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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D
管理番号 1177431
審判番号 不服2004-3608  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-25 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 特願2001-130634「疑似接着シート及びそれを用いた情報通信体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月29日出願公開、特開2002- 29181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成13年4月27日(優先権主張平成12年5月11日)に出願したものであって、平成16年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月25日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月26日付けで明細書についての手続補正がなされ、当審において、平成19年1月23日付けで前記平成16年3月26日付け手続補正書が補正却下され、同日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して、平成19年3月26日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものである。

2.本願発明の認定

本願の請求項1?7に係る発明は、平成19年3月26日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。
そして、その請求項1に係る発明は、同請求項1に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】情報通信体の製造に際して、少なくとも2面の情報表示面を持つ用紙の対向する前記情報表示面間に予め疑似接着された状態で挟み込まれ、用紙と共に接着一体化される疑似接着シートであり、
テンター方式二軸延伸フィルムからなる支持体の少なくとも一方の面に樹脂層を輪郭コータによるコーティング方式で加熱及び/又は加圧下に形成し、さらにその両外側に接着剤層を輪郭コータによるコーティング方式で形成してなり、対向する支持体と樹脂層の界面で剥離可能に疑似接着状態にあり且つ剥離後に剥離界面を対向させて疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えることにより剥離前の疑似接着状態に復元されるようにしたことを特徴とする疑似接着シート。」
以下、当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。

3.引用刊行物

これに対して、当審における、平成19年1月23日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願日前に頒布された各刊行物には、以下の記載事項が認められる。

3-1 刊行物1:特許第3034627号公報(平成12年4月17日発行)
ア.特許請求の範囲「【請求項1】少なくとも2枚の紙葉を剥離可能に接着して成るラミネート式葉書を作成するために該2枚の紙葉の間に挟まれる擬似接着積層フィルムであって、支持体シートと、液状の樹脂を支持体シート上に塗布した後硬化することにより形成され、支持体シートと剥離可能に接着する硬化層とから成ることを特徴とする擬似接着積層フィルム。
【請求項2】 請求項1に記載の擬似接着積層フィルムの両面に接着剤層を設けたことを特徴とする擬似接着積層フィルム。
【請求項3】 請求項1に記載の擬似接着積層フィルムとその両側に設けた紙葉から成り、擬似接着積層フィルムと各紙葉とはそれぞれ接着剤層を介して接着されていることを特徴とするラミネート式葉書。」
イ.段落【0002】「従来の単葉葉書に代わり、通信可能な情報量が3倍に増加し、秘密情報を送ることができるにも関わらず郵便料金は低額の葉書料金のままで済むラミネート式葉書が広く用いられるようになってきている。ラミネート式葉書は、2枚の葉書大の紙葉を擬似接着フィルムと呼ばれる積層(ラミネート)フィルムで接着し、一体化したものであり、郵送時には1枚の葉書として取り扱われ、受信者が受信した後に擬似接着積層フィルムの擬似接着面を引き剥すことにより内部に記載された情報を読み取ることができる。従来の擬似接着積層フィルムは、例えばポリエステル等...透明シート(耐熱性シート)の両面にポリエチレン等の...透明シート(低軟化点シート)を貼り合わせること等により構成されている。」
ウ.段落【0006】「擬似接着積層フィルムの方は、支持体シート上に塗布された液状の樹脂が自然乾燥あるいは加熱、強制乾燥、硬化剤添加等の適当な処理により硬化すると、支持体シートと硬化した樹脂との間の界面は擬似接着面となる。すなわち、通常に力を加えない状態では一応接着しているが、適当な剥離力を加えることにより支持体シートと固化樹脂層とはその擬似接着面で容易に剥離し、2枚のシートに分離する。したがって、上記のように2枚の紙葉の間に挟んでラミネート式葉書を作成するのに利用することができる」
エ.段落【0007】「本実施例では、支持体シート10としてポリエステルフィルム(厚さ25μm)を用い、液状の樹脂11としてはポリウレタン系のワニスを使用する。...ポリエステルフィルム支持体はロール状に巻かれたものを用い、ロールコーターによりロールから引き出したポリエステルフィルム10の表面にこの樹脂溶液11を塗布し(塗布量は約50?80g/m2)、130?150℃で5?10分間程度の加熱を行うことにより樹脂の硬化を促進させる。これにより、ポリエステルフィルム10上に...硬化層(フィルム)11が形成される(図1(a))。」
オ.段落【0008】「次に、ラミネート式葉書を作成するために、この擬似接着積層フィルムを葉書大の紙葉16、17を2枚連接した2つ折り葉書用紙の紙葉間に挟み、ヒートローラで加熱及び加圧を行った(図1(c))。ここにおける加熱温度は100℃、加圧圧力は5kgとし、ローラによる送り速度は1.0m/minとした。」
カ.段落【0013】「支持体シートとその表面で硬化したフィルムとの間は擬似接着状態となっており、何らかの手がかりをもとに両フィルム(ラミネート式葉書を作成した場合には、両紙葉)を引っ張ることにより、擬似接着層は容易に剥離する。...しかし、上記木工用の接着剤(酢酸ビニルエマルジョン系接着剤)を除き、その他の液状樹脂の場合は、液状樹脂塗布層(硬化層)は完全に硬化しているため、硬化層と支持体シートとの間の擬似接着面をいったん剥離した後は、たとえヒートローラを通そうとも、再び両層が接着することはない。なお、酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤(木工用接着剤等)の場合は、加熱及び加圧を行なうことにより一旦剥離した擬似接着面が再接着することがあるが、そのような特別な加工を行なわない場合には、再接着は不可能である。」
キ.段落【0014】「前記工程によりあらかじめ硬化した擬似接着積層フィルムを両紙葉21、22間に挟み、感熱、感圧接着剤層や粘着剤層等で接着するようにしてもよい。」
これらの記載ア.?キ.を含む刊行物1の全記載及び図示によれば、上記刊行物1には、以下のものが記載されている。
「ラミネート式葉書を作成するために、2枚の葉書大の紙葉16、17の間に挟まれ、支持体シート10と剥離可能に接着する硬化層11とから成り、その両側に設けた各紙葉とそれぞれ接着剤層を介して接着し、一体化される擬似接着積層フィルムであり、ポリエステルフィルムからなる支持体シート10上にロールコーターにより樹脂溶液を塗布し、130?150℃ で5?10分間程度の加熱を行うことにより硬化層11を形成し、その後、その両面に接着剤層を形成してなり、支持体シート10と硬化層11との間の界面で剥離可能に擬似接着状態にある擬似接着積層フィルム15。」
以下、「刊行物1記載の発明」という。

3-2-1 刊行物2: 特開平11-268451号公報
ク.段落【0015】「本発明で用いられる透明合成樹脂シートとは、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレンテレフタレート...二軸延伸シート等が使用できる。」
ケ.段落【0025】「透明合成樹脂シートに、加熱接着層としてのディレードタック型粘着剤、ヒートシール型粘着剤、再剥離性粘着層を塗工する方法は...ロールコーター...グラビアコーター...リバースロールコーター、4本或は5本ロールコーター...落下カーテンコータ...等いかなる塗工方法を用いてもよい。」

3-2-2 刊行物3:特開平11-28879号公報
コ.段落【0014】?【0015】「印刷の終わった用紙(S)に第1層として透明の樹脂層が形成される。樹脂層形成の方法としては公知の方法を採用することができる。たとえば、各種ロールコーター方式、エアドクタコータ...等の方式が採用でき...第2層は第1層形成の後に同様の方法で形成すればよい。」
サ.段落【0021】「実施例(3)は、図4Aに示すように別体である台紙を加工する場合である。すなわち、2枚の台紙1a、1bの各隠蔽面に第1、2層を形成した後、各第2層4が内側になるように台紙1a、1bを重ね合わせ、加熱、加圧させると第2層4同士は溶融一体化される(図4B)。これにより隠蔽面の情報は隠蔽されつつ2枚の台紙は疑似接着により一体化される。」

3-2-3 刊行物4:特開平10-211669号公報
シ.段落【0028】「本発明の離型層(2)、感熱接着剤層(3)及び(3' )は、公知のロールコーター...等の塗工装置を用いて形成することができる。」

3-3-1 刊行物5:特開平7-242079号公報
ス.段落【0002】?【0003】「公知の技術では、親展面同士を剥がしたあと、再度親展面同士を合わせて熱圧着すると、疑似接着が可能となり、第三者に知られたくない情報を親展用郵便葉書に記載することには問題が残る。...本発明は、親展用郵便葉書としての上記のような問題点を解決し、一度親展面同士を剥がしたら、その後の再疑似接着は不可能という親展用郵便葉書を提供することを目的とする。」
セ.段落【0004】?【0006】「上記目的を達成するために...親展面同士を向き合わせるように郵便葉書用紙を折り畳み、その親展面同士を剥離可能に疑似接着させてなる親展用郵便葉書において、互いに向き合う親展面間に挟装されるフィルム状の透明な基材の両面に、親展面に対して接着可能な熱接着樹脂層が形成され、この基材と熱接着樹脂層の片方の間に...シリコーン樹脂又はフッ素樹脂からなる剥離層が形成され...本発明によれば、フィルム状の透明な基材と熱接着樹脂層の間に剥離層が形成されているので、親展面同士を剥がすと剥離層から剥がれ、一度剥がした親展面同士を熱圧着しても、親展面同士が再び疑似接着することはない。」
ソ.段落【0008】「セパレーター(20)は、ポリプロピレンやポリエステル等のプラスチックフィルムでなる基材(30)の片面にシリコーン樹脂やフッ素樹脂で離型処理を施した離型層(31)が...形成されてなり、さらにこれらの両面の上層に、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の低融点の接着性樹脂を塗布し、乾燥して、その固体ポリマーからなる接着層(33a,33b)が形成されてなる。こうして出来上がったセパレーター(20)を、親展面(10a,10b)同士を向き合わせるようにして2つ折りした葉書用紙(10)に挟装して、温度120?200°C(望ましくは140?150°C)、圧力 5kg/cm2以下、時間 0.5?2秒 の条件で熱圧着して本発明の親展用郵便葉書が完成する。」
タ.段落【0014】「一度剥がした親展面同士を熱圧着しても、親展面同士が再び疑似接着する可能性は全くない。よって、親展面に第三者に知られたくない情報が記載されていたとしても、一度親展面同士を剥がせば二度と親展面同士は疑似接着しないので、第三者が親展面に記載されている情報を見た場合には、直ぐにそのことがわかり、親展用郵便葉書としての役割を十分に果たすという効果がある。」

3-3-2 刊行物6: 実願平4-14058号(実開平5-63875号)のCD-ROM
チ.段落【0005】「従来の親展葉書は、高平滑な擬似接着面を有しているため、剥離強度が必要以上に大きい上再接着防止能に劣り」
ツ.段落【0013】?【0014】「擬似接着積層シートの製造方法は...筆記可能な表面に上記熱可塑性樹脂を積層せしめる方法が好ましい。このための方法としては...通常の塗工設備による溶液塗工法等の公知の塗工方法を挙げることができる。
これらの方法により得られた擬似接着積層シートの界面接着強度は、剥離容易性の観点から10?100g/50mmとすることが好ましく」

3-4-1 刊行物7:特開平6-114993号公報
テ.段落【0004】?【0005】「隠蔽用葉書の介在シートや複合ラベル等の高融点樹脂透明フィルムと低融点フィルムの擬似接着箇所は、高融点樹脂フィルムと低融点のポリエチレン系樹脂との界面であり、第3者が隠蔽部分を剥離し、容易に中に記載された情報を読み取った後、再び剥離面同士を重ね合せ、カバーシート遮蔽側、あるいは通信用紙側から、熱や加圧等を施すことで再貼着が可能であることから、情報を受け取る当事者は情報が漏洩したか否かの判別がつかず好ましくないという問題があった。...本発明は、第3者がこっそり情報を読み取った後の復元を不可能にしたものであって、情報を提供する側、及び情報を受け取る側が安心して情報のやり取りができ、しかも、情報を受け取る一方の当事者が情報漏洩を即時に判断でき」
ト.段落【0011】?【0013】「本発明に使用される基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、セロファン等の透明フィルム...二軸延伸樹脂フィルムは肉厚の薄いものが使用できるので更に好ましい。
接着層3,3′は...アクリル系樹脂溶液或いはポリ酢酸ビニルエマルジョンを塗布乾燥することにより形成される。」
ナ.段落【0023】「実施例1...アルミニウム蒸着膜を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ25μm)の両面に、接着層としてエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ビニル含量20重量%)をラミネートした積層フィルム(15μm/500Å/25μm/15μm)を、内面に印刷が施された上質紙(坪量157g/m^(2 )) でできた2重折りの通信紙間にはさみ込み、加熱温度125℃、回転速度3m/分の圧着ロール間に投入し、通信紙と接着層を接着させて通信用葉書を得た。」
ニ.段落【0026】?【0033】「実施例3?4、比較例4
蒸着膜或いはコーティング膜の種類及び厚さ並びに蒸着されるフィルム及びその厚さを表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして通信用葉書を得、実施例1と同様に評価し、結果を表1に示した。...
比較例1
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(厚み16μm)の両面にエチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量20重量%)を15μmの厚さで押出ラミネートした3層積層フィルムを実施例1と同様にして評価し、結果を表に示した。
比較例2,3
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μm)の片面に温度280℃と315℃で、厚み20μmの低密度ポリエチレン樹脂(融点108℃)をラミネートし、次にこのラミネートフィルム両面にエチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量20重量%)を15μmラミネートして得た積層フィルムを実施例1と同様にして評価し、結果を表に示す。...
改竄防止性は、一旦、剥離した両紙面同士を再度温度125℃の圧着ロールを通して評価した。
〇・・・接着せず
×・・・再接着
ヌ.表から、蒸着膜としてアルミニウムあるいはコーティング物質としてアクリル系共重合体を採用した実施例1乃至6のフィルムでは、改竄防止性の評価が○であること、比較例4,1,2,3では、改竄防止性の評価が×であることが看取できる。

3-4-2 刊行物8:.特開平4-35997号公報
ネ.公報第3頁左下欄15行?右下欄3行「剥離可能な界面の剥離強度は20?200g/cm(剥離速度300mm/分、JIS-20237に準する)であることが重要である。...さらに一旦剥離すると簡単に再接着できないことも重要である。」
ノ.公報第4頁左下欄15行?第5頁左上欄8行「実施例1...二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。一方、片面に文面があらかじめ印刷された葉書...に、接着層Aとして、アクリル系のエマルジョン接着剤...をキスコーターで15g/m^(2)(wel)塗工し...二軸延伸ポリエステルフィルムを...重ね合せた(温度20℃、圧力0.5kg/cm^(2))。...重ね合せられた二軸延伸ポリエステルフィルムと葉書...シークレット葉書を得た。...次に表面を剥離していくと、前記二軸延伸ポリエステルフィルムと接着層A間できれいに剥離でき、葉書の文面をはっきり読みとることができた。またこの剥離面は簡単に再接着することは不可能であり、元にもどすことはできなかった。この二軸延伸ポリエステルフィルムと接着層Aとの剥離強度は80g/cmであり、シークレット葉書として、優れた特性を有していた。」
ハ.公報第5頁左上欄9行?右上欄17行「実施例2
カバーシートとして30μmのポリエチレンテレフタレートフィルム...の片面に...アルミニウムを...蒸着した。このアルミ蒸着フィルムの蒸着面に、透明接着層Bとしてポリエステル系の接着剤...をリバースコータで乾燥膜厚が3μmに積層し...葉書...に、接着層Aとして、実施例1と同様にしてアクリル系のエマルジョン接着剤を塗工し、直ちに、前記隠蔽シートの透明接着層B面と接触した2本のロール間を通して重ね合せた...表面を剥離していくと、接着層Aと透明接着層B間できれいに剥離でき...この剥離面は簡単に再接着することは不可能であり、元にもどすことはできなかった。この接着層Aと透明接着層Bとの剥離強度は100g/cmであり、シークレット葉書として極めて優れた特性を有していた。」
ヒ.公報第5頁右上欄18行?第5頁右下欄6行「実施例3
カバーシートとしてポリエチレンテレフタレートのチップ...270?300℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に成形した。さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化させた未延伸フィルムを80?98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3倍横延伸した。その後テンター内で220℃の熱固定を行ない均一に徐冷後巻き取り、厚み50μmのフィルムを得た。このようにして得られた半透明合成樹脂フィルムをカバーシートとして用いた以外は実施例2と同様にして、本発明のシークレット葉書を製造した。...表面を剥離していくと、接着層Aと透明接着層B間できれいに剥離でき...この剥離面は、簡単に再接着することは不可能であり、元にもどすことはできなかった。」

4. 本願発明と刊行物1記載の発明との対比

本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
a. 刊行物1記載の発明の「ラミネート式葉書」が「情報通信体」であることは自明である。
b.刊行物1記載の発明の樹脂を硬化して形成した「硬化層11」は、本願発明の「樹脂層」に相当する。
c.刊行物1記載の発明の「紙葉16,17」、「支持体シート10」、「作成」、「擬似接着積層フィルム15」、「支持体シート10上」、「塗布」、「両面」、「接着剤層」、「支持体シート10と硬化層11との間の界面」は、それぞれ、その機能からみて、
本願発明の「用紙」、「支持体」、「製造」、「疑似接着シート」、「支持体の少なくとも一方の面」、「コーティング」、「両外側」、「接着剤層」、「対向する支持体と樹脂層の界面」に相当する。
d.刊行物1記載の発明の「ポリエステルフィルム」は、本願発明の「テンター方式二軸延伸フィルム」とフィルムで共通する。
e.ラミネート式葉書は、擬似接着積層フィルムの擬似接着面を引き剥すことにより内部に記載された情報を読み取ることができるもの(上記記載イ.)であって、かつ、ラミネート式葉書において情報量の増加は重要事項(上記記載イ.)であるから、引用発明においても紙葉16、17の対向する面の双方に情報が記載されていると認められる。よって、刊行物1記載の発明の「2枚の葉書大の紙葉16、17」は、「少なくとも2面の情報表示面を持つ用紙」といえ、刊行物1記載の発明の「2枚の葉書大の紙葉16、17の間」を、「情報表示面間」ということが出来る。
f.刊行物1記載の発明の「擬似接着積層フィルム15」が、2枚の葉書大の紙葉16、17の間に挟まれるとき、擬似接着状態となっている(上記記載キ.)ことは明らかである。
g.本願明細書の発明の詳細な説明には、輪郭コータとして「例えばエアドクタコータ、リバースロールコータ、ナチュラルロールコータ、トランスファロールコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、キャストロールコータ、スプレイコータ、カーテンコータ、カレンダコータ、押し出しコータ等が挙げられる」(段落【0009】)と記載されており、刊行物1記載の発明の「ロールコーター」は、輪郭コータの一種と認められる。

よって、本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。
<一致点>
情報通信体の製造に際して、少なくとも2面の情報表示面を持つ用紙の対向する前記情報表示面間に予め疑似接着された状態で挟み込まれ、用紙と共に接着一体化される疑似接着シートであり、フィルムからなる支持体の少なくとも一方の面に樹脂層を輪郭コータによるコーティング方式で加熱及び/又は加圧下に形成し、さらにその両外側に接着剤層を形成することにより、対向する支持体と樹脂層の界面で剥離可能に疑似接着状態にある疑似接着シート。
<相違点1>
支持体フィルムが、本願発明では、テンター方式二軸延伸フィルムからなるとの特定がなされているが、刊行物1記載の発明では、このような特定を有しない点。
<相違点2>
接着剤層を、本願発明では、輪郭コータによるコーティング方式で形成するとしているのに対し、刊行物1記載の発明は、このような特定を有しない点。
<相違点3>
本願発明では、剥離後に剥離界面を対向させて疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えることにより剥離前の疑似接着状態に復元されるようにしたと特定しているのに対し、刊行物1記載の発明では、このような特定を有しない点。

5.相違点に係る判断

5-1 相違点1について
相違点1について検討するに、疑似接着シートの支持体フィルムとして、二軸延伸フィルムを用いることが従来から周知(上記刊行物2[前記記載ク.]、刊行物7[前記記載ト.]、刊行物8[前記記載ノ.])である。
又、二軸延伸フィルムの延伸方法としてテンター方式が、従来から周知である(上記刊行物8[前記記載ヒ.]、特公昭62-38129号公報[「ポリプロピレン二軸延伸フイルムの製造方法には、フラツト状で縦横延伸するテンター方式と筒状二軸延伸方式が主流であることは周知の通りである。」(公報第1欄19?22行)]、特開平7-309912号公報[「【従来の技術】二軸延伸ポリプロピレンフィルムは...その製造方法はテンター方式による逐時二軸延伸法が一般的である。」(段落【0002】)、「(製膜)得られたポリプロピレン樹脂ペレットを用いて以下の方法で二軸延伸フィルムの製膜実験を行なった。ポリプロピレン樹脂ペレットを、スクリュー径90mmφのシート押出機を用い、280℃で押し出し、30℃の冷却ロールで厚さ1mmのシートを成形した。次いで、このシートをテンター方式の逐次二軸延伸装置を用いて、縦方向に4.5倍ロール延伸し、引き続いて160℃のテンター内で横方向に10倍延伸して、厚さ20ミクロンの二軸延伸フィルムを50m/分の速度で製膜した。」(段落【0045】)]、特公平6-49812号公報[「シートを、ロール間延伸で縦方向に延伸した後、テンター内で横方向に延伸するテンター方式二軸延伸装置を用いて、縦方向に140℃で4倍延伸を行なった後、引きつづいて横方向に158℃で10倍延伸を行ない、155℃で横方向に3%弛緩しつつ熱処理を行ない、厚み25μの二軸延伸フィルムを得た。」(第11欄42?48行)]、特許第2751409号公報[「本発明の樹脂組成物からフィルムを製造するには...押出機のT-ダイもしくはチューブラーダイから押出し、得られたシート状もしくはチューブ状の未延伸シートを、テンター方式逐次二軸延伸法またはテンター方式同時二軸延伸法、もしくはチューブラー方式二軸延伸法などの従来公知の方法により延伸すればよい。テンター方式逐次二軸延伸法による場合には、未延伸シートを45?65℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機により2?5倍に延伸した後、70?100℃の温度範囲に加熱して2?5倍に延伸するのがよく」(第7欄25?35行)]、特開平4-296549号公報[「フィルムの二軸延伸方法としてテンター方式による逐次二軸延伸法、及び同時二軸延伸法が知られている。」(【0005】)]、特許第2878121号公報[「ポリプロピレン二軸延伸フィルムは、その優れた機械的物性、光学的物性により包装材料等に広く使用されている。その製造方法はテンター方式による逐次二軸延伸法が一般的である。」(【0002】)])。
よって、テンター方式が平滑性に有利であることは当業者であれば容易に理解できるから、刊行物1記載の発明の支持体フィルムに、疑似接着シートの支持体フィルムとして従来から周知の二軸延伸フィルムを選定し、更に、該二軸延伸フィルムを、テンター方式のものに限定することは、当業者が容易に想到できたものである。

5-2 相違点2について
相違点2について検討するに、疑似接着シートの分野において接着剤層を輪郭コータによるコーティング方式で形成することも、支持体に形成する樹脂層と該接着剤層を同じ塗布方式で形成することも従来から周知(上記刊行物2乃至4)であるから、刊行物1記載の発明においても接着剤層の形成にあたり、樹脂層の形成に用いたと同じ輪郭コータを用いることは、当業者が容易になし得ることである。

5-3 相違点3について
相違点3について検討するに、「剥離後に剥離界面を対向させて疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えることにより剥離前の疑似接着状態に復元されるようにした」と特定した点は、剥離界面を対向させて疑似接着時と同様の加工条件を与えれば疑似接着状態を復元できるとするに過ぎないことから、相違点3は、「テンター方式二軸延伸フィルムからなる支持体の少なくとも一方の面に樹脂層を輪郭コータによるコーティング方式で加熱及び/又は加圧下に形成し、さらにその両外側に接着剤層を輪郭コータによるコーティング方式で形成してなり、対向する支持体と樹脂層の界面で剥離可能に疑似接着状態にある疑似接着シート」の有する作用効果を単に記載したものであり、相違点1及び2に係る構成を備えた引用刊行物1記載の発明も当然に備える作用効果と解されるので、上記の点で実質的に差異があるとは認められない。
この点について、請求人は、平成19年3月26日付け意見書において「本願発明に係る疑似接着シートを特定するために必須の構成要件であり、該疑似接着シートの特定に必要なためにやむを得ず作用効果の記載を伴っているものである。即ち、前記前段の「テンター方式二軸延伸フィルムからなる支持体の少なくとも一方の面に樹脂層を輪郭コータによるコーティング方式で加熱及び/又は加圧下に形成し、さらにその両外側に接着剤層を輪郭コ
ータによるコーティング方式で形成した」の構成によれば、前記のように平滑性の相乗的向上による剥離後の圧着による再接着性の向上の作用効果は得られるとしても、この構成のみでは所要の疑似接着性や剥離後における剥離前の疑似接着状態への復元の作用効果を確実に得ることはできない。」(『意見の内容』の〔4〕本願請求項1に係る発明と刊行物1?8との対比(2)の記載参照。)と主張している。
なるほど、情報通信体の製造に用いる疑似接着シートは、プライバシーの保護や秘密漏洩事実の確認の面から一旦剥離すると通常の状況下では再接着が不可能であることを要件としているが、剥離後に剥離界面を対向させて疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えても再接着しないようにする為何らかの工夫(本願優先日前に頒布された特開平9-104167号公報[「剥離した後は通常の方法では再接着できない工夫をしており親展性を確保している。」(【0005】)]、上記刊行物5の剥離層(前記記載セ.)、上記刊行物7のアルミニウム蒸着膜あるいはアクリル系共重合体コーティング膜(前記記載ニ.ヌ.)、本願優先日前に頒布された実願平1-35560(実開平2-126877号)のマイクロフィルムのプラスチツク層表面の粗面凸凹による点接合)を施しているのが、通常であって、このような工夫が施されていない場合、一般に、剥離後に剥離界面を対向させて疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えることにより再接着することは、技術常識に属する。
この点は、上記刊行物5(前記記載ス.)、上記刊行物7(前記記載テ.、ヌ.、二.の「比較例2」)、本願の優先日前に頒布された特開平4-29846号公報[「この後に家庭用アイロン等で加熱して容易に上記不透明フィルムを印字面に再接着する」(公報第1頁右欄9?11行)]、同じく特開平5-307362号公報あるいは特開平6-332380号公報[「剥離後に強く押さえることで再接着してしまう可能性があり、またアイロンなどで再度熱圧着を行うことで剥離前の状態に復元することが可能であった。」(【0003】)]、同じく特開平6-328608号公報[「この種隠蔽シールでは...一旦剥離させると、単に押圧させるだけでは再度貼着させることはできないが、再度加熱圧着させれば、元通りに修復できてしまう。」(【0004】)]、同じく特開平9-39146号公報[「樹脂と剥離層とは樹脂が溶融して接着されたものであり、再度溶融させなければ接着はできず、通常では再接着はしない。」(【0022】)]、同じく特開平10-329455号公報[「圧着機により圧力をかけることにより該感圧接着層同士が疑似接着させる。...感圧接着層はかなりの高圧力をかけないと再剥離可能に接着しない」(【0012】)]、同じく特開平8-104849号公報[「ポリエチレンとベースフィルムは、ポリエチレンが溶融して接着されたものであり、再度溶融させなければ接着はできず、通常では再接着はしない。」(【0020】)]、同じく特許第3037668号公報[「疑似接着剤とは、通常郵便物が受ける程度の外力が加わっても剥離することはないが、角度をつけて引っ張れば容易に剥がれる程度の接着力を持ち、一旦剥離すれば熱と圧力をかけない通常の状況下では再接着しない接着剤を云う。」(段落【0002】)]等から裏付けられる。
すると、「剥離後に剥離界面を対向させて疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えることにより剥離前の疑似接着状態に復元されるようにした」との特定は、当たり前のことを記載したにすぎず、格別のものではない。
また、本願発明が、疑似接着時の加熱及び/又は加圧条件と同様の加工条件を加えることにより剥離前の疑似接着状態に復元される点について、発明の詳細な説明の段落【0011】、段落【0015】には、支持体表面に樹脂層を形成するときに、輪郭コータを用いることで剥離前の疑似接着状態に復元できることが記載されている。
そして、輪郭コータを用いる点は、上記相違点2で検討した通り想到容易な事項であるから、本願発明の相違点3に係る構成についても同様に想到容易である。
してみれば、請求人が主張するように相違点3に係る特定が本願発明に係る疑似接着シートを特定するために必須の構成要件であるとしても、この点は、当業者にとって想到容易といえる。

よって、相違点1及び2に係る本願の請求項1に係る発明の構成を採用することに格別の困難性はなく、相違点1及び2に係る構成を採用した刊行物1記載の発明は、相違点3に記載された作用効果を当然に備えていると認められる。
したがって、本願の請求項1に係る発明は刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-4 まとめ
よって、相違点1乃至3に係る本願発明の構成を採用することに格別の困難性はなく、刊行物1記載の発明に相違点1乃至3に係る構成を採用した本願発明の作用効果も格別のものではない。
したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6. むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができない以上、その余の本願の請求項2乃至7に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-07 
結審通知日 2008-03-10 
審決日 2008-03-25 
出願番号 特願2001-130634(P2001-130634)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二平井 聡子  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅藤 政明
藤井 靖子
発明の名称 疑似接着シート及びそれを用いた情報通信体  
代理人 安藤 惇逸  

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