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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1177453 |
審判番号 | 不服2005-13441 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-14 |
確定日 | 2008-05-07 |
事件の表示 | 特願2001-102742「管理システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月11日出願公開、特開2002-298111〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年4月2日の出願であって、平成17年3月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月28日に手続補正がなされたが、同年6月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月14日に審判請求がなされ、同年8月11日に手続補正がなされ、平成19年10月18日付けで当審より審尋がなされ、これに対し、同年12月21日に回答書が提出されたものである。 2.平成17年8月11日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年8月11日付け手続補正を却下する。 [理由] (ア)平成17年8月11日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、補正前のもの(平成17年4月28日付け手続補正における特許請求の範囲)から補正後のものへ下記のごとく変更する補正を含むものである。 <補正前の特許請求の範囲> 「【請求項1】 ICカード及びアクタを具える管理システムであって、 前記ICカードが、 前記アクタからのコマンドに応答して、ICカードの状態をモニタするモニタ手段と、 モニタ結果が書き込まれる書込み手段とを具え、 前記アクタが、 前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段に書き込まれたモニタ結果を読み出す読出し手段と、 前記読出し手段によって読み出されたモニタ結果に応じて、前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定手段とを具えることを特徴とする管理システム。 【請求項2】 前記ICカードの状態を、前記ICカードに蓄積されたログの蓄積量としたことを特徴とする請求項1記載の管理システム。 【請求項3】 前記処理決定手段が、 読み出したログの蓄積量を閾値と比較する比較手段と、 読み出したログの蓄積量が閾値を超える場合、前記ICカードに蓄積されたログの回収処理を行う回収処理手段とを有することを特徴とする請求項2記載の管理システム。 【請求項4】 ICカードとアクタとの間での管理方法であって、 前記アクタからのコマンドに応答して、ICカードの状態をモニタするモニタステップと、 モニタ結果が書き込まれる書込みステップと、 前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込みステップに書き込まれたモニタ結果を読み出す読出しステップと、 前記読出しステップによって読み出されたモニタ結果に応じて前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定ステップとを具えることを特徴とする管理方法。 【請求項5】 前記ICカードの状態を、前記ICカードに蓄積されたログの蓄積量とすることを特徴とする請求項4記載の管理方法。 【請求項6】 前記処理決定ステップが、 読み出したログの蓄積量を閾値と比較する比較ステップと、 読み出したログの蓄積量が閾値を超える場合、前記ICカードに蓄積されたログの回収処理を行う回収処理ステップとを有することを特徴とする請求項5記載の管理方法。」 <補正後の特許請求の範囲> 「【請求項1】ICカード及びアクタを具える管理システムであって、 前記ICカードが、前記アクタからのコマンドに応答して、ICカードの状態をモニタするモニタ手段と、モニタ結果に応じて、前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定手段と、前記処理決定手段で決定した処理をスクリプトとしてカード予約処理の形態で書き込む書込み手段と、前記書込み手段で書き込まれたことを前記アクタにレスポンスとして送信するレスポンス手段とを具え、 前記アクタが、前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段によって書き込まれたスクリプトを読み出す読出し手段とを具えることを特徴とする管理システム。 【請求項2】前記ICカードの状態を、前記ICカードに蓄積されたログの蓄積量としたことを特徴とする請求項1記載の管理システム。 【請求項3】前記処理決定手段が、読み出したログの蓄積量を閾値と比較する比較手段と、読み出したログの蓄積量が閾値を超える場合、前記ICカードに蓄積されたログの回収処理を行う回収処理手段とを有することを特徴とする請求項2記載の管理システム。 【請求項4】ICカードとアクタとの間での管理方法であって、 前記アクタからのコマンドに応答して、ICカードの状態をモニタするモニタステップと、モニタ結果に応じて、前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定ステップと、前記処理決定ステップで決定した処理をスクリプトとしてカード予約処理の形態で書き込む書込みステップと、前記書込みステップで書き込まれたことを前記アクタにレスポンスとして送信するレスポンスステップとを具え、 前記アクタが、前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込みステップによって書き込まれたスクリプトを読み出す読出しステップとを具えることを特徴とする管理方法。 【請求項5】前記ICカードの状態を、前記ICカードに蓄積されたログの蓄積量としたことを特徴とする請求項4記載の管理方法。 【請求項6】前記処理決定ステップが、読み出したログの蓄積量を閾値と比較する比較ステップと、読み出したログの蓄積量が閾値を超える場合、前記ICカードに蓄積されたログの回収処理を行う回収処理ステップとを有することを特徴とする請求項5記載の管理方法。」 (イ)そこで、本件補正が特許法第17条の2第4項の要件を満たすか否かについて以下検討する。 本件補正は、上記の補正前の請求項1乃至6を、補正後の請求項1乃至6としたものであって、補正前後の各請求項の対応関係についてみると、補正前の請求項1乃至6が、それぞれ補正後の請求項1乃至6に対応しているものと認められ、対応する補正前後の請求項1についてみると、少なくとも次の補正事項を含むものである。 (A)補正前の請求項1に係る発明の特定事項である、ICカードが具えていた「モニタ結果が書き込まれる書込み手段」を削除する補正。 すなわち、補正後の請求項1には、ICカードが具える書込み手段として「前記処理決定手段で決定した処理をスクリプトとしてカード予約処理の形態で書き込む書込み手段」があるが、これはモニタ結果を書込むものではないので、補正前の請求項1にあった「モニタ結果が書き込まれる書込み手段」が削除されたことになる。 (B)補正前の請求項1に係る発明の特定事項である、アクタが具えていた「前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段に書き込まれたモニタ結果を読み出す読出し手段」を削除する補正。 すなわち、補正後の請求項1には、アクタが具える読出し手段として「前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段によって書き込まれたスクリプトを読み出す読出し手段」があるが、これはモニタ結果を読み出すものではないので、補正前の請求項1にあった「前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段に書き込まれたモニタ結果を読み出す読出し手段」が削除されたことになる。 (ウ)請求項1に係るこれらの補正事項(A)及び(B)について検討すると、 補正事項(A)及び(B)は、補正前の請求項にあった直列的に記載された発明特定事項を削除するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下、単に「特許請求の範囲の減縮」という。)を目的とする補正とは認められない。 そして、補正事項(A)及び(B)により、補正前後において技術内容が実質的に変更されているので、本来その意味であることが明細書又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りをその意味内容の字句、語句に正したものであるとは認められないので、特許法第17条の2第4項第3号でいう誤記の訂正を目的とするものとは認められない。 さらに、補正事項(A)及び(B)によって明りょうでなくなるような記載が補正前の請求項1において存在するものでもなく、さらに補正事項(A)及び(B)に関連する記載が不明りょうである旨を示す拒絶理由が通知されていないので、補正事項(A)及び(B)はいずれも特許法第17条の2第4項第4号でいう明りょうでない記載の釈明を目的とする補正であるとも認められない。 また、請求項1に係るこれらの補正が特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものでもないことは明らかである。 補正前の請求項4から対応する補正後の請求項4への補正についても同様である。 したがって、これらの補正事項(A)及び(B)を含む本件手続補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれを目的としたものでもないので、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しない。 [むすび] 以上のとおり、本件手続補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められず、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 上記のとおり、平成17年8月11日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ICカード及びアクタを具える管理システムであって、 前記ICカードが、 前記アクタからのコマンドに応答して、ICカードの状態をモニタするモニタ手段と、 モニタ結果が書き込まれる書込み手段とを具え、 前記アクタが、 前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段に書き込まれたモニタ結果を読み出す読出し手段と、 前記読出し手段によって読み出されたモニタ結果に応じて、前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定手段とを具えることを特徴とする管理システム。」 4.引用文献に記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である特開平8-129629号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に、以下のように記載されている。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、メモリチェック機能をもった情報記録媒体、特に、RAMなどの内蔵メモリに対するチェックを、内蔵CPUによって実行する機能をもったICカードなどの情報記録媒体に関する。 【0002】 【従来の技術】ICカードに代表される携帯可能な情報記録媒体は、種々の分野に広く適用できる製品として注目を集めている。特に、CPUを内蔵したICカードは、高度なセキュリティを実現できるため、重要なデータを記録する分野における実用化が図られている。現在普及している一般的なCPU内蔵型のICカードは、ROM,RAM,EEPROMの3種類のメモリを内蔵している。ROMには、CPUが実行すべきプログラムが予め書き込まれ、RAMは、このプログラム実行のためのワークエリアとして利用される。また、EEPROMには、このICカードに記録すべきユーザデータが書き込まれることになる。各メモリに対するアクセスは、内蔵CPUによってのみ行われ、外部からの直接アクセスは禁止されている。したがって、ICカード内に記録されたデータに対しては、高度なセキュリティが確保されることになる。ICカード内のメモリに対するアクセスを含めて、内蔵CPUに何らかの作業を行わせる場合には、外部装置からCPUに対して所定のコマンドが与える必要がある。内蔵CPUは、このコマンドを受信して、所定のコマンド処理ルーチン(通常は、ROM内に格納されている)を実行し、実行結果をレスポンスとして外部装置へ送信する。」 (イ)「【0003】ICカードをはじめとする携帯用の情報記録媒体は、財布やポケットなどに入れて携帯されるため、一般的な電子機器に比べて過酷な使用環境におかれることが多い。そのため、内蔵メモリに異常が生じる可能性も、一般的な電子機器に比べて高くなる。したがって、使用にあたっては定期的にメモリチェックを行うことが非常に重要である。」 (ウ)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来の情報記録媒体におけるメモリチェック機能には、次のような問題がある。まず、第1の問題は、十分なメモリチェックを行うだけの時間的な余裕が確保できないという点である。ICカードなどは、種々の製品の互換性を確保するために規格化が図られており、リセット信号を与えてからリセット応答信号が戻ってくるまでの時間を無制限に確保することはできない。したがって、リセット信号を受信した後、リセット応答信号の送信を開始するまでのリセットルーチンの間に、必要なメモリチェックを行おうとしても、十分な時間が確保できないため、実際には、メモリの一部についての簡単なチェックしかできないのが現状である。 【0006】また、第2の問題は、「リセット信号を与えたのに、リセット応答信号が戻ってこない」という事実により、外部装置としては、「ICカード内部に何らかの異常が生じている」ということは認識できても、「内蔵メモリのどの部分に、どのような異常が生じているか」といった詳しい情報を得ることはできない。したがって、リセット応答信号が戻ってこない場合は、そのICカードに対するアクセスを中断するしかなく、発生した異常の状態に応じた適切な対応策を採ることはできない。 【0007】そこで、本発明の第1の目的は、十分な時間をかけて十分なチェックを行う機能をもった情報記録媒体を提供することにあり、本発明の第2の目的は、チェックの結果として異常が検出されたら、外部装置に対してこの異常内容を報知する機能をもった情報記録媒体を提供することにある。」 (エ)「【0008】 【課題を解決するための手段】 (1) 本発明の第1の態様は、CPUとこのCPUによってアクセスされるメモリとを内蔵し、外部装置からリセット信号を与えると、CPUが所定のメモリチェックルーチンを実行した後に外部装置に対してリセット応答信号を送信し、外部装置から所定のコマンドを与えると、CPUがこのコマンド処理ルーチンを実行した後に外部装置に対して所定のレスポンスを送信する機能をもった情報記録媒体において、内蔵CPUが、メモリチェックルーチンにおいて所定のメモリに対するチェック作業を行うとともに、リセット応答信号の送信中にも所定のメモリに対するチェック作業を行うように構成したものである。 【0009】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る情報記録媒体において、リセット応答信号を1バイト単位で送信するようにし、所定の1バイトの送信を行った後に、後続する次の1バイトの送信を行うまでの空き時間に、メモリに対するチェック作業を行うようにしたものである。 【0010】(3) 本発明の第3の態様は、CPUとこのCPUによってアクセスされるメモリとを内蔵し、外部装置からリセット信号を与えると、CPUが所定のメモリチェックルーチンを実行した後に外部装置に対してリセット応答信号を送信し、外部装置から所定のコマンドを与えると、CPUがこのコマンド処理ルーチンを実行した後に外部装置に対して所定のレスポンスを送信する機能をもった情報記録媒体において、内蔵CPUが、リセット信号を受信してから最初のコマンドを受信するまでの間に、メモリに対するチェック作業を行い、チェック結果を内蔵メモリの所定領域に記録し、最初のコマンドを受信したときには、チェック結果が正常を示すものか、あるいは異常を示すものかを判断し、正常を示すものである場合には最初のコマンドについてのコマンド処理ルーチンを実行して所定のレスポンスを送信し、異常を示すものである場合には異常を示すエラーレスポンスを最初のコマンドに対する所定のレスポンスの代わりに送信するようにしたものである。」 (オ)「【0011】 【作 用】本発明に係る情報記録媒体では、内蔵CPUは、従来のメモリチェックルーチンにおいてメモリチェック作業を行うとともに、リセット応答信号の送信中にも所定のメモリに対するチェック作業を行う。通常、リセット応答信号は、数バイトの情報から構成されており、外部装置に対する1バイト分の情報転送速度は、CPUのマシンサイクルに比べてかなり長いものとなる。したがって、リセット応答信号の各バイトを送信する間の空き時間を利用して、メモリチェックを行えば、従来に比べてより長い時間をメモリチェックにあてることが可能になる。 【0012】また、本発明に係る情報記録媒体では、メモリチェックの結果、何ら異常が検出されなかったときには、最初のコマンドに対して正規のレスポンスを送信するが、何らかの異常が検出されたときには、最初のコマンドに対して、正規のレスポンスの代わりに、検出された異常を示すエラーレスポンスが送信される。したがって、外部装置は、このエラーレスポンスによって、発生した異常内容を認識することができるようになる。」 (カ)「【0013】 【実施例】以下、本発明を図示する実施例に基づいて説明する。図1は、CPU内蔵型の一般的なICカード10を、外部装置20(リーダライタ装置)に接続した状態を示すブロック図である。ICカード10には、CPU11の他に、ROM12,RAM13,EEPROM14なる3種類のメモリが内蔵されており、これらのメモリは、いずれもCPU11によってアクセスされる。ICカード10は、電源やクロック発生源を内蔵しておらず、外部装置20から供給される電源およびクロックを用いて動作する。すなわち、図示のように、ICカード10と外部装置20との間には、電源ラインVcc,クロックラインCLK,リセットラインRST,入出力ラインI/O,接地ラインGNDが接続されている。電源は電源ラインVccおよび接地ラインGNDによって、クロックはクロックラインCLKによって、それぞれ外部装置20からICカード10に供給される。また、リセットラインRSTによって、外部装置20からCPU11に対してリセット信号が与えられる。ICカード10および外部装置20相互間のコマンドやデータ伝送は、入出力ラインI/Oを介して行われる。 【0014】ROM12内には、CPU11が実行すべきプログラムが格納されている。RAM13は、主として、このプログラムを実行する上でのワーク領域および外部装置20との間の送受信バッファ領域として利用される。EEPROM14は、情報記録媒体としての本来の機能を果たすメモリであり、ここには、用途に応じたユーザデータが記録される。これらの各メモリに対するアクセスは、すべてCPU11によって行われ、外部から直接アクセスすることはできない。CPU11に何らかの作業を行わせる場合には、外部装置20から入出力ラインI/Oを通じて、CPU11に所定のコマンドを与えればよい。CPU11は、与えられたコマンドに応じて、ROM12内に用意された所定ルーチンを実行し、実行後に何らかのレスポンスを、入出力ラインI/Oを通じて外部装置20に送信することになる。」 (キ)「【0019】本発明は、このような従来の問題を解決するためのものである。本発明に係るICカードでは、リセット信号を受信したときに、CPU11は図3に示すような処理動作を実行することになる。別言すれば、ROM12内には、図3に示す処理動作を行うためのプログラムが格納されていることになる。 【0020】外部装置20からリセットラインRSTを通じてリセット信号が与えられると、まず、ステップS11においてメモリチェックが行われる。この実施例では、この段階でRAM13の全領域に対するメモリチェックを行っている。RAMに対するメモリチェックの方法としては、種々の方法が知られているが、この実施例では、電荷保持特性を確認できるように、16進データ「00」と「FF」、あるいは「AA」と「55」、のように、ビットの組み合わせが対称的なテストデータパターンを各アドレスに書込み、これを読出すテストを行っている。 【0021】続くステップS12において、RAM13に対するメモリチェックの結果を判断し、もし何らかの異常が生じていた場合には、ステップS13において、RAM13内の所定領域に、メモリ異常フラグをセットする。このとき、RAM13のどのアドレスに異常が生じているかを示すエラー情報もRAM13内に書込むようにする。もちろん、メモリ異常フラグやエラー情報の書込みは、チェックにより正常と判断された領域に行うようにする。RAM13に何ら異常が生じていない場合には、ステップS13の処理は行われない。」 (ク)「【0026】こうして、リセット応答信号の送信が完了すると、外部装置20は、ICカード10の準備が整ったことを認識する。そして、入出力ラインI/Oを通じて所定のコマンドが送られてくる。CPU11は、ステップS20において、第1コマンドを受信すると、ステップS21において、RAM13内のメモリ異常フラグがセットされているか否かを判断する。メモリ異常フラグがセットされていなければ、ステップS11,S16のメモリチェックで異常は発見されなかったことを示しているので、ステップS22において、通常どおり、与えられた第1コマンドに対する処理を行い、その処理結果を第1レスポンスとして、入出力ラインI/Oを通じて外部装置20へ送信する。 【0027】一方、メモリ異常フラグがセットされていた場合には、ステップS23において、メモリチェック異常を示すエラーレスポンスを、第1レスポンスの代わりに、入出力ラインI/Oを通じて外部装置20へ送信する。このエラーレスポンスは、何らかのメモリ異常があったことだけを示すものであってもよいが、どのメモリ領域にどのような異常があったかを示す情報をもたせるのが好ましい。上述のように、ステップS11,S16のメモリチェックで異常が発見された場合に、どのメモリ領域にどのような異常が生じているかを示すエラー情報をRAM13内に書込んでおくようにすれば、このエラー情報に基づいて、種々のエラーレスポンスを送信することが可能である。エラーレスポンスのフォーマットを、コマンドに対する通常のレスポンスとは識別し得るように定義しておけば、外部装置20は、第1コマンドに対して、通常のレスポンスの代わりにエラーレスポンスが得られたことを認識できる。」 (ケ)「【0028】こうして、第1コマンドに対して、第1レスポンスもしくはエラーレスポンスを送信したら、ステップS24において、外部装置20側から与えられる第2コマンドを受信する。以下、この第2コマンドの内容に応じた処理が実行され、必要に応じて、更に第3コマンド、第4コマンド、…に対する処理が続行される。 【0029】エラーレスポンスとして、どのメモリのどの領域にどのような異常が生じているかを示す情報を付与しておけば、外部装置20側では、異常の状態に応じた処置を講じることができる。たとえば、以後のアクセスが困難なような重大なメモリ異常が発生している場合には、第2コマンドとして、アクセスを終了する旨のコマンドをCPU11に与えることにより、アクセスを中断することができるであろうし、EEPROM14の特定の領域にのみ異常が生じているのであれば、この異常領域に対しての書込み/読出しを行わないような態様で、第2コマンド以下のアクセスを行うこともできる。あるいは、異常箇所を更に特定するためのテストを行うコマンドを与えることもできる。」 上記(ア)?(ケ)、及び図1、3の記載からみて、引用文献1には、 ICカードと、このICカードが接続される外部装置(リーダライタ装置)とからなるシステムであって、 前記ICカードには、CPUと、このCPUによってアクセスされるメモリとが内蔵されており、前記外部装置からリセット信号がこのICカードに与えられると、前記CPUが所定のメモリチェック作業を実行し、チェック結果をエラー情報として内蔵メモリの所定領域に書込んだ後、前記外部装置にリセット応答信号を送信し、 前記リセット応答信号を受けた外部装置は、ICカードの準備が整ったことを認識して、ICカードに対して所定の作業を行わせるために第1コマンドを送信し、この第1コマンドを受信したICカードのCPUは、前記内蔵メモリの所定領域に書込まれたエラー情報に基づいてエラー情報を付与したエラーレスポンスを外部装置に送信し、 このエラーレスポンスを受信した外部装置は、エラーレスポンスに付与された情報により異常の状態に応じた処置を講じるための処理をICカードのCPUに行わせるために、第2コマンドをCPUに与えるように構成したことを特徴とするICカードと外部装置からなるシステム。 という発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 5.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 a.引用発明におけるシステムは、ICカード内の状況をチェックし、このチェック結果に基づいて必要な処理を行うものであるので、管理システムに相当するものである。 b.引用発明における「外部装置」は、ICカードに対して、リセット信号やコマンドなどの、処理を実行させる信号を与えるものであるので、本願発明の「アクタ」に相当する。 c.引用発明において、ICカードに内蔵されているCPUが実行するメモリチェック作業は、外部装置から与えられるリセット信号によりICカード内のメモリの状態を調べるものであるので、引用発明のICカードは、外部装置、すなわちアクタからの信号に応答してICカードの状態をモニタするモニタ手段を具えている。 d.また、引用発明において、上記メモリチェック作業の結果はエラー情報として内蔵メモリの所定領域に書き込まれるのであるから、引用発明のICカードは、モニタ結果が書き込まれる書込み手段を具えており、引用発明におけるメモリチェック作業の結果であるエラー情報は、本願発明におけるモニタ結果に相当する。 e.引用発明において、ICカードが外部装置から受け取るリセット信号は、外部からICカードに与えられる信号であって、その信号に応答して上記モニタ手段おけるモニタ動作が実行されるという点で、本願発明におけるコマンドに対応している。 f.さらに、引用発明において、ICカードから外部装置に送信される「リセット応答信号」は、その信号を受け取った外部装置が、ICカードに対して第1コマンドを送信し、ICカードから、前記メモリの所定領域に書込まれたエラー情報に基づいてエラー情報を付与したエラーレスポンスを受け取るのであるから、本願発明の「レスポンス」に相当し、引用発明の外部装置は、本願発明のアクタが具える「前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段に書き込まれたモニタ結果を読み出す読出し手段」を具えている。 g.そして、引用発明の外部装置は、ICカードから受け取ったエラーレスポンスに付与された情報により異常の状態に応じた処置を講じるための処理をICカードのCPUに行わせるために、第2コマンドをCPUに与えるように構成されているのであるから、本願発明のアクタが具える「前記読出し手段によって読み出されたモニタ結果に応じて、前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定手段」を具えている。 してみると、両者は、 <一致点> ICカード及びアクタを具える管理システムであって、 前記ICカードが、 前記アクタからの与えられる信号に応答して、ICカードの状態をモニタするモニタ手段と、 モニタ結果が書き込まれる書込み手段とを具え、 前記アクタが、 前記ICカードからのレスポンスに応答して、前記書込み手段に書き込まれたモニタ結果を読み出す読出し手段と、 前記読出し手段によって読み出されたモニタ結果に応じて、前記ICカードに必要な処理を決定する処理決定手段 とを具えることを特徴とする管理システム。 という点では一致しており、 <相違点> ICカードがアクタから受け取る信号であって、その信号に応答して、モニタ手段がICカードの状態をモニタする契機となる信号が、本願発明においては「コマンド」であるのに対して、引用発明においては「リセット信号」である点。 で相違している。 6.判断 上記<相違点>について検討すると、 ICカードと外部装置からなるシステムにおいて、外部装置から、ICカードに対して「コマンド」という信号を与えICカードに何らかの処理を行わせることは、上記引用文献1(特に、段落【0002】における「ICカード内のメモリに対するアクセスを含めて、内蔵CPUに何らかの作業を行わせる場合には、外部装置からCPUに対して所定のコマンドが与える必要がある。内蔵CPUは、このコマンドを受信して、所定のコマンド処理ルーチン(通常は、ROM内に格納されている)を実行し、実行結果をレスポンスとして外部装置へ送信する。」という記載を参照。)、特開平9-179947号公報、特開平9-190515号公報、特開平9-231112号公報、及び「ISO/IEC 10536準拠非接触ICカード実装規約書」 平成10年2月、財団法人ニューメディア開発協会( http://www.nmda.or.jp/nmda/ic-card/iso10536/iccard.html)(特に、「4.7コマンド処理機能 」の項を参照。)に開示されているごとく周知であり、かつ、端末装置からICカードに対してメモリチェック命令を入力してメモリチェックを実行させることも特開平2-144644号公報(特に、第3頁左上欄第9行?左下欄第8行、を参照。)に開示されているごとく周知であるので、引用発明において、ICカードのモニタ手段にICカードの状態をモニタするように外部装置から与える信号として、「リセット信号」に代えて「コマンド」とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上の通りであるので、本願発明は、引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-28 |
結審通知日 | 2008-03-04 |
審決日 | 2008-03-17 |
出願番号 | 特願2001-102742(P2001-102742) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
P 1 8・ 574- Z (G06K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丹治 彰、安田 太 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
橋本 正弘 中里 裕正 |
発明の名称 | 管理システム及び方法 |
代理人 | 根岸 裕一 |
代理人 | 本山 泰 |