確率」)又は「通常時」(「低確率」)に基づき、「メインデジタル」(「図柄表示装置」)の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段を備えているということができる。
一方、本願補正発明は、「前記確率変動モードを切り換えるためのモード切替乱数に基づく抽選により当該上位の当該確率変動モードと当該低位の確率変動モードとの一方を選択し設定する確率設定手段と、前記確率設定手段により設定された確率変動モードの高確率又は低確率に基づき、前記高確率乱数又は低確率乱数に基づく抽選により前記図柄表示装置の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段」とを備えており、本願補正発明が備える上記の発明特定事項を、「当該上位の当該確率変動モードと当該低位の確率変動モードとの一方を選択し設定する確率設定手段と、前記確率設定手段により設定された確率変動モードの高確率又は低確率に基づき、前記図柄表示装置の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段」とを備えていると包括的に表現することができる。
そうすると、本願補正発明と引用発明1とは「当該上位の当該確率変動モードと当該低位の確率変動モードとの一方を選択し設定する確率設定手段と、前記確率設定手段により設定された確率変動モードの高確率又は低確率に基づき、前記図柄表示装置の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段」とを備えている点で共通しているといえる。
(v) 上記したように、引用発明1に係る「パチンコ機」(「遊技機」)における「確率」の「設定値」は、
「設定1では 1/250(通常時)、1/75(変動時)、
設定2では 1/273(通常時)、1/50(変動時)、
設定3では 1/296(通常時)、1/50(変動時)」とされており「通常時」の「確率」(本願補正発明における「低確率状態」に相当する)に着目すると、「設定1」(上記(iii)に記載したように、本願補正発明における「低位の確率変動モード」に相当する)では「1/250」に、「設定3」(同じく、「上位の確率変動モード」に相当する)では「1/296」に、それぞれ設定されており、「設定1」(「低位の確率変動モード」)が「設定3」(「上位の確率変動モード」)よりも高く設定されている。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する「前記低位の確率変動モードの低確率状態の大当たりの発生確率を、前記上位の確率変動モードの低確率状態の大当たり発生確率よりも高めに設定した遊技機」の事項に相当する構成を備えているといえる。

以上より、本願補正発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
予め定められた種々の図柄を変動表示する複数の図柄表示部から成り、図柄の特定の状態を大当たりとする図柄表示装置と、大当たりの発生確率として高確率状態と低確率状態とを備え、高確率状態と低確率状態とからなる確率変動モードとして上位の確率変動モードと低位の確率変動モード(該低位の確率変動モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率が、該上位の確率変動モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率よりも低い)とを保持し、当該上位の当該確率変動モードと当該低位の確率変動モードとの一方を選択し設定する確率設定手段と、前記確率設定手段により設定された確率変動モードの高確率又は低確率に基づき、前記図柄表示装置の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段と、前記低位の確率変動モードの低確率状態の大当たりの発生確率を、前記上位の確率変動モードの低確率状態の大当たり発生確率よりも高めに設定した遊技機、である点。

相違点;
(A) 大当たりを発生させるのが、本願補正発明では、高確率状態で大当たりを発生させるための高確率乱数と低確率状態で大当たりを発生させるための低確率乱数とを保持し、前記高確率乱数又は低確率乱数に基づく抽選により発生させるものであるのに対して、引用発明1では、変動時に大当たりを発生させるための乱数と通常時に大当たりを発生させるための乱数とを保持しているか明らかでなく、変動時の乱数又は通常時の乱数に基づく抽選により発生させるものであるのか明らかでない点。

(B) 確率設定手段による確率の設定が、本願補正発明では、確率変動モードを切り換えるためのモード切替乱数に基づく抽選によるものであるのに対して、引用発明1では、設定値を切り換えるための乱数に基づく抽選によるものか、明らかでない点。

(C) 確率設定手段により設定される確率変動モードが、本願補正発明では、所定の遊技状態の発生を検出する検出手段を備え、前記検出手段による所定の遊技状態の発生の検出により再選択され設定されるものであるのに対して、引用発明1では、所定の遊技状態の発生を検出する検出手段を備えておらず、検出手段による所定の遊技状態の発生の検出により再選択され設定されるものではない点。

(3)判断
上記の相違点について検討する。
相違点(A)について
大当たりの発生確率として高確率状態と低確率状態とを備えた遊技機において、高確率状態で大当たりを発生させるための高確率乱数と低確率状態で大当たりを発生させるための低確率乱数とを保持し、前記高確率乱数又は低確率乱数に基づく抽選により大当たりを発生させることは周知技術(例えば、特開平6-39106号公報(段落【0182】【0183】)、特開平6-246037号公報(段落【0034】【0035】)、特開平6-238046号公報(段落【0021】【0030】))であり、当該周知技術を参酌して、相違点(A)に係る構成を得ることは単なる設計事項にすぎない。

相違点(B)について
引用発明2は、「第2可変表示器15における別遊技において賞態様が成立する確率」を、「第1賞態様成立確率モードから第6賞態様成立確率モード」まで切り換え可能に構成し、乱数に基づく抽選により「選択」される「第1可変表示器14の停止態様」に基づいて、前記「賞態様成立確率モード」を「予め選択」するようにした「パチンコ機」である。
すなわち、同引用発明2は、乱数に基づく抽選により「賞態様成立確率モード」を設定する確率設定手段を備えており、切り換え可能に構成された上記「賞態様成立確率モード」は、その技術的意義に照らすと、引用発明1における「設定値」(本願補正発明における「確率変動モード」)に相当するものであるとともに、「設定値」(「確率変動モード」)を切り換えるために使用される「乱数」は、本願補正発明における「モード切替乱数」に相当するものといえる。
そして、引用発明1が実質的に備える確率設定手段に、引用発明2が備える確率の設定に関する上記の技術事項を適用して、乱数に基づく抽選により「設定1」(「低位の確率変動モード」)と「設定3」(「上位の確率変動モード」)との一方を選択し設定するように構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。

相違点(C)について
「相違点(B)について」に記載したように、引用発明1が実質的に備える確率設定手段に、引用発明2が備える確率の設定に関する技術事項を適用して、乱数に基づく抽選により「設定1」(「低位の確率変動モード」)と「設定3」(「上位の確率変動モード」)との一方を選択し設定するように構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。
さらに、引用発明2は「遊技部内に弾発されて遊技に供された球を検出する遊技球検出手段」を備えており、「遊技球検出手段が予め設定した所定数の球を検出したことを条件」として「第1可変表示器14」を「作動」し、「賞態様成立確率モード」が「選択」され、あるいは再選択されて、設定されるものであり、前記した、「遊技球検出手段」により「予め設定した所定数の球」を「検出」することは、「所定の遊技状態の発生を検出」することにほかならない。
そうすると、引用発明1が実質的に備える確率設定手段に、引用発明2が備える確率の設定に関する上記の技術事項を適用するに際して、所定の遊技状態の発生を検出する検出手段を設けて、前記検出手段による所定の遊技状態の発生の検出により、「設定値」(「確率変動モード」)が再選択され設定されるように構成することは、当業者が適宜になし得る設計事項にすぎない。

そして、相違点(A)ないし(C)に係る発明特定事項を備えた本願補正発明の効果も、引用発明及び周知技術が本来奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、周知技術を参酌し、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年1月12日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成16年9月3日付けの手続補正も却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年4月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「予め定められた種々の図柄を変動表示する複数の図柄表示部から成り、図柄の特定の状態を大当たりとする図柄表示装置と、
大当たりの発生確率として高確率状態と低確率状態とを備え、高確率状態と低確率状態とからなる確率モードとして上位の確率モードと低位の確率モード(該低位の確率モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率が、該上位の確率モードで高確率状態に設定される大当たりの発生確率よりも低い)とを保持し、当該上位の当該確率モードと当該低位の確率モードとの一方を選択し設定する確率設定手段と、
前記確率設定手段により設定された確率モードの高確率又は低確率に基づき、前記図柄表示装置の大当たりを発生させ、遊技者に利益ある作動を提供するようにした制御手段と、
所定の遊技状態の発生を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段による所定の遊技状態の発生の検出により、前記確率設定手段により設定される確率モードが再選択され設定され、
前記低位の確率モードの低確率状態の大当たりの発生確率を、前記上位の確率モードの低確率状態の大当たり発生確率よりも高めに設定したことを特徴とする遊技機。」

(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、その記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「大当たりの発生」についての限定である、「高確率状態で大当たりを発生させるための高確率乱数と低確率状態で大当たりを発生させるための低確率乱数とを保持し」の事項を削除するとともに、「確率設定手段」についての限定である、「確率変動モードを切り換えるためのモード切替乱数に基づく抽選により(設定する確率設定手段)」の事項を削除し、「大当たりを発生させ」についての限定である、「前記高確率乱数又は低確率乱数に基づく抽選により(大当たりを発生させ)」の事項を削除して、より広義な概念で特定したものである。
そうすると、本願発明における発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、周知技術を参酌し、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、限定事項を削除して、より広義な概念で特定される本願発明も、周知技術を参酌し、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項について論じるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-07 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平11-341538
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
渡部 葉子
発明の名称 遊技機  
代理人 田下 明人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ