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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1177305
審判番号 不服2005-6572  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-14 
確定日 2008-05-09 
事件の表示 平成 9年特許願第 8045号「ラベル用記録メディア」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 7日出願公開、特開平10-207375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成9年1月20日の出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成19年9月28日付の手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「基材の表側にインク受容層を有し、裏側に粘着層を有するラベル本体と、前記粘着層を覆いかつ前記ラベル本体から剥離可能に設けられたベ-スシ-トとからなるラベル用記録メディアにおいて、前記基材は厚み38?100μm及び前記ベースシートは厚み75?200μmの合成樹脂製フィルムからそれぞれ構成され、その内、一方を透明とし、他方を白色とすると共に、前記ベ-スシ-トの厚みが前記ラベル本体の厚みの1.3?3.4倍であることを特徴とするラベル用記録メディア。」
なお、平成17年5月13日付の明細書についての手続補正は、平成19年7月26日付で却下されている。

2.引用例
これに対して、当審における、平成19年7月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平8-290650号公報、同じく、特開平8-234665号公報(以下、順に「引用例1」、「引用例2」という。)には、本願発明に関連する事項として、以下の事項が図示と共に記載されている。
(1)引用例1
ア.「基材紙上にコートされたインク吸収層と異なる面に粘着層及び剥離紙を有するインクジェット記録用紙に於て、基材紙が横目にカットされた紙且つ粘着層と接触している剥離紙の先端から一定距離で該剥離紙が分断されていること、分断される剥離紙の先端からの一定距離が1?5cmの間であり、分断される幅が剥離紙の厚み以上であり、剥離紙の厚みが、基材+インク吸収層の厚みとの比で1:3?3:2であることを特徴とするインクジェット記録用紙。」(1頁【要約】の【構成】参照)
イ.「本発明は、インクジェット記録用紙に関するものであり、更に詳しくは良好な印字、搬送性が得られる基材紙上にコートされたインク吸収層と異なる面に粘着層及び剥離紙を有するタックシール状インクジェット記録用紙に関するものである。【従来の技術】インクジェット記録方法は、高速、低騒音、カラー化が容易、記録パターンの融通性が大きい等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途に於て急速に普及している。これに伴いニーズの多様化も進みインクジェット記録方法で印字された記録紙がラベル(ステッカー)等のシール用途として使用することが増加している。ラベル(ステッカー)等のシールは広い範囲の被着体に良く接着し、貼り付け作業が簡単なため多くの分野で使用されている。」(段落【0001】?【0002】参照)
ウ.「基材紙上にコートされたインク吸収層と異なる面に粘着層及び剥離紙を有するタックシール状のインクジェット記録用紙に於て、基材紙が横目にカットされた紙であり且つ粘着層と接触している剥離紙の先端から一定距離で該剥離紙が分断されているものであれば、給排出時、搬送ローラー2に巻き回し、ピンチローラー3と搬送ローラー2の間から送り出す際、特に搬送ローラー2に巻き回した際、印字面基材紙と裏面剥離紙との間の応力差は小さくなり、ピンチローラー3と搬送ローラー2の間から送り出された時、紙の先端部の浮きが抑えられ、印字の際にヘッドと紙との擦れによる印字不良及び/又は排出時の紙詰まり等の給紙不良を防止することができる。また、横目にカットされた基材紙を用い且つ粘着層と接触している剥離紙の先端から一定距離で該剥離紙が分断されているものでも、分断される位置について給紙方向より剥離紙の先端からの一定距離が1cm以上、5cm以下であったり、剥離紙の分断される幅が剥離紙の厚み以上の時は搬送ローラー2に巻き回した際に印字面基材紙と裏面剥離紙との間の応力差は更に緩和され、同様にピンチローラー3と搬送ローラー2の間から送り出された時、紙の先端部の浮きは抑えられ、印字及び/又は給紙不良は起こらなくなる。更に、剥離紙の厚みと基材+インク吸収層の厚みとのバランスについても、剥離紙の厚み(A)が、基材+インク吸収層の厚み(B)との比で A:B=1:3?3:2 の範囲であると上記と同様に給排出時に搬送ローラー2に巻き回し、ピンチローラー3と搬送ローラー2の間から送り出す際の印字面基材紙と裏面剥離紙との間の応力差は小さく、円滑に搬送することができ、印字位置にて紙の先端部に浮きは生じず、印字の際にヘッドと紙との擦れによる印字不良及び/又は排出時の紙詰まり等の給紙不良が起こらなくなる。」(段落【0008】参照)
エ.【表1】から、実施例4は剥離紙厚み(A)(μm)、基材紙+インク吸収層の厚み(B)(μm)及びA:Bがそれぞれ200、120及び5:3であることすなわちAがBの約1.7倍であることが看取できる。
[引用発明の認定]
記載ウにおける「基材」は、同じ記載ウ、記載ア及び記載エにおける「基材紙」とは異ならない(当審決においては「基材」との記載を使用する。)。また、記載イから、記載アの「インクジェット記録用紙」は、「ラベル用インクジェット記録用紙」を含んでいるといえる。
したがって、上記記載ア?エを含む引用例1には以下の発明が記載されているといえる。
「横目にカットされた紙である基材の一面にインク吸収層を有し、該一面と異なる面に粘着層を有する基材、インク吸収層及び粘着層とから成る部分(以下「タックシール部」という。)と、該タックシール部から剥離可能に設けられた剥離紙とからなるラベル用インクジェット記録用紙において、前記基材+インク吸収層の厚み(B)を120μmとし前記剥離紙の厚み(A)を200μmとし、それゆえ、前記剥離紙の厚み(A)が基材+インク吸収層の厚み(B)の約1.7倍であるラベル用インクジェット記録用紙。」(以下、「引用発明」という。)
(2)引用例2
オ.「粘着層の厚みは経済性を考慮すれば薄い方が良いのは当然であるが、粘着層の厚みが20μm以下である場合、離型紙の平滑性が高ければ特に問題ないが、低い場合その凹凸にあわせて粘着層が固定化されるため、剥がした時に粘着層表面がマット化されてしまう。その結果、透明粘着ラベルを離型紙から剥がして次の種々の被着体に貼着する場合、透明性を重視する利用方法、例えば、窓ガラスに貼る、ポスター等の上に別情報を表示する場合などは、透明粘着ラベルの粘着層面がマット化されることにより曇りが生じ(ヘイズ値が大きくなる)、その結果、視認性が低下する。このように粘着層の厚みが薄い場合、光学的性能が低下する他に、離型紙との接着力が弱くなり過ぎて、保存時に離型紙が剥がれたり、浮いたりするという経時安定性の問題や、ラベルをラベラー等の機械で取り扱う時に離型紙が浮いたりする機械適性の問題も発生する。・・・本発明の目的は、以上のごとき欠点を解決し、透明性に優れ且つ経済性、経時的安定性等に優れた透明粘着ラベルを提供する・・・本発明の透明粘着ラベルの請求項1の発明は、上記課題を解決し目的を達成するために、透明基材の片面に粘着層、剥離紙が順に積層された透明粘着ラベルにおいて、剥離紙の離型面のベック平滑度が10000秒以上で、且つ粘着層の厚みが5?20μmである構成とする。」(段落【0003】?【0005】参照)
カ.「透明基材2としては、透明な樹脂からなる、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の・・・フィルム又はシートが挙げられる。・・・透明基材の厚みは、用途により適宜選択されるが、通常は25?150μm程度とする。・・・粘着層3としては、従来公知の透明な粘着剤が使用できる。これらの粘着剤には、例えば、アクリル系粘着剤、・・が挙げられる。」(段落【0011】?【0013】参照)
キ.「離型紙の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート・・・等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。厚みは、通常25?250μm程度である。・・・剥離紙は透明なものでも構わないが、白色或いは有色のものを用いれば、熱転写リボン一体型透明粘着ラベルとした時に、印字後の印字品質を事前チェックしたり、離型紙が判別し易いので剥がす時の簡便さ等の点でも適している。」(段落【0014】参照)
記載オ?キを含む引用例2には、基材の片面に粘着層、剥離紙が順に積層された粘着ラベル等の印字用紙において、基材及び剥離紙を、それぞれ厚み25?150μmの透明の合成樹脂製フィルム及び厚み25?250μmの白色の合成樹脂製フィルムから構成すると共に、粘着層を厚み5?20μmのアクリル系粘着剤等の層とすることが記載されているといえる。

3.対比・判断
本願発明と上記引用発明とを対比する。
a.引用発明の「横目にカットされた紙である基材」、「インク吸収層」、「粘着層」、「剥離紙」、「タックシール部」及び「ラベル用インクジェット記録用紙」は、本願発明の「基材」、「インク受容層」、「粘着層」、「ベースシート」、「ラベル本体」及び「ラベル用記録メディア」に相当している。
b.両者はベースシート(剥離紙)の厚みが200μmである点で共通している。
以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「基材の表側にインク受容層を有し、裏側に粘着層を有するラベル本体と、前記粘着層を覆いかつ前記ラベル本体から剥離可能に設けられたベ-スシ-トとからなるラベル用記録メディアにおいて、前記ベースシートは厚み200μmであるラベル用記録メディア。」
[相違点]
A.本願発明では、基材及びベースシートは合成樹脂製フィルムからそれぞれ構成され、その内、一方を透明とし、他方を白色とするのに対して、引用発明では、その点が定かでない点。
B.本願発明では、基材は厚み38?100μmであると共に、ベ-スシ-トの厚みがラベル本体の厚みすなわち上記基材の厚み+インク受容層の厚み+粘着層の厚みの1.3?3.4倍であるのに対して、引用発明では、その点が定かでない点。
[相違点の判断]
相違点Aについて
引用発明において、基材として、横目にカットされた紙(紙の繊維方向が印字方向である紙)を使用するのは、インクジェット記録用紙(ラベル用記録メディア)の腰を弱くするためになしたものであるが、紙の腰(記録メディアの曲がりにくさ)は、厚み、構成材料如何、製造方法などの様々な要因により決まることであるから、引用発明において、インクジェット記録メディアの基材として、横目にカットされた紙(紙の繊維方向が印字方向である紙)に代えて、腰が同程度の他の構成材料からなる記録メディアを使用することは、当業者が容易に想起できることである。そして、インクジェット用の記録メディアとして基材及び剥離紙(ベースシート)が合成樹脂製フィルムのものは周知慣用されており、例えば、引用例2にも記載されており、しかも厚みも同程度であることから、引用発明において、基材及びベースシートが合成樹脂製フィルムからそれぞれ構成されるようにすることは当業者が想到容易である。
また、引用例2には、ラベル本体(基材)を透明とし、離型紙(ベースシート)を白色とすることにより離型紙(ベースシート)が判別し易くなり剥離しやすくなることが記載されているから、一方を透明とし、他方を白色とすることも当業者が容易に想起できることである。
したがって、引用発明に本願発明の相違点Aに係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得るものである。
相違点Bについて
引用発明は、基材+インク吸収層の厚み(B)が120μm剥離紙(ベースシート)の厚み(A)が200μm、すなわち、前記剥離紙(ベースシート)の厚み(A)が基材+インク吸収層の厚み(B)の約1.7倍であるが、基材の厚み及び粘着層の厚みそれぞれは定かでないから、ラベル本体すなわち基材+インク吸収層の厚み(B)+粘着層の厚みが定かでなく、したがって、基材自体の厚みが定かでないと共に剥離紙(ベースシート)の厚み(A)が前記ラベル本体の厚みの何倍であるかも定かでない。
しかし、基材が合成樹脂製フィルムから形成されるインクジェット記録用紙のインク吸収層(インク受容層)の厚みを、1?50μmとすることは、例えば、特開平1-182055号公報、特開平7-9759号公報、特開平7-149040号公報等にみられるように周知である。
してみると、引用発明において、基材として合成樹脂製フィルムを使用するするに当たり、上記周知技術を適用すれば、基材の厚み(120μm-インク吸収層(インク受容層)の厚み)は、70?119μmとなり、本願発明の範囲(38?100μm)と重複する。
また、上記引用例2には、基材の片面に粘着層、剥離紙(ベースシート)が順に積層された粘着ラベル等の印字用紙において、基材及び剥離紙(ベースシート)が厚み25?150μmの合成樹脂製フィルムからそれぞれ構成されると共に、粘着層の厚みを5?20μmとすることが記載されているといえるから、引用発明において、基材として合成樹脂製フィルムをを使用するに当たり、ラベル本体の厚みすなわち[基材+インク吸収層の厚み(B)]120μm+粘着層の厚みを、125?140μmとすることも、上記引用例2に記載の技術を引用発明に適用するに当たり、当業者が適宜なす範囲内のことと認められる。そうすると、剥離紙(ベースシート)の厚み(A)が前記ラベル本体の厚みが、約1.4?1.6倍となり、本願発明の範囲内となる。
したがって、引用発明において、本願発明の相違点Bに係る構成を備えることも当業者が容易に想到し得るものである。
本願の作用効果である剥離しやすさは、基材及びベースシートの各厚さやその比で決まるものでなく、剥離(開始)部分の構成(縁部の寸法の一致不一致)や粘着層の粘着力等により変わるものであるから、本願の寸法規定に格別の作用効果があると認められず、しかも当該寸法規定は、上記のように、従来と格別に相違していない以上、当業者が適宜なし得る程度のことというほかない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-03-12 
審決日 2008-03-25 
出願番号 特願平9-8045
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 尾崎 俊彦
藤井 靖子
発明の名称 ラベル用記録メディア  
代理人 林 智雄  
代理人 宮越 典明  
代理人 内藤 照雄  

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