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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680134 審決 特許
無効200680233 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C10G
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C10G
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C10G
審判 全部無効 2項進歩性  C10G
管理番号 1178053
審判番号 無効2006-80211  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-20 
確定日 2008-03-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3615223号発明「芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための触媒」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3615223号発明の出願は、1996年3月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理1995年3月31日、ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、平成16年11月12日にその特許権の設定の登録がされたところ、平成18年10月20日に請求人水澤化学工業株式会社より無効審判請求がされ、平成19年2月14日付けで被請求人より審判事件答弁書が提出されると同時に訂正請求がされ、同年3月22日付けで請求人より弁駁書が提出され、同年7月11日に特許庁第1審判廷において第1回口頭審理がなされ、同日付けで両者より口頭審理陳述要領書が提出され、その後、同年7月13日付けで請求人より上申書が、同年8月9日付けで被請求人より上申書がそれぞれ提出されたものである。
これに対して、同年10月16日付け及び10月24日付けで補正許否の決定がなされるとともに、無効理由が被請求人に対して通知され、同内容の職権審理結果が請求人に対して通知されたところ、被請求人より、指定期間内である同年12月7日付けで意見書、訂正請求書及び訂正請求取下書が提出され、平成19年2月14日付けの訂正請求は取り下げられた。

第2 訂正の適否及び本件発明
1.訂正の内容
被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、本件特許明細書を、平成19年12月7日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正すること、すなわち、以下の訂正事項a?lのとおりである。

訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1中の、「少なくとも5mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有する」を、「10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有する」と訂正する。
訂正事項b:特許請求の範囲の請求項2中の、「少なくとも5mg当量/100g、好ましくは約10ないし60mg当量/100g」を、「10乃至50mg当量/100g」と訂正する。
訂正事項c:特許請求の範囲の請求項2中の、(c)における「大きい」と「総酸性度」の間にある「の」を削除し、「であり;(e) 自由ケイ酸の含有率が約15ないし55重量%である酸活性化されたスメクタイト鉱土で」を削除する。
訂正事項d:特許請求の範囲の請求項2中の、「約50ないし」、「約20ないし」、「約7.0mg」、「約50mg」及び「約15mg」における「約」を削除する。
訂正事項e:特許請求の範囲の請求項3を削除する。
訂正事項f:特許請求の範囲の請求項4の請求項番号を「3」に繰り上げるとともに、「請求項1ないし3のいずれか1項に記載の」を「請求項1または2に記載の」と訂正する。
訂正事項g:特許請求の範囲の請求項5中の、「約0.1mm」における「約」を削除し、請求項番号を「4」に繰り上げるとともに、「請求項1ないし4のいずれか1項に記載の」を「請求項1ないし3のいずれか1項に記載の」と訂正する。
訂正事項h:特許請求の範囲の請求項6中の、「少なくとも5mg当量/100g」を、「10乃至50mg当量/100g」と訂正し、請求項番号を「5」に繰り上げるとともに、「請求項1ないし5のいずれか1項に記載の」を「請求項1ないし4のいずれか1項に記載の」と訂正する。
訂正事項i:特許請求の範囲の請求項7を削除する。
訂正事項j:特許請求の範囲の請求項8中の、「Al^(3+)イオンを濃縮した触媒」を、「Al^(3+)イオンで処理した触媒」と訂正し、請求項番号を「6」に繰り上げるとともに、「請求項6または7記載の」を「請求項5記載の」と訂正する。
訂正事項k:特許明細書8頁3?5行の「しかしながら、実施例2の触媒が最も長い持続時間を有しており、これは交換性Al^(3+)イオンに加えて自由Al^(3+)イオンを備えるものである。」を、「しかしながら、実施例2の触媒が最も長い持続時間を有しており、これは交換性Al^(3+)イオンのみを含有するためである。実施例1の触媒は実施例2に比較して持続時間が短く、これは交換性Al^(3+)イオンに加えて自由Al^(3+)イオンを備えるものである。」と訂正する。
訂正事項l:特許明細書9頁の「表I」中の、「Al^(3+)触媒粒子」を、「自由Al^(3+)触媒」と訂正する。

2.判断
(1)訂正事項aは、含有される交換性Al^(3+)陽イオンの範囲を「少なくとも5mg当量」から「10乃至50mg当量」とその範囲を狭め、かつ、「15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有する」と自由ケイ酸含有率を規定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)訂正事項b、hの、「10乃至50mg当量/100g」とする訂正は、その範囲を狭めたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3)訂正事項cの、「の」を削除する訂正は、誤記の訂正を目的としたものであり、「であり?鉱土で」を削除する訂正は、訂正事項aにより減縮された訂正後の請求項1と整合させるために、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(4)訂正事項d、gの、「約」を削除する訂正は、「約」という不明りょうな記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(5)訂正事項e、iは、特許請求の範囲の請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(6)訂正事項f?h、jの、請求項番号及び引用する請求項番号の繰り上げは、訂正事項e、iの請求項の削除にともない、請求項番号が不連続となり不明りょうとなったことにより、それを明りょうにするためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(7)訂正事項jの、「触媒」についての訂正は、引用する訂正前の請求項6または7に「濃縮」についての記載がないため不明りょうとなっている記載を、明りょうにするためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(8)訂正事項k、lは、発明の詳細な説明についての訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許請求の範囲についての訂正(訂正事項a?j)は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、これらの訂正事項は、特許法第134条の2第1項、及び同法同条第5項の規定により準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

3.本件発明
以上のとおりであるから、本件請求項1?6に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。
「1.酸活性化鉱土が10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有することを特徴とする酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒を、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用方法。
2.酸活性化された鉱土が:
(a) 50ないし500m^(2)/gの比表面積を備え;
(b) 全体で20ないし60mg当量/100gの交換性陽イオンのイオン交換能力(IUF)を備え、ここでIUFにおけるAl^(3+)イオンの比率が10乃至50mg当量/100g、IUFにおけるアルカリイオンの比率が7.0mg当量/100g未満、IUFにおけるアルカリ土イオンの比率が50mg当量/100g未満となり;
(c) 15mgKOH/gより大きい総酸性度を有し;
(d) 自由アルカリ土イオンまたはアルカリイオンの含有率が5mg当量未満であることを特徴とする請求項1記載の使用方法。
3.触媒が交換性のAl^(3+)イオンに加えて、自由なAl^(3+)イオンをその表面、細孔内および粒子間に含有することを特徴とする請求項1または2に記載の触媒の使用方法。
4.触媒が0.1mmより大きい粒子からなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の触媒の使用方法。
5.酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理し、その量を、交換性のAl^(3+)イオンの含有率が10乃至50mg当量/100gに高められるとともに、必要に応じてさらに一定割合の自由Al^(3+)イオンが存在するように設定することによって触媒を製造することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触媒の使用方法。
6.Al^(3+)イオンで処理した触媒を0.1mmより大きい粒子大からなる成形体に変換することを特徴とする請求項5記載の触媒の使用方法。」

第3 請求人の主張の概要
請求人は、特許第3615223号の請求項1乃至8に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠として審判請求書に添付して甲第1及び2号証を提出し、大略、以下の無効理由1?無効理由4を主張している。また、同書に添付して参考資料1及び2を、弁駁書に添付して参考資料3及び4を提出し、上申書中に図を示している。
無効理由:
本件特許の請求項1乃至8に係る特許発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない(無効理由1)か、或いは甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(無効理由2)。したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
また、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の要件を満足しておらず(無効理由3)、発明の詳細な説明が、当該特許発明を当業者が容易に実施し得る程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項の要件を満足していない(無効理由4)。したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(証拠方法)
甲第1号証:広川昭夫、"酸性白土の酸処理生成物の特性とその利用"、粘土科学、日本粘土学会、昭和55年12月25日、第20巻、第4号、p.99-106
甲第2号証:特開昭59-196827号公報

参考資料1:須藤俊男著、「粘土鉱物学」、株式会社岩波書店、1974年7月30日、p.434-442
参考資料2:特許第3429317号公報
参考資料3:特公昭60-2285号公報
参考資料4:特開平6-263431号公報

第4 被請求人の答弁の概要
無効理由1及び2に対して
本件発明は、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための特別な触媒、すなわち10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し、且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有する酸活性化スメクタイト鉱土に基づく触媒を使用する発明であり、このような発明思想は甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、全く開示がないから、本件発明はこれらの甲号証に記載されておらず、これらの甲号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
無効理由3に対して
平成19年12月7日付けの訂正請求により、特許請求の範囲の記載は不明りょうなものではなくなった。
無効理由4に対して
発明の詳細な説明は、当業者が実施可能に記載されているし、上記訂正請求により、該説明中の明りょうでない記載は明りょうなものとされた。

第5 甲各号証及び参考資料に記載された事項
1.甲各号証
甲第1号証:
(甲1-1)「酸性白土の酸処理生成物の特性とその利用」
「1.緒言
いわゆる酸性白土の酸処理物は油脂、石油類の脱色精製剤として用いられている活性白土として知られている。」(論文のタイトル及び99頁左欄下から7?4行)
(甲1-2)「酸性白土といわれる粘土は本邦各地に産出し、モンモリロナイト鉱物を主構成成分としているが、ハロイサイトを主構成成分もしくは構成成分の一部として含むものもあり、それぞれ天然または活性化して利用されている。」(100頁左欄15?19行)
(甲1-3)「2.酸処理による構造的変化
新潟県西頸城郡青海町産の二種類の酸性白土(試料AおよびB)に濃度5%?45%の硫酸を乾燥状態の重量に対して3倍添加し、4時間攪拌した条件下でいわゆる沸点処理し、さらに・・・・調製した。
原料土とその酸処理生成物のX線回折図から試料Aがモンモリロナイトを、試料Bがハロイサイトを主成分とすることが認められる。いずれも酸処理濃度が高くなるに従いそれぞれの原料に特長的な粘土鉱物のピークが消失していくが、モンモリロナイトはハロイサイトに比べ構造破壊の度合が大きいようにみえる。
Table2に示される化学組成から酸処理により八面体層に属する陽イオンが溶出され、SiO_(2)の組成に占める比率が増加することが認められる。化学組成から常法によって4面体層、8面体層の構成陽イオンを算出し、その結果と酸濃度との関係をFig.3に示した。」(100頁左欄25行?右欄13行)
(甲1-4)「3.酸処理による物理化学的特性の変化
粘土本来の特性としての陽イオン置換容量、置換性水素イオン量、表面特定として比表面積、固体酸量に






ついて酸処理による変化とこれら特性相互の関係を考察する。」(100頁右欄19行?101頁左欄下から9行)
(甲1-5)「

Fig.4に示される陽イオン置換容量と置換性水素イオン量は酸処理濃度15%をピークとして増減するが試料AはBに比べ高い値を示し処理酸濃度による増減の度合が大きい。酸処理による構造の破壊がすすむが、温和な条件下ではbroken bondの増加、八面体層の陽イオンの溶出により原料土より置換容量が増加するものと思われるが、試料Aのそれがモンモリロナイト構造に由来するのに対し、試料Bはむしろ構造の不整によるものであることを示している。ここで測定された置換性水素イオンは1N-NaCl処理によって得られたもので置換性水素イオンに加えて酸処理により生じたコロイド状のAl(OH)_(3)、Fe(OH)_(3)などに消費されるものも含まれており陽イオン置換容量の不飽和度を性格に示すものではないが、酸処理土の実用的な特性の一つとして重要なものである。」(101頁右欄のFig.4.及び101頁左欄下から8?末行、101頁右欄下から7?末行)
(甲1-6)「比表面積は吸着剤、触媒などの用途と関連した重要な表面特性である。酸処理土の比表面積の変化が置換性水素イオン量と共に酸処理濃度との関係で、Fig.5に示される。試料Aの比表面積は酸処理濃度15%?25%で急激に増加し、置換性水素イオンの減少をともない、上述の構造変化の酸処理濃度とも一致することからこの二つの特性値がモンモリロナイト構造の変化と関係深いことを示唆している。」(102頁左欄1?8行)
(甲1-7)「酸処理粘土の比表面積が構造破壊によって生成する遊離ケイ酸の量による所が大きいことは上記の経過から支持される。」(102頁左欄12?14行)
(甲1-8)「酸処理によって生成されるケイ酸は表面の老化、重合などにより比表面積が減少することがある。試料Aにおける高濃度処理での比表面積の減少は生成ケイ酸の量以外にその質も関連すること


を示している。」(102頁左欄18行?右欄1行)
(甲1-9)「Fig.6は、H_(0)≦+4.8、H_(0)≦+1.5、H_(0)≦-3.0の各酸強度での酸量を酸処理濃度との関係で示した。また、Fig.7は酸処理濃度15%、35%の酸処理土と原料土の酸強度分布を示す。これらの結果で試料AはBに比べ全般に高い値を与え、強酸部分で原料土が35%処理土より酸量が高く、構造がほとんど破壊される45%処理土ではBとの関係が逆転することなどから試料Aの固体酸としての特性はモンモリロナイト構造に基因することが認められる。」(102頁右欄12?20行)
(甲1-10)「




」(102頁右欄のFig.6.、103頁左欄のFig.7.)
(甲1-11)「4.特性と工業利用
酸性白土の酸処理生成物は活性白土として石油・油脂類の脱色精製に利用されており、その実用的な機能については多くの報告がある。ここではこれについて触れた後、その特性の特長的な利用と思われる芳香族炭化水素の精製、感圧紙の発色への応用について述べる。」(103頁左欄下から7?末行)
(甲1-12)「4-2.芳香族炭化水素の精製剤
芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、キシレン(BTXと総称される)は他の炭化水素類から溶剤抽出分離された後白土充填塔を通して精製される。白土処理は150℃?200℃で加圧液相下で粒状活性白土(30?60メッシュ)充填層を液空間速度、1?2/時で通過させることで行なわれる。白土処理によりBTXの臭素価および硫酸着色が改善され、したがってBTX中の主としてオレフィン類が除去されるものと考えられる。条件から酸触媒による重合反応が行なわれるものとみられ、前述の脱色とは異なり系として単純化して考えられるので特性と効果の関係が明らかである。
七種類の酸処理酸性白土のH_(0)≦+3.3およびH_(0)≦-3.0の酸点の密度と処理BTXの酸着色の関係をFig.11に示した。この実験は160℃加圧下での初期活性を示すものであるが、H_(0)≦-3.0と活性が関連していることが認められる。・・・強酸部分の酸点が有効であることを示している。因みに、H_(0)≦+4.0に相当する酸強度は・・・



・・・H_(0)≦-3.0では48%wt%H_(2)SO_(4)とされている。・・・。もちろん活性白土の比表面積を無視できるわけではなく、その大小は白土充填塔のブレークまでの寿命と関係する。」(104頁右欄20行?105頁左欄下から3行)
(甲1-13)「5.おわりに
以上特に固体酸としての特性に注目して酸処理酸性白土の利用について述べた。酸性白土がモンモリロナイト系、ハロイサイト系に大別でき酸処理により比表面積を増加し得ることは同様であるが、固体酸特性では両系に大きな差が認められる。利用目的に応じて原料土の選択と硫酸処理条件の組み合せによって有効な資源利用に寄与することができよう。」(106頁左欄7?13行)

甲第2号証:
(甲2-1)「(1)C_(2)?C_(10)脂肪族線状オレフインを、高められた温度でカチオン交換性の層状クレーを含む触媒と接触させることを特徴とする、前記オレフインを、一種またはそれ以上の、ダイマー、オリゴマー、アルカン、オレフインおよびアロマチツクスが含まれる、より高い炭素数の炭化水素から成る生成物に転化する方法。
(2)前記のカチオン交換性層状クレーが、スメクタイトである特許請求の範囲第1項に記載の方法。
(3)前記の層状クレーが、モンモリロナイトまたはベントナイトである特許請求の範囲第1項または第2項のいずれかに記載の方法。
(4)前記の層状クレーが、安定化された、柱状の、中間層を有するクレーである特許請求の範囲第1項に記載の方法。
(5)前記の層状クレーが、水素イオンおよび(または)アルミニウムイオンのいずれかで交換されている特許請求の範囲第1?4項の任意の1項に記載の方法。」(特許請求の範囲第1?5項)
(甲2-2)「層状クレーと通常結合しているCa^(2+)またはNa^(+)カチオンを水素イオンまたはクロム、アルミニウム、ガリウム、コバルト、ニツケル、鉄、銅またはバナジウムの金属カチオンのいずれかと好適に交換できる。前記の層状クレーが、水素イオンおよび(または)アルミニウムイオンのいずれかと交換されるのが好ましい。」(3頁右上欄12?18行)
(甲2-3)「水素イオン-交換したワイオミングベントナイト(A)
ナトリウムベントナイト(掘削泥水用として使用する微粉として供給されるワイオミングベントナイト)を水中(1100ml)の濃硫酸(400ml)溶液に添加し、時々攪拌して2日間室温に置いた。このクレーを溶液から分離し、繰り返し遠心分離して水で洗浄し再び水に再分散させ、上澄液のpHが洗浄に使用した蒸留水と同じになるまで行った。クレーを80℃で風乾し、粉砕して水素ベントナイトの微粉(バッチ反応用)および顆粒(連続反応用)にした。」(5頁右上欄7?18行)
(甲2-4)「アルミニウムイオン-交換したワイオミングベントナイト(B)
ワイオミングベントナイト粉末(100g)を、蒸留水(1.5l)中の硫酸アルミニウム〔Al_(2)(SO_(4))_(3)・16H_(2)O〕(250g)の溶液に添加し、一晩置いた。このクレーを遠心分離し、さらに1.5lの水と混合し、再び遠心分離した。すべての余分のイオンを除去するためこの操作を2回繰り返した。最後に、このアルミニウムイオン-交換したクレーを80℃で炉乾燥した。」(5頁右上欄19行?左下欄8行)

2.参考資料
参考資料1:
(参1-1)「

」(436頁表21-1)

参考資料2:
(参2-1)「実施例 1
天然酸性鉱土に基づいた顆粒の製造
表Iに示された特性を有する天然酸性の鉱土100Kgを破砕および乾燥させ、ドレイス・インテンシブ・ミキサ内で35kgの水と10分間混合し、さらにシングルスクリュ抽出機で2mmの厚さの管状体に圧縮する。
さらに、湿った管状体を比較例1と同様に処理する。
実施例 2
天然酸性ベントナイト内におけるAl^(3+)イオンの交換
実施例1の天然酸性ベントナイト100kgを強く撹拌しながら1000lの蒸留水内に拡散させる。3時間の安静時間後、固形の硫酸アルミニウム7.5kgを付加し、さらに室温において12時間保持する。
硫酸アルミニウムを含んだ浮遊物をフィルタプレス機上で脱水し、1000lの無鉱分水で洗浄する。湿ったフィルタケーキを120℃で12時間乾燥させる。
乾燥したフィルタケーキを破砕機上で破砕し、粒子を0.3ないし0.6mmの間にふるい分ける。このようにして得られた触媒の特性は表Iに示されている。
実施例 3
天然酸性ベントナイト内における交換性および自由Al^(3+)イオンの交換
実施例1の顆粒100Kgをパレット化皿に乗せ、25%の硫酸アルミニウム溶液201を吹き付ける。浸透化された顆粒を120℃で24時間乾燥させる。
Al^(3+)イオンは一部格子内に結合され;一部は材料の表面に存在する。浸透化の行われた顆粒の特性は表Iに示されている。」(実施例1?3)

参考資料3:
(参3-1)「従来、灯軽油、溶剤等の脱色あるいは芳香族炭化水素や飽和炭化水素に含有されるオレフイン類および微量不純物の除去のため酸性白土あるいは活性白土の如き白土を充填した塔に液相で通液して硫酸着色の改善、臭素価の減少をはかつているのは周知のとおりである。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン留分は活性白土塔を通して精製するのが普通である。白土処理によつて微量のオレフインを除き臭素価を減少させ硫酸着色を改善できる。白土による微量のオレフイン類の除去は重合吸着効果によるものと思われる。この効果は白土の固体酸としての性質が重要である。
酸性白土はモンモリロナイトあるいはハロイサイトなどを含む粘土鉱物であり、一定の層構造をなしイオン交換樹脂に類した陽イオン交換性がある。
したがつて、酸性白土を酸、特に硫酸で処理し陽イオンの1部を水素イオンで交換せしめた活性白土は固体酸量および固体酸強度が増大し、その使用目的に適していることから多くの場合活性白土が使用されている。」(1頁左欄21行?右欄16行)

参考資料4:
(参4-1)「本発明によると、強無機酸、例えば、硫酸をバインダーとして用いて複数の小さな酸活性化ベントナイト粘土粒子を接着することで、ベントナイト粘土を主材とした重合触媒が製造される。 」(段落0016)
(参4-2)「本発明の酸活性化ベントナイトを主材とした粘土触媒は、反応性オレフィンを含まない芳香族炭化水素の再生のための抽出物を処理に有用である。 粘土を主材とした触媒は、その緩慢な酸触媒活性、約 150?約 200℃の温度での粘土の酸部位での重合促進、およびオレフィンのアルキレート化によって特徴付けられる。 オレフィンは、液相あるいは蒸気相にて粘土触媒と接触して反応(重合)するが、最も重い重合生成物以外は、反応器へ導入される改質油抽出液体にて可溶性であり、また、反応部位は除去され、活性が付加されない反応部位が残されるため、反応処置(オレフィンの触媒重合)は、好ましくは、加圧反応器中の液相にて実施される。」(段落0017)

上申書(請求人提出)中の図:


第6 当審の判断
1.無効理由1(特許法第29条第1項第3項)
A.本件発明1と甲第1号証に記載された発明との異同
(1)請求人の主張の詳細
請求人は、本件発明1は、「酸活性化鉱土が10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有すること」、「15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有すること」、を特徴とするものであるところ、これらの事項は次の(i)、(ii)に示すように甲第1号証に記載されている、と主張する。
(i)交換性Al^(3+)陽イオン含量(主として、口頭審理陳述要領書2頁下から4行?7頁12行)
触媒中の交換性Al^(3+)陽イオン含量に関しては、活性白土の製造に用いる酸性白土等のスメクタイト自体に交換性Al^(3+)が含まれており、参考資料2の実施例1(記載事項(参2-1))には、交換性Al^(3+)陽イオン含量が13.8mg当量/100gの天然酸性スメクタイトが示されているから、酸処理する前のスメクタイトには、10mg当量/100gを越える交換性Al^(3+)陽イオン含量を有しているものが存在していることは明白であり、酸処理により得られる活性白土も同様の交換性Al^(3+)陽イオンを含有していることは明らかである。
そこで、甲第1号証のTable2.(以下、「表2」という。)(記載事項(甲1-4))の「CLAY A 100kgを25%の硫酸を用いて酸処理して得られた活性白土」について、交換性Al^(3+)陽イオン含量を検討する。
(ア)酸処理後の活性白土
甲第1号証の表2には、硫酸で処理されていないCLAY A(「Acid Conc. 0%」の欄)と、このCLAY Aを濃度が25%の硫酸で処理することにより得られた活性白土(「Acid Conc. 25%」の欄。以下、「Acid Conc.」、Fig.4.?6.中の「Concentration of sulfuric Acid」を「酸濃度」という。)の組成が示されており、さらに、Fig.4.(記載事項(甲1-5))には、このようなCLAY Aの置換性水素イオン(H^(+))量(該Fig.4.の「CLAY A(H^(+))」)や総イオン交換容量(該Fig.4.の「CLAY A(CEC)」)が示されているから、表2とFig.4.を合わせまとめると、以下となる。
CLAY A(0%処理) 活性白土(25%酸処理)
SiO_(2)含量 58.83% 72.42%
Al_(2)O_(3)含量 21.91% 14.23%
置換性H^(+)量 約50meq/100g 約40meq/100g
総イオン交換容量 約80meq/100g 約75meq/100g

このデータを基に100kgのCLAY Aを25%酸処理後に得られた活性白土量を計算する。
SiO_(2)は酸に溶出しないから、酸処理前も酸処理後も、58.83kgであるので、ここから酸処理後の活性白土量を求めると、
100×(58.83/72.42)=81.2kg、となる。この活性白土の中には、Al_(2)O_(3)が、
81.2×0.1423=11.55kg、含まれている。したがって、酸処理によってCLAY Aから溶出したAl_(2)O_(3)は、
21.91-11.55=10.36kg、であり、このAl_(2)O_(3)量を硫酸アルミニウム、すなわち、Al_(2)(SO_(4))_(3)に換算すると、分子量は、Al_(2)O_(3)=102、Al_(2)(SO_(4))_(3)=342、であるから、
10.36×342/102=34.7kg、となる。
(イ)活性白土を得る際の両者の状態
そうしてみると、甲第1号証において、
「約100kgのCLAY Aを25%濃度の硫酸で処理して活性白土を得るときには、総イオン交換容量が約75meq/100gであり、且つ置換性水素イオン(含Al^(3+))含量が約40meq/100gである約81.2kgの活性白土が、34.7kgの硫酸アルミニウムを含む水溶液に浸漬保持されていた」
こととなる。
一方、本件訂正明細書の実施例2の触媒は、
「総イオン交換容量が30.6mVal当量/100gの酸活性化ベントナイト100kgを、20kgの硫酸アルミニウムを含む水溶液中に浸漬することにより得られたものであり、交換性Al^(3+)陽イオン含量は、17.7mVal当量/100g(本件訂正明細書の表Iの実施例2の欄の数字、18.1-0.4=17.7、より)である」
と思われる。
そうすると、甲第1号証の、「約100kgのCLAY Aを25%濃度の硫酸で処理して得られた活性白土」は、「本件訂正明細書の実施例2」よりも、総イオン交換容量がかなり多く、より高濃度の硫酸アルミニウム水溶液に浸漬されていたのであるから、該実施例2の触媒より多量の交換性Al^(3+)陽イオンを含んでいると考えられる。
(審決注:「meq/100g」も、「mg当量/100g」も、「mVal/100g」も、「mVal当量/100g」も、同じ意味である。)
(ウ)まとめ
よって、本件発明1における、「10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有する」、という規定は、甲第1号証に示される従来公知の「約100kgのCLAY Aを25%濃度の硫酸で処理して得られた活性白土」が有する物性を規定しているに過ぎないか、そうでなくても、発明性はない。

(ii)自由ケイ酸含量(主として、口頭審理陳述要領書7頁3行?8頁21行及び上申書2頁1行?4頁10行)
自由ケイ酸含量について、その具体的数値は、甲1、2号証、参考資料1?4には記載されていないが、記載事項(甲1-7)は、酸処理によって自由ケイ酸が生成することを示し、記載事項(甲1-4)の表2に示される5?45%濃度の硫酸で処理して得られた活性白土は、殆ど自由ケイ酸を含まないものから全量が自由ケイ酸になったものが示されていることが理解され、そうすると、「15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有する」との規定は、甲第1号証に示されている従来公知の活性白土が有している物性を規定しているに過ぎない。
そこで、具体的に甲第1号証の表2(記載事項(甲1-4))の「CLAY A 100kgを25%の硫酸を用いて酸処理して得られた活性白土」について、自由ケイ酸量を算出する。
このとき、基本となる分子量、原子量は、Al_(2)O_(3)(分子量)=102、Al(原子量)=27、SiO_(2)(分子量)=60、である。
(ア)酸無処理物について
100kgのCLAY A中のそれぞれの含量は、表2の「酸濃度 0%」の欄に記載のとおり、SiO_(2):58.83kg、Al_(2)O_(3):21.91kgであり、Al原子は、
21.91×10^(3)×2/102=0.430×10^(3)モル、存在する。
上記SiO_(2)量のうち、基本三層構造では、Al原子1モルに対し、2モルのSiを含有しているから、基本三層構造に寄与するSiO_(2)量は、
0.430×10^(3)×2×60=51.6kg、である。
100kg中のCLAY A中のSiO_(2)量は58.83kgだから、残りのSiO_(2)量、すなわち、
58.83-51.6=7.23kg、は、不純物のSiO_(2) と考えられる。
したがって、酸無処理物100kg中、SiO_(2) は、基本三層構造中に51.6kg、不純物として7.23kg、含まれている。
(イ)酸処理物について
100kgのCLAY Aを25%濃度の硫酸で処理すると約81.2kgの活性白土が生じ(第6 1.A.(1)(i)(ア))、表2の酸濃度25%の欄に記載されているように、その14.23%がAl_(2)O_(3)であるから、基本三層構造中のAl_(2)O_(3)は、
81.2×0.1423=11.55kg、であり、Al原子は、
11.55×10^(3)×2/102=0.226×10^(3)モル、存在する。
(ウ)酸処理物中の自由ケイ酸量について
基本三層構造では、Al原子1モルに対し、2モルのSiを含有しているから、基本三層構造に寄与するSiO_(2)量、すなわち自由ケイ酸でないSiO_(2)量は、
0.226×10^(3)×2×60=27.12kg、となる。
そうすると、酸処理後の基本三層構造に寄与するSiO_(2)量と、もともと基本三層構造中に存在したSiO_(2)量との差が、生じた自由ケイ酸量となるから、自由ケイ酸量は、
51.6-27.12=24.48kg、となる。
ここで、不純物のSiO_(2)量は、7.23kgである。
したがって、不純物を含んでいる活性白土中の自由ケイ酸の割合は、
(24.48/81.2)×100=30.1重量%
不純物を差し引いた有効性成分当たりでの自由ケイ酸の割合は、
[24.48/(81.2-7.23)]×100=33.1重量%、である。
(エ)まとめ
よって、甲第1号証の、「約100kgのCLAY Aを25%濃度の硫酸で処理して得られた活性白土」は、自由ケイ酸の割合が33.1重量%又は30.1重量%であって、不純物を含んでいるとき及び不純物を含んでいないときの何れを基準とした場合においても、本件特許発明の自由ケイ酸量を満足している。

(2)当審の判断
(i)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「酸性白土の酸処理生成物の特性とその利用」について記載され(記載事項(甲1-1))、「酸性白土の酸処理物は活性白土」といわれ(記載事項(甲1-1))、「酸性白土はモンモリロナイト鉱物を主構成成分とするもの」であるから(記載事項(甲1-2))、甲第1号証は「モンモリロナイト鉱物を酸処理した活性白土の特性とその利用」について記載されたものであるいえる。
具体的に甲第1号証の記載内容をみる。
「2.酸処理による構造的変化」には、二種類の酸性白土(試料AおよびB)を硫酸で酸処理したところ、原料土とその酸処理生成物のX線回折図によれば、試料Aがモンモリロナイトを、試料Bがハロイサイトを主成分とすることが認められること、表2の化学組成によれば、酸処理により八面体層に属する陽イオンが溶出され、SiO_(2)の組成に占める比率が増加することが認められること、が、記載されている。(記載事項(甲1-3))(審決注:「試料A」と「CLAY A」、「試料B」と「CLAY B」は、それぞれ同じものである。)
「3.酸処理による物理化学的特性の変化」には、「粘土本来の特性としての陽イオン置換容量、置換性水素イオン量、表面特定として比表面積、固体酸量について酸処理による変化とこれら特性相互の関係を考察する。」(記載事項(甲1-4))として、まず、「陽イオン置換容量」について記載され(記載事項(甲1-5))、これから、モンモリロナイトである「CLAY A」については、陽イオン置換容量(Fig.4.中の「CLAY A(CEC)」)も置換性水素イオン量(Fig.4.中の「CLAY A(H^(+))」)もともに、処理する酸濃度15%までは増加するが、25%になると無処理(酸濃度0%)のものより少なくなることがわかる。
次いで、「比表面積」について、これは触媒などの用途と関連した重要な表面特性であること(記載事項(甲1-6))、酸処理粘土の比表面積が構造破壊によって生成する遊離ケイ酸の量による所が大きいこと(記載事項(甲1-7))、「CLAY A」については、酸濃度15?25%で比表面積が急激に増加し、かつ、35%で最大になること(記載事項(甲1-8))、が記載されている。
さらに、「固体酸量」について、強酸部分では原料土の方が35%処理土より酸量が高いこと(記載事項(甲1-9)(甲1-10))が、記載されている。
このような活性白土の特長的な利用である(記載事項(甲1-11))「芳香族炭化水素の精製剤」については、活性白土で処理することにより、芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、キシレン(BTXと総称される)の臭素価および硫酸着色が改善され、BTX中の主としてオレフィン類が除去されるものと考えられること、活性はH_(0)≦-3.0と関連していること、H_(0)≦-3.0に相当する酸強度は48wt%H_(2)SO_(4)とされていること、もちろん活性白土の比表面積を無視できるわけではないこと(記載事項(甲1-12))が、記載されている。
以上のことからすると、モンモリロナイトであるCLAY Aを酸処理すると、八面体層に属する陽イオンが溶出され、酸濃度15?25%の間で構成原子数に急激な変化が認められ、CLAY Aの陽イオン置換容量と置換性水素イオン量は酸処理濃度15%をピークとして増減し、比表面積は触媒などの用途と関連した重要な表面特性であって、CLAY Aの比表面積は酸濃度15%?25%で急激に増加し、酸濃度35%で最大の比表面積が得られ、芳香族炭化水素の精製剤として、強酸で処理すること及び比表面積が重要であることが、記載されているから、甲第1号証には、
「モンモリロナイト鉱物であるCLAY Aを硫酸で処理して、八面体層に属する陽イオンを溶出させ、比表面積を増大させた活性白土でBTXを処理すると、触媒作用によりBTXの臭素価および硫酸着色が改善され、したがってBTX中の主としてオレフィン類が除去されるものと考えられること」
(以下、「甲1発明」という。)、
という発明が記載されているといえる。

(ii)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1の「酸活性化スメクタイト鉱土」について、本件訂正明細書には、「酸活性化スメクタイト鉱土の原料としては、主にベントナイトを使用し、その主要成分はモンモリロナイトである。」(本件訂正明細書3頁下から2?1行)、「実施例 1 酸活性化されたベントナイトの硫酸アルミニウムによる浸透化」(同8頁5?6行)、「実施例 2 酸活性化されたベントナイト内におけるAl^(3+)イオンの交換」(同8頁12?13行)なる記載からすると、「酸活性化スメクタイト鉱土」と「酸で活性化されたモンモリロナイト」とはほぼ同じものであるといえ、甲1発明の「BTX」は「芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、キシレン」(記載事項(甲1-12))であるから本件発明1における「芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物」とは重複するものであり、両者とも、酸活性化スメクタイト鉱土を触媒として使用するものであるから、両者は、
「酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒を、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用方法。」、
である点で一致し、
(あ)芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒である、酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒において、酸活性化スメクタイト粘土が、
本件発明1においては、「10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有するもの」であるのに対し、
甲1発明においては、「交換性Al^(3+)陽イオン」の含量も、「自由ケイ酸の含有率」も規定していない点、
で相違する。

(iii)相違点(あ)のうち、「交換性Al^(3+)陽イオン」についての検討
(ア)上記「第6 1.A.(1)(i)」に示したように、請求人は、甲第1号証の表2の25%酸処理の化学組成から計算をして、「甲1発明においては、本件発明の実施例2の触媒、すなわち、17.7mg当量/100gより多量の交換性Al^(3+)陽イオンを含んでいると考えられる。」としている。
(イ)しかしながら、甲第1号証には、モンモリロナイトを酸処理して物理化学的特性が変化することが記載され、粘土本来の性質としての陽イオン置換容量、置換性水素イオン量については言及しているものの、陽イオンの中の特定なものについて述べる、ということは何らなされていない。表2から、「陽イオン」にAlが包含されることは確かであるが、同時に、Fe、Mg、Ca、K、Naが包含されることも確かであって、(甲1-5)に記載されているように、例えばFeイオンも酸処理によって溶出されているのである。
さらに、表2に挙げられた、各酸濃度で処理されたものが、すべて、芳香族炭化水素の精製に有用であるとは、(甲1-12)に記載されておらず、記載事項(甲1-12)には、酸強度、比表面積との関係で有用な触媒について述べられているのであって、芳香族炭化水素の精製において「Al^(3+)陽イオン」との関係は記載されておらず、自明な事項でもない。
そうしてみると、甲第1号証において何ら触れられていない、「交換性Al^(3+)陽イオン」について、本件発明1で特定する範囲が甲第1号証に記載されている、ということはできない。
(ウ)また、甲第1号証の表2中の25%酸処理をしたときの化学組成が上記(ア)のように考えられるとしても、本件発明1は、「交換性Al^(3+)陽イオン」の上限が「50mg当量/100g」というものであって、その点について請求人は何ら説明をしておらず、自明でもないから、甲1発明において、「交換性Al^(3+)陽イオン」が本件発明1に特定する上限以下のもの、すなわち「50mg当量/100g以下のもの」である、とすることはできない。
(エ)本件発明1は、「本発明の対象は、酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理し、その量を、交換性のAl^(3+)イオンの含有率が少なくとも10mVal/100gにまで高められ、必要に応じてさらに一定割合の自由Al^(3+)イオンが存在するように設定することを特徴とする触媒の製造方法である。」(本件訂正明細書5頁下から4?末行)ところ、甲1発明においては、単に酸処理するのみであって、アルミニウム塩溶液で処理するものではなく、これからでは、請求人の計算で導かれたAl^(3+)イオン含量が、自由Al^(3+)イオンではなく、本件発明1と同様交換性のものである、ということまではわからない。
しかも、甲第1号証の記載から、酸性白土を酸処理すれば、アルミニウムイオンが抽出されることはいえる(記載事項(甲1-4)の表2)ものの、甲第1号証においては、アルミニウムイオンに関し、交換性であるとも、自由イオンであるとも、あるいは他の形態であるとも、区別して記載されていないため、甲第1号証に「交換性Al^(3+)陽イオン」について記載されているとすることはできない。
そうしてみると、アルミニウム塩溶液で処理していない甲1発明においても、交換性Al^(3+)陽イオン含量が本件発明1と同じである、とすることはできない。
(オ)以上のとおりであるから、甲第1号証には、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用する、酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒において、酸活性化スメクタイト粘土が、「10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオン含量の酸活性化スメクタイト鉱土」であることについて記載されているとすることはできず、また、上記触媒に用いるこのような酸活性化スメクタイト鉱土が自明であるとすることもできない。

(iv)相違点(あ)のうち、「自由ケイ酸の含有率」についての検討
(ア)上記「第6 1.A.(1)(ii)」に示したように、請求人は、甲第1号証の表2の25%酸処理の化学組成から計算をして、「甲1発明においては、不純物を含んでいる活性白土中の自由ケイ酸の割合は、30.1重量%であり、不純物を差し引いた有効性成分当たりでの自由ケイ酸の割合は、33.1重量%であって、いずれの場合も本件発明1規定する自由ケイ酸の含有率と差異がない。」としている。
(イ)しかしながら、甲第1号証には、モンモリロナイトを酸処理して物理化学的特性が変化することが記載され、粘土本来の性質としての陽イオン置換容量、置換性水素イオン量、比表面積、固体酸量については言及しているものの、「自由ケイ酸量」については、記載事項(甲1-7)に、比表面積が構造破壊によって生成する遊離ケイ酸、すなわち、自由ケイ酸の量による所が大きい、と記載され、一方、記載事項(甲1-8)に、酸処理によってケイ酸が生成されても表面の老化、重合などにより比表面積が減少することもあること、CLAY Aにおける高濃度処理での比表面積の減少は生成ケイ酸の量と質に関連することが記載されており、これらのことからすると、自由ケイ酸の生成と、触媒に必要な比表面積との関係は直線的でないといえる。
そしてこのことは、記載事項(甲1-12)に、表2に挙げられた各酸濃度で処理されたものが、すべて、芳香族炭化水素の精製に有用であるとは記載されておらず、触媒活性には酸強度及び比表面積が重要である、としていることからも頷ける。
そうしてみると、甲第1号証には、「自由ケイ酸」を特定することは記載されておらず、該特定が重要であることも記載されていない。
(ウ)以上のとおりであるから、甲第1号証には、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用する、酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒において、酸活性化スメクタイト粘土が、「15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有するもの」であることについて記載されておらず、また、上記触媒に用いるこのような酸活性化スメクタイト鉱土が自明であるとすることもできない。

(v)まとめ
甲第1号証には、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用する、酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒において、酸活性化スメクタイト粘土が「酸活性化鉱土が10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有する酸活性化スメクタイト鉱土」は記載されているとはいえないから、これに基づいた触媒を使用する触媒の使用方法である本件発明1が、甲第1号証に記載されているとすることはできない。

B.本件発明1と甲第2号証に記載された発明との異同
(1)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、「C_(2)?C_(10)脂肪族線状オレフインを、モンモリロナイトまたはベントナイトである、スメクタイトの層状クレーであって、水素イオンおよび(または)アルミニウムイオンのいずれかで交換されているものを含む触媒と接触させることを特徴とする、前記オレフインを、一種またはそれ以上の、ダイマー、オリゴマー、アルカン、オレフインおよびアロマチツクスが含まれる、より高い炭素数の炭化水素から成る生成物に転化する方法。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている(記載事項(甲2-1)?(甲2-4))。
(2)本件発明1と甲2発明との対比・当審の判断
両者は、少なくとも、
(あ)スメクタイトが、本件発明1においては、「10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有するもの」であるのに対し、甲2発明においてはこのようなことは不明である点、
(い)両発明の方法が、本件発明1においては、「芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用方法。」であるのに対し、甲2発明においては、「オレフインをより高い炭素数の炭化水素から成る生成物に転化する方法」である点、
で、相違する。
これらの相違点について、甲第2号証には、上記(あ)、(い)に関する特別な記載はされておらず、請求人も、交換性Al^(3+)陽イオン含量、自由ケイ酸含有率が、甲2発明においても本件発明1と同じ範囲にあることを合理的に説明していない。
また、これらのことは自明でもない。
したがって、本件発明1が、甲第2号証に記載されているとすることはできない。

C.本件発明2?6と甲1、2発明との異同
本件発明2?6は、本件発明1を引用するか、あるいは本件発明1を引用する発明を引用しているものであって、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付与したものであるところ、本件発明1が甲第1号証にも甲第2号証にも記載されていないのであるから、さらに発明特定事項が付与された本件発明2?6も、同様の理由によって、これらの甲号証に記載されていない。

D.まとめ
以上のとおりであるから、無効理由1には理由がない。

2.無効理由2(特許法第29条第2項)
(1)本件発明1
甲第1号証にも、甲第2号証にも、本件発明1の発明特定事項である、「芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒である、酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒において、酸活性化スメクタイト粘土が、10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有するもの」については記載も示唆もされていない。
すなわち、甲第1号証は、モンモリロナイトを酸処理することにより陽イオンが溶出され(記載事項(甲1-3))、陽イオン置換容量・置換性水素イオン量と比表面積とは関係し(記載事項(甲1-5)のFig.4.、(甲1-6)、(甲1-8)のFig.5.)、触媒活性と比表面積とが関連すること(記載事項(甲1-6)、(甲1-12))は記載されているが、「交換性Al^(3+)陽イオン」に着目することは記載されておらず、「陽イオン」は、常に一体として扱われているのであるから、この中から「交換性Al^(3+)陽イオン」に着目しその量を特定することは、甲第1号証に記載された事項から外れるところである。
かつ、自由ケイ酸については、甲第1号証に、比表面積が構造破壊による自由ケイ酸によるところが大きいと同時に、自由ケイ酸の増加が、比表面積の減少につながることがある旨記載されている(記載事項(甲1-7)、(甲1-8))のであるから、このような記載に接した当業者なら、「芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒」を得る際に、自由ケイ酸については、何ら規定しない、と考えるのが当然であって、本件発明1のように、自由ケイ酸量を規定することは、甲第1号証に記載された事項から外れるところである。
したがって、甲第1号証には、本件発明1に対しては阻害要因が記載されているというべきであり、甲第1号証に記載された事項から、本件発明1を導くことはできない。
また、甲第2号証は、オレフインの転化方法の発明について記載され、そのときに用いる触媒が、モンモリロナイトであって、水素イオンおよび(または)アルミニウムイオンのいずれかで交換されていることは記載され(記載事項(甲2-1))、これらで具体的に処理したもの(記載事項(甲2-3)、(甲2-4))は記載されているもの、本件発明1における特定の酸活性化スメクタイト鉱土について記載されていないことは、上記「第6 1.B.(2)」で述べたとおりであり、特定の目的に使用する触媒の使用方法においては、特定の酸活性化スメクタイト鉱土を用いるのが望ましい、ということも示唆されていないから、これらの記載に基づいて、本件発明1を導くことはできない。
甲第1号証及び甲第2号証を合せ考慮しても、さらに、提出された参考資料1?4を参照しても、上記特定の用途に用いられる酸活性化スメクタイト鉱土は、示唆されない。
また、モンモリロナイト、スメクタイト、あるいは酸性白土、ベントナイト等を酸処理すると、上記の特定の用途に適した、特定範囲の交換性Al^(3+)陽イオンと自由ケイ酸を含有することになる、ということを記載した文献も示唆した文献もないので、これらのことは周知ではなく、また当業者の技術常識であるとすることもできない。
そして、本件発明1は、上記の発明特定事項を有することにより、本件訂正明細書、特に表I及び図1に記載される効果を奏するものであって、このような効果は、甲第1号証から予測しうるものではなく(記載事項(甲1-13))、甲第2号証、あるいは、参考資料1?4や周知事項を考慮しても、当業者が予測しうる範囲のものではない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証及び/又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2?6
本件発明2?6は、本件発明1を引用するか、あるいは本件発明1を引用する発明を引用しているものであって、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付与したものであるところ、本件発明1は、甲第1号証及び/又は甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、さらに発明特定事項が付与された本件発明2?6も、同様の理由によって、これらの甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、無効理由2には理由がない。

3.無効理由3(特許法第36条第6項第2号)
「第1回口頭審理調書」によれば、審判請求書17?19頁に記載の「本件特許を無効にすべきである理由B」の「○1」?「○7」のうち、特許法第36条第6項第2号については、「○1」?「○6」であり、弁駁書18頁?20頁に記載の「無効理由B」の「○1」?「○7」のうち、同法第36条第6項第2号については、「○1」、「○2」、「○4」、「○5」である。ただし、弁駁書における理由「○2」、「○3」、「○7」は主張しないものであり、「補正許否の決定」により、上記弁駁書に記載された、理由○2、理由○3及び理由○7については許可しないものとなった。
(ここで、「○1」とは、「丸付き数字1」のことであり、他の数字についても同様である。)
そこで、無効理由3として、審判請求書17?19頁に記載の「本件特許を無効にすべきである理由B」の「○1」?「○6」、及び、弁駁書18頁?20頁に記載の「無効理由B」の「○1」、「○4」、「○5」について、検討する。

(1)請求人の主張の詳細
請求人は、訂正前の特許請求の範囲の請求項の記載に関し、具体的に、次の(i)?(vi)の主張をしている。
(i)(審判請求書の18頁に記載の理由「○1」)
訂正前の請求項1では、交換性Al^(3+)イオンの含量が少なくとも5mg当量/100gの触媒を使用することが必須であるが、発明の詳細な説明の比較例2は、交換性Al^(3+)イオンの含量が8.0mg当量/100gの触媒の使用例であるが、この場合には、オレフィンの除去を長時間にわたって安定して行うことができず、本発明の目的を達成することができないことが示され、かかる訂正前の請求項1は不明瞭である。
(ii)(審判請求書の18頁に記載の理由「○2」)
訂正前の請求項2、3、5では、数値の範囲が「約」で規定されており、不明瞭である。
(iii)(審判請求書の18頁に記載の理由「○3」)
訂正前の請求項4では、触媒中に自由なAl^(3+)イオンが存在していることを規定しているが、本件本件訂正明細書中には、このAl^(3+)イオンが水洗によって除去することができると記載されている。しかるに、この触媒は、酸処理及び必要によりアルミニウム塩水溶液を用いて処理することにより得られるものであるが、これらの処理を行った場合、当然のことながら、過剰の酸やアルミニウム塩水溶液を除去するために水洗が行われ、触媒中の自由なAl^(3+)イオンは除去されてしまうこととなる。従って、自由なAl^(3+)イオンの存在を規定した訂正前の請求項4は不明瞭である。
(iv)(審判請求書の18頁に記載の理由「○4」)
訂正前の請求項6では、酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理するに際して、アルミニウム塩溶液の量が、「交換性Al^(3+)イオンの含有率が少なくとも5mg当量/100g以上に高められるまで」と記載されている。
しかし、本件の比較例2に示されているように、酸活性化スメクタイト原料自体が、既に5mg当量/100g以上の量で交換性Al^(3+)イオンを含有していることがある。このような場合、何故にアルミニウム塩溶液で処理する必要があるのかわからず、またアルミニウム塩溶液の量が特定されていないこととなる。従って、かかる訂正前の請求項6は、不明瞭である。
(v)(審判請求書の18?19頁に記載の理由「○5」)
訂正前の請求項7では、「アルミニウム塩をIUFに対して1ないし5倍モルの超過量で使用し、」と記載されているが、IUFには、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンなど、種々の価数の交換性イオンが含まれている。従って、IUFに対して1ないし5倍のモルとは誤記であり、訂正前の請求項7の係る記載は不明確である。
(vi)(審判請求書の19頁に記載の理由「○6」)
訂正前の請求項8では、「Al^(3+)イオンを濃縮した触媒を」との記載があるが、訂正前の請求項8が引用している訂正前の請求項6及び7には、濃縮の工程は存在せず、この濃縮の意味がわからない。よって、訂正前の請求項8のかかる記載は不明確である。
また、請求人は、平成19年2月14日付け訂正請求により新たに生じた無効理由として、訂正後の請求項の記載に関し、次の(vii)?(ix)の主張をしている。
(vii)(弁駁書の18頁に記載の理由「○1」)
平成19年2月14日付け訂正後の請求項2では、IUFにおけるAl^(3+)イオンの比率が少なくとも5mg当量/100gと記載されているが、訂正された請求項1では、交換性Al^(3+)イオンの含量が10乃至50mg当量/100gの範囲に特定されている。即ち、訂正後の請求項2におけるAl^(3+)イオンの比率は、訂正後の請求項1との整合性を欠いている。
(viii)(弁駁書の19頁に記載の理由「○4」)
平成19年2月14日付け訂正後の請求項5では、酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理するに際して、アルミニウム塩溶液の量が、「交換性Al^(3+)イオンの含有率が少なくとも5mg当量/100gに高められるまで」と記載されている。しかるに、訂正後の請求項1では、交換性Al^(3+)イオンの含量が10乃至50mg当量/100gの範囲に特定されている。即ち、訂正後の請求項5におけるアルミニウム塩溶液の使用量は、訂正後の請求項1との整合性を欠いている。
(ix)(弁駁書の19頁に記載の理由「○5」)
平成19年2月14日付け訂正後の請求項6では、依然として訂正前の請求項7と全く同様、「アルミニウム塩をIUFに対して1ないし5倍のモルの超過量で使用し、」と記載されている。これに対して被請求人は、答弁書8頁4?15行において、かかる記載は不明瞭でないと主張しているが、かかる主張の根拠が全く理解できない。
即ち、被請求人は、酸活性化スメクタイトが有している交換性Al^(3+)イオンの含有量に対して1ないし5倍のモルでアルミニウム塩を使用するから原子の価数は関係ないと主張しているのであるが、訂正後の請求項6には、単に「IUFに対して」と記載されているのであり、「IUF内のAl^(3+)イオンに対して」と記載されているわけではない。また、1ないし5倍のモルで使用するのは「アルミニウム塩」であり、「アルミニウム原子」ではない。被請求人は、原子のモルと分子のモルとを混同しているのではないか。
したがって、訂正後の請求項6のかかる記載は、依然として不明確である。

(2)当審の判断
(i)について
本件訂正により、訂正後の請求項1において、交換性Al^(3+)陽イオンは「10乃至50mg当量/100g」とされ、交換性Al^(3+)陽イオンが「8.0mg当量/100g」の触媒を使用した比較例2は、訂正後の請求項1に包含されなくなった。
したがって、訂正前の請求項1に対応する訂正後の請求項1の記載は不明瞭ではなく、(i)の主張には理由がない。
(ii)について
訂正により、該当箇所の「約」は削除されたので、訂正前の請求項2、3、5に対応する訂正後の請求項2、4の記載は不明瞭ではなく、(ii)の主張には理由がない。
(iii)について
粘土鉱物の酸処理は、アルミニウムイオンで交換される前に実施される。実施例において、漂白土が出発原料として使用され、酸活性化させたものが使用される。洗浄工程は酸活性化の後に実施されるが、酸活性化された鉱土をアルミニウムイオンで処理する前に実施される。したがって、アルミニウムイオンは洗浄工程により除去されない。
具体的には、実施例1において、硫酸アルミニウムを吹き付けた後に洗浄しておらず、自由なAl^(3+)イオンを含有する触媒は存在する。
したがって、訂正前の請求項4に対応する訂正後の請求項3の記載は不明りょうではなく、(iii)の主張には理由がない。
(iv)について
訂正により、「交換性Al^(3+)イオンの含有率が10乃至50mg当量/100gに高められる」とされたので、訂正前の請求項6に対応する訂正後の請求項5の記載は不明瞭ではなく、(iv)の主張には理由がない。
(v)について
訂正前の請求項7は、訂正により削除されたので、(v)の主張には理由がなくなった。
(vi)について
訂正により、訂正前の請求項8における「Al^(3+)イオンを濃縮した」は、訂正前の請求項8に対応する訂正後の請求項6において「Al^(3+)イオンで処理した」とされたところ、訂正後の請求項6が引用する訂正後の請求項5には「酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理し、」と記載され、両者の技術的関連は明らかとなった。
したがって、訂正前の請求項8に対応する訂正後の請求項6の記載は不明確ではなく、(vi)の主張には理由がない。
(vii)について
訂正により、訂正後の請求項2において、「IUFにおけるAl^(3+)イオンの比率が10乃至50mg当量/100g」とされ、これは、訂正後の請求項2が引用している訂正後の請求項1と整合するものである。
したがって、(vii)の主張には理由がなくなった。
(viii)について
訂正により、「交換性Al^(3+)イオンの含有率が10乃至50mg当量/100gに高められる」とされたので、訂正後の請求項5の記載は訂正後の請求項1の記載と整合するものとなった。
したがって、(viii)の主張には理由がなくなった。
(ix)について
平成19年2月14日付け訂正後の請求項6は、訂正前には請求項7だったものであり、訂正前の請求項7は、訂正により削除されたので、(ix)の主張には理由がなくなった。

(3)まとめ
以上のとおりであって、(i)?(ix)の主張にはいずれも理由がないので、無効理由3には理由がない。

4.無効理由4(特許法第36条第4項)
「第1回口頭審理調書」によれば、審判請求書17?19頁に記載の「本件特許を無効にすべきである理由B」の「○1」?「○7」のうち、特許法第36条第4項については、「○7」であり、弁駁書18頁?20頁に記載の「無効理由B」の「○1」?「○7」のうち、同法第36条第4項については、「○3」、「○6」、「○7」である。ただし、弁駁書における理由「○2」、「○3」、「○7」は主張しないものであり、「補正許否の決定」により、上記弁駁書に記載された、理由○2、理由○3及び理由○7については許可しないものとなった。
そこで、無効理由4として、審判請求書17?19頁に記載の「本件特許を無効にすべきである理由B」の「○7」、及び、弁駁書18頁?20頁に記載の「無効理由B」の「○6」について、検討する。

(1)請求人の主張の詳細
請求人は、訂正前の特許明細書の発明の詳細な説明の記載について、具体的に、次の(i)?(ii)の主張をしている。
(i)(審判請求書の19頁に記載の理由「○7」)
(i-1)訂正前の請求項2では、酸活性化鉱土の比表面積、イオン交換容量、酸性度などの各種物性の数値を規定している。しかるに、このような物性を何故所定の範囲に設定するのがよいのか、発明の詳細な説明には全く記載されておらず、しかも、その実施例及び比較例は、単なる各種物性の数値を羅列したに過ぎず、効果と各種数値との関係を全く認識することができない。
(i-2)また、実施例及び比較例で用いた触媒の各種物性を示す表1において、Al触媒粒子とあるが、この説明がされておらず、この意味が判らない。別個に触媒粒子が外添されていることを意味しているのか。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が発明を容易に実施し得る程度に明確かつ十分に、記載されていない。
(ii)(弁駁書の20頁に記載の理由「○6」)
(ii-1)平成19年2月14日付け訂正後の請求項1や請求項2では、自由ケイ酸量や比表面積、イオン交換容量、酸性度などの各種物性の数値を規定している。しかるに、このような物性を何故所定の範囲に設定するのがよいのか、発明の詳細な説明中には全く記載されておらず、しかも、その実施例及び比較例は、単なる各種物性の数値を羅列したに過ぎず、効果と各種数値との関係を全く認識することができない。
(ii-2)例えば、自由ケイ酸量に至っては、被請求人の特許に係る参考資料2の実施例にも示されているように、自由ケイ酸量が実質上ゼロであっても(要するに酸処理されていないこと)、本件発明のベストモードと同等の触媒持続時間が得られている。
したがって、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易に発明を実施し得る程度に明確かつ十分に記載されていない。

(2)当審の判断
(i-1)、(ii-1)について
訂正後の請求項1、請求項2においては、交換性Al^(3+)陽イオン含量、自由ケイ酸量、酸活性化鉱土の比表面積、総酸性度等の、各種物性の数値が規定されているが、このような各種物性は粘土本来の特性として普通に考慮されるところであり(必要なら、記載事項(甲1-4)?(甲1-12)等参照)、本件訂正明細書の表Iには上記の物性について記載され、さらに具体的に実施例1?2、図1をみれば、訂正後の請求項1、請求項2に特定される各種物性を有する触媒が、増大した耐用年数を有していることがわかる。
すなわち、訂正後の請求項1、請求項2に規定される特性を備える酸活性化鉱土に対しては少なくともアルミニウムイオンの高められた状態が触媒の耐用年数を増大させる効果を有する。
そうしてみると、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載がされていないとはいえず、したがって、(i-1)、(ii-1)の主張は理由がない。
(i-2)について
本件訂正により、表1中の「Al^(3+)触媒粒子」は「自由Al^(3+)触媒」とされ、上記「第6 1.A.(2)(iii)(iii-1)(ウ)」に示した、「本発明の対象は、酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理し、その量を、交換性のAl^(3+)イオンの含有率が少なくとも10mVal/100gにまで高められ、必要に応じてさらに一定割合の自由Al^(3+)イオンが存在するように設定することを特徴とする触媒の製造方法である。」(本件訂正明細書5頁下から4?末行)なる記載内容とも整合するから、その意味は明確である。
そうしてみると、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載がされていないとはいえず、したがって、(i-2)の主張は理由がない。
(ii-2)について
参考資料2として示された被請求人の特許は、その特許発明を特定するために必要とされる事項が、本件発明1?6におけるそれと異なるものであるから、このような他の発明が存在するからといって、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載がされていないとはいえず、したがって、(ii-2)の主張は理由がない。

(3)まとめ
以上のとおりであって、(i-1)?(ii-2)の主張にはいずれも理由がないので、無効理由4には理由がない。

第7 むすび
以上のとおり、請求人の主張する無効理由1?4は、いずれも理由がないから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1?6の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための触媒
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】酸活性化鉱土が10乃至50mg当量/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有し且つ15ないし55重量%の自由ケイ酸の含有率を有することを特徴とする酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒を、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するために使用する触媒の使用方法。
【請求項2】酸活性化された鉱土が:
(a)50ないし500m^(2)/gの比表面積を備え;
(b)全体で20ないし60mg当量/100gの交換性陽イオンのイオン交換能力(IUF)を備え、ここでIUFにおけるAl^(3+)イオンの比率が10乃至50mg当量/100g、IUFにおけるアルカリイオンの比率が7.0mg当量/100g未満、IUFにおけるアルカリ土イオンの比率が50mg当量/100g未満となり;
(c)15mgKOH/gより大きい総酸性度を有し;
(d)自由アルカリ土イオンまたはアルカリイオンの含有率が5mg当量未満であることを特徴とする請求項1記載の使用方法。
【請求項3】触媒が交換性のAl^(3+)イオンに加えて、自由なAl^(3+)イオンをその表面、細孔内および粒子間に含有することを特徴とする請求項1または2に記載の触媒の使用方法。
【請求項4】触媒が0.1mmより大きい粒子からなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の触媒の使用方法。
【請求項5】酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理し、その量を、交換性のAl^(3+)イオンの含有率が10乃至50mg当量/100gに高められるとともに、必要に応じてさらに一定割合の自由Al^(3+)イオンが存在するように設定することによって触媒を製造することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触媒の使用方法。
【請求項6】Al^(3+)イオンで処理した触媒を0.1mmより大きい粒子大からなる成形体に変換することを特徴とする請求項5記載の触媒の使用方法。
【発明の詳細な説明】
この発明は、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための触媒に関する。
産業的に重要な芳香族炭化水素であるベンゾール、トルエンおよびキシレン(BTX)は、今日においては、ほぼ、適切な石油留分を触媒または温度処理することによってのみ生成される。
いわゆる触媒変換において、パラフィン状のナフサ留分を約400℃で貴金属の層からなる触媒を使用して処理する。この触媒処理の間に飽和した炭化水素から芳香族炭化水素が形成される。この芳香族炭化水素は抽出または結晶化によって非芳香族炭化水素から分離され、さらに蒸留処理される。
ベンゾール・トルエン混合物の抽出分離の重要な行程として、スルホレーン処理(ウルマン著工業科学百科事典、第8版(1974年)395頁)が実施される。所要の芳香族炭化水素の他に触媒変換に際して少量のオレフィンが形成される。このオレフィンの含有量は一般的に1%未満であるが、その後の処理の障害となり除去する必要がある。この不要なオレフィンは芳香族炭化水素とほぼ等しい沸点を有するため、蒸留分離は不可能である。
このオレフィンを経済的に除去する方法として、例えば顆粒状の活性化スメクタイト等のアルカリ土アルミニウムシリカを使用する触媒処理が世界的に実施されている。ここで芳香族炭化水素流は150ないし200℃で硬床反応炉を介して誘導される。この顆粒は触媒として作用し、不要なオレフィンが高沸点生産物に変換され、これは蒸留によって容易に分離することが出来る。
オレフィンの除去には天然または合成のアルカリ土アルミニウムシリカを使用することが好適であることが知られている。酸活性化されたベントナイト(漂白土)を使用した種々の方法が開示されている。これに関連して、例えば英国特許第GB-1162945号およびドイツ特許第DE-C-2236996号が挙げられる。芳香族炭化水素洗浄用の市販製品においては、一般的に顆粒状の酸活性化ベントナイトが使用され、これは例えば食用油の精錬に使用される。製品は一般的に0.3ないし0.6mmの粒子大で提供され、比表面積は200乃至400m^(2)の間で変動し、イオン交換比(IUF)は30ないし60mVal(=60mg当量)/100gとなる。
好適に使用される酸活性化ベントナイトの他に、アルミニウムシリカ、マグネシウムシリカ、ジルコニウムシリカ等の合成シリカを使用することができる。
米国特許第A-4795550号には、芳香族炭化水素留物からオレフィンを除去するためにゼオライトを使用する方法が記載されている。ゼオライトは非常に高反応性であるが、その微少な細孔構造内においてポリマ性副生産物を生成し、これが触媒床の迅速な非活性化を促進する。
硬床反応炉内における酸活性化ベントナイトの耐用時間は処理条件にしたがって非常に大きく変動し、数週間から一年の間となる。その後非活性化行程によって触媒機能が大きく低下し、触媒の交換が必要となる。したがって、この種の芳香族炭化水素装置の処理作業者は長い耐用時間を有する高活性触媒を要望している。
欧州特許第EP-A-449453号には、スメクタイトに基づいた触媒を用いた変換によりリニア・オレフィンからオリゴマーまたはコー・オリゴマーを生成する方法が記載されており、ここで触媒は酸活性化されるとともに、ルイス酸(Al^(3+)陽イオン)を用いたイオン交換により変換することができる。この触媒は芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するためには使用されない。
本発明の目的は、長期に安定した触媒能力を備えしたがって長い耐用時間を有する、スメクタイトに基づいた、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための触媒を提供することである。
したがって、本発明の対象物は芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための、酸活性化スメクタイト鉱土に基づいた触媒であり、酸活性化鉱土が少なくとも5mVal/100gの交換性Al^(3+)陽イオンを含有することを特徴とする。
酸活性化スメクタイト鉱土の原料としては、主にベントナイトを使用し、その主要成分はモンモリロナイトである。しかしながら、バイデライト、サポナイト、海力石、ノントロナイトおよびヘクトライト等の他のスメクタイト鉱土を使用することもできる。
触媒は、好適には、
(a)50ないし500m^(2)/gの比表面積を備え;
(b)全体で20ないし60mVal/100gの交換性陽イオンのイオン交換能力(IUF)を備え、ここでIUFにおけるAl^(3+)イオンの比率が約10ないし60mVal/100g、IUFにおけるアルカリイオンの比率が約7.0mVal/100g未満、IUFにおけるアルカリ土イオンの比率が約50mVal/100g未満となり;
(c)10mgKOH/gより大きい総酸性度を有し;
(d)自由アルカリ土イオンまたはアルカリイオンの含有率が5mVal未満であり;
(e)自由ケイ酸の含有率が約15ないし55重量%であることを特徴とする。交換性のAl^(3+)イオンの含有率は好適には10ないし50mVal/100gとなる。
“交換性のAl^(3+)イオン”とは、スメクタイト鉱土の層内には結合されておらず、中間層にあるAl^(3+)イオンのことである。これらは実質的にイオン交換によって化学的に結合されており、したがって水によって洗浄されることはない。交換性のAl^(3+)イオンの含有量は総イオン交換能力(IUF)の概念において決定される。ここで触媒(2g)の試料が100mlの2規定NH_(4)Cl溶液内において環流しながら1時間沸騰させられ、さらに16時間室温において放置される。その後、試料を濾過し、塩化物を使用せずに洗浄される。次に、格子内状に交換されたNH_(4)^(+)イオンの測定によって総IUFが決定される。この目的のため、NH_(4)^(+)イオン交換された触媒におけるアンモニウムイオンの含有量をケルダール法によって測定する。交換性のAl^(3+)イオンの含有量はNH_(4)Cl沸騰溶液の濾過液内において分光測定法によって判定され、触媒100gあたりのmValによって表示される。同様な方法により、NH_(4)Cl沸騰溶液の濾過液内におけるアルカリおよびアルカリイオン含有量が測定される。
同じ方法により、酸活性化されたスメクタイト原料の総IUFならびに交換性陽イオンの比率が測定される。
本発明に係る触媒は交換性のAl^(3+)イオンに加えて、自由なAl^(3+)イオンをその表面、細孔内および粒子間に含有する。このAl^(3+)イオンは触媒を単に水で洗浄することによって除去することができる。
この目的のため、触媒の試料(10g)をNH_(4)Cl溶液内における沸騰の前にフィルタ・ヌッチェ内において25℃の水100mlを使用して5回洗浄し、最後の洗浄水内にアルミニウムが全く残留しないようにする。合わせられた洗浄水内において、再びアルミニウムを分光測定法によって測定する。同じ方法によって他の自由陽イオンも測定する。
総IUF内における個々のイオンのIUFおよび含有率の測定ならびに自由陽イオンの測定は、酸処理されていないスメクタイト原料においても実施される。ここで、非常に高い交換性カルシウムまたはマグネシウムイオンの含有率が結果によって模造される。これは、スメクタイト状原料がしばしばカルシウムおよび/またはマグネシウム炭化物によって汚染されていることに起因し、これはNH_(4)Cl溶液内における沸騰に際して溶解する。
交換性のAl^(3+)イオンならびに自由なAl^(3+)イオンがいずれもにルイス酸方式の触媒機能を有することを前提とする。今までは、ルイス酸(特に塩化アルミニウム)は等質性の触媒においてのみ使用されていた。したがって、本発明に係る不均質性の触媒において、交換結合されたAl^(3+)イオンがルイス酸方式の作用を有することは意外である。特に意外なことに、交換性のAl^(3+)イオンの触媒作用は自由なAl^(3+)イオンの触媒作用よりも強力である。
本発明に係る触媒は好適には0.1mmより大きい粒子からなり、これは以下において顆粒と称する。これには、押し出し成形体、丸形体、ペレット等の成形体が含まれる。これらの成形体は一般的に10mmまでの大きさとすることができる。
さらに、本発明の対象は、酸活性化されたスメクタイト原料をアルミニウム塩溶液で処理し、その量を、交換性のAl^(3+)イオンの含有率が少なくとも10mVal/100gにまで高められ、必要に応じてさらに一定割合の自由Al^(3+)イオンが存在するように設定することを特徴とする触媒の製造方法である。
ここで、より高い交換性Al^(3+)イオンの含有量を有する原料を元にすることができるにもかかわらず、5mVal/100g未満の交換性Al^(3+)イオンの含有量を有する酸活性化されスメクタイト原料を元にする。既に本発明に係る触媒の要件を満たしたこの種の原料の触媒作用は、さらにAl^(3+)イオンを交換することによってより高めることができる。本発明に係る処理は二つまたはそれ以上のステップをもって実施することができる。
本発明に係る方法の第一の好適な構成例において、アルミニウム塩をIUFに対して1ないし5倍のモルの超過量で使用し、Al^(3+)イオンを一価または二価の陽イオンに対して交換し、さらに触媒を洗浄して、水溶性のアルミニウム塩または一価または二価の陽イオンの塩がプロセス全体の障害となる際にこれを除去する。
ここで、スメクタイト鉱土の浮遊物(漂白土浮遊物)にアルミニウム塩溶解物、特に硫酸アルミニウム溶解物が浸透させられ、ここで直接的なイオン交換が生じる。室温あるいはより高い温度における数時間の交換の後、アルミニウムイオンの余剰分を洗浄し、さらに交換の行われた漂白土製品を乾燥させる。さらに粒子化行程を実施する。
第二の構成例において、先に分別した酸活性化ベントナイト粒子(漂白土粒子)に超過量の水性の硫酸アルミニウム溶液を吹き付け、ここでAl^(3+)イオンの一部が交換性に結合され、Al^(3+)イオンの別の一部は自由な形態、すなわち単に吸収された状態で存在する。吹き付けの後、試料を80ないし150℃、好適には100℃で乾燥させる。
特に高められた触媒活動のために、両方の実施形態において数%のアルミニウム塩で充分である。基本的に種々のアルミニウム塩が適している。商業的および技術的理由から、酸化アルミニウムより硫酸アルミニウムの方が好適である。
両方の実施形態において、Al^(3+)イオンを濃縮した触媒を0.1mmより大きい粒子大からなる成形体に変換することができる。
本発明の対象はさらに、芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための本発明に係る触媒の適用である。
請求の範囲ならびに詳細な説明において記述された特徴は、さらに以下のように判定された。
1.比表面積:BET方法による(DIN66131にしたがった窒素による一点法、ここで試料はまず150℃で10時間ガス抜きされる)。
2.総酸性度:触媒(5g)の試料を95℃の水250mlに浮遊させさらに濾過する;得られた透明の濾過液を0.1 n KOHをもってフェノールフタレーンに対して滴定する。総酸性度はmgKOH/触媒gで表示される。
3.自由ケイ酸:スメクタイト鉱土の酸活性化において、まず格子間部分の交換性陽イオンをプロトンによって代替し、この上に、八面体層に結合された陽イオンを層結合体の端部から除去し、無定形のケイ酸が残留する。この無定形(自由)のケイ酸の含有率は酸活性化の速度の上昇(濃縮率、温度、圧力、時間)にともなって増加する。酸活性化されたベントナイトの試料(1g)を100mlの2%ソーダ溶液内で10分間沸騰させることによって、自由なケイ酸を測定することができる。自由なケイ酸から水溶性のナトリウムシリカが形成され、一方、格子状に結合されたケイ素は除去されない。溶解された自由ケイ酸は、濾過の後、例えばナトリウム・モリブデン酸塩法等の任意の方法によって測定することができる。
本発明は、以下の実施例によって非限定的に説明される。
比較例 1
未処理のベントナイトからの顆粒の製造
表Iに示された特性を有する乾燥したバイエルン産カルシウムベントナイト(ジュート-ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト製Tonsil(登録商標))100kgを破砕し、ドレイス・インテンシブ・ミキサ内で32kgの水と10分間混合し、さらにシングルスクリュ抽出機で2mmの厚さの管状体に圧縮する。
湿った管状体を110℃で10時間乾燥させ、さらにローラ破砕機で1mmの縦間隔をもって破砕する。粒子を0.3から0.6mmの間でふるい分ける。
比較例 2
未処理の漂白土顆粒の製造
表Iに示された特性を有する塩酸により活性化されたベントナイト(ジュート-ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト製Tonsil Optimum FF(登録商標))からなる漂白土100kgを破砕し、ドレイス・インテンシブ・ミキサ内で40kgの水と10分間混合し、さらにシングルスクリュ抽出機で2mmの厚さの管状体に圧縮する。
さらに、湿った管状体を比較例1と同様に処理する。
実施例 1
酸活性化されたベントナイトの硫酸アルミニウムによる浸透化
比較例2の漂白土顆粒100Kgをパレット化皿に乗せ、25%の硫酸アルミニウム溶液20lを吹き付ける。浸透化された顆粒を120℃で24時間乾燥させる。
Al^(3+)イオンは一部格子内に結合され;一部は材料の表面に存在する。浸透化の行われた顆粒の特性は表Iに示されている。
実施例 2
酸活性化されたベントナイト内におけるAl^(3+)イオンの交換
比較例2の酸活性化されたベントナイト100kgを強く撹拌しながら500lの蒸留水内に拡散させる。3時間の安静時間後、固形の硫酸アルミニウム20kgを付加し、さらに室温において12時間保持する。
硫酸アルミニウムを含んだ浮遊物をフィルタプレス機上で脱水し、1000lの無鉱分水で洗浄する。湿ったフィルタケーキを120℃で12時間乾燥させる。
乾燥したフィルタケーキを破砕機上で破砕し、粒子を0.3ないし0.6mmの間にふるい分ける。このようにして得られた触媒の特性は表Iに示されている。
適用例
(芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去する際における触媒作用の測定)
50mg Br_(2)/100g(ASTM D1491による)の臭素指標に相当するオレフィン成分を含んだ、スルフォレーン抽出物から得られた芳香族炭化水素混合物(70重量%のベンゾール、30重量%のトルエン)をHPLCポンプを使用してHPLC柱を介して誘導し、この内部には検査する触媒が積層物の状態で存在する(反応炉容積は10ml)。HPLC柱は調整可能なサーモスタット内で存在し、この内部で温度は200℃に一定保持される。この高温におけるガスの発生を防止するために、HPLC柱と試験抽出バルブとの間に逆圧力調整器を設ける。この逆圧力調整器に50バールの逆圧力を設定する。
HPLCポンプを使用することにより、12h^(-1)のLHSV(流体空間速度)が設定される。時間制御された試験抽出バルブを介して24時間毎に洗浄された芳香族炭化水素混合物が摘出され、臭素指標が測定される。
触媒作用の判定のために、臭素指標を稼働時間(日)毎に記録する。結果は添付の図面に示されている。
比較例2の酸活性化処理されたベントナイトが比較例1の未処理ベントナイトに比べて長い持続時間を有することが理解される。しかしながら、実施例2の触媒が最も長い持続時間を有しており、これは交換性Al^(3+)イオンのみを含有するためである。実施例1の触媒は実施例2に比較して持続時間が短く、これは交換性Al^(3+)イオンに加えて自由Al^(3+)イオンを備えるものである。このことから、Al^(3+)イオンが酸活性化されたベントナイトの中間層部分に交換性に結合されている際に、本発明の効果が最も顕著であることが理解される。

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-23 
結審通知日 2008-01-28 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願平8-528920
審決分類 P 1 113・ 121- YA (C10G)
P 1 113・ 113- YA (C10G)
P 1 113・ 537- YA (C10G)
P 1 113・ 536- YA (C10G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 安藤 達也
鈴木 紀子
登録日 2004-11-12 
登録番号 特許第3615223号(P3615223)
発明の名称 芳香族炭化水素または芳香族炭化水素混合物からオレフィンを除去するための触媒  
代理人 小野 尚純  
代理人 浜田 治雄  
代理人 浜田 治雄  
代理人 奥貫 佐知子  

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