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審決分類 |
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1177301 |
審判番号 | 不服2003-15224 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-07 |
確定日 | 2008-05-09 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第145301号「料金振替処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月16日出願公開、特開平 9-325998〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年6月7日の出願であって、平成15年7月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] 平成15年8月18日付けの手続補正は、補正前の請求項1について、以下の(補正1)?(補正4)を行い、補正後の請求項1としたものである。 (補正1) 「料金の種別を含む請求機関に関する情報、及び少なくとも各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する振替伝票、原価データ、総合料金振込データを作成するための会計処理を含む負担機関に関する情報を登録したマスターファイル」の記載を、「少なくとも料金の種別を含む請求機関、負担機関、勘定科目に関する情報を登録するマスターファイル」と変更する補正。 (補正2) 「口座の情報を有するヘッダレコードと少なくとも料金の振替日、請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する複数のデータレコードと前記複数のデータレコードの情報の集計情報を有するトレーラレコードにより1つのデータ群を構成し、複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する受信処理手段」の記載を、「少なくとも請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する料金明細データを各請求機関毎の個別料金振替明細データに分割して、前記マスターファイルを参照することにより、各請求機関の種別毎に振替件数と振替金額を集計し該集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する処理手段」と変更する補正。 (補正3) 「前記マスターファイルを照合することにより、前記料金振替明細ファイルの前記個別料金振替明細データを前記登録された負担機関の前記個別料金振替明細データと前記登録された負担機関以外の前記個別料金振替明細データに分ける処理手段」の記載を追加する補正。 (補正4) 「前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する会計処理手段」の記載を、「前記マスターファイルを照合することにより、前記料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の前記勘定科目に基づく振替伝票、原価データ、料金振込データを作成する処理手段」と変更する補正。 上記(補正1)?(補正4)が、特許法第17条の2第4項第1号の「第36条第5項に規定する請求項の削除」、同第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」、同第3号の「誤記の訂正」、同第4号の「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)」を目的とするものに該当するか否かについて以下に検討する。 上記(補正1)について検討すると、この補正は、「マスターファイル」に登録される情報を「料金の種別を含む請求機関に関する情報、及び少なくとも各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する振替伝票、原価データ、総合料金振込データを作成するための会計処理を含む負担機関に関する情報」から「少なくとも料金の種別を含む請求機関、負担機関、勘定科目に関する情報」に変更するものである。 そして、この変更には、「負担機関に関する情報」の内容を限定する記載の削除が含まれていることから、「マスターファイル」に登録される情報の内容を上位概念に変更していると認められ、このことにより、「マスターファイル」の上位概念への変更がなされているものと認められるから、この補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項を拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮(第2号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、平成15年4月21日付けの拒絶理由通知及び平成15年7月7日付けの拒絶査定(以下、「拒絶理由通知等」という。)で指摘された記載不備の拒絶の理由を解消するためのものと認められないから、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 上記(補正2)について検討すると、この補正は、「料金振替明細ファイルを作成する(受信)処理手段」の作成する内容について、「口座の情報を有するヘッダレコードと少なくとも料金の振替日、請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する複数のデータレコードと前記複数のデータレコードの情報の集計情報を有するトレーラレコードにより1つのデータ群を構成し、複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する」から「少なくとも請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する料金明細データを各請求機関毎の個別料金振替明細データに分割して、前記マスターファイルを参照することにより、各請求機関の種別毎に振替件数と振替金額を集計し該集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する」に変更するものである。 そして、この変更には、「請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する料金明細データ」のデータ構造を限定する記載の削除が含まれていることから、この処理手段が作成するデータ等の内容を上位概念に変更していると認められ、このことにより、この処理手段の上位概念への変更がなされているものと認められることから、この補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項を拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮(第2号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、拒絶理由通知等で指摘された記載不備の拒絶の理由を解消するためのものと認められないから、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 上記(補正3)について検討すると、この補正は、新たに「前記マスターファイルを照合することにより、前記料金振替明細ファイルの前記個別料金振替明細データを前記登録された負担機関の前記個別料金振替明細データと前記登録された負担機関以外の前記個別料金振替明細データに分ける処理手段」という機能実現手段を追加するものである。 そして、この機能実現手段は、補正前の請求項1記載されたいずれの機能実現手段の下位概念ではなく、その他の機能実現手段と同位の概念にある新たな機能実現手段を追加するものであるから、この補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項を限定的に減縮するものとは認められず、特許請求の範囲の減縮(第2号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、拒絶理由通知等で指摘された記載不備の拒絶の理由を解消するためのものと認められないから、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 上記(補正4)について検討すると、この補正は、料金振替明細ファイルから振替伝票、原価データ、料金振込データを作成する「(会計)処理手段」の作成する内容について、「前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する」から「前記マスターファイルを照合することにより、前記料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の前記勘定科目に基づく振替伝票、原価データ、料金振込データを作成する」に変更するものである。 そして、この変更には、「振替伝票」、「原価データ」、「料金振込データ」の内容を限定する記載の削除が含まれていることから、この処理手段が作成するデータ等の内容を上位概念に変更していると認められ、このことにより、この処理手段の上位概念への変更がなされているものと認められることから、この補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項を拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮(第2号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、拒絶理由通知等で指摘された記載不備の拒絶の理由を解消するためのものと認められないから、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものに該当しない。また、この補正が、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 以上のとおり、上記(補正1)?(補正4)は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。 よって、これらの補正を含む平成15年8月18日付けの手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。 3.本願発明について 平成15年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「料金明細データを入力して料金振替に必要な処理を実行する料金振替処理システムであって、 料金の種別を含む請求機関に関する情報、及び少なくとも各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する振替伝票、原価データ、総合料金振込データを作成するための会計処理を含む負担機関に関する情報を登録したマスターファイルと、 口座の情報を有するヘッダレコードと少なくとも料金の振替日、請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する複数のデータレコードと前記複数のデータレコードの情報の集計情報を有するトレーラレコードにより1つのデータ群を構成し、複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する受信処理手段と、 前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する会計処理手段と を備えたことを特徴とする料金振替処理システム。」 4.原査定の拒絶の理由の概要 平成15年4月21日付けの拒絶理由通知及び平成15年7月7日付けの拒絶査定の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 (1)特許法第29条第2項の規定に関する理由(以下、「理由1」という。)について 「この出願の請求項1?5に係る各発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開平7-325874号公報 2.山口光雄,「エレクトロニック決済と金融革新」,東洋経済新報社,平成5年6月3日,初版,p.87-90」 (2)特許法第36条第6項第2号の規定に関する理由(以下、「理由2」という。)について 「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1には、「複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する受信処理手段」(10?12行目)と記載されているが、該「受信処理手段」は機能的に記載されているに過ぎず、如何にしてエラーチェックを行い、料金振替明細ファイルを作成するのか具体的に記載されてなく、全体的に技術的構成が明確でない。 (「受信処理手段」は、如何なる技術構成で実現されるのか明確でなく、技術手段で実現されるのか、オペレータが行う業務としての手法(手順)を手段として表したものであるのか明確でない。) また、請求項1に記載される「前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する会計処理手段」(13?16行目)についても同様な理由により明確でない。 よって、請求項1に係る発明は明確でない。」 (3)特許法第29条第1項柱書の規定に関する理由(以下、「理由3」という。)について 「この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 請求項1に記載された「料金振替処理システム」の備える手段は、その果たすべき機能を「・・・手段」と表現したものであって、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているものとはいえないから、上記「料金振替処理システム」は、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。 したがって、請求項1に記載されたものは、特許法第2条に定義された「発明」に該当しない。 よって、この出願の請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。」 5.当審の判断 (1)請求項1の記載について 請求項1の記載を以下のように便宜上分説した上で、上記拒絶の理由を検討する。 (a)「料金明細データを入力して料金振替に必要な処理を実行する料金振替処理システムであって、」 (b)「料金の種別を含む請求機関に関する情報、及び少なくとも各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する振替伝票、原価データ、総合料金振込データを作成するための会計処理を含む負担機関に関する情報を登録したマスターファイルと、」 (c)「口座の情報を有するヘッダレコードと少なくとも料金の振替日、請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する複数のデータレコードと前記複数のデータレコードの情報の集計情報を有するトレーラレコードにより1つのデータ群を構成し、複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する受信処理手段と、」 (d)「前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する会計処理手段と」 (e)「を備えたことを特徴とする料金振替処理システム。」 (2)理由2についての当審の判断 上記(c)には、「・・・複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する受信処理手段」との記載があるが、この記載では、「受信処理手段」が機能的に特定されているに留まり、「マスターファイルを照合してエラーチェックを行う」との記載では、照合する内容が具体的に特定されておらず、更に、どのような「エラーチェック」を行うのかも特定されていないことに加えて、「エラーチェックを行う」ことと「料金振替明細ファイルを作成する」ことの関連についても特定されていないため、出願時の技術常識を考慮しても、上記記載から「受信処理手段」の具体的な技術的構成が明確でない。 また、上記(d)には「前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する会計処理手段」と記載されているが、この記載では、「会計処理手段」が機能的に特定されているに留まり、前記受信処理手段により作成された(請求機関の種別毎に集計した集計データからなる)「料金振替明細ファイル」と「振替伝票」、「原価データ」、「総合料金振込データ」の関連が明確に特定されていないため、出願時の技術常識を考慮しても、上記記載では、「料金振替明細ファイル」からどのようにして「振替伝票」、「原価データ」、「総合料金振込データ」を作成するのかなど、「会計処理手段」の具体的な技術的構成が明確でない。 そして、上記(c)、(d)は、請求項1に係る発明の核となる機能実現手段を特定しようとする記載であるから、上記(c)、(d)の記載が明確でないことは、請求項1に係る発明が、全体的に明確でないと判断せざるを得ない。 よって、請求項1に係る発明は明確でない。 (3)理由3についての当審の判断 発明の詳細な説明の記載からみて、「料金明細データを入力して料金振替に必要な処理を実行する料金振替処理システム」は、コンピュータシステムであり、「マスターファイル」はこのコンピュータシステムが備える記憶手段であり、各処理手段はコンピュータにより実行される機能実現手段であるので、この発明の実施にソフトウエアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウエア関連発明である。 そして、こうしたコンピュータ・ソフトウエア関連発明が、特許法第2条でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、発明はそもそも一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成が具体的に提示される必要があるというべきである。 そこで、請求項1に記載された発明が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような構成が具体的に提示されているかどうか、以下に検討する。 上記(a)の記載について検討すると、請求項に係る発明である「料金振替処理システム」が「料金明細データを入力して料金振替に必要な処理を実行する」ものであること、つまり、当該システムの概要を特定するに留まり、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものとは認められない。 上記(b)の記載について検討すると、上記(b)には、「マスターファイル」に「料金の種別を含む請求機関に関する情報」及び「少なくとも各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する振替伝票、原価データ、総合料金振込データを作成するための会計処理を含む負担機関に関する情報」が登録されていることを特定しているに留まり、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものとは認められない。 上記(c)の記載について検討すると、上記(c)には、「口座の情報を有するヘッダレコードと少なくとも料金の振替日、請求機関、負担機関、振替金額の情報を有する複数のデータレコードと前記複数のデータレコードの情報の集計情報を有するトレーラレコードにより1つのデータ群を構成し、複数のデータ群が連続してエンドレコードで終了する料金明細データ」という「料金明細データ」のデータ構造を具体的に特定する記載はあるものの、上記データ構造に対応した特有の情報処理を特定する記載はないことから、この記載は、「料金明細データ」のデータ構造を明示しているにすぎず、また、「マスターファイルを照合して・・・」との記載があるものの、「料金明細データを受信し前記マスターファイルを照合してエラーチェックを行い請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する受信処理手段」という記載は、「受信処理手段」で実行される「料金明細データを受信する処理」、「マスターファイルを照合してエラーチェックを行う処理」、「請求機関の種別毎に集計した集計データからなる料金振替明細ファイルを作成する処理」のいずれについても、ソフトウエアによる情報処理がコンピュータシステムの備えるハードウエア資源(例えば上記「マスターファイル」)をどのように用いて具体的に実現されているのかを特定するものではない。つまり、上記(c)の記載は、「受信処理手段」が果たすべき機能を提示するに留まり、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものとは認められない。 上記(d)の記載について検討すると、上記(d)には、「マスターファイルを照合して・・・」との記載があるものの、「前記マスターファイルを照合して前記受信処理手段により作成された料金振替明細ファイルから各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票、財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ、振替日における総合料金振込データを作成する会計処理手段」という記載は、「会計処理手段」で実行される「料金振替明細ファイル」から「各負担機関毎に各請求機関の料金振替情報を有する前記振替伝票」、「財務会計のための会計処理に必要な情報を有する原価データ」、「振替日における総合料金振込データ」を作成する処理について、ソフトウエアによる情報処理がコンピュータシステムの備えるハードウエア資源(例えば上記「マスターファイル」)をどのように用いて具体的に実現されているのかを特定するものではない。つまり、上記(d)の記載は、「会計処理手段」が果たすべき機能を提示するに留まり、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものとは認められない。 上記(e)について検討すると、上記(e)の記載は、請求項1に係る発明である「料金振替処理システム」が、上記(b)、(c)、(d)の各機能手段を備えたことを特定するに留まり、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものとは認められない。 したがって、請求項1の(a)?(e)のいずれの記載も、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような構成を具体的に提示するものではなく、一定の技術的課題の解決手段になっているとは認められないから、請求項1に記載されたものは、全体として、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。 よって、この出願の請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。 6.むすび 上記5.(2)で述べたとおり、請求項1に係る発明が明確であるとは認められないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 また、上記5.(3)で述べたとおり、請求項1に係る発明は、特許法上の「発明」である「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないので、本件出願は、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の拒絶の理由を検討するまでもなく、本件出願は、特許を受けることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-25 |
結審通知日 | 2008-02-27 |
審決日 | 2008-03-24 |
出願番号 | 特願平8-145301 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 1- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 満 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
坂庭 剛史 ▲吉▼田 耕一 |
発明の名称 | 料金振替処理システム |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 蛭川 昌信 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 韮澤 弘 |