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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1177487
審判番号 不服2006-17659  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-11 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 特願2000-270275「免震建物用配管構造」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 81575〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成12年9月6日を出願日とする出願であって、平成18年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月11日に拒絶査定不服審判の請求がされたものであって、同年9月8日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「流体を供給するべく地盤側に配設された地盤側配管と、
地盤上に免震構造を介して設置された建物側に配設の建物側配管と、
その建物側配管と前記地盤側配管とを連通接続する接続管とを備えた免震建物用配管構造であって、
前記接続管が、可撓性を備えた一連の可撓管で構成され、
前記可撓管の一端側が、地盤側固定部により前記地盤側に固定され、他端側が、建物側固定部により前記建物側に固定されて、
前記地盤側固定部と建物側固定部との間に位置する前記可撓管が、その地盤側固定部と建物側固定部の間の全長にわたって、前記地盤側と建物側とに非固定状態ならびに非接触状態で、かつ、平面視においてほぼJの字状、Uの字状、または、円弧状に湾曲した状態に保持されるとともに、前記地盤側固定部と建物側固定部の間のほぼ全長にわたって保護用の被覆管で被覆され、
その被覆管の一端部が前記地盤側に固定され、他端部が前記建物側に固定されている免震建物用配管構造。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「湾曲した状態に保持されている免震建物用配管構造」を「湾曲した状態
に保持されるとともに、前記地盤側固定部と建物側固定部の間のほぼ全長にわたって保護用の被覆管で被覆され、
その被覆管の一端部が前記地盤側に固定され、他端部が前記建物側に固定されている免震建物用配管構造」に限定したものである。
したがって、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的にするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願平1-30282号(実開平2-120558号)のマイクロフィルム(以下「引用文献」という。)には、「免震建物の配管設備」と題して、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「本考案は、積層ゴム等の免震支承部材で支持された免震建物における給排水、ガス、及び消火管などの配管設備に関する。」(明細書1頁12?14行)

b)「本考案によれば、地震発生時に基礎部と建物間で変位が生じる場合、水平方向の変位については、可撓管継手の螺旋状をなす連続輪体の並び方が水平方向にずれるように変形し、全体がいわゆる横方向に伸びる。
また、鉛直方向の変位に関しては、可撓管継手の螺旋状をなす連続輪体の間隔が広がったり、狭まったりすることで対応する。」(同書4頁7?14行)

c)「第1図は本考案の免震建物の配管設備の1実施例を示す側面図で、図中4は基礎部、5はこの基礎部4に対し、ゴム板間に鉄板を介在させた積層ゴム6等の免震支承部材を介して支承される建物躯体である。
基礎部4からは外部に連通する基礎部側配管1端が、建物躯体5からは建物側配管2端が顕出し、これらは間隔を存して対向するが、これら基礎部側配管1と建物側配管2とを螺旋バネ状に曲成した可撓管継手7で連結するものとした。
可撓管継手7の形状をさらに説明すると、端部は中心に位置し、そこから大きく湾曲して連続輪体7aを形成する。なお、この連続輪体7aの数や相互間隔は適宜選定できる。」(同書4頁17行?5頁10行)

d)「図中、9は接合用のフランジを示す。
前記可撓管継手7は金属製、ゴム製、合成樹脂製など材質の如何を問わないが、少なくとも螺旋バネ状に曲成することで可撓を発揮できるものである。」(同書5頁16?20行)

e)第1?3図には、「可撓管継手7が一連の可撓管で構成され、前記可撓管の一端側が、基礎部側配管1端のフランジ9により基礎部側に固定され、他端側が、建物側配管2端のフランジに9より建物側に固定されていること」及び「基礎部側配管1端のフランジ9と建物側配管2端のフランジ9との間に位置する可撓管継手7が、その基礎部側配管1端のフランジ9と建物側配管2端のフランジ9間の全長にわたって、基礎部側と建物側とに非固定状態ならびに非接触状態で、かつ、螺旋バネ状に曲成した状態に保持されていること」が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献には次の発明が記載されていると認めることができる。
「給排水、ガスなどを供給するべく基礎部側に配設された基礎部側配管1と、
免震支承部材で支持された免震建物側に配設の建物側配管2と、
その建物側配管2と前記基礎側配管1とを連結する可撓管継手7とを備えた免震建物の配管設備であって、
前記可撓管継手7が、可撓を発揮できる一連の可撓管で構成され、
前記可撓管の一端側が、基礎部側配管1端のフランジ9により前記基礎部側に固定され、他端側が、建物側配管2端のフランジ9により前記建物側に固定されて、
基礎部側配管1端のフランジ9と建物側配管2端のフランジ9との間に位置する可撓管が、その基礎部側配管1端のフランジ9と建物側配管2端のフランジ9間の全長にわたって、前記基礎部側と建物側とに非固定状態ならびに非接触状態で、かつ、螺旋バネ状に曲成した状態に保持されている免震建物の配管設備。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、その機能・作用からみて、後者の「給排水、ガスなど」は前者の「流体」に相当し、以下同様に、「基礎部側」は「地盤側」に、「基礎部側配管1」は「地盤側配管」に、「免震支承部材で支持された免震建物」は「地盤上に免震構造を介して設置された建物」に、「連結する」は「連通接続する」に、「可撓管継手7」は「接続管」に、「免震建物の配管設備」は「免震建物用配管構造」に、「可撓を発揮できる」は「可撓性を備えた」に、「基礎部側配管1端のフランジ9」は「地盤側固定部」に、「建物側配管2端のフランジ9」は「建物側固定部」に、それぞれ相当する。
また、後者の「螺旋バネ状に曲成した状態」と前者の「平面視においてほぼJの字状、Uの字状、または、円弧状に湾曲した状態」とは、「平面視において湾曲した状態」という概念で共通している。

したがって、両者は、
「流体を供給するべく地盤側に配設された地盤側配管と、
地盤上に免震構造を介して設置された建物側に配設の建物側配管と、
その建物側配管と前記地盤側配管とを連通接続する接続管とを備えた免震建物用配管構造であって、
前記接続管が、可撓性を備えた一連の可撓管で構成され、
前記可撓管の一端側が、地盤側固定部により前記地盤側に固定され、他端側が、建物側固定部により前記建物側に固定されて、
前記地盤側固定部と建物側固定部との間に位置する前記可撓管が、その地盤側固定部と建物側固定部の間の全長にわたって、前記地盤側と建物側とに非固定状態ならびに非接触状態で、かつ、平面視において湾曲した状態に保持されている免震建物用配管構造。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
平面視において湾曲した状態に保持されている可撓管の形状に関して、本願補正発明では、「ほぼJの字状、Uの字状、または、円弧状」であるのに対し、引用発明では「螺旋バネ状」である点。

[相違点2]
可撓管に関して、本願補正発明では、「地盤側固定部と建物側固定部の間のほぼ全長にわたって保護用の被覆管で被覆され、その被覆管の一端部が前記地盤側に固定され、他端部が前記建物側に固定されている」構成であるのに対し、引用発明ではかかる構成を有していない点。

(4)判断
上記相違点1及び相違点2について以下検討する。

(4-1)相違点1について
引用発明における可撓管(可撓管継手7)は地震発生時に地盤側と建物側間で生じる変位を吸収する機能を有するものであり(上記「(2)」の「b)」参照)、また、可撓管の形状として、「Jの字状、Uの字状、または、円弧状」は通常用いられている形状に過ぎないから、引用発明において変位を吸収するという機能を発揮する範囲内で、可撓管の形状として上記通常用いられているものを採用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、単なる設計的事項に過ぎない。

(4-2)相違点2について
可撓管の技術分野において、可撓管をほぼ全長にわたって保護用の被覆管で被覆することは、例えば特開平7-197495号公報(【0003】、【0016】、【0026】、図1、2)、実願昭62-160156号(実開平1-63924号)のマイクロフィルム(明細書2頁4?7行、3頁12行?4頁6行、第2、3図)に開示されているように周知技術に過ぎないから、可撓管の保護のために、かかる周知技術を引用発明に適用するとともに、その際に、被覆管を適宜固定することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める。
「流体を供給するべく地盤側に配設された地盤側配管と、
地盤上に免震構造を介して設置された建物側に配設の建物側配管と、
その建物側配管と前記地盤側配管とを連通接続する接続管とを備えた免震建物用配管構造であって、
前記接続管が、可撓性を備えた一連の可撓管で構成され、
前記可撓管の一端側が、地盤側固定部により前記地盤側に固定され、他端側が、建物側固定部により前記建物側に固定されて、
前記地盤側固定部と建物側固定部との間に位置する前記可撓管が、その地盤側固定部と建物側固定部の間の全長にわたって、前記地盤側と建物側とに非固定状態ならびに非接触状態で、かつ、平面視においてほぼJの字状、Uの字状、または、円弧状に湾曲した状態に保持されている免震建物用配管構造。」(以下「本願発明」という。)

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「湾曲した状態に保持されている免震建物用配管構造」の「湾曲した状態に保持されるとともに、前記地盤側固定部と建物側固定部の間のほぼ全長にわたって保護用の被覆管で被覆され、
その被覆管の一端部が前記地盤側に固定され、他端部が前記建物側に固定されている免震建物用配管構造」への限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で挙げた相違点のうち[相違点1]のみとなる。
したがって、前記「2.(4)」での検討内容を踏まえれば、本願発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-04 
結審通知日 2008-03-06 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願2000-270275(P2000-270275)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 田良島 潔
米山 毅
発明の名称 免震建物用配管構造  
代理人 北村 修一郎  

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