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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F23G
管理番号 1178052
審判番号 無効2007-800120  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-25 
確定日 2008-04-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3909040号発明「可燃物の受け入れ供給方法およびその装置並びにガス化溶融システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3909040号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3909040号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。

平成15年 4月28日 特許出願。
平成19年 1月26日 特許権の設定登録(特許第3909040号、請 求項の数5)。
平成19年 6月25日 無効審判請求。
平成19年 9月14日 答弁書及び訂正請求書提出(*)。
平成19年12月 5日 第1回口頭審理。口頭審理陳述要領書提出(請求 人、被請求人)。
平成19年12月21日 無効理由通知。
平成20年 2月 4日 意見書及び訂正請求書提出。

*当該訂正の請求は、特許法第134条の2第4項の規定により取り下げ られたものとみなされる。

2.訂正請求について
(1)訂正請求の内容
被請求人が行った平成20年 2月4日付けの訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書に記載したとおりに、すなわち、次のa?zのとおりに訂正することを求めるものである。

訂正事項a
特許請求の範囲請求項1の「可燃物をガス化炉においてガス化し、」を「プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し、」と訂正する。

訂正事項b
特許請求の範囲請求項1の「ピットで受け入れた可燃物を移送する移送工程と;」を「前記ピットで受け入れた可燃物を移送する移送工程を備え、」とし、更に、「前記ピットは、可燃物を受け入れる受入部と、前記受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部であって平面的な配置が前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁と前記可燃物可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記ガス化炉に向かってこの順番で設けられて内部に仕切りを有さない構成であって;」と訂正する。

訂正事項c
特許請求の範囲請求項1の「前記移送工程によって移送された可燃物の全量を破砕し、該破砕された可燃物の全量を前記ピットに戻す破砕工程」を「更に、前記移送工程によって移送された可燃物の全量を、平面視において前記破砕可燃物貯留部と接する範囲内の前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数配置された破砕装置で破砕し、該破砕された可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕工程」と訂正する。

訂正事項d
特許請求の範囲請求項1の「前記ピットに戻された、破砕された可燃物をガス化炉に供給する供給工程」を「前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された、破砕された可燃物を、平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数の前記破砕装置のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機を経てガス化炉に供給する供給工程」と訂正する。

訂正事項e
特許請求の範囲請求項2の「前記ピットで受け入れた可燃物と、前記破砕工程により前記ピットに戻された可燃物とを、前期ピット内で仕切りを設けずに貯留する」を「前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、前記破砕工程により前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留し」と訂正する。

訂正事項f
特許請求の範囲請求項2の「請求項1に記載の可燃物の受け入れ供給方法。」の前に、「水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さい;」を追加する。

訂正事項g
特許請求の範囲請求項3の「可燃物をガス化炉においてガス化し」を「プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し」と訂正する。

訂正事項h
特許請求の範囲請求項3の「可燃物を受け入れるピット」を「可燃物を受け入れる受入部と、前記受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部であって平面的な配置が前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記ガス化炉に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さない前記ピット」と訂正する。

訂正事項i
特許請求の範囲請求項3の「前記ピットで受け入れた可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量を前記ピットに戻す破砕装置」を「平面視において前記破砕可燃物貯留部と接する範囲内の前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数配置され、前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕装置」と訂正する。

訂正事項j
特許請求の範囲請求項3の「前記ピットで受け入れた可燃物を全量破砕装置に移送し、更に、前記破砕装置で破砕され前記ピットに戻された可燃物をガス化炉に供給する供給装置」を「前記ピットで受け入れた可燃物を全量前記破砕装置に移送し、更に、前記破砕装置で破砕され前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物を、平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数の前記破砕装置のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機を経てガス化炉に供給する供給装置」と訂正する。

訂正事項k
特許請求の範囲請求項4を削除する。

訂正事項l
特許請求の範囲請求項5を請求項4に繰り上げ、請求項5の「請求項3又は請求項4に記載の可燃物の受け入れ供給装置と」を「請求項3に記載の可燃物の受け入れ供給装置と」と訂正する。

訂正事項m
発明の詳細な説明中段落【0011】の「可燃物をガス化炉80においてガス化し、」を「プラットフォーム16よりピット10に受け入れた可燃物をピット10を挟んでプラットフォーム16に相対する側に位置するガス化炉80においてガス化し、」と訂正する。

訂正事項n
同上段落【0011】の「例えば図1に示すように」を「例えば図1及び図2(b)に示すように」と訂正する。

訂正事項o
同上段落【0011】の「ピット10で受け入れた可燃物を移送する移送工程」を「ピット10で受け入れた可燃物を移送する移送工程を備え;ピット10は、可燃物を受け入れる受入部11と、受入部11から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部13と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部12であって平面的な配置がプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁と可燃物可燃物貯留部13とによって囲まれた破砕可燃物貯留部12と、がプラットフォーム16からガス化炉80に向かってこの順番で設けられて内部に仕切りを有さない構成であって」と訂正する。

訂正事項p
同上段落【0011】の「前記移送工程によって移送された可燃物の全量を破砕し、該破砕された可燃物の全量をピットに戻す破砕工程」を「更に、前記移送工程によって移送された可燃物の全量を、平面視において破砕可燃物貯留部12と接する範囲内のプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数配置された破砕装置32で破砕し、該破砕された可燃物の全量をピットの破砕可燃物貯留部12に戻す破砕工程」と訂正する。

訂正事項q
同上段落【0011】の「前記ピットに戻された破砕された可燃物をガス化炉80に供給する供給工程」を「前記ピットの前記破砕可燃物貯留部12に戻された破砕された可燃物を、平面視においてプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数の破砕装置32のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機62を経てガス化炉80に供給する供給工程」と訂正する。

訂正事項r
同上段落【0014】の「例えば図1に示すように」を「例えば図1及び図2(b)に示すように」と訂正する。

訂正事項s
同上段落【0014】の「ピット10で受け入れた可燃物と、前記破砕工程によりピット10に戻された可燃物とを、ピット10内で仕切りを設けずに貯留する。」を「ピット10の受入部11で受け入れて可燃物貯留部13に移送され貯留された可燃物と、前記破砕工程によりピット10の破砕可燃物貯留部12に戻された可燃物とを、ピット10内で仕切りを設けずに貯留し;水平投影面上の破砕可燃物貯留部12の面積が可燃物貯留部13の面積よりも小さい。」と訂正する。

訂正事項t
同上段落【0016】の「可燃物をガス化炉においてガス化し」を「プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物をピットを挟んでプラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し」と訂正する。

訂正事項u
同上段落【0016】の「例えば図1に示すように」を「例えば図1及び図2(b)に示すように」と訂正する。

訂正事項v
同上段落【0016】の「可燃物を受け入れるピット10」を「可燃物を受け入れる受入部11と、受入部11から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部13と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部12であって平面的な配置がプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁と可燃物貯留部13とによって囲まれた破砕可燃物貯留部12と、がプラットフォーム16からガス化炉80に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さないピット10」と訂正する。

訂正事項w
同上段落【0016】の「ピット10で受け入れた可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量を前記ピットに戻す破砕装置32」を「平面視において破砕可燃物貯留部12と接する範囲内のプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数配置され、ピット10の受入部11で受け入れて可燃物貯留部13に移送され貯留された可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量をピットの破砕可燃物貯留部12に戻す破砕装置32」と訂正する。

訂正事項x
同上段落【0016】の「ピット10で受け入れた可燃物を全量破砕装置32に移送し、更に、破砕装置32で破砕されピットに戻された可燃物をガス化炉80に供給する供給装置20」を「ピット10で受け入れた可燃物を全量破砕装置32に移送し、更に、破砕装置32で破砕されピットの破砕可燃物貯留部12に戻された可燃物を、平面視においてプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数の破砕装置32のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機62を経てガス化炉80に供給する供給装置20」と訂正する。

訂正事項y
同上段落【0018】の「また、請求項4に記載の発明に係る、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給装置は、例えば図1に示すように、ピット10で受け入れた可燃物と、破砕装置32で破砕されピット10に戻された可燃物とを、ピット10内で仕切りを設けずに貯留する。」を「上述のように、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給装置は、例えば図1に示すように、ピット10の受入部11で受け入れて可燃物貯留部13に移送され貯留された可燃物と、破砕装置32で破砕されピット10の破砕可燃物貯留部12に戻された可燃物とを、ピット10内で仕切りを設けずに貯留する。」と訂正する。

訂正事項z
同上段落【0020】の「請求項5に記載の発明に係るガス化溶融システムは、例えば図3に示すように、請求項3又は請求項4に記載の可燃物の受け入れ供給装置と」を「請求項4に記載の発明に係るガス化溶融システムは、例えば図3に示すように、請求項3に記載の可燃物の受け入れ供給装置と」と訂正する。

(2)訂正の適否
訂正事項aは、特許明細書段落【0023】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、ガス化炉におけるガス化に至る方法を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項bは、特許明細書段落【0023】、【0033】、【0035】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、移送工程について、限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項cは、特許明細書段落【0024】、【0033】、【0036】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、破砕工程について限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項dは、特許明細書段落【0027】、【0032】、【0040】、【0043】、【0045】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、供給工程について限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項eは、特許明細書段落【0023】の記載に基づき、貯留の態様について、限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項fは、【図2】(b)の記載に基づき、貯留の態様について、限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項gは、特許明細書段落【0023】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、ガス化炉におけるガス化に至る態様を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項hは、特許明細書段落【0023】、【0033】及び【図1】、【図2】(b)の記載に基づき、ピットについて、限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項iは、特許明細書段落【0024】、【0033】、【0035】、【0036】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、破砕装置について、限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項jは、特許明細書段落【0027】、【0032】、【0033】、【0036】、【0040】、【0043】、【0045】、【0046】及び【図1】、【図2】の記載に基づき、供給装置について、限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項kは、特許請求の範囲の請求項を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項lは、引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項m、o、p、qは、特許請求の範囲請求項1の訂正である各訂正事項に伴い、発明の詳細な説明を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項nは、訂正後の請求項1の発明との整合を図るために、参照図面を変更するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項rは、訂正後の請求項2の発明との整合を図るために、参照図面を変更するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項sは、訂正後の請求項2の発明との整合を図るために行うものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項t、v、w、xは、訂正後の請求項3の発明との整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項uは、訂正後の請求項3の発明との整合を図るために、参照図面を変更するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項yは、特許請求の範囲の訂正である訂正事項kに伴って、発明の詳細な説明を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項zは、訂正後の請求項4の発明との整合を図るために、発明の詳細な説明を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

そして、上記訂正事項a?zは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書及び同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
訂正後の本件請求項1?4に係る発明は、訂正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。)。

「【請求項1】プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給方法において;
前記ピットで受け入れた可燃物を移送する移送工程を備え、
前記ピットは、可燃物を受け入れる受入部と、前記受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部であって平面的な配置が前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記ガス化炉に向かってこの順番で設けられて内部に仕切りを有さない構成であって;
更に、前記移送工程によって移送された可燃物の全量を、平面視において前記破砕可燃物貯留部と接する範囲内の前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数配置された破砕装置で破砕し、該破砕された可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕工程と;
前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された、破砕された可燃物を、平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数の前記破砕装置のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機を経てガス化炉に供給する供給工程とを備える;
可燃物の受け入れ供給方法。
【請求項2】 前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、前記破砕工程により前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留し;
水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さい;請求項1に記載の可燃物の受け入れ供給方法。
【請求項3】プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる受け入れ供給装置において;
可燃物を受け入れる受入部と、前記受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部であって平面的な配置が前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記ガス化炉に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さない前記ピットと;
平面視において前記破砕可燃物貯留部と接する範囲内の前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数配置され、前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕装置と;
前記ピットで受け入れた可燃物を全量前記破砕装置に移送し、更に、前記破砕装置で破砕され前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物を、平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数の前記破砕装置のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機を経てガス化炉に供給する供給装置とを備える;
可燃物の受け入れ供給装置。
【請求項4】 請求項3に記載の可燃物の受け入れ供給装置と;
前記可燃物の受け入れ供給装置から供給された可燃物を熱分解してガスと灰分を生成するガス化炉と;
前記生成したガスと灰分を燃焼することにより前記灰分を溶融する溶融炉とを備えた;
ガス化溶融システム。」

4.両当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、無効とすべきであると主張し、証拠として、次の甲第1号証ないし甲第6号証を提示した。

甲第1号証:資源環境対策、Vol38、No.14(2002)、毛利直 克・丹羽智明、「恵南クリーンセンターあおぞら」、p61? 64
甲第2号証:ガス化溶融炉事例シンポジウム(講演論文集)、平成13年4 月19日、(社)日本粉体工業技術協会流動化分科会、p48 ?51。
甲第3号証:環境施設、No.89、平成14年9月1日発行、公共投資ジ ャーナル社発行、全量破砕で圧密化・旋回燃焼等で後段負荷を 大幅低減(瑞浪市クリーンセンター)、p72?76。
甲第4号証:資源環境対策、Vol38、No14(2002)、ガス化溶 融炉の実力瑞浪市クリーンセンター(株)川崎技研、p57? 60。
甲第5号証:特開2002-276925号公報
甲第6号証:石川禎昭、流動床式ごみ焼却炉設計の実務、昭和62年6月1 5日初版発行、p36?53。

(2)被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件訂正発明は、進歩性を有するから、無効とされるものではない旨主張している。

5.当審の判断
当審において、審判請求時の証拠に加え、請求人からその後提出された甲第7号証(特開2001-349517号公報)を職権で採用の上、本件発明1ないし4は、本件出願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とすべきであるとの無効理由を通知した。

(1)本件発明
本件発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求の範囲請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである(前記「3.」参照。)。

(2)刊行物記載の発明
ア 本件出願の出願前に頒布された刊行物である刊行物1(請求人が提示し た甲第2号証)には、次の事項が記載されている。

・「酸素式熱分解直接溶融システムによる一般ごみと他の廃棄物(燃焼不適物)の混焼試験」

・「2、研究施設のシステムフロー 図-1にシステムフローを示す。一般ごみは通常のごみ収集ルートで共同研究施設(以下「施設」と言う)のごみピットに搬入され、ごみピットの投入側に貯留される。貯留されているごみは、ごみクレーンでごみ受入れホッパを経由して破砕機で粗破砕され再びごみピットの反投入側に一時貯留され適宜破砕ごみホッパに投入される。」(第48頁中段)

・図-1の記載によると、「ごみピット」内の、ごみ収集室側に生ごみを、ガス燃焼炉側に破砕ごみを貯留するものであり、「ごみピット」内に、仕切りを設けるとの記載は見あたらない。

・図-1からみて、ごみ収集室では、プラットフォームからごみを投入しているものと理解できる。

・また、破砕ごみが、磁選機により磁性物が除去されるのは、破砕ごみホッパに投入された後であるから、磁性物を除去していないごみ、すなわち、投入された一般ごみ(生ごみ)を全量破砕機に移送し、破砕されたごみを、全量ごみピットに一時貯留しているものと理解できる。

なお、この点について、被請求人は、平成20年 2月 4日付け意見書において、「刊行物1記載の発明では、ピットに投入された可燃物の全量を破砕しているとは明確に開示されていない」(第7頁第20?22行)と主張しているが、前記のとおり、技術常識からみて、可燃物の全量を破砕しているものと認められることから、前記主張は、採用できない。

上記記載、及び図面から、刊行物1には、
「プラットフォームよりごみピットに受け入れた一般ごみ(生ごみ)を、前記ごみピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置する直接溶融炉に供給し、該炉においてガス化し溶融させる、熱分解直接溶融システムに用いられる一般ごみ(生ごみ)の受け入れ供給方法において;
前記ごみピットで受け入れた一般ごみ(生ごみ)を破砕機に移送する工程を備え;
前記ごみピットは、一般ごみ(生ごみ)を受け入れ貯留する部位と、破砕機で粗破砕された一般ごみ(生ごみ)を、ごみピットの反投入側に一時貯留する部位と、が前記プラットホームから直接溶融炉に向かってこの順番に設けられて、内部に仕切りを有さない構成であって、
更に、前記移送する工程によって移送された一般ごみ(生ごみ)の全量を、前記プラットフォームに相対する側の前記ごみピットの外側に配置された破砕機で破砕し、該破砕された破砕ごみの全量を前記ごみピットの一時貯留する部位に戻す工程と、
前記ごみピットの前記一時貯留する部位に戻された、破砕ごみを、前記プラットフォームに相対する側の前記ごみピットの外側に配置された給じん装置を経て直接溶融炉に供給する工程;とを備える一般ごみ(生ごみ)の受け入れ供給方法」(以下「刊行物1記載の発明A」という。)
及び
「プラットフォームよりごみピットに受け入れた一般ごみ(生ごみ)を前記ごみピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置する直接溶融炉に供給し、該炉おいてガス化し溶融させる、熱分解直接溶融システムに用いられる受け入れ供給装置において;
一般ごみ(生ごみ)を受け入れ貯留する部位と、破砕された前記一般ごみ(生ごみ)を一時貯留する部位と、が前記プラットフォームから前記直接溶融炉に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さないごみピットと;
平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ごみピットの外側に配置され、前記ごみピットの受け入れ貯留する部位で受け入れた一般ごみ(生ごみ)を破砕し、破砕した一般ごみ(生ごみ)の全量を前記ごみピットの破砕ごみを一時貯留する部位に戻す破砕機と;
前記ごみピットで受け入れた一般ごみ(生ごみ)を全量前記破砕機に移送し、更に、前記破砕機で破砕され前記ごみピットの前記一時貯留する部位に戻された破砕ごみを、前記プラットフォームに相対する側の前記ごみピットの外側に配置された給じん装置を経て直接溶融炉に供給する供給装置とを備える;
一般ごみ(生ごみ)の受け入れ供給装置。」(以下「刊行物1記載の発明B」という。)
が記載されている。

イ また、刊行物2:特開2001-349517号公報(請求人の提示した「甲第7号証」)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「この廃棄物処理システム1は、例えば、図8の系統図に示すように、都市ごみ等の可燃物を含む廃棄物aは、ごみクレーン2によりごみホッパー3に投入され、廃棄物破砕機4で適当な大きさに破砕され、破砕廃棄物a’として横型回転ドラム式(ロータリキルン式)の熱分解反応炉5に供給される。
供給された破砕廃棄物a’は空気を遮断された低酸素濃度雰囲気の熱分解反応炉5内で、高温空気加熱器7からラインL1 を経て供給される加熱空気Ahにより、450℃程度に加熱されて、熱分解ガス(乾留ガス)Gdと主として不揮発性成分からなる熱分解残留物cとに熱分解される。・・・(中略)・・・
そして、この熱分解によって発生する熱分解ガスGdはラインL3 を経て燃焼溶融炉6のバーナ6aに供給される。
一方、熱分解反応炉5で熱分解ガスGdと分離されて排出される熱分解残留物cは、冷却装置(冷却ドラム)10に供給され、例えば80℃程度まで冷却された後、分離装置11に送られ、主としてカーボンの如き可燃物eと例えば金属や陶器等のガレキよりなる不燃物dとに分別される。
この不燃物dはコンテナ12に収集され、一方、可燃物eは粉砕機13で微粉に粉砕されて微粉可燃物e1 としてラインL9 経由で燃焼溶融炉6のバーナ6aに供給される。
この燃焼溶融炉6では、ラインL3 から供給される熱分解ガスGdとラインL9 から供給される微粉可燃物e1 が、押込送風機14によりラインL10から供給される燃焼用空気Acにより約1,300℃程度で高温燃焼する。」(段落【0003】?【0009】)

・「そして、この廃棄物処理システム1においては、図1?図8に示す如く、ごみピット30が設けられ、このごみピット30に隣接して、ごみピット30内に貯留された廃棄物aを破砕して、廃棄物処理装置(熱分解反応炉)5に供給する複数の供給ラインPa,Pb,Pcが設けられる。
この供給ラインPa,Pb,Pcは、破砕廃棄物a’を熱分解反応炉5等の廃棄物処理装置に供給する。」(段落【0034】、【0035】)

・「この供給ラインPa,Pb,Pcの各々には、図1、図4に示すように、ベルトコンベヤ61を備えた定量供給装置60が配設され、この定量供給装置60の上部に、廃棄物aを破砕する常用廃棄物破砕機4a,4b,4cが各1台設けられ、また、予備の投入通路Qa,Qb,Qcがそれぞれ設けられる。
なお、このベルトコンベヤ61には、溜り部Tを設け、この溜り部Tに破砕廃棄物a’を滞留させることにより、例えば5分?10分間程供給が一時停止しても連続供給できるように形成し、破砕廃棄物a’をより安定して連続的に熱分解反応炉5に供給できるように構成する。」(段落【0036】、【0037】)

・「なお、第2のごみピット32を改めて設けたり、仕切り壁35を設ける余裕のない場合には、図7に示すように、ごみピット30の一部分を破砕廃棄物a’の貯留場所と決めて、この貯留場所RAに破砕廃棄物a’を貯留することもできる。但し、この場合には破砕前の廃棄物aの混入の恐れが生じる。
以上の構成の廃棄物の破砕供給システムにおいては、パッカー車等の廃棄物運搬車両50で運搬されてくる廃棄物aは、ごみピット30に投入され貯留され、その後クレーン2により、各供給ラインPa,Pb,Pc経由で廃棄物処理装置である熱分解反応炉5に搬送される。」(段落【0042】、【0043】)

・図1、6、7の記載からみて、水平投影面上の破砕廃棄物a’の面積が破砕前廃棄物aの面積よりも小さいことが把握できる。

・図7の記載から、破砕装置4Aが、破砕廃棄物a’貯留部に戻された破砕廃棄物a’を熱分解反応炉5に移送する供給ラインPa?Pcの隣りに、破砕廃棄物a’貯留部の壁に沿って設置されているものと理解できる。

以上の記載及び図面から、刊行物2には、
「廃棄物運搬車50等で搬入された廃棄物aをごみピット30内に貯留し、廃棄物破砕機4により破砕処理した破砕廃棄物a’を供給ラインPにより熱分解反応炉5に連続的に供給し、灰分を燃焼溶融炉6で高温燃焼して溶融する廃棄物処理システム1において、
1)廃棄物aを受け入れる場所と破砕廃棄物a’の貯留場所(RA)とが廃棄物運搬車50の搬入場所から熱分解反応炉5に向かってこの順番で設けられて内部に仕切り壁を設けないピット、
2)水平投影面上の破砕廃棄物a’の面積が破砕前廃棄物aの面積よりも小さいこと、
3)破砕機4Aと供給ラインPとは破砕廃棄物a’貯留部の壁に沿って設置されていること、
4)破砕廃棄物a’の溜まり部を設け、破砕廃棄物a’を熱分解反応炉5に、安定して連続的に供給すること、
5)平面視において、ごみピット30の廃棄物搬入部50と相対する側の該ピット壁面に沿って、破砕前廃棄物a及び破砕廃棄物a’と接する範囲内で、複数の廃棄物破砕機4a?c、4A及び供給ラインPa?cを配置すること。」(以下「刊行物2記載の発明」という。)
が記載されている。

(3)対比・判断
[本件発明1について]
本件発明1(前者)と刊行物1記載の発明A(後者)とを対比する。

後者の「一般ごみ(生ごみ)」及び「破砕ごみ」は前者の「可燃物」に相当し、以下同様に、「ごみピット」は「ピット」に、「熱分解直接溶融システム」は「高温燃焼により溶融させるガス化溶融システム」に、「受け入れ貯留する部位」は「受入部」に、「一時貯留する」は「一旦貯留する」に、「一時貯留する部位」は「破砕可燃物貯留部」に、「破砕機」は「破砕装置」に、「破砕機に移送する工程」は「破砕装置に移送する移送工程」に、「一時貯留する部位に戻す工程」は「破砕可燃物貯留部に戻す破砕工程」に、「給じん装置」は「給塵機」に、それぞれ、相当している。

したがって、両者は、
「プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置する炉においてガス化し、高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給方法において、
前記ピットで受け入れた可燃物を移送する移送工程を備え;
前記ピットは、可燃物を受け入れる受入部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部と、が前記プラットホフォームから前記炉に向かってこの順番で設けられて内部に仕切りを有さない構成であって;
更に、前記移送工程によって移送された可燃物の全量を、前記ピットの外側に配置された破砕装置で破砕し、該破砕装置で破砕された可燃物の全量を前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕工程と;
前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された、破砕された可燃物を、前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの外側に配置された給塵機を経て炉に供給する供給工程とを備える;可燃物の受け入れ供給方法。」の点で一致し、次のa?cの点で相違する。

相違点a
本件発明1は、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムであり、破砕された可燃物をガス化炉に供給するものであるのに対し、刊行物1記載の発明Aは、可燃物を直接溶融炉において溶融させる熱分解溶融システムであり、破砕された可燃物を直接溶融炉に供給するものである点。

相違点b
本件発明1において、ピットは、受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部を設け、平面的な配置がプラットフォームに相対する側のピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部とを設け、プラットフォームから炉に向かって、受入部、可燃物貯留部、破砕可燃物貯留部の順に設けるのに対し、刊行物1記載の発明Aにおいて、ピットは、可燃物貯留部を設けるか否か不明である点。

相違点c
本件発明1では、平面視において破砕可燃物貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピットの壁面に沿って破砕装置を複数配置するとともに、該破砕装置のそれぞれを挟んで給塵機を配置するものであるのに対し、刊行物1記載の発明Aでは、破砕装置及び給塵機を複数配置する点は、不明である点。

上記相違点について検討する。
まず、相違点aについて検討する。
廃棄物の溶融システムにおいて、ガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるものは、本件出願前、周知の技術(例えば、甲第1号証として提示された、資源環境対策、Vol38、No.14 2002年11月10日、株式会社環境コミュニケーションズ発行、毛利直克・丹羽智明、「恵南クリーンセンターあおぞら」、p61?64、刊行物2記載の発明、参照。)である。

そうすると、刊行物1記載の発明Aにおいて、可燃物を直接溶融炉において溶融させる熱分解溶融システムであって、破砕された可燃物を直接溶融炉に供給するものに代えて、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムであって、破砕された可燃物をガス化炉に供給するものとした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点bについて検討する。
ごみピットにおいて、受け入れたごみの高さを均すため、プラットフォームの反対側に移送し、可燃物の貯留部を設けることは、従来周知の技術である(例えば、特開2000-344462号公報、特開平9-217916号公報参照。)。

そして、受け入れたごみは、何もしなければ受け入れ部位で貯留することになり、支障を来すことになるから、新たなごみの搬入に備え、受け入れ部位と反対側に移送することは、当業者であれば、容易に想到し得ることである。
また、 平面的な配置をプラットフォームに相対する側のピットの壁と前記可燃物貯留部とによって破砕可燃物貯留部が囲まれたものとする点に格別の技術的意義は、認められない。

この点について、被請求人は、1)「この点について、受入部にダンプされた可燃物は、・・・のに対し、可燃物貯留部に移送される積み直されて貯留される可燃物は崩れにくくなります。このため、ピットの内部に仕切りを有さなくても、・・・、安定な連続操業を継続させることができるようになります。」(平成19年12月 5日付け口頭審理陳述要領書第2頁第16?24行)、2)「これに対し本件訂正発明1は、・・・(中略)・・・、ピットの内部に仕切りを有さなくても、可燃物貯留部に移送されて貯留された可燃物が仕切り壁の役割をなし、受入部にダンプされた可燃物と破砕可燃物貯留部に貯留された可燃物可燃物とが混じり合うことがなく、安定な連続操業を継続させることができるものです。・・・破砕前の可燃物が仕切り壁の役割をなすようにしています。」(平成20年 2月 4日付け意見書第9頁第3?15行)と主張している。

しかし、本件発明1において、可燃物貯留部に貯留された可燃物は、破砕前のものであり、破砕ごみと混じることを防止するためには、仕切り壁の設置が必要なことは、明らかであり(【図1】参照。)、被請求人も認めているところである(訂正明細書段落【0040】)。

そして、受入部にダンプされた可燃物との混じり合いを防止することについて、前記「1)」で述べるような効果は、特許明細書に記載はなく、示唆もない。また、可燃物の積み替えを行うことは、前記のとおり従来周知の技術であり、該効果は、これを採用することに伴い、奏される程度のものである。
加えて、ピットスペースにおいて可燃物貯留部を設けることは、ピットスペースが広い場合、自然に形成される程度のものである。したがって、被請求人の前記主張は、採用できない。

そうすると、刊行物1記載の発明Aにおいて、受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部を設け、平面的な配置がプラットフォームに相対する側のピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部とを設け、プラットフォームから炉に向かって、受入部、可燃物貯留部、破砕可燃物貯留部の順に設けるものとした点は、周知技術に基づき、必要に応じて、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、相違点cについて検討する。
刊行物2記載の発明は、平面視において可燃物(「破砕前廃棄物a及び破砕廃棄物a’」として記載。)の貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピッチの壁面で平面視において破砕可燃物貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピット(「ごみピット30」)の壁面に沿って破砕装置(「4a?c、4A」)を複数配置するとともに、給塵機(「Pa?c」)を配置するものである。

そして、刊行物2記載の発明は、刊行物1記載の発明Aと同様、廃棄物の受け入れ供給に関するものである。

また、破砕可燃物を供給する必要量が大きければ、設置台数を増やすこと、材料供給の動線を小さいものとするため、可燃物に近接して破砕装置を設けること、は当業者であれば、通常発揮し得る創作能力の範囲内のものであり、複数の装置を並列に設けて設置面積を減少する程度のことも当業者が容易に想到し得ることである。

そうすると、刊行物1記載の発明Aにおいて、平面視において破砕可燃物貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピットの壁面に沿って破砕装置を複数配置するとともに、該破砕装置のそれぞれを挟んで給塵機を配置するものとした点は、刊行物2記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本件発明1の奏する作用効果全体をみても、刊行物1記載の発明A、刊行物2記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明A、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[本件発明2について]
本件発明2は、本件発明1に、「前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、前記破砕工程により前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留し;
水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さい;」との限定を付したものである。

したがって、本件発明2と刊行物1記載の発明Aとを対比すると、両者は、前記相違点a?cに加えて、次の点dで相違する。

相違点d
本件発明2では、1)ピットの受入部で受け入れて可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、破砕工程により前記ピットの破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留し;2)水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さいものとしているのに対し、刊行物1記載の発明Aでは、ピット(「ごみピット」)の受入部(「受け入れ貯留する部位」)で受け入れた可燃物(「一般ごみ(生ごみ)」)と、破砕工程(「破砕機で破砕し、」)により破砕可燃物貯留部(「(破砕ごみを)一時貯留する部位」)に戻された可燃物とを、ピット内で仕切りを設けずに貯留するものであって、前記「2)」の特定事項を具備するものとはいえない点。

相違点a?cについては、既に、[本件発明1について]で検討したので、相違点dについて検討する。

前記したように、ごみピットにおいて、受け入れたごみの高さを均すため、プラットフォームの反対側に移送し、可燃物の貯留部を設けることは、本件出願前、周知の技術である


刊行物1記載の発明Aは、前記のとおり、ピット内に仕切りを設けないで、可燃物(「一般ごみ(生ごみ)」)及び破砕可燃物(「破砕ごみ」)を貯留するものであるから、ピットの受入部で受け入れて可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、破砕工程により前記ピットの破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留した点は、可燃物貯留部を設けるようにすれば、そのことに伴い、当然にもたらされるものであって、格別の構成とはいえない。

そして、破砕可燃物の面積と可燃物貯留部の面積とをどのような比率とするかは、ピットの面積、ごみの性状等に応じ、当業者が適宜設定し得る設計的事項である。

この点について、被請求人は、「本件訂正発明2は、水平投影面上の破砕可燃物貯留部の面積が可燃物貯留部の面積よりも小さくなるようにすることにより、破砕された可燃物を破砕可燃物貯留部に貯留しているタイムスパンを短くし、破砕された可燃物が時間経過に伴い自重で圧密化されるのを防ぎ、・・・できるものです。・・・(中略)・・・到底いうことができません。」(平成20年 2月 4日付け意見書第12頁第13?25行)と主張している。

しかしながら、このような作用効果は、特許明細書及び図面に記載されたものではない。また、自重で圧密化される度合いと破砕可燃物貯留部の可燃物貯留部との占有面積の大小とは、何の関係もない。

さらに、本件発明は、破砕可燃物貯留部を設けることにより、安定した操業を継続させることを前提とした技術であり、該貯留部を設けた場合、自重で圧密化されるという課題を内包するものである。したがって、その面積をどの程度とするかは、相反する要請に対し、必要に応じ、当業者が適宜設計すべき事項といえる。よって、前記被請求人の主張は、採用できない。

したがって、刊行物1記載の発明Aにおいて、ピットの受入部で受け入れて可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、破砕工程により前記ピットの破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留し;水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さいものとし水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さいものとした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

以上のとおりであるから、本件発明2は、刊行物1記載の発明A、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[本件発明3について]
本件発明3(前者)と刊行物1記載の発明B(後者)とを対比する。

後者の「ごみピット」は前者の「ピット」に相当し、以下同様に、「一般ごみ(生ごみ)」及び「破砕ごみ」は「可燃物」に、「熱分解直接溶融システム」は「高温燃焼により溶融させるガス化溶融システム」に、「受け入れ貯留する部位」は「受入部」に、「一時貯留する」は「一旦貯留する」に、「一時貯留する部位」は「破砕可燃物貯留部」に、「破砕機」は「破砕装置」に、「給じん装置」は「給塵機」に、それぞれ、相当している。

したがって、両者は、
「プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置する炉においてガス化し、高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる受け入れ供給装置において、
可燃物を受け入れる受入部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記炉に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さない前記ピットと;
前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの外側に配置され、前記ピットの前記受入部で受け入れて貯留された可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕装置と;
前記ピットで受け入れた可燃物を全量前記破砕装置に移送し、更に、前記破砕装置で破砕され前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物を、前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの外側に配置された給塵機を経て炉に供給する供給装置とを備える;
可燃物の受け入れ供給装置。」の点で一致し、次のa’?c’の点で相違する。

相違点a’
本件発明3は、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられるものであって、破砕された可燃物をガス化炉に供給するものであるのに対し、刊行物1記載の発明Bは、可燃物を直接溶融炉において溶融させる熱分解溶融システムであり、破砕された可燃物を直接溶融炉に供給するものである点。

相違点b’
本件発明3において、ピットは、受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部を設け、平面的な配置がプラットフォームに相対する側のピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部とを設け、プラットフォームから炉に向かって、受入部、可燃物貯留部、破砕可燃物貯留部の順に設けるのに対し、刊行物1記載の発明Bにおいて、ピットは、可燃物貯留部を設けるものとはいえない点。

相違点c’
本件発明3では、平面視において破砕可燃物貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピットの壁面に沿って破砕装置を複数配置するとともに、該破砕装置のそれぞれを挟んで給塵機を配置するものであるのに対し、刊行物1記載の発明Bでは、破砕装置及び給塵機を複数配置する点は、不明である点。

上記相違点a’?c’について検討する。

まず、相違点a’について検討する。
廃棄物の溶融システムにおいて、ガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるものは、本件出願前、周知の技術(例えば、甲第1号証として提示された、資源環境対策、Vol38、No.14 2002年11月10日、株式会社環境コミュニケーションズ発行、毛利直克・丹羽智明、「恵南クリーンセンターあおぞら」、p61?64、刊行物2記載の発明、参照。)である。

そうすると、刊行物1記載の発明Bにおいて、可燃物を直接溶融炉において溶融させる熱分解溶融システムに用いられ、破砕された可燃物を直接溶融炉に供給するものに代えて、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられ、破砕された可燃物をガス化炉に供給するものとした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点b’について検討する。
ごみピットにおいて、受入れたごみを、プラットフォームの反対側に移送することは、従来周知の技術である(例えば、特開2000-344462号公報、特開平9-217916号公報参照。)。

そして、受け入れたごみは、何もしなければその部位で貯留することになり、支障を来すことになるから、新たなごみの搬入に備え、受け入れ部位と反対側にごみを移送することは、当業者であれば、容易に想到し得ることである。

この点について、被請求人は、1)「この点について、受入部にダンプされた可燃物は、・・・のに対し、可燃物貯留部に移送される積み直されて貯留される可燃物は崩れにくくなります。このため、ピットの内部に仕切りを有さなくても、・・・、安定な連続操業を継続させることができるようになります。」(平成19年12月 5日付け口頭審理陳述要領書第2頁第16?24行)、2)「これに対し本件訂正発明1は、・・・(中略)・・・、ピットの内部に仕切りを有さなくても、可燃物貯留部に移送されて貯留された可燃物が仕切り壁の役割をなし、受入部にダンプされた可燃物と破砕可燃物貯留部に貯留された可燃物可燃物とが混じり合うことがなく、安定な連続操業を継続させることができるものです。・・・破砕前の可燃物が仕切り壁の役割をなすようにしています。」(平成20年 2月 4日付け意見書第9頁第3?15行)と主張している。

しかし、本件発明3において、可燃物貯留部に貯留された可燃物は、破砕前のものであり、破砕ごみと混じることを防止するためには、仕切り壁の設置が必要なことは、明らかであり(【図1】参照。)、被請求人も認めているところである(訂正明細書段落【0040】)。

そして、受入部にダンプされた可燃物との混じり合いを防止することについて、前記「1)」で述べるような効果は、特許明細書に記載はなく、示唆もない。また、可燃物の積み替えを行うことは、前記のとおり従来周知の技術であり、該効果は、これを採用することに伴い、奏される程度のものである。
加えて、ピットスペースにおいて可燃物貯留部を設けることは、ピットスペースが広い場合、自然に形成される程度のものである。したがって、被請求人の前記主張は、採用できない。

そうすると、刊行物1記載の発明Bにおいて、受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部を設け、平面的な配置がプラットフォームに相対する側のピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部とを設け、プラットフォームから炉に向かって、受入部、可燃物貯留部、破砕可燃物貯留部の順に設けるものとした点は、周知技術に基づき、必要に応じて、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、相違点c’について検討する。
刊行物2記載の発明は、平面視において可燃物(「破砕前廃棄物a及び破砕廃棄物a’」として記載。)の貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピッチの壁面で平面視において破砕可燃物貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピット(「ごみピット30」)の壁面に沿って破砕装置(「4a?c、4A」)を複数配置するとともに、給塵機(「Pa?c」)を配置するものである。

そして、刊行物2記載の発明は、刊行物1記載の発明Bと同様、廃棄物の受け入れ供給に関するものである。

また、破砕可燃物を供給する必要量が大きければ、設置台数を増やすこと、材料供給の動線を小さいものとするため、可燃物に近接して破砕装置を設けること、は当業者であれば、通常発揮し得る創作能力の範囲内のものであり、複数の装置を並列に設けて設置面積を減少する程度のことも当業者が容易に想到し得ることである。

そうすると、刊行物1記載の発明Bにおいて、平面視において破砕可燃物貯留部と接する範囲内のプラットフォームに相対する側のピットの壁面に沿って破砕装置を複数配置するとともに、該破砕装置のそれぞれを挟んで給塵機を配置するものとした点は、刊行物2記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本件発明3の奏する作用効果を全体としてみても、刊行物1記載の発明B、刊行物2記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件発明3は、刊行物1記載の発明B、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[本件発明4について]
本件発明4は、本件発明3と、「可燃物の受け入れ供給装置から供給された可燃物を熱分解してガスと灰分を生成するガス化炉と;前記生成したガスと灰分を燃焼することにより前記灰分を溶融する溶融炉とを備えた;ガス化溶融システム」としたものである。

しかし、先に示したとおり、可燃物を熱分解してガスと配分を生成するガス化炉と、生成したガスと灰分を燃焼することに灰分を溶融する溶融炉とを備えるガス化溶融システムは、従来周知である。

したがって、本件発明4は、刊行物1記載の発明B、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本件発明1ないし4は、刊行物1記載の発明A、刊行物1記載の発明B、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

審判費用の負担については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
可燃物の受け入れ供給方法およびその装置並びにガス化溶融システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給方法において;
前記ピットで受け入れた可燃物を移送する移送工程を備え;
前記ピットは、可燃物を受け入れる受入部と、前記受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部であって平面的な配置が前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記ガス化炉に向かってこの順番で設けられて内部に仕切りを有さない構成であって;
更に、前記移送工程によって移送された可燃物の全量を、平面視において前記破砕可燃物貯留部と接する範囲内の前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数配置された破砕装置で破砕し、該破砕された可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕工程と;
前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された、破砕された可燃物を、平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数の前記破砕装置のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機を経てガス化炉に供給する供給工程とを備える;
可燃物の受け入れ供給方法。
【請求項2】前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物と、前記破砕工程により前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物とを、前記ピット内で仕切りを設けずに貯留し;
水平投影面上の前記破砕可燃物貯留部の面積が前記可燃物貯留部の面積よりも小さい;
請求項1に記載の可燃物の受け入れ供給方法。
【請求項3】プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物を前記ピットを挟んで前記プラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる受け入れ供給装置において;
可燃物を受け入れる受入部と、前記受入部から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部であって平面的な配置が前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁と前記可燃物貯留部とによって囲まれた破砕可燃物貯留部と、が前記プラットフォームから前記ガス化炉に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さない前記ピットと;
平面視において前記破砕可燃物貯留部と接する範囲内の前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数配置され、前記ピットの前記受入部で受け入れて前記可燃物貯留部に移送され貯留された可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量を前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻す破砕装置と;
前記ピットで受け入れた可燃物を全量前記破砕装置に移送し、更に、前記破砕装置で破砕され前記ピットの前記破砕可燃物貯留部に戻された可燃物を、平面視において前記プラットフォームに相対する側の前記ピットの壁面に沿って前記ピットの外側に複数の前記破砕装置のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機を経てガス化炉に供給する供給装置とを備える;
可燃物の受け入れ供給装置。
【請求項4】請求項3に記載の可燃物の受け入れ供給装置と;
前記可燃物の受け入れ供給装置から供給された可燃物を熱分解してガスと灰分を生成するガス化炉と;
前記生成したガスと灰分を燃焼することにより前記灰分を溶融する溶融炉とを備えた;
ガス化溶融システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物或いは、バイオマスといった可燃物をガス化し、生成したガスとチャー(固定炭素)を溶融炉へ送り高温で燃焼させ、灰分を溶融するガス化溶融システムの可燃物の受け入れ供給に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市ごみや産業廃棄物或いは、バイオマスや医療廃棄物等の廃棄物をガス化溶融システムにより、ガス化(熱分解)し、該ガス化された生成ガス、チャー及び灰分を溶融炉に導入し高温燃焼させ、灰分を溶融する方法が用いられている。
【0003】
ガス化溶融システムとしては、例えば、流動床ガス化溶融システムがある。ガス化炉では、層内温度を比較的低温とすることにより、安定的に熱分解ガス及び熱分解残渣を溶融炉に供給し、溶融炉における燃焼条件を安定化させて、溶融炉の温度を灰分のスラグ化に必要な温度以上に安定して維持する。このことにより、スラグは安定して排出され、スラグの質が安定したために重金属の溶出は充分に抑制され、更に、異常な高温を生じることがないため、溶融炉耐火物の寿命を延ばすことができる。
【0004】
しかしながら、ガス化炉に供給される、可燃物の質・量の変動により、ガス化炉で生成する生成ガスが変動するため、低空気比では不完全燃焼を生じたり、可燃物の熱量による自己熱溶融が行われないことがあった。
【0005】
このため、供給設備において破砕等の前処理を行い、ガス化炉に供給することが行われるが、可燃物である廃棄物が異物を含んでいるため、破砕機で定量的な処理が行えなくなったり、破砕機の損傷により、補修の必要が生じ、安定的にガス化炉に可燃物を供給することができなくなることがあった。特に、高温の燃焼により灰分を溶融するガス化溶融システムにおいては、安定して高温を維持することが重要であり、可燃物のガス化溶融システムへの供給が変動したり、一時的に停止したりすると、高温を維持するために、バーナーを使用しなければならなくなり、いたずらに燃料を消費することとなる。このため、可燃物の質・量の変動を抑制し、安定的な供給が行えるシステムが求められていた。
【0006】
従来技術によるガス化溶融システムの受け入れ供給装置として、図4に示す破砕供給装置がある。このシステムでは、ごみピット10に貯留された可燃物を、各系列の破砕機32により破砕し、破砕された可燃物を、各系列のガス化炉80に供給する。破砕機の故障が生じた場合に備える為、各系列ごとに予備の破砕機を設けたり、各系列間で破砕機を共通して使用できるように供給系で切り替えられるようにすることが行なわれている。
【0007】
しかしながら、各供給系に予備の破砕機を配置する場合には破砕機の台数が多くなるだけではなく、破砕機に故障が生じた場合に予備の破砕機に切り替えが行なわれる間は、被処理物の供給が途絶える。また破砕機の設置位置が制約されるため、破砕機の保守点検や補修作業が行い難いことが多かった。
【0008】
そこで、可燃物を破砕機で破砕することが必要なものと、破砕する必要のないものとに分別し、破砕機の処理量を軽減し、破砕歯の磨耗破損等によるメンテナンス、及び、処理量の軽減に伴う異物の混入の減少による破砕機のメンテナンスの負担を減らした供給装置が提案されている。(例えば、特開平4-126914号公報参照)
【0009】
【特許文献1】
特開平4-126914号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の供給装置は、可燃物を分別する設備が必要になるなどの問題点があるので、実用化されておらず、供給装置には、依然として予備破砕機が備えられている。そこで、本発明は、予備破砕機や可燃物を分別する設備などの追加の装置を備えることなく、可燃物を安定して定量的にガス化炉に供給を行うことができる可燃物の受け入れ供給方法及び装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る、プラットフォーム16よりピット10に受け入れた可燃物をピット10を挟んでプラットフォーム16に相対する側に位置するガス化炉80においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給方法は、例えば図1及び図2(b)に示すように、ピット10で受け入れた可燃物を移送する移送工程を備え;ピット10は、可燃物を受け入れる受入部11と、受入部11から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部13と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部12であって平面的な配置がプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁と可燃物貯留部13とによって囲まれた破砕可燃物貯留部12と、がプラットフォーム16からガス化炉80に向かってこの順番で設けられて内部に仕切りを有さない構成であって;更に、前記移送工程によって移送された可燃物の全量を、平面視において破砕可燃物貯留部12と接する範囲内のプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数配置された破砕装置32で破砕し、該破砕された可燃物の全量をピットの破砕可燃物貯留部12に戻す破砕工程と;前記ピットの破砕可燃物貯留部12に戻された破砕された可燃物を、平面視においてプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数の破砕装置32のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機62を経てガス化炉80に供給する供給工程とを備える。
【0012】
このような可燃物の受け入れ供給方法により、破砕工程に不具合が生じても、ピットに戻された破砕した可燃物をガス化炉に供給できるので、安定して定量的にガス化炉へ破砕された可燃物の供給を行うことができる。また、ピットから移送された可燃物の全量を破砕し、また、破砕した可燃物の全量をピットに戻すので、可燃物の移送ルートが単一となり、単純な構成となる。
【0013】
ここで、「移送工程によって移送された可燃物の全量を破砕し、該破砕された可燃物の全量をピットに戻す」とは、ピット10から移送された可燃物が、破砕工程以外に移送されることはなく、また、破砕工程で破砕された可燃物がピット10以外の装置へ送られることもないことを意味する。可燃物の全量を破砕といっても、破砕装置を通過するが破砕されない可燃物が存在する場合を含む。また、途中で壁などに付着して、破砕工程でピット10へ戻されない可燃物が存在してもよい。
【0014】
また、請求項2に記載の発明に係る、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給方法では、例えば図1及び図2(b)に示すように、ピット10の受入部11で受け入れて可燃物貯留部13に移送され貯留された可燃物と、前記破砕工程によりピット10の破砕可燃物貯留部12に戻された可燃物とを、ピット10内で仕切りを設けずに貯留し;水平投影面上の破砕可燃物貯留部12の面積が可燃物貯留部13の面積よりも小さい。
【0015】
このように構成すると、ピット内に仕切りがないので、可燃物を移送する際に、仕切りが障害となることもないし、仕切りが障害となるためにピット内の有効容量が減少したりすることもない。
【0016】
前記目的を達成するため、請求項3に記載の発明に係る、プラットフォームよりピットに受け入れた可燃物をピットを挟んでプラットフォームに相対する側に位置するガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給装置は、例えば図1及び図2(b)に示すように、可燃物を受け入れる受入部11と、受入部11から移送された可燃物を破砕前に貯留する可燃物貯留部13と、破砕された前記可燃物を一旦貯留する破砕可燃物貯留部12であって平面的な配置がプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁と可燃物貯留部13とによって囲まれた破砕可燃物貯留部12と、がプラットフォーム16からガス化炉80に向かってこの順番で設けられ、内部に仕切りを有さないピット10と;平面視において破砕可燃物貯留部12と接する範囲内のプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数配置され、ピット10の受入部11で受け入れて可燃物貯留部13に移送され貯留された可燃物を破砕し、破砕した可燃物の全量をピットの破砕可燃物貯留部12に戻す破砕装置32と;ピット10で受け入れた可燃物を全量破砕装置32に移送し、更に、破砕装置32で破砕されピットの破砕可燃物貯留部12に戻された可燃物を、平面視においてプラットフォーム16に相対する側のピット10の壁面に沿ってピット10の外側に複数の破砕装置32のそれぞれを挟んで複数配置された給塵機62を経てガス化炉80に供給する供給装置20とを備える。
【0017】
このように構成すると、破砕装置に不具合が生じても、ピットに戻された破砕した可燃物をガス化炉に供給できるので、安定して定量的にガス化炉へ破砕された可燃物の供給を行うことができる可燃物の受け入れ供給装置が提供される。また、ピットから移送された可燃物の全量を破砕し、また、破砕した可燃物の全量をピットに戻すので、可燃物の移送ルートが単一となり、単純な構成となる。
【0018】
上述のように、可燃物をガス化炉においてガス化し、灰分を溶融炉において高温燃焼により溶融させるガス化溶融システムに用いられる可燃物の受け入れ供給装置は、例えば図1に示すように、ピット10の受入部11で受け入れて可燃物貯留部13に移送され貯留された可燃物と、破砕装置32で破砕されピット10の破砕可燃物貯留部12に戻された可燃物とを、ピット10内で仕切りを設けずに貯留する。
【0019】
このように構成すると、ピット内に仕切りがないので、可燃物を移送する際に、仕切りが障害となることもないし、仕切りが障害となるためにピット内の有効容量が減少したりすることもない。
【0020】
前記目的を達成するため、請求項4に記載の発明に係るガス化溶融システムは、例えば図3に示すように、請求項3に記載の可燃物の受け入れ供給装置と;前記可燃物の受け入れ供給装置から供給された可燃物を熱分解してガスと灰分を生成するガス化炉80と;前記生成したガスを燃焼することにより前記灰分を溶融する溶融炉90とを備える。
【0021】
このように構成すると、可燃物の受け入れ供給装置から、破砕された可燃物が安定して定量的にガス化炉へ供給されるので、ガス化炉で安定して熱分解によりガスと灰分を生成し、溶融炉において安定して該ガスを燃焼することにより該灰分を溶融することができる。
【発明の実施の形態】
【0022】
以下に、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。先ず、図1の模式図を参照して、本発明の第1の実施の形態であるごみの受け入れ供給装置について説明する。
【0023】
ごみを受け入れるピット10は、鉄筋コンクリート等の材質で作られたプール状に形成されている。ピット10には、ごみトラックなどが走行してくるプラットフォーム16と、プラットフォーム16より低い位置に、プラットフォーム16側よりトラックからダンプされたごみを受け入れるごみ受入部11と、受け入れたごみを貯留するごみ貯留部13と、破砕されたごみを貯留する破砕ごみ貯留部12とが、1つの空間内に設けられている。ごみ受け入れ部11とごみ貯留部13と破砕ごみ貯留部12との間には、仕切り壁は設けられていない。
【0024】
プラットフォーム16に相対する側で、ごみ貯留部13と破砕ごみ貯留部12より高い位置に、ごみホッパ31が設置されている。ごみホッパ31の下端は、破砕機32に連接されている。
【0025】
破砕機32の下には、シュートが設けられ、ピット10内と連通しており、破砕機32で破砕されたごみ(破砕ごみ)が、ピット10の一方向へ戻されるように構成されている。シュートの代わりに、破砕ごみをピット10内の一方向へ移送するコンベアが設置されていてもよい。
【0026】
破砕機32からピット10へシュートを設ければ、構造が簡単になる。シュートに代えてコンベアを設置すると、破砕機32と破砕ごみ貯留部12の高さの差を小さくできるので、装置全体の高さを低くできる。また、破砕機32と破砕ごみ貯留部12の水平距離が長くても、破砕ごみを移送できる。
【0027】
ごみホッパ31とは別に、破砕ごみホッパ61が設置され、破砕ごみホッパ61の下端は、給塵機62のスクリューコンベア62aの一端に連接されている。給塵機62は、スクリューコンベア62aとスクリューコンベア駆動機62bとを備えている。
【0028】
スクリューコンベア62aの他端の下側は、供給フィーダ63を経て、ガス化炉80へ連接されている。
【0029】
ごみピット10内のごみ受入部11、ごみ貯留部13及び破砕ごみ貯留部12、ごみホッパ31並びに破砕ごみホッパ61の上部を移動する、移動クレーン20が設置される。
【0030】
図2に、ごみピット10、ごみホッパ31及び破砕ごみホッパ61の平面的な配置の構成の例を示す。ピット10、ごみホッパ31及び破砕ごみホッパ61の配置を設定することにより、ピット10内のごみ受入部11、ごみ貯留部13及び破砕ごみ貯留部12の配置が設定される。
【0031】
ここで、図2の配置図を参照して、複数系列の受け入れ供給装置を含むガス化炉システムについて説明する。図2(a)は、ごみホッパ31及び破砕機32(不図示)を2基ずつ、破砕ごみホッパ61、給塵機62、供給フィーダ63(不図示)及びガス化炉80を3基ずつ備えているガス化炉システムの配置図である。ごみは、ピット10内のごみ受入部11にダンプされ、クレーン20によりごみ貯留部13に移送され、そこで貯留される。ごみ貯留部13に貯留されたごみは、クレーン20によりごみホッパ31に送られ、破砕機32で破砕される。破砕機32で破砕された破砕ごみは、ピット10内の破砕ごみ貯留部12に戻され、そこで一旦貯留された後、破砕ごみホッパ61に移送され、給塵機62及び供給フィーダ63によりガス化炉80に供給される。破砕ごみ貯留部12は、ピット10内の破砕機32に隣接した端部に設けられる。このように、破砕機32を破砕ごみホッパ61、給塵機62、供給フィーダ63及びガス化炉80と独立して設置できるので、保守点検の場所を十分広く確保することができる。
【0032】
図2(b)に示す例では、ごみホッパ31及び破砕機32を破砕ごみホッパ61、給塵機62、供給フィーダ63及びガス化炉80の隣に設置する。この場合には、破砕ごみ貯留部12が破砕ごみホッパ61に隣接するため、ごみ及び破砕ごみを移送するクレーンの動きがより小さくなり、好ましい。
【0033】
また、破砕機32で破砕された破砕ごみは、破砕機32からピット10内の破砕ごみ貯留部12に戻され、そこで一旦貯留された後、破砕ごみホッパ61に移送されるので、ごみホッパ31及び破砕機32と破砕ごみホッパ61、給塵機62、供給フィーダ63及びガス化炉80との基数が異なっていてもよい。但し、1基の破砕機32に不具合が生じたときの影響を小さくして運転を継続するために、複数の破砕機32を備えることが好ましい。
【0034】
次に、図1を参照して、本発明の実施の形態であるごみの受け入れ供給装置の運転について説明する。ごみトラックなどは、外部から運搬してきたごみを、プラットフォーム16からごみ受入部11へダンプする。
【0035】
ごみ受入部11に受け入れたごみは、バケット21にてすくい取られる。バケット21がごみをすくい取った後、自走式駆動機23及びクレーン梁22の動きにより、ごみ貯留部13に移送し、貯留される。ごみ貯留部13に貯留されたごみは、バケット21にてすくい取られ、ごみホッパ31の上部へと移動され、ごみホッパ31上部の開口部より、該ホッパ内に投下される。
【0036】
ごみホッパ31に投入された破砕前のごみは、落下して、破砕機32に送られ、破砕される。バケット21ですくい取った破砕前のごみは、他の装置に移送されることはなく、全量が、ごみホッパ31から破砕機32へと移送される。
【0037】
破砕機32で破砕されたごみ(破砕ごみ)は、シュートにより、あるいはコンベアにより、全量がごみピット10へ移送される。すなわち、バケット21ですくい取った破砕前のごみは、全量が破砕機32で破砕され、破砕ごみの全量が破砕機32からごみピット10へ戻される。
【0038】
破砕前のごみの流路及び破砕ごみの流路が一方向であるので、流路を変える装置などを備えることがなく、装置の構成が単純化される。
【0039】
ごみピット10へ移送された破砕ごみは、移送された位置で堆積し、バケット21ですくい取ってならされることにより、破砕ごみ貯留部12を形成する。破砕ごみ貯留部12として仕切りを設けなくても、破砕ごみ同士が絡み合うことにより、貯留した山が崩れることがなく、破砕ごみは定められた場所に堆積するので、ごみピット10の1空間で受け入れても破砕前のごみと分別された状態で貯留することができる。
【0040】
破砕ごみ貯留部12に貯留された破砕ごみは、バケット21にてすくい取られる。その際、ごみ貯留部13と破砕ごみ貯留部12とが1空間に形成され、仕切り壁がないので、バケット21の移動範囲の制約によりピットの有効容量が減少することもないし、仕切り壁が障害物となってクレーン20の操業に支障を生じたりすることもない。更に、破砕ごみの量が増えても、破砕ごみ貯留部12の積み上げ高さを増したり、範囲を広げることでピット10内に貯留することができる。なお、ごみ貯留部13と破砕ごみ貯留部12との仕切り壁を設置してもよい。この場合には、破砕前のごみと破砕ごみが混じることがなく、破砕ごみに破砕前のごみが混入することがない。
【0041】
破砕ごみが破砕ごみ貯留部12に貯留されているので、破砕機32に不具合が生じ、破砕機の運転が停止されても、破砕ごみホッパ61への破砕ごみの移送以降の運転は継続される。更に、破砕機32の運転と破砕ごみホッパ61への破砕ごみの移送以降の運転とが、破砕ごみの貯留により切り離され、連続的ではないので、破砕機32の能力の余裕を給塵機62とは別途に設定することができる。すなわち、破砕機32は他の装置に比べて故障が生じ易いため、破砕機32の能力により多くの余裕を持たせることにより、貯留される破砕ごみが確保され、破砕ごみの移送以降の運転が安定的に継続される。
【0042】
また、併設して発電設備を設ける場合には、破砕機32の運転を夜間のみとし、昼間は破砕機32を停止することにより、昼間の消費電力を低減して、電力要求の大きな昼間に外部送電を増やすこともできる。
【0043】
バケット21は、破砕ごみをすくい取った後、自走式駆動機23及びクレーン梁22の動きにより、破砕ごみホッパ61の上部へと移動され、すくい取った破砕ごみを、破砕ごみホッパ61上部の開口部より、該ホッパ内に投下する。
【0044】
このように、クレーン20は、そのバケット21がごみピット10内のごみ受入部11、ごみ貯留部13や破砕ごみ貯留部12を移動でき、且つ、ごみホッパ31と破砕ごみホッパ61へ移動できるように構成されており、1の装置により、ごみピット10で受け入れたごみを破砕機32へ移送することも、ごみピット10内に貯留されている破砕ごみを給塵機62に移送することもできる。また、図2に示したように、複数系列の受け入れ供給装置を備えていても、1のクレーンで破砕前のごみ及び破砕ごみの移送を行うことができる。したがって、装置の数が少なくなる。
【0045】
破砕ごみホッパ61に投下された破砕ごみは、破砕ごみホッパ61の下部より給塵機62にて定量的に移送される。スクリューコンベア駆動機62bの回転速度を調整することにより、スクリューコンベア62aで所定量の破砕ごみを移送する。
【0046】
給塵機62により定量的に移送された破砕ごみは、供給フィーダ63を通過して、ガス化炉80へと送り込まれ、ガス化炉80で熱分解ガス化される。
【0047】
以上のように本発明に係るごみの受け入れ供給装置を用いることにより、予備破砕機を備えることなく、安定的にガス化炉80に破砕ごみを供給することができる。
【0048】
続いて、図3の模式図を参照して、本発明の第2の実施の形態であるごみの受け入れ供給装置とガス化炉80及び溶融炉90を含むガス化溶融炉100とを備える流動床ガス化溶融システムについて説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態で説明したごみの受け入れ供給装置を備える流動床ガス化溶融システムを表している。
【0049】
供給フィーダ63は、流動床ガス化炉80に連接されている。破砕ごみは、破砕ごみホッパー61を経て給塵機62から、供給フィーダ63を通って、流動床ガス化炉80内へ送られ、流動層83上へ落下する。
【0050】
流動床ガス化炉80内では、炉底に送入される流動空気aにより、流動床ガス化炉80内の炉底に設けられた空気分散板82上に、硅砂の流動層83が形成されている。破砕ごみは、この450?650℃の温度に保持された硅砂の流動層83に落下することにより、熱せられた硅砂と流動空気aに接触して部分燃焼と熱分解が行われ、熱分解ガス及び熱分解残渣(タール、固形カーボン)を生成する。
【0051】
固形カーボンは流動層83の活発な撹乱運動により微粉砕され旋回溶融炉90に送られる。
【0052】
炉底では、不燃物が硅砂とともに、不燃物排出装置81により不図示の分級機へ送られて、不燃物を除去した後、硅砂は流動層の形成に再利用される。
【0053】
流動床ガス化炉80の生成ガスbは、旋回溶融炉90に供給される。旋回溶融炉90内で、生成ガスbは、燃焼用ガス(空気等)の供給により、1200?1500℃の高温で燃焼する。
【0054】
旋回溶融炉90の高温燃焼場において、生成ガスb中の灰分はスラグとなり、旋回溶融炉90から排出され、不図示の移送設備により貯留場に送られる。燃焼ガスは、廃熱ボイラ92に送られ、高圧蒸気dを生成する。燃焼ガスeは、廃熱ボイラ92を出た後、空気加熱器93において、ピット10から送られてきた臭気を含む空気fを加熱し、排ガス処理系に送られる。臭気を含む空気fは、加熱された後に、流動空気aとして、流動床ガス化炉80へ送られる。
【0055】
破砕機32のメンテナンスのために、流動床ガス化炉80に破砕ごみが送られないと、流動床ガス化炉80において生成ガスbが生成されないだけではなく、旋回溶融炉90での燃焼が止まり、高圧蒸気dの生成も、ピット10の臭気を含むガスfの加熱処理も、また、流動床ガス化炉80への燃焼空気aの供給も止まることになる。
【0056】
旋回溶融炉90では、更に、高温燃焼により流動床ガス化炉80の生成ガスb中の灰分を溶融するので、安定して高温を維持することが重要である。可燃物としての破砕ごみの供給が変動したり、一時的に停止したりすると、生成ガスbの溶融炉への供給が不安定になるため、バーナーをたいて溶融炉内温度を高温に維持するため、多大な燃料を消費することにもなる。
【0057】
そこで、予備の破砕機を有していなくても、本発明によるごみの受け入れ供給装置を備えることにより、破砕ごみがごみピット10に貯留され、破砕機32に不具合が生じたときにも、ごみピット10の破砕ごみが流動床ガス化炉80に安定的に供給されるので、安定して効率的な燃焼をする流動床ガス化溶融システムが提供される。
【0058】
また、上述の通りに、ピット10から破砕機32へごみを移送し、破砕機32で破砕した破砕ごみをピット10内の破砕ごみ貯留部12に貯留し、破砕ごみ貯留部12に貯留された破砕ごみをガス化溶融炉100に供給する供給方法によれば、予備破砕機を備えていなくても、ピット10内に貯留された破砕ごみをガス化溶融炉100へ供給するので、ガス化溶融炉100において安定して効率的な燃焼をすることができる。
【0059】
これまでは、可燃物をごみとして説明してきたが、可燃物はごみに限られず、可燃物であれば、本発明に係る受け入れ供給装置を用いることができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、破砕された可燃物をピットに貯留することにより、破砕機で定量的な処理が行われなくなったり、破砕機が損傷しても、ピット内に貯留された破砕物をガス化炉に供給することで安定な連続操業を継続させることができる。可燃物の供給が途切れたり、可燃物供給量が低下したりすると、灰分を溶融させる高温燃焼を行わせるために多量の補助燃料が必要となるので、本発明により破砕機の故障による補助燃料を大幅に削減することができる。また、破砕機はガス化炉への供給装置とは独立させて配置できるので、十分な保守が行えるように保守のための空間を確保することができる。同時に、破砕機の能力の余裕を給塵機とは別途に設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施の形態である可燃物の受け入れ供給装置を説明する模式図である。
【図2】
可燃物の受け入れ供給装置とガス化炉の配置を説明する配置図である。
【図3】
本発明の第2の実施の形態である流動床ガス化溶融システムを説明する模式図である。
【図4】
従来の可燃物の受け入れ供給装置を説明する模式図である。
【符号の説明】
10 ピット
12 破砕ごみ貯留部
20 クレーン
31 ごみホッパ
32 破砕機
61 破砕ごみホッパ
62 給塵機
63 供給フィーダ
80 流動床炉
90 旋回溶融炉
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-02-22 
結審通知日 2008-02-27 
審決日 2008-03-12 
出願番号 特願2003-158699(P2003-158699)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (F23G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松下 聡  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 関口 哲生
長浜 義憲
登録日 2007-01-26 
登録番号 特許第3909040号(P3909040)
発明の名称 可燃物の受け入れ供給方法およびその装置並びにガス化溶融システム  
代理人 宮川 貞二  
代理人 森本 義弘  
代理人 原田 洋平  
代理人 宮川 貞二  
代理人 笹原 敏司  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 金井 俊幸  
代理人 金井 俊幸  

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