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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1178077
審判番号 不服2005-11903  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-23 
確定日 2008-05-12 
事件の表示 平成 7年特許願第343744号「印刷情報とともに付加的情報を含む装置及びその電子的サーチ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月22日出願公開、特開平 9-190441〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年12月28日の出願であって、平成17年3月18日に拒絶査定がなされ(発送日同年3月25日)、これに対して平成17年6月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年6月23日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 読者にとって関心のある印刷情報の刊行物での場所を決定する装置であって、
印刷情報を有する刊行物と、
機械が読み取り可能なフォーマットで前記印刷情報、前記刊行物内でのその場所を表わす情報及び前記印刷情報に関係する付加的情報を記憶する、前記刊行物に固定されている記憶手段と、前記付加的情報は前記印刷情報に関係するテキスト情報、音響情報、図形情報のようなものであり、
前記記憶手段の内容をサーチすると共に、前記関心のある印刷情報の前記刊行物中での場所及び前記付加的情報を同定するプロセッサ手段と、
前記記憶手段を前記プロセッサ手段と取外し可能に相互接続し、前記刊行物に固定されているコネクタ手段と、を具備する前記装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開昭58-33776号公報(以下「引用例1」という。)、及び、特開平5-8583号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
ア)「本発明は、辞書、百科辞典等の書籍と組で構成し、キーボードより入力した所望の項目のキーワードにより、記憶装置に予め記憶された書籍番号、ページ数、行数等を表示装置に呼び出し、索引のスピードと便利さを求めた電子索引器を提供するものである。」(第1頁右下欄第7?12行)

イ)「第1図において、電子索引器本体は、所望項目等を索引するためのキーワードを入力するキーボード2及び本体1内に内装されている記憶装置より読み出された情報を表示する表示装置3が表面に設けられている。上記キーボード2にはキーワードを入力するためのキーの他に、入力されたキーワードに対応する情報記憶装置より呼出すための呼出キー21、キーワード等をクリアするクリアキー22、必要に応じてキーワードに関連する類似語等を検索するサーチキー23等のファンクションキーがある。
又、第2図は上述の電子索引器を書籍4の表紙5に組み込んで、書籍4と一体化している。」(第1頁右下欄第19行?第2頁左上欄第11行)

ウ)「まず、電源スイッチをONし、所望する項目(例えば英和辞典等であればつづり)のキーワードをキーボード2より入力し、その後呼出キー21を操作する。この操作により制御回路6は、入力されたキーワードの項目が記憶装置7に予め記憶されているか否かを検索し、一致するものがあれば記憶装置7に記憶された項目に対応する索引情報を読み出し、一時記憶回路8に記憶させる。そして、一時記憶回路8の記憶情報は表示装置3にて第1図に示す如く表示される。この表示に従って書籍の指定ページを開き読めばよい。」(第2頁右上欄第2?12行)

上記ア)?ウ)の記載から、引用例1には、キーワードにより書籍中の所望項目に対する索引情報(書籍番号、ページ数、行数等)を利用者に提示する電子索引器が開示されている。
また、上記イ)の「又、第2図は上述の電子索引器を書籍4の表紙5に組み込んで、書籍4と一体化している。」及び第2図の記載事項から、引用例1記載の電子索引器は、書籍に対して固定された形態で提供されることが開示されており、さらに、上記ウ)の「この操作により制御回路6は、入力されたキーワードの項目が記憶装置7に予め記憶されているか否かを検索し、一致するものがあれば記憶装置7に記憶された項目に対応する索引情報を読み出し、一時記憶回路8に記憶させる。そして、一時記憶回路8の記憶情報は表示装置3にて第1図に示す如く表示される。この表示に従って書籍の指定ページを開き読めばよい。」から、引用例1には、電子索引器と書籍とを具備し、利用者の所望する項目の書籍中での場所を決定する装置の構成が開示されているものと認められる。
また、ア)の「辞書、百科辞典等の書籍と組で構成し」との記載、及び、イ)の「第2図は上述の電子索引器を書籍4の表紙5に組み込んで、書籍4と一体化している。」との記載から、引用例1記載の電子索引器は各書籍毎に構成されるものであり、電子索引器の記憶装置に予め格納された索引情報は、各書籍に対応する内容で構成されるものと認められる。

してみると、上記ア)?ウ)及び関連する図面の記載から、引用例1には次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「利用者の所望する項目の書籍中での場所を決定する装置であって、
辞書、百科辞典等の書籍と、
書籍に固定されている電子索引器であって、
書籍中の項目及び項目に対応する索引情報を記憶する記憶装置と、
入力されたキーワードの項目が記憶装置に予め記憶されているか否かを検索し、一致するものがあれば記憶装置に記憶された項目に対応する索引情報を読み出し、一時記憶回路に記憶させる制御回路とを備えた電子索引器と、
を具備する装置」

(引用例2)
エ)「【請求項1】 1枚毎にその表面にパソコン用ソフトに関連した情報を印刷又は記録したシートを複数枚綴合し、かつ前記パソコン用ソフトの記憶手段を内蔵して成り、パソコンに対して接続手段を介して前記パソコン用ソフトを接続して稼働できるようになっていることを特徴とする本型パソコン用ソフト。
【請求項2】 前記パソコンの画面のキャラクタ選択を指示する手段が、前記シートに設けられている請求項1に記載の本型パソコン用ソフト。
【請求項3】 前記接続手段がコネクタ及び端子である請求項1に記載の本型パソコン用ソフト。」

上記エ)及び関連する図面の記載から、引用例2には次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「1枚毎にその表面にパソコン用ソフトに関連した情報を印刷又は記録したシートを複数枚綴合し、かつ前記パソコン用ソフトの記憶手段を内蔵して成り、パソコンに対して前記パソコン用ソフトを接続して稼働できるように、コネクタ及び端子からなる接続手段を備えた本型パソコン用ソフト。」

4.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「辞書、百科辞典等の書籍」は、本願発明「印刷情報を有する刊行物」に相当する。
引用例1発明において記憶装置に記憶された「書籍中の項目」は、印刷情報の少なくとも一部を構成する情報であり、その意味で本願発明の「印刷情報」と共通する。そして、記憶装置に記憶された情報であるならば、その情報が機械により読み取り可能であることは当業者には自明の事項である。してみると、引用例1発明の電子索引器が備える記憶装置に記憶された「書籍中の項目及び項目に対応する索引情報」は、本願発明における「機械が読み取り可能なフォーマットで前記印刷情報、前記刊行物内でのその場所を表わす情報」に対応する。
また、引用例1発明の電子索引器が備える「書籍中の項目及び項目に対応する索引情報を記憶する記憶装置」は、書籍に固定された電子索引器に内装されたものであるから、実質的に書籍に固定されているといえる。したがって、引用例1発明の「記憶装置」は、本願発明の「記憶手段」と、機械が読み取り可能なフォーマットで前記印刷情報、前記刊行物内でのその場所を表わす情報を記憶し、刊行物に固定されている記憶手段である点で共通する。
引用例1発明の電子索引器が備える「制御回路」は、記憶装置の内容を検索し、入力されたキーワードの項目に対応する索引情報を読み出すよう動作するものであることから、本願発明の「前記記憶手段の内容をサーチすると共に、前記関心のある印刷情報の前記刊行物中での場所及び前記付加的情報を同定するプロセッサ手段」と前記記憶手段の内容をサーチすると共に、前記関心のある印刷情報の前記刊行物中での場所を同定する手段である点で共通する。
そして、本願発明は、「読者にとって関心のある印刷情報の刊行物での場所を決定する装置」であるが、引用例1発明も「利用者の所望する項目の書籍中での場所を決定する装置」である点で共通である。

してみると、本願発明と引用例1発明とは、
「読者にとって関心のある印刷情報の刊行物での場所を決定する装置であって、
印刷情報を有する刊行物と、
機械が読み取り可能なフォーマットで前記印刷情報、前記刊行物内でのその場所を表わす情報を記憶する、前記刊行物に固定されている記憶手段と、
前記記憶手段の内容をサーチすると共に、前記関心のある印刷情報の前記刊行物中での場所を同定するプロセッサ手段と、
を具備する前記装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明において記憶手段に記憶された「印刷情報」は、発明の詳細な説明を参酌すると「本の本文(テキスト)」であるとも解釈できるのに対し、引用例1発明の「項目」は上記4.対比で検討したように、印刷情報の一部ではあるが本文全体とはいえない点で一応相違する。
[相違点2]本願発明の「記憶手段」は「機械が読み取り可能なフォーマットで前記印刷情報、前記刊行物内でのその場所を表わす情報及び前記印刷情報に関係する付加的情報」記憶しており、その「付加的情報は前記印刷情報に関係するテキスト情報、音響情報、図形情報のようなもの」であり、本願発明の「プロセッサ手段」は前記付加的情報を同定するものであるのに対し、引用例1発明の記憶装置はそのような情報を記憶しておらず、制御回路は付加情報を同定するものではない点で相違する。
[相違点3]本願発明は「前記記憶手段を前記プロセッサ手段と取外し可能に相互接続し、前記刊行物に固定されているコネクタ手段」を備えるのに対し、引用例1発明はそのような構成を備えない点で相違する。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例1発明においては、索引情報と共に記憶装置に記憶された「項目」は印刷情報の一部であって、本の内容全体(本文)とはいえない。
しかし、本の内容を索引する手段として、本の内容全体を電子化したものを検索対象として検索し、所望の内容の記述箇所を得る構成は、本願出願前周知の技術である(例えば、OASYS CDView V3.0 forWindows START GUIDE Microsoft Windows 初版、富士通株式会社、1995年11月、p.2-5,20-29には、CD-ROMに格納された各書籍の情報を検索、表示するソフトウェアが備える検索手段として、索引及び全文検索の両者を備えることが開示されている。また、増永良文、マルチメディア電子教科書の開発研究、情報処理学会研究報告93-DBS-94、社団法人情報処理学会、1993年7月23日、第93巻第65号、p.175?184には、電子化された教科書において、従来の目次や索引による検索に加えて、全文検索技術による文中の語彙の横断的な検索機能を付加しキーワードの出現箇所を提示する機能を付加し得ることが開示されている。)
してみると、書籍に電子的な索引手段を配設した引用例1発明において、電子的な索引手段として上記周知の技術を採用し、機械が読み取り可能なフォーマットで本の本文(テキスト)である前記印刷情報、前記刊行物内でのその場所を表わす情報を記憶手段に記憶させるよう構成することは、当業者が容易に想起し得る事項である。

[相違点2]について
引用例1発明において記憶手段に記憶された情報は索引のための情報のみであるが、書籍等の印刷された刊行物について、その内容に関連する諸処の付加的な情報(例えば印刷内容の補足説明のためのテキストや、画像、動画、アニメーションなど)を記憶する記憶手段を設け、必要に応じて再生利用する構成は本願出願前周知である(例えば、特開昭56-38295号公報には、「印刷を施したシートの説明対象部位の内部にスイッチ手段を備えるシートを複数枚綴り込んだ書籍部の綴り部分に説明語に対応するデータを記憶させたリードオンリーメモリを組込み、この書籍部と別体、かつ、着脱自在の本体には合成音声作成用マイクロプロセッサとオーディオ装置とを組み込んで前記書籍部との間をコネクタを用いて着脱自在に電気的に接続することにより、前記説明対象部位の押圧によって対応する説明音声を発生せしめ、かつ、前記本体に対して書籍部は別内容のものと差替可能としたことを特徴とする説明音声を有する書籍。」(特許請求の範囲)が記載されている。また、特開昭62-59095号公報には、「本発明に係る電子ファイルは,文章や絵図などを記載したり印刷したシートをファイルして成るブック(Book)に集積回路等を装着し,その各ページに関係のある説明や画像などのデータを予めメモリに書き込んでおくとか,使用者が書き込めるようにしてあり,専用の出力再生装置や一般のテレビジョン,ラジオ受信器あるいはステレオ再生器などによって,それらの記憶内容を再生できるようになっている。」(第1頁左下欄第20行?同右下欄第8行)ことが開示されている。また、特開平6-262877号公報には、断片的な静止画印刷情報と共に連続的な動画情報や音響情報をも読者に提供し得る液晶表示装置付き書籍が開示され、その動作として「【0028】本実施例の液晶表示装置付書籍αの仕様は、このような具体的実施態様を呈し、次にその動作に付き詳説する。印刷媒体Bのみを参照する際には、一般の書籍と同様に取り扱う。液晶表示による画像情報の表示を要求する場合には、操作スイッチ5を操作することにより、目的とする画像情報を指定する。【0029】操作スイッチ5の操作により、内蔵のROMやバッテリーバックアップされたRAMに予め書き込まれた複数の情報の内、目的とする一部の情報が逐次CPUにロードされ、演算処理を経てLCDコントローラーに送出される。LCDコントローラーに送出された情報は、読者が視認可能な画像情報としてドットマトリックス液晶表示器4に表示される。【0030】 この時、連続的に情報を読み出して演算処理を行い、ドットマトリックス液晶表示器4に逐次表示することにより、動画の連続表示を可能と做す。 収納時には図2の如く折り畳むことにより、印刷媒体Bやドットマトリックス液晶表示器4の表示面を保護し操作スイッチ5の誤操作を防止しつつ、一般の書籍と同様に少ない収納面積で本棚に保管し得る。 本実施例は、断片的な静止画情報と共に連続的な動画情報を読者に提供し得る。」と記載されている。)
引用例1発明の書籍に対して、その内容に関連する諸処の情報を付加しようとすることは、上記周知技術に照らして当業者が容易に想起し得る事項である。そして、その際に、それらの情報を記憶させるための記憶手段および再生利用する情報を同定するための手段を別途設けるか、既に書籍に備えられた記憶装置及び制御回路を用いるかは、当業者が適宜選択し得る事項である。

[相違点3]について
引用例1発明において、記憶装置とプロセッサ手段とは書籍に固定された電子索引器に内装されているものである。
しかしながら、書籍と関連する情報を記録した記録手段を書籍に配設(固定)し、当該記録手段と、当該記録手段の記録内容を読み出し所定の処理を行う別体の情報処理手段とを相互に接続するコネクタ手段を書籍に設置する構成は、引用例2に記載されているように本願出願前周知の技術である(他に、特開昭56-38295号公報には「印刷を施したシートの説明対象部位の内部にスイッチ手段を備えるシートを複数枚綴り込んだ書籍部の綴り部分に説明語に対応するデータを記憶させたリードオンリーメモリを組込み、この書籍部と別体、かつ、着脱自在の本体には合成音声作成用マイクロプロセッサとオーディオ装置とを組み込んで前記書籍部との間をコネクタを用いて着脱自在に電気的に接続することにより、前記説明対象部位の押圧によって対応する説明音声を発生せしめ、かつ、前記本体に対して書籍部は別内容のものと差替可能としたことを特徴とする説明音声を有する書籍。」(特許請求の範囲)が開示されている。また、実願昭60-48897号(実開昭61-164563号)のマイクロフィルムには、製本された印刷物に内蔵された索引表示を行うための索引表示装置において、「索引ファイルのみを表表紙2内に実装し、表表紙2には接栓を設け、ストローク入力パッド3,表示部4,および情報処理部5をカード状に一体化して、これを適宜に表表紙2に装着して使用するように」(第7頁13?18行)する構成が記載されている。)。
してみると、引用例1発明において上記周知技術を採用することで、記憶装置(記憶手段)と制御回路(プロセッサ手段)を別体として構成し、前記記憶手段を前記プロセッサ手段と取外し可能に相互接続し、前記刊行物に固定されているコネクタ手段を備える構成とすることは、当業者が容易に想起し得る事項である。

さらに、本願発明の効果を勘案しても、本願発明が引用文献1、2に記載された発明及び周知技術から容易に想到できる範囲を超える格別な点を認めることはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願に係る発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-10 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2007-12-26 
出願番号 特願平7-343744
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨高瀬 勤辻本 泰隆  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 長 由紀子
手島 聖治
発明の名称 印刷情報とともに付加的情報を含む装置及びその電子的サーチ方法  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 林 鉐三  
代理人 清水 邦明  

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