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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1177224
審判番号 不服2005-9468  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-19 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 特願2002- 5916「排水処理装置及び排水処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月22日出願公開、特開2003-205290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月15日の出願であって、平成17年4月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年5月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年6月17日に手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1乃至14に係る発明は、平成17年6月17日提出の手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載された事項によりそれぞれ特定されたとおりのものであり、そのうち請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項10】所定の排水中に、鉄電極における電解反応で生じた水酸化鉄粒子を供給して、前記排水中の不純物を前記水酸化鉄粒子に物理的に吸着させることによって除去する工程と、
酸化金属電極(過酸化鉛電極、及びマグネタイト電極を除く)表面での酸化還元反応を通じて、前記排水中の不純物を化学的に分解して除去する工程と、
を含むことを特徴とする、排水処理方法。」

3.引用文献1の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1:特開昭50-42659号公報には、次の事項が記載されている。
(a)「活性汚泥排水を電解溶出した酸化触媒機能を有する金属イオンで凝集処理し、次いで当該金属イオンの共存下で不溶性電極を用いて電解酸化し、更に粒状または粉末活性炭で吸着処理することにより浄化を行うことを特徴とする活性汚泥排水の処理方法。」(特許請求の範囲)
(b)「本発明は、活性汚泥排水をまず電解溶出した酸化触媒機能を有する金属イオンで凝集処理するものであるが、溶出させる触媒機能を有する金属イオンとしては、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛等のイオンであり、電解は、これらの金属を電極として用いて公知の電解凝集方法と同様に行うことができ、予め電解溶出させた金属イオンを含む水を排水に加えることも金属イオンを排水中で電解溶出させることもできる。」(第2頁左上欄第14行-同頁右上欄第3行)
(c)「電解酸化工程では、荷電中和によるSS分の凝集、電極より発生するガスによる凝集物の浮上、さらに金属イオンの電析分離等公知の効果に加えて、無機COD成分の分解と主として高分子有機化合物の部分酸化分解が行なわれ、後続の活性炭吸着効率を極めて効果よく行なわしめる。当該電解酸化工程で本発明の如く、排水中に酸化触媒機能を有する金属イオンを共存させることにより上述の酸化効率を一層向上させることができる。」(第2頁右上欄第13行-同頁左下欄第3行)
(d)「電解酸化工程において本発明では通常陽極として白金、チタン-白金メッキ、過酸化鉛、マグネタイトを用い、陰極としては、黒鉛、鉄、アルミニウム等を用いる。」(第2頁右下欄第1-4行)

4.対比

4-1.引用文献1発明
引用文献1の記載事項(a)には、「活性汚泥排水を電解溶出した酸化触媒機能を有する金属イオンで凝集処理し、次いで当該金属イオンの共存下で不溶性電極を用いて電解酸化し、更に粒状または粉末活性炭で吸着処理することにより浄化を行う・・・活性汚泥排水の処理方法」が記載されている。
前記記載中の「活性汚泥排水を電解溶出した酸化触媒機能を有する金属イオンで凝集処理」することに関し、記載事項(b)に「溶出させる酸化触媒機能を有する金属イオンとしては、鉄・・・等のイオンであり、電解は、これらの金属を電極として用いて公知の電解凝集方法と同様に行うことができ、・・・金属イオンを排水中で電解溶出させることもできる。」と記載されている。したがって、前記「活性汚泥排水を電解溶出した酸化触媒機能を有する金属イオンで凝集処理」することは、「活性汚泥排水を、鉄を電極として活性汚泥排水中で電解溶出した鉄イオンで凝集処理」することであるといえる。
そして、前記記載中の「不溶性電極を用いて電解酸化」することに関し、記載事項(d)に「電解酸化工程において本発明では通常陽極として・・・過酸化鉛・・・を用い・・・る。」と記載されており、電解酸化は陽極において行われるから、前記「不溶性電極」は「過酸化鉛電極」であるといえる。また、記載事項(c)に「電解酸化工程では、・・・無機COD成分の分解と主として高分子有機化合物の部分酸化分解が行なわれ」ることが記載されている。したがって、前記「不溶性電極を用いて電解酸化」することは、「過酸化鉛電極を用いて電解酸化して無機COD成分の分解及び高分子有機化合物の部分酸化分解を行う」ことであるといえる。
以上のことから、記載事項(a)乃至(d)の記載を整理すると、引用文献1には、「活性汚泥排水を、鉄を電極として活性汚泥排水中で電解溶出した鉄イオンで凝集処理し、次いで当該鉄イオンの共存下で過酸化鉛電極を用いて電解酸化して無機COD成分の分解及び高分子有機化合物の部分酸化分解を行い、更に粒状または粉末活性炭で吸着処理することにより浄化を行う活性汚泥排水の処理方法」の発明(以下「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。

4-2.本願発明と引用文献1発明との対比
以下、本願発明と引用文献1発明とを対比する。
本願発明における「所定の排水」に関し、本願明細書の段落【0001】に「本発明は、・・・多数の有機物、リン、及び難分解性物質を含む排水の処理などに対して好適に用いることのできる、・・・排水処理方法に関する。」と記載されている。そして、「活性汚泥排水」が多数の有機物、リン、及び難分解性物質を含むことは、文献を例示するまでもなく、本願出願前周知の技術事項である。したがって、引用文献1発明における「活性汚泥排水」は、本願発明における「所定の排水」に相当する。
引用文献1発明における「鉄を電極として活性汚泥排水中で電解溶出した鉄イオン」と、本願発明における「鉄電極における電解反応で生じた水酸化鉄粒子」は、「鉄電極における電解反応で生じた化学物質」である点で共通し、その結果、引用文献1発明において「鉄イオン」を「鉄を電極として活性汚泥排水中で電解溶出」することと、本願発明における「所定の排水中に、鉄電極における電解反応で生じた水酸化鉄粒子を供給」することは、「所定の排水中に、鉄電極における電解反応で生じた化学物質を供給」する点で共通しているといえる。また、引用文献1発明における「凝集処理」が活性汚泥排水中の不純物を除去するためのものであることは当業者に自明の事項であることから、引用文献1発明において「活性汚泥排水を・・・凝集処理する」ことは、本願発明において「排水中の不純物を・・・除去する」ことに相当するといえる。したがって、引用文献1発明における「活性汚泥排水を、鉄を電極として活性汚泥排水中で電解溶出した鉄イオンで凝集処理」することと、本願発明における「所定の排水中に、鉄電極における電解反応で生じた水酸化鉄粒子を供給して、前記排水中の不純物を前記水酸化鉄粒子に物理的に吸着させることによって除去する」ことは、「所定の排水中に、鉄電極における電解反応で生じた化学物質を供給して、前記排水中の不純物を除去する」点で共通し、引用文献1発明は該共通点に係る工程を有しているということができる。
引用文献1発明における「過酸化鉛電極」と本願発明における「酸化金属電極(過酸化鉛電極、及びマグネタイト電極を除く)」は、過酸化鉛が酸化金属の一種であることから、「酸化金属電極」である点で共通しているといえる。そして、引用文献1発明における「無機COD成分」及び「高分子有機化合物」が活性汚泥排水中の不純物であることは当業者に自明の事項であるから、引用文献1発明において「無機COD成分の分解及び高分子有機化合物の部分酸化分解を行」うことは、本願発明において「排水中の不純物を化学的に分解して除去する」ことに相当するといえる。また、電解酸化が電極表面での酸化還元反応を利用した処理であることは、文献を例示するまでもなく、本願出願前周知の技術事項であるから、引用文献1発明における「電極を用いて電解酸化」することは、本願発明における「電極・・・表面での酸化還元反応」を行うことに相当するといえる。
以上のことから、本願発明と引用文献1発明は、次の点で一致する。
<一致点>
「所定の排水中に、鉄電極における電解反応で生じた化学物質を供給して、前記排水中の不純物を除去する工程と、
酸化金属電極表面での酸化還元反応を通じて、前記排水中の不純物を化学的に分解して除去する工程と、
を含む排水処理方法。」である点。
一方、本願発明と引用文献1発明は、次の二点で相違する。
<相違点a>
本願発明は、鉄電極における電解反応で「水酸化鉄粒子」を生じ、排水中の不純物を「水酸化鉄粒子に物理的に吸着させることによって」除去しているのに対し、引用文献1発明は、鉄を電極として活性汚泥排水中で「鉄イオン」を電解溶出し、「鉄イオンで凝集処理」している点。
<相違点b>
本願発明は「酸化金属電極(過酸化鉛電極、及びマグネタイト電極を除く)」を酸化還元反応に用いているのに対し、引用文献1発明は「過酸化鉛電極」を用いて電解酸化している点。

5.判断

5-1.<相違点a>について
鉄を電極として排水中で電解溶出した鉄イオンで凝集処理する際に、鉄イオンから鉄の水酸化物、すなわち水酸化鉄粒子が生成してそれが凝集に寄与していることは、例えば特開昭52-30062号公報(第2頁右上欄第16行-同頁左下欄第4行参照)、特公平3-29476号公報(第4欄第40行-第5欄第1行参照)、特開平5-147907号公報(段落【0011】参照)及び特許第2546952号公報(段落【0026】参照)に記載されているように、本願出願前周知の技術事項である。したがって、引用文献1発明においても、電解溶出した鉄イオンから水酸化鉄粒子が生成しているということができる。
そして、凝集にファンデルワールス力も寄与していること、すなわち凝集が物理吸着にもよることは、用水廃水便覧編集委員会編、「改訂二版 用水廃水便覧」、丸善株式会社、昭和48年10月30日、p.156-165(特にp.156-157の「2・2・1概要」の項参照)に記載されているように、本願出願前周知の技術事項である。
してみると、引用文献1発明においては、電解溶出した鉄イオンから活性汚泥排水中で水酸化鉄粒子が生成し、本願発明と同様、活性汚泥排水中の不純物が水酸化鉄粒子に物理的に吸着しているといえる。
以上のことから、<相違点a>は実質的な相違点ではない。
なお、仮に引用文献1発明において電解溶出した鉄イオンから水酸化鉄粒子が生成しているか分からないとしても、鉄イオンから生成する水酸化鉄粒子の凝集効果が優れていることは、例えば特開昭52-30062号公報(第2頁右上欄第16行-同頁左下欄第4行参照)、特公平7-41277号公報(段落【0022】参照)及び特開平6-328080号公報(段落【0017】参照)に記載されているように、本願出願前周知の技術事項であるから、引用文献1発明における「凝集処理」を、電解溶出した鉄イオンから水酸化鉄粒子が生成し、活性汚泥排水中の不純物が水酸化鉄粒子に物理的に吸着するものとすることは、当業者が適宜なし得ることであるともいえる。

5-2.<相違点b>について
ルテニウム酸化物、二酸化チタン、酸化白金等の過酸化鉛及びマグネタイト以外の酸化金属を電解酸化用の電極材料として用いることは、例えば特公平7-32908号公報(第5欄第9-22行参照)、特開平8-192141号公報(段落【0039】参照)及び特開平11-659号公報(請求項2参照)に記載されているように、本願出願前周知の技術事項である。さらには、ルテニウム酸化物、二酸化チタン、酸化白金等の過酸化鉛及びマグネタイト以外の酸化金属が、過酸化鉛(二酸化鉛)と同等の材料として電解酸化用の電極材料として用いられることも、前記文献のうち特公平7-32908号公報及び特開平8-192141号公報に記載されているように、本願出願前周知の技術事項である。
したがって、引用文献1発明において、「過酸化鉛電極」に代えてルテニウム酸化物、二酸化チタン、酸化白金等の過酸化鉛及びマグネタイト以外の酸化金属の電極を用いて電解酸化を行うことは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、<相違点b>における本願発明の発明特定事項を採用することにより奏される効果は、引用文献1及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

5-3.審判請求書における請求人の主張について
<相違点b>に関し、審判請求書において請求人は、「本願発明では、・・・前記化学分解の後は、その他の不純物除去手段、たとえば引用文献に開示されたような活性炭を使用した不純物除去などの追加の手段は特に必要ありません。・・・本願発明と引用文献とでは、処理工程における第2段目の電解槽において、それぞれ酸化還元反応を行いますが、その際に使用する電極材料の相違に基づき、完全酸化及び部分酸化の相違が生じます。その結果、本願発明では、前記酸化還元反応における前記完全酸化を通じた化学分解によって不純物を除去するのに対し、引用文献では、前記酸化還元反応における前記部分酸化を通じた活性炭への吸着によって不純物を除去します。」と主張している(「【請求の理由】(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(v)」)。
しかしながら、本願明細書に「完全酸化」に関する記載はない。また、本願明細書に活性炭を使用した不純物除去などの追加の手段は特に必要ないことは記載されていない。したがって、前記主張は明細書の記載に基づくものではなく、採用することができない。
なお、前記主張の基となる「電極材料の相違」に関し、審判請求書において請求人は、「上記完全酸化を生ぜしめる電極材料としては、本願発明で好ましく用いることができる二酸化鉛・・・を例示することができます。上記部分酸化を生ぜしめる電極材料としては、引用文献で開示されたような、・・・過酸化鉛・・・を例示することができます。」と主張している(「【請求の理由】(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(iv)」)が、「二酸化鉛」と「過酸化鉛」は同義であるから(例えば、化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典3 縮刷版」、共立出版株式会社、1963年9月15日、p.928の「酸化鉛」の項参照)、この主張は当を得たものではない。

6.結び
以上のことから、本願の請求項10に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願2002-5916(P2002-5916)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 中村 敬子
斎藤 克也
発明の名称 排水処理装置及び排水処理方法  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 徳永 博  
代理人 冨田 和幸  
代理人 来間 清志  
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