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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1178141
審判番号 不服2005-11646  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-21 
確定日 2008-05-14 
事件の表示 平成11年特許願第160162号「表示装置及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月15日出願公開、特開2000-347622〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年6月7日の出願であって、平成17年5月17日付け(発送日同月24日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月21日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年7月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成17年7月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2 理由
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲である、
「【請求項1】電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子と、書き込み時に供給された制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段と、から構成された複数の画素を備える表示素子と、
電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、各書き込み時の前記制御信号の入力により前記複数の画素の選択される前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させる発光時間を、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給することにより制御する第2制御手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの
期間に対し、前記発光時間を1/3以下となるように供給される電流を制御する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素は、供給された制御信号を保持するとともに前記第1制御手段に供給する信号保持手段と、前記信号保持手段に前記制御信号を供給する信号供給手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、前記複数の画素の全ての前記第1制御手段に、前記電流供給源からの電流を実質的に同時に供給する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示素子は、それぞれ少なくとも1つの画素を有する第1画素群と、第2画素群と、を備え、前記第1画素群の前記第1制御手段に前記制御信号が供給された後、前記第2画素群の前記第1制御手段に前記制御信号が供給され、前記第2制御手段は、前記第1画素群の前記第1制御手段に前記電流供給源からの所定の電流を供給開始後、前記第2画素群の前記第1制御手段に前記電流供給源からの所定の電流を供給する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
表示装置の駆動方法であって、
前記表示装置は、
電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子と、制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段と、から構成された複数の画素を備える表示素子と、
電流を供給する電流供給源と、
前記電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給する第2制御手段と、
を備え、
前記駆動方法は、
各書き込み時に、前記複数の画素のそれぞれの前記第1制御手段に前記制御信号を供給する書き込み工程と、
発光時間に、前記書き込み時に前記制御信号の入力により選択される画素の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させるために、前記第2制御手段が前記選択される画素の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給する発光工程と、
からなり、
前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、前記発光時間を1/3以下となるように供給される電流を制御する、
ことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記電流供給源は所定の期間毎に供給する電流量を変位する、ことを特徴とする請求項5に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項7】
前記第2制御手段は、所定の期間毎に、前記電流供給源からの電流を供給する前記発光時間を変位させる、ことを特徴とする請求項5に記載の表示装置の駆動方法。」

を、補正後の特許請求の範囲である

「 【請求項1】
電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子と、書き込み時に供給された制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段と、から構成された複数の画素を備える表示素子と、
電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、各書き込み時の前記制御信号の入力により前記複数の画素の選択される前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させる発光時間を、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給することにより制御する第2制御手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、前記発光時間を常時1/3以下となるように供給される電流を制御する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素は、供給された制御信号を保持するとともに前記第1制御手段に供給する信号保持手段と、前記信号保持手段に前記制御信号を供給する信号供給手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、前記複数の画素の全ての前記第1制御手段に、前記電流供給源からの電流を実質的に同時に供給する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示素子は、それぞれ少なくとも1つの画素を有する第1画素群と、第2画素群と、を備え、前記第1画素群の前記第1制御手段に前記制御信号が供給された後、前記第2画素群の前記第1制御手段に前記制御信号が供給され、前記第2制御手段は、前記第1画素群の前記第1制御手段に前記電流供給源からの所定の電流を供給開始後、前記第2画素群の前記第1制御手段に前記電流供給源からの所定の電流を供給する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
表示装置の駆動方法であって、
前記表示装置は、
電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子と、制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段と、から構成された複数の画素を備える表示素子と、
電流を供給する電流供給源と、
前記電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給する第2制御手段と、
を備え、
前記駆動方法は、
各書き込み時に、前記複数の画素のそれぞれの前記第1制御手段に前記制御信号を供給する書き込み工程と、
発光時間に、前記書き込み時に前記制御信号の入力により選択される画素の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させるために、前記第2制御手段が前記選択される画素の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給する発光工程と、
からなり、
前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、前記発光時間を常時1/3以下となるように供給される電流を制御する、
ことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記電流供給源は所定の期間毎に供給する電流量を変位する、ことを特徴とする請求項5に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項7】
前記第2制御手段は、所定の期間毎に、前記電流供給源からの電流を供給する前記発光時間を変位させる、ことを特徴とする請求項5に記載の表示装置の駆動方法。」
と補正するものである。(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1及び請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記発光時間を1/3以下」を「前記発光時間を常時1/3以下」と限定するものであるから平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(3)本件補正発明1
本件補正発明1を改めて記載すると次のとおりである。
「【請求項1】
電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子と、書き込み時に供給された制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段と、から構成された複数の画素を備える表示素子と、
電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、各書き込み時の前記制御信号の入力により前記複数の画素の選択される前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させる発光時間を、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給することにより制御する第2制御手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、前記発光時間を常時1/3以下となるように供給される電流を制御する、
ことを特徴とする表示装置。」

(4)引用刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-232649号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ア-a)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は電界発光表示装置およびその駆動方法に関し、さらに詳しくは、エレクトロルミネッセンス発光を行う表示装置の駆動方法に関する。」(段落【0001】)

(ア-b)「【0003】【発明が解決しようとする課題】上記した従来の1画素2セルTFT構造の有機ELディスプレイでは、・・・有機EL素子1の発光輝度は、信号ラインYnに供給される階調信号と、駆動TFT2及び選択TFT3の電気的特性に依存している。このため、・・・均一な特性のTFTパネルの製造は実現が困難であるという問題がある。
【0004】この発明が解決しようとする課題は、制御性のよい階調表示が行えると共に、低消費電力動作が可能な電界発光表示装置の駆動方法を得るにはどのような手段を講じればよいかという点にある。」(段落【0003】-【0004】)

(ア-c)「【0014】【発明の実施の形態】以下、この発明に係る電界発光表示装置の駆動方法の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。・・・図1は本実施形態に係る電界発光表示装置の駆動回路図である。同図に示すように、電界発光素子としての有機EL素子101が、X-Yマトリクス状に配置されたそれぞれの画素領域に形成されている。・・・1つの画素領域には、走査ラインXおよび信号ラインYに接続された選択トランジスタQ_(1)と、この選択トランジスタQ_(1)に接続されたキャパシタCp_(1)及びゲートが接続された駆動トランジスタQ_(2)とが設けられている。この駆動トランジスタQ_(2)は、有機EL素子101の一方の電極(図ではカソード電極)に接続されている。そして、選択トランジスタQ_(1)が走査ラインXからの選択信号により選択され、且つ信号ラインYより駆動信号が出力されると駆動トランジスタQ_(2)がオン状態になるように設定されている。この選択信号及び駆動信号は、ON/OFFの2値信号である。なお、駆動トランジスタQ_(2)は、オフ状態では有機EL素子101に比べて充分高抵抗で、オン状態では有機EL素子101に比べて無視できるほど充分低抵抗となるようにその特性が設定されている。」(段落【0014】)

(ア-d)「【0022】以下、本実施形態の電界発光表示装置100の駆動方法について説明する。まず、本実施形態は、電界発光表示装置100における走査ライン103の本数を例えば480本、信号ライン109Aの本数を例えば640本に設定する。そして、本実施形態では図5(a)、(b)に示すような階調表示方式を用いる。同図(a)のように、1フレーム期間(1画面の表示を保持する期間)が16.7msとして、1フレーム期間を8つのサブフレーム期間(サブフレーム1?8)に分割する。各サブフレーム期間は、2.1msであり、アドレス書込みを行うためのアドレス期間Tadd(1.0ms)とそれぞれのサブフレーム期間固有の値の駆動電圧或いは駆動電流を印加する発光設定期間Ton(1.1ms)とからなる。有機EL素子101は、図5(c)に示すように印加される電圧に対して発光輝度(cd/m^(2))が直線性を示しており、発光輝度の比は発光駆動電圧値の比或いは発光駆動電流値の比に比例する。各サブフレーム期間に固有の発光駆動電圧の比率或いは駆動電流の比率は、サブフレーム1で1とすると、サブフレーム2は2、サブフレーム3は4、サブフレーム4は8、サブフレーム5は16、サブフレーム6は32、サブフレーム7は64、サブフレーム8は128となる。このような発光設定期間において、1の発光設定期間で1という輝度を表示するとすると、サブフレーム1のみを点灯することで1の輝度が得られる。輝度2のときはサブフレーム2のみを、輝度3のときはサブフレーム1とサブフレーム2を、4のときはサブフレーム3のみを点灯するというように、以下同様にして組み合わせにより合計256の階調を表示することが可能となる。」(段落【0022】)

(ア-e)「【0023】各サブフレームにおいては、アドレス期間Taddにアドレス書込みが終了した後に発光設定期間Tonの間アドレス選択された電界発光素子101にこの発光設定期間に固有の値の電圧或いは駆動電流を同時に印加させる。その次のサブフレームではアドレス期間Tadd中にアドレス書き換えを行って発光設定期間Tonにアドレス選択された電界発光素子101にこの発光設定期間に固有の値の電圧或いは電流を同時に印加させる。このようにサブフレーム1からサブフレーム8まで1フレーム期間内に行う。アドレス選択のタイミングは、図2に示したスイッチS_(1)で制御し、駆動電圧駆動電流供給のタイミングはスイッチS_(2)で制御することができる。すなわち、1つのサブフレーム期間内において、走査ラインと信号ラインとの線順次走査により、このサブフレーム特有の発光量で点灯すべき画素の選択トランジスタQ_(1)がオン状態となる。そして、選択トランジスタQ_(1)がオンになると信号ラインから選択トランジスタQ_(1)を介して駆動トランジスタQ_(2)のゲート電極への書込みが行われ、アドレス期間Tadd内においては駆動トランジスタQ_(2)にチャネルが形成された状態が保持される。このアドレス期間で点灯すべき画素がすべて選択された後、すなわちアドレス期間Tadd終了後の発光設定期間Tonまで選択状態が保持される。発光設定期間Ton中には、アノード電極116に接続されたそれぞれの発光設定期間Tonに固有の値に設定された駆動電圧或いは駆動電流を供給する可変駆動電源PsがスイッチS_(2)でオンされる。この発光設定期間での駆動電圧或いは駆動電流の値は、上記したようにそれぞれのサブフレームでその高さ設定されている。ここで、1フレーム期間中の全アドレス期間Taddの時間の長さと全発光設定期間Tonの時間の長さを等しくすると、各アドレス期間Taddは、1.04ms程度となり、各走査ラインX1?X480の1発光設定期間で選択される時間は、2.1μs程度となる。」(段落【0023】)

(ア-f)「【0025】上記したように、本実施形態によれば、駆動電圧Vdd_(1)?Vddn或いは駆動電流Idd_(1)?Iddnのスイッチングに、オン/オフの2値信号で制御するスイッチS_(2)を用い、且つ選択トランジスタQ_(1)と駆動トランジスタQ_(2)にもオン/オフの2値信号をいずれかを選択的に出力するため、図9のソース・ドレイン間電圧V_(SD)をソース・ドレイン間電流が飽和電流になる範囲に設定するので、各トランジスタの電圧V_(SD)の1V?5V間でのV-I特性に多少のばらつきがあっても、良好に輝度階調を制御することができ、安定した階調制御を行うことが可能となる。このように、1つの有機EL素子に対し選択トランジスタQ_(1)、駆動トランジスタQ_(2)、スイッチS_(2)の3つのスイッチング素子が構成している場合、それぞれのわずかな電気的特性のずれが相乗され、1つの画素として大きく輝度階調がずれてします恐れがあるが、選択トランジスタQ_(1)や駆動トランジスタQ_(2)およびスイッチS_(2)は、飽和電流領域での電圧値を用いオン/オフ制御を行うだけであるため、特性に多少のバラツキがあった場合でもその影響を受けにくいという利点がある。また、有機EL素子101にとって発光効率のよい電圧値の駆動電圧、或いは発光効率のよい電流値の駆動電流として設定できるため、低消費電力化を達成することができる。さらに、可変駆動電源Psでの電圧或いは電流の制御は、電界発光表示装置100が得ようとする階調数に比較して非常に少ない数の種類(階調数が256に対して8)の値に電圧或いは電流制御するだけでよいため、制御性を高めることができる。」(段落【0025】)

(ア-g)「【0026】以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、構成の要旨に付随する各種の設計変更が可能である。例えば、上記した実施形態においては、サブフレーム期間におけるアドレス期間内でアドレス選択状態を保持するために、選択トランジスタQ_(1)と駆動トランジスタQ_(2)とを備えた構成としたが、図7の1画素等価回路で示すような構成としてもアドレス選択状態を保持することができる。同図においてQ_(3)は選択トランジスタQ_(4)は駆動トランジスタ、Cp_(2)は容量を示している。なお、この駆動トランジスタQ_(4)は別途容量Cp_(2)が接続されているため、EEPROM機能を有しないTFTを用いることができる。駆動トランジスタQ_(4)のソース・ドレインの一方が各有機EL素子101の各カソード電極に接続され、他方がスイッチS_(2)を介して負電位Vdd′或いは負の電流Idd′を供給する直流電源Ps′に接続されている。有機EL素子101は、発光表示領域全域に亙って形成されたアノード電極が接地され構造であり、駆動トランジスタQ_(4)が選択され、スイッチS_(2)がオンすると発光する。また、上記した実施形態においては、電界発光素子として直流電界で発光できる有機EL素子101に特に有効である・・・。」(段落【0026】)

(ア-h)「【0027】なお、本実施形態では、1フレーム期間中の全アドレス期間Taddの時間の長さと総発光設定期間Tonの時間の長さを等しくしたが、選択トランジスタQ_(1)、Q_(3)、駆動トランジスタQ_(2)、Q_(4)の特性に応じて、アドレス期間Tadd、発光設定期間Tonの一方を長くしたり、他方を短くしたりしてもよい。・・・また、可変駆動電源Psが供給する駆動電圧Vdd_(1)?Vddnは、交流でもよい。」(段落【0027】)

(ア-i)「【0030】【発明の効果】以上の説明から明らかなように、この発明によれば、電界発光表示装置を制御性よく階調表示できる共に、低消費電力動作を可能にするという効果を奏する。」(段落【0030】)

(ア-j)図面の【図7】には、可変駆動電源Ps′と駆動トランジスタQ_(4)との間にスイッチS_(2)が設けられた回路図が描かれている。

上記摘記事項(ア-d)の「各サブフレーム期間は、2.1msであり、アドレス書込みを行うためのアドレス期間Tadd(1.0ms)とそれぞれのサブフレーム期間固有の値の駆動電圧或いは駆動電流を印加する発光設定期間Ton(1.1ms)とからなる。」、及び上記摘記事項(ア-e)の「1フレーム期間中の全アドレス期間Taddの時間の長さと全発光設定期間Tonの時間の長さを等しくすると、各アドレス期間Taddは、1.04ms程度となり、各走査ラインX1?X480の1発光設定期間で選択される時間は、2.1μs(当審注:「ms」の誤記と認める。)程度となる。」との記載、さらに上記摘記事項(ア-h)の「選択トランジスタQ_(1)、Q_(3)、駆動トランジスタQ_(2)、Q_(4)の特性に応じて、アドレス期間Tadd、発光設定期間Tonの一方を長くしたり、他方を短くしたりしてもよい。」との記載から、「1サブフレーム期間に対し、発光設定期間を常時1/2程度となるように」することが読み取れる。

したがって、上記摘記事項(ア-a)ないし(ア-j)より、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。
「駆動電流供給により発光する有機EL素子101と、アドレス期間のアドレス書込みにより前記有機EL素子101への電流供給が可能となる駆動トランジスタQ_(4)と、からそれぞれ構成された複数の画素領域と、
可変駆動電源PSと前記駆動トランジスタQ_(4)との間に配置され、各アドレス期間のアドレス書込みにより前記複数の画素の選択される前記有機EL素子101の発光設定期間を、所定の駆動トランジスタQ_(4)に前記可変駆動電源PSからの駆動電流をスイッチングするスイッチS_(2)と、を備え、
前記スイッチS_(2)は、所定の画素において、1サブフレーム期間に対し、前記発光設定期間を常時1/2程度となるように駆動電流をスイッチングすることとする電界発光表示装置100。」

(5) 対比
本件補正発明1と刊行物1発明を対比する。
ア 刊行物1発明の「駆動電流供給により発光する有機EL素子101」、「複数の画素領域」、「電界発光表示装置100」は、本件補正発明1の「電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子」、「複数の画素を備える表示素子」、「表示装置」にそれぞれ相当している。
イ 刊行物1発明の「アドレス期間のアドレス書込み」は、アドレス期間に供給された信号によることが明らかであり、当該信号は本願補正発明1の「制御信号」に相当しており、刊行物1発明の「駆動トランジスタQ_(4)」は「アドレス期間のアドレス書込みにより前記有機EL素子101への電流供給が可能となる」ものであるから、刊行物1発明の「アドレス期間のアドレス書込みにより前記有機EL素子101への電流供給が可能となる駆動トランジスタQ_(4)」は、本願補正発明1の「書き込み時に供給された制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段」に相当している。
ウ 上記摘記事項(ア-e)によれば、「各サブフレームにおいては、アドレス期間Taddにアドレス書込みが終了した後に・・・駆動電流を同時に印加させる。その次のサブフレームではアドレス期間Tadd中にアドレス書き換えを行って・・・電流を同時に印加させる。」のであるから、刊行物1発明の「1サブフレーム期間」は、本件補正発明1の「書き込み時から次の書き込み時までの期間」に相当している。
エ 刊行物1発明の「可変駆動電源P_(S)」、「発光設定期間」は、本件補正発明1の「電流供給源」、「発光時間」にそれぞれ相当していて、刊行物1発明の「各アドレス期間のアドレス書込みにより前記複数の画素の選択される前記有機EL素子101」は、本件補正発明1の「各書き込み時の前記制御信号の入力により前記複数の画素の選択される前記有機エレクトロルミネッセンス素子」に相当している。
そして、刊行物1発明の「スイッチS_(2)」は「可変駆動電源P_(S)と前記駆動トランジスタQ_(4)との間に配置され」るものであって、これは本件補正発明1の「電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され」ることに相当しているから、本件補正発明1の「第2制御手段」と刊行物1発明の「スイッチS_(2)」とは、「電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、各書き込み時の前記制御信号の入力により前記複数の画素の選択される前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させる発光時間を、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給することにより制御する第2制御手段」であって、「前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、前記発光時間を常時所定値となるように供給される電流を制御する」ものである点で共通している。

すると、本件補正発明1と刊行物1発明とは、次の点で一致し、
[一致点]
「電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子と、書き込み時に供給された制御信号の入力により前記有機エレクトロルミネッセンス素子への電流供給が可能となる第1制御手段と、から構成された複数の画素を備える表示素子と、
電流供給源と前記第1制御手段との間に設置され、各書き込み時の前記制御信号の入力により前記複数の画素の選択される前記有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させる発光時間を、所定の前記第1制御手段に前記電流供給源からの電流を供給することにより制御する第2制御手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、所定の画素において、前記書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、前記発光時間を常時所定値となるように供給される電流を制御する、
ことを特徴とする表示装置。」
次の相違点で相違する。
[相違点]
第2制御手段により制御される「発光時間」が、書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、本件補正発明1は「常時1/3以下」であるのに対して、刊行物1発明は「常時1/2程度」である点。

(6)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点について
動画表示を行う表示装置において、その動画表示能力の向上などを目的とし、表示装置を構成する画素を、1走査期間内の短い時間に集中して発光する「インパルス型」の輝度波形となるように駆動することは周知技術である。
(例えば、特開平4-302289号公報(特に、【0013】に「動きを滑らかにする別の方法として発光時間を短くする方法があるが、これを実施すると表示装置の発光輝度が下がってしまう。そのため図4(a)に示すように発光時間の少なくとも30%から70%を越えない範囲に設定すれば動きも滑らかになる。」と記載されている。また、図4(a)を併せてみるに、当該記載における「少なくとも30%から70%」のうち、例えば「30%」は本願補正発明1の「1/3以下」に含まれている。)、
特表平8-500915号公報(特に、第8頁第24行-第9頁第17行に「本発明によって、動いている像を表示している場合に知覚されるボケまたは細部の欠落の量は、大幅に減少する。・・・動いている像の知覚される解像度を改善する「暗い」期間が、パネルの順次の表示フィールドの見る人への表示の間に挿入される。・・・動きの知覚は・・・かなり改善される。」、第21頁第18行-第23頁第3行に「図5(D)は、上述した方法において駆動される図1および2のの表示パネル10の出力の時間的な動作を説明する。図5(B)と比較して、動いている物を示す表示出力は、半分の時間のみ保たれる・・・ランプの点灯の・・・より短い点灯が、CRTディスプレイの振る舞いにより近い近似となる。・・・表示パネルのアドレス期間と、休止、非アドレス期間との相対的な持続時間(図3のfおよびDの各々)もある程度変化させることができる。・・・パネルアドレス期間(f)および休止期間(D)を例えばTV信号周期のおのおの1/3および2/3、またはその逆にすることができる。・・・図2の表示システムの実施例に関して、さらに光源を点灯してパネルを照明する時間長を変化させてもよい。図4に示す実施例において、照明点灯Lは、期間f(A)、f(b)、その他のほぼ1/3と、期間f’のほぼ1/4とを使用する・・・。」と記載されている。)、及び、
特開平4-328791号公報(特に、段落【0006】に「そこで本発明は・・・EL装置の高速駆動方法と高速ELマトリックスを与えることを課題とする。」、段落【0016】-【0026】に「図6(A)を参照して・・・ELマトリックスの作動を説明する。・・・【0017】任意の一走査期間T_(S)において・・・【0018】・・・データの書き込みがすべてのブロックについて終了すると(図6(A)の時間Tw経過時)・・・スイッチング素子QDがオン状態となり、このときEL素子は引加されている交流電圧Vaにより駆動されて発光する。・・・【0020】・・・発光させる駆動信号を受けたEL素子もその走査期間内に発光を停止される。その後、次の走査が開始されるまでの時間Trは駆動停止され、また、Cs1およびCs2の放電がなされる(図6(A))。【0021】尚、ラッチQ_(L)によりいずれのEL素子も同時に駆動され同時に駆動停止されるので、引加電圧Vaはこの駆動期間中のみ作動させるようにしてもよい。【0022】一般にデータの書き込みは非常に短時間に実行できるから、このように三種の作動を適当に同期させることによって同一走査期間内に発光データの書き込み、発光駆動、および発光駆動の停止まですべてを行なうことができる。・・・【0026】・・・従って本駆動方法では駆動時間Tdを短縮することにより直ちに上記比Lon/Loffが自動的に大きく改善される。従って残る問題はLonを許容限界内に保ちつつ駆動時間Tdを短縮することだけである。そのためには・・・パラメータTsおよびTdの適当な値を選択すればよい。」と記載されている。)参照。)
そして、引用刊行物の摘記事項(ア-h)の「本実施形態では、1フレーム期間中の全アドレス期間Taddの時間の長さと総発光設定期間Tonの時間の長さを等しくしたが、選択トランジスタQ_(1)、Q_(3)、駆動トランジスタQ_(2)、Q_(4)の特性に応じて、アドレス期間Tadd、発光設定期間Tonの一方を長くしたり、他方を短くしたりしてもよい。」によれば、刊行物1発明の「発光時間」は、書き込み時から次の書き込み時までの期間に対し、「1/2程度」より「長くしたり・・・短くしたりしてもよい。」ものであって、「動画表示能力の向上」という周知な技術課題を解決する目的で上記周知技術を刊行物1発明に適用し、刊行物1発明の「発光時間」を「常時1/3以下」とすることは当業者が容易に想到できたことである。

イ 本件補正発明1が有する作用効果について
本件補正発明1が奏する作用効果についても、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件補正発明1は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(7)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成17年7月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成17年3月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、上記「第2」の「2」の「(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

第4 刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、上記「第2」の「2」の「(4)」に記載したとおりのものである。

第5 対比・判断
本願第1発明は、本件補正発明1の発明特定事項から、「前記発光時間を常時1/3以下」から「常時」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願第1発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明1が前記「第2」の「2」の(5)及び(6)に記載したとおり、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願第1発明についても、同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-25 
結審通知日 2008-03-04 
審決日 2008-03-21 
出願番号 特願平11-160162
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 下中 義之
山下 雅人
発明の名称 表示装置及びその駆動方法  
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