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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B60B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60B
管理番号 1178179
審判番号 不服2005-11664  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-22 
確定日 2008-05-15 
事件の表示 平成6年特許願第227662号「自動車ホイール用リムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成8年4月9日出願公開、特開平8-91005〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年9月22日の特許出願であって、原審において平成17年5月11日付けで平成17年1月28日付けの手続補正を却下するとともに、補正却下の決定と同日付けで拒絶査定がなされた。
請求人(出願人)は、この査定を不服として平成17年6月22日に本件審判を請求するとともに、同年7月20日付けで手続補正(前置補正)をしたものである。

第2 平成17年7月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年7月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
原審で決定した、平成17年1月28日付け手続補正についての補正却下の決定は、妥当なものである。
そうすると、平成17年7月20日付けの手続補正(以下「本件補正」)に係る請求項1は、平成16年8月23日付けの手続補正に係る請求項1に記載された、
「【請求項1】 スチール製の板状素材を用意し、
前記板状素材を円筒状に丸めて周方向両端部を突合せ、
前記突合わされた両端部を溶接接合して円筒状素管となし、
前記円筒状素管の軸方向両端部を拡径して両端拡径筒状管となし、
前記両端拡径筒状管を成形ロールでリム形に成形する、
工程からなる自動車ホイール用リムの製造方法において、
前記板状素材を用意する工程で、ビードシート部とドロップ部側壁との接続部、レッジ部とドロップ部側壁との接続部を含み、リム形に成形後に軸方向にR形状をなす部分を該部分に接続して軸方向とほぼ直線状に延びる部分よりも厚さ大とし、該厚さの変化のための凹凸を板状素材のリム成形後の内周面側に対応する片面のみに形成し他面は平面とした板状素材を用意することを特徴とする自動車ホイール用リムの製造方法。」 を、

「【請求項1】 スチール製の板状素材を用意し、
前記板状素材を円筒状に丸めて周方向両端部を突合せ、
前記突合わされた両端部を溶接接合して円筒状素管となし、
前記円筒状素管の軸方向両端部を拡径して両端拡径筒状管となし、
前記両端拡径筒状管を成形ロールでリム形に成形する、
工程からなる自動車ホイール用リムの製造方法において、
前記板状素材を用意する工程で、
(イ)リム形に成形後のビードシート部とドロップ部側壁との接続部、リム形に成形後のレッジ部とドロップ部側壁との接続部を含み、リム形に成形後に軸方向にR形状をなす部分をリム形に成形後に該部分に接続して軸方向にほぼ直線状に延びる部分よりも厚さ大とし、
(ロ)該厚さの変化のための凹凸を板状素材のリム成形後の内周面側に対応する片面のみに形成し他面は平面とし、
(ハ)リム形に成形後に、フランジ部とビードシート部との接続部、および該フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位の厚さが、ビードシート部とドロップ部側壁との接続部、ビードシート部とレッジ部との間の接続部、レッジ部とドロップ部側壁との接続部、ドロップ部底壁とドロップ部側壁との接続部、の厚さより大となるように、4.2?8mmの厚さの範囲で、板状素材各部の厚さを決定した、
板状素材を用意する
ことを特徴とする自動車ホイール用リムの製造方法。」
に補正したものといえる。

[理由A]
本件補正に係る請求項1の発明特定事項(ハ)における「フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位」との限定事項は、平成16年8月23日付けの手続補正書における請求項1の発明特定事項である「ビードシート部とドロップ部側壁との接続部、レッジ部とドロップ部側壁との接続部を含み、リム形に成形後に軸方向にR形状をなす部分を該部分に接続して軸方向とほぼ直線状に延びる部分」(この記載によれば「接続部を含むR形状をなす部分」であることしか規定されておらず、各接続部以外の「フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位」をも含むものではないため。)の限定事項とはいえない。
そして、「フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位」の厚さを大としたことにより、実質的にリムフランジの変形防止という新たな課題も追加されることとなった。
したがって、本件補正に係る「フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位」という上記補正事項は、平成16年8月23日付け手続補正に係る上記発明特定事項を限定的に減縮(内的付加)したものとはいえず、特許請求の範囲の減縮を目的とした補正には該当しない。
また、「フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位」という上記補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明のいずれを目的としたものでもない。
そうすると、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項各号に掲げるいずれの事項をも目的とした補正ではない。

ところで、上記補正事項である「フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位」の厚さについて特定した事項が、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号でいう特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)に相当するものであったとしても、本件補正に係る請求項1の発明(以下「本願補正発明」という)は、以下の[理由B]により進歩性を欠如するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[理由B]
1.引用刊行物等及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物とその記載事項は、以下のとおりである。
なお、下記記載中の下線は、当審で加入したもの。

[引用刊行物]
・特開昭54-163775号公報(以下「引用例1」)
・特開昭55-144346号公報(以下「引用例2」)
・特開平 2- 99401号公報(以下「引用例3」)

[引用例1]
車輪用リムの製造法であって、特許請求の範囲には、
「所要の肉厚より成る素材鋼管又は鋼板或は巻回形成した円筒体を圧搾して所定断面の車輪用リムを形成するに当って、リムの隅角部に該当する部分の全部又は一部に適当大きさの膨出部を該素材面に突設した素材鋼管又は鋼板或は鋼板を巻回形成した円筒体を使用することを特徴とする車輪用リムの製造法。」と記載され、
また、第1頁右欄15行?第2頁左欄2行には、
「・・・・所定断面の車輪用リムを形成するに当って、素材鋼管又は鋼板或はこれを巻回形成した円筒体1のリムに形成したとき隅角部となる部分の全部又は最も損傷を受け易い任意の一部に膨出部2を突設し、これを所定の形状に圧搾形成することによって、例えばリムの深底部aとビード部bとの隅角部或はビード部bとフランジ部cとの隅角部を厚肉状2’に整形・・・」と記載されている。

したがって、図面に示された工程順序とともに上記記載事項を参照すると、製造工程の概略としては、まず、素材鋼板を用意すること、次に、この素材鋼板を巻回形成して円筒体とすること、最後に、この円筒体を所定の形状に圧搾形成して車輪用リムを完成することになる。
なお、ここで膨出部を突設するタイミングは、素材鋼板の段階なのか、円筒体にしたあとの段階なのかは、必ずしも明らかではない。
また、図面を参照すると、膨出部は、円筒体の内周面側に対応する片面のみに形成し他面(外周面)は平面となっていることが分かる。
そうすると、引用例1には、

「素材鋼板を用意し、
前記素材鋼板を巻回形成した円筒体となし、
前記円筒体を所定の形状に圧搾形成してリム形に成形する、
工程からなる車輪用リムの製造法において、
(イ)リム形に成形後のビード部bと深底部a側壁との接続部を含み、リム形に成形後に軸方向にR形状をなす膨出部をリム形に成形後に該膨出部に接続して軸方向にほぼ直線状に延びる部分よりも厚さ大とし、
(ロ)該厚さの変化のための凹凸を素材鋼板のリム成形後の内周面側に対応する片面のみに形成し他面は平面とした、
車輪用リムの製造法」
に関する発明(以下「引用発明」)が記載されているものと認められる。

[引用例2]
デイスクホイール用アルミニウム合金製リムの製造方法であって、第2頁左下欄7行?17行には、
「本発明は第3図(イ)?(ニ)に示すようにリムに成形加工するアルミ基板(7)に、予じめ第1図に示すリム外周面のウエル部両端半径部(2)、(2’)及びビードシート部の一端半径部(5)、(5’)に夫々相当する部分(8)、(8’)、(9)、(9’)の肉厚を厚くした基板を用い、これを従来と同様リング状に加工し、その両端を熔接等により接合した後ロール成形加工によりリムを製造するものである。このような基板としては、押出加工又は圧延加工等により、基板長手方向に前記肉厚部(8)、(8’)、(9)、(9’)を形成し、これを所定巾に切断して用いればよい」と記載されている。

図面とともに上記記載事項を参照すると、引用例2には、リム製造用基板(本願補正発明の「板状素材」に相当)を用意した後のホイール用リムの製造工程、すなわち、
「リム製造用基板(板状素材)を用意し、
前記リム製造用基板(板状素材)を円筒状に丸めて周方向両端部を突合せ、前記突合わされた両端部を溶接接合して円筒状素管となし、
前記円筒状素管を成形ロールでリム形に成形する、
工程からなる自動車ホイール用リムの製造方法」
に関する技術が記載されているものと認められる。

[引用例3]
大型トラック、バス等に用いられるタイヤ用リムであって、第1,4図を参照すると、本願補正発明のリムと同様の形状をしたレッジ部付きのリムについて記載されている。

一方、本願出願前に頒布された刊行物として特開昭59-109404号公報(以下「周知例1」)及び実願昭59-122430号(実開昭61-37002号)のマイクロフィルム(以下「周知例2」)がある。

[周知例1]
自動車用ロードホイールリムであって、第5,6図並びに関連説明箇所を参照すると、リング状帯板40のリムの内側側面及び外側側面の両側面にある耳部相当部位43(本願補正発明のフランジ部に相当)の板厚t_(43)を底部相当部位42に比して厚く形成したもの、耳部30,30の板厚t_(30)は底部20の板厚t_(20)に比して若干厚く形成したものが記載されている。

[周知例2]
自動車のホイールリムであって、第1,2図とともに
第4頁15行?第5頁2行には、
「ホイールリムの各ビードシート部からフランジ部にかけての部分が厚肉に形成されているので、該フランジ部の剛性が大きく、自動車が縁石に乗り上げたり、また、路上の石等を跳ね上げたりしてフランジ部に大きな衝撃が加わっても、該フランジ部が容易に外方に拡開することはなく、タイヤチューブからエアが漏れ難くなる。」と記載され、
第6頁17行?第7頁2行には、
「ホイールリム1がその両端部が中央部よりも厚肉の不均一部材によって形成されていることにより、第2図に拡大詳示するように、上記各ビードシート部4からフランジ部7にかけての部分の肉厚t_(1)は他の部分の肉厚t_(2)よりも厚肉に形成されている。」と記載されている。

2.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「素材鋼板」、「円筒体」、「ビード部b」、「深底部a側壁」、「膨出部」及び「車輪用リム」は、本願補正発明の「スチール製の板状素材」「円筒状素管」「ビードシート部」「ドロップ部側壁」「R形状をなす部分」及び「自動車ホイール用リム」に相当するから、両者は、

「スチール製の板状素材を用意し、
前記板状素材を円筒状素管となし、
前記円筒状素管を所定の形状に圧搾形成してリム形に成形する、
工程からなる自動車ホイール用リムの製造方法において、
(イ)リム形に成形後のビードシート部とドロップ部側壁との接続部を含み、リム形に成形後に軸方向にR形状をなす部分をリム形に成形後に該部分に接続して軸方向にほぼ直線状に延びる部分よりも厚さ大とし、
(ロ)該厚さの変化のための凹凸を板状素材のリム成形後の内周面側に対応する片面のみに形成し他面は平面とした、
自動車ホイール用リムの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点1>
スチール製の板状素材を用意した後、
本願補正発明では、
前記板状素材を円筒状に丸めて周方向両端部を突合せ、
前記突合わされた両端部を溶接接合して円筒状素管となし、
前記円筒状素管の軸方向両端部を拡径して両端拡径筒状管となし、
前記両端拡径筒状管を成形ロールでリム形に成形する、工程順序であるのに対して、
引用発明では、
このような工程順序であるのかは明らかではなく、前記板状素材を円筒状素管となし、前記円筒状素管を所定の形状に圧搾形成してリム形に成形する、工程が示されている点

<相違点2>
リム形に成形後にR形状をなす部分を厚さ大とするにあたり、本願補正発明では、板状素材の段階で厚さ大としているのに対し、引用発明では、板状素材の段階であるのか、円筒状素管とした段階なのか、そのどちらのタイミングで膨出部2(R形状をなす部分に相当)を突設しているのか明らかでない点

<相違点3>
リム形に成形後にリムの形状が、
本願補正発明では、ドロップ部側壁に隣接してレッジ部を有するタイプのリムであるのに対して、
引用発明では、そもそもレッジ部を有さないタイプのリムである点

<相違点4>
本願補正発明では、
(ハ)リム形に成形後に、フランジ部とビードシート部との接続部、および該フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位の厚さが、ビードシート部とドロップ部側壁との接続部、ビードシート部とレッジ部との間の接続部、レッジ部とドロップ部側壁との接続部、ドロップ部底壁とドロップ部側壁との接続部、の厚さより大となるように、板状素材各部の厚さを決定した、(即ち、厚さ大の部分においても厚さの大小関係がある)のに対して、
引用発明では、厚さ大の部分において厚さに大小関係があるかどうかは言及されていない点

<相違点5>
板状素材各部の厚さを決定するに当たり、本願補正発明では、4.2?8mmの厚さの範囲であるのに対して、引用発明では、素材鋼板(板状素材)の厚さについての言及がない点

3.当審の判断(相違点の検討)
上記相違点について検討する。

<相違点1> について
引用例2には、
板状素材(リム製造用基板)を用意した後、
前記板状素材を円筒状に丸めて周方向両端部を突合せ、
前記突合わされた両端部を溶接接合して円筒状素管となし、
前記円筒状素管を成形ロールでリム形に成形する、
工程順序が示されているので、この板状素材からリム形に成形する工程順序を引用発明の素材鋼板(板状素材)を用意した後の自動車ホイール用リムを製造する工程に採用するとともに、成形ロールでリム形に成形する前に前記円筒状素管の両端部を従来公知の適宜手段で拡径して両端拡径筒状管としておき上記相違点1でいう本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到できることである。

<相違点2> について
引用例2の上記摘記事項及び第3図を参照すると、リムに成形加工するアルミ基板(板状素材)に予じめリム外周面のウエル部両端半径部(2)、(2’)及びビードシート部の一端半径部(5)、(5’)に夫々相当する部分(8)、(8’)、(9)、(9’)の肉厚を厚くした基板を用いたもの、そして、この基板をリング状に加工し、その両端を接合したものがが開示されている。
そうすると、引用発明においても引用例2に記載の上記技術事項を採用して素材鋼板(スチール製の板状素材)の段階でリム形に成形後にR形状をなす部分に対応する素材鋼板の部分の厚さを大としておき、その後、この素材鋼板をリング状に加工し、その両端を接合するようなすことは、当業者にとっては容易に想到し得ることである。

<相違点3> について
引用例3には、大型トラック、バス等に用いられるタイヤ用リムであって、レッジ部付きのリムが示されている。
そうすると、スチール製の板状素材を用意する段階でトラック、バス等に用いられるタイヤ用リムである場合には、レッジ部付きのリムとなるような板状素材を用意すること自体は困難なことではなく、レッジ部とドロップ部側壁との接続部の厚さを他の接続部と同様に厚さ大とすることも容易に想到し得ることである。
<相違点4> について
接続部等の厚さ大の部分においても厚さに大小関係があることを限定したものであるが、周知例1,2には、フランジ部の剛性を大きくするためにホイールリムの各ビードシート部からフランジ部にかけての部分を厚肉に形成したものが開示されているから、引用発明の自動車ホイール用リム(車輪用リム)においても、リム形に成形後にリムの外側と内側の両側面に位置するフランジ部とビードシート部との接続部、および該フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位の厚さが、他の接続部よりも厚さが大となるように設計して、相違点4でいう本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到できることというべきである。

<相違点5> について
トラック、バス用のホイールリムを製造するような場合、板状素材としてスチール製の板状素材を用い、厚さが4.2?8mmの厚さの範囲のものを用いることは困難なことではない。
なお、本件補正に係る請求項1の記載によれば、板状素材各部の厚さが、4.2?8mmの厚さの範囲であるとなっているが、本願明細書の段落【0009】の記載によれば、上記の数値範囲にあるのは成形後のリムの厚さ寸法となっている。

そして、上記相違点1?5を併せ備える本願補正発明の効果について検討しても、引用発明及び引用例2,3に記載の事項並びに周知例1,2に記載の事項から当業者が予測し得る範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例2,3に記載の事項並びに周知例1,2に記載の事項を参酌することによって引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[まとめ]
以上のとおり、本件補正は、上記[理由A]又は[理由B]のいずれの理由からも、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

第3 本願の発明について
1.本願の発明
上記のとおり平成17年7月20日付けの手続補正は却下され、また、平成17年1月28日付けの手続補正を却下した原審における決定も妥当なものであるから、本願の請求項に係る発明は、平成16年8月23日付けの手続補正に係る請求項1に記載された次のとおりのものと認定する。
「【請求項1】 スチール製の板状素材を用意し、
前記板状素材を円筒状に丸めて周方向両端部を突合せ、
前記突合わされた両端部を溶接接合して円筒状素管となし、
前記円筒状素管の軸方向両端部を拡径して両端拡径筒状管となし、
前記両端拡径筒状管を成形ロールでリム形に成形する、
工程からなる自動車ホイール用リムの製造方法において、
前記板状素材を用意する工程で、ビードシート部とドロップ部側壁との接続部、レッジ部とドロップ部側壁との接続部を含み、リム形に成形後に軸方向にR形状をなす部分を該部分に接続して軸方向とほぼ直線状に延びる部分よりも厚さ大とし、該厚さの変化のための凹凸を板状素材のリム成形後の内周面側に対応する片面のみに形成し他面は平面とした
板状素材を用意することを特徴とする自動車ホイール用リムの製造方法。」
(以下「本願発明」という)

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項は、上記「第2[理由B]」に記載したとおりである。

3.判断
本願発明は、上記の本願補正発明から発明特定事項(ハ)の限定事項、すなわち、
「(ハ)リム形に成形後に、フランジ部とビードシート部との接続部、および該フランジ部とビードシート部との接続部からフランジ先端部までのすべての部位の厚さが、ビードシート部とドロップ部側壁との接続部、ビードシート部とレッジ部との間の接続部、レッジ部とドロップ部側壁との接続部、ドロップ部底壁とドロップ部側壁との接続部、の厚さより大となるように、4.2?8mmの厚さの範囲で、板状素材各部の厚さを決定した、」
を除外したものである。

(なお、本願発明は、本願補正発明から発明特定事項(イ)の3箇所の「リム形に成形後」の限定事項も除外しているが、当該限定事項の有無は、実質的に進歩性の判断に影響を及ぼすものではない。)

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点は、前述した本願補正発明と引用発明との一致点と同じである。
一方、本願発明と引用発明との相違点は、前述した本願補正発明と引用発明との<相違点1>?<相違点5>のうちの<相違点1>?<相違点3>と同じである。
(ここで、上記「第2[理由B]」の「2.発明の対比」、「3.当審の判断」の中で、本願補正発明とあるのは、本願発明と読み替える。)
しかしながら、この<相違点1>?<相違点3>については、「第2[理由B]」のところで検討したように引用例2及び引用例3に記載の技術事項を参酌することによって当業者が容易に想到することができたものといえるから、結局、本願発明は引用例2及び引用例3に記載の技術事項を参酌することによって引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-17 
結審通知日 2008-03-18 
審決日 2008-04-01 
出願番号 特願平6-227662
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60B)
P 1 8・ 575- Z (B60B)
P 1 8・ 572- Z (B60B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 智洋森林 宏和  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 岸 智章
柴沼 雅樹
発明の名称 自動車ホイール用リムの製造方法  
代理人 田渕 経雄  

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