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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1178183
審判番号 不服2005-15211  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-08 
確定日 2008-05-15 
事件の表示 平成10年特許願第159297号「エアベルト及びエアベルト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月21日出願公開、特開平11-348721〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年6月8日の特許出願であって、原審において平成17年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月8日に本件審判請求がなされるとともに、同年9月1日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

第2 平成17年9月1日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年9月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成17年9月1日付けの手続補正(以下「本件補正」)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
【請求項1】
車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、ガス導入口からガスが導入されることにより膨張するエアベルトであり、該エアベルト内を該ガス導入口に連通した第1の室と、該第1の室に対し離隔部によって離隔された第2の室との少なくとも2室に区画してなり、該離隔部は該第1の室内のガス圧力が所定値以上になったときに第1の室と第2の室とを連通させるものであるエアベルトにおいて、
該離隔部はエアベルトの長手方向に延在しており、第1の室及び第2の室がそれぞれエアベルトの一端側から他端側まで延在しており、該ガス導入口はエアベルトの一端側に設けられていることを特徴とするエアベルト。

上記補正は、補正前の請求項1に「該ガス導入口はエアベルトの一端側に設けられている 」という内容を加入するもので、当初明細書の段落【0023】の記載に基づいて「ガス導入口」についての限定を付加するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下で検討する。

2.引用刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物及びその記載事項は、以下のとおり。
なお、下記記載中における下線は、当審で加入したものである。
[引用刊行物1] 特開平5-85301号公報(以下「引用例1」)
[引用刊行物2] 特開平9-188218号公報(以下「引用例2」)

[引用例1]

インフレータブルシートベルト装置に関するものであって、
【発明の詳細な説明】の段落【0001】には、
「【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも一部が袋状に形成されており、通常時は帯状に保形されるとともに、緊急時にガス発生手段からのガスにより膨張展開するウェビングを有するインフレータブルシートベルト装置に関するものである。」と記載され、
【要約】の【構成】には、
「通常時、袋状ベルト2bは帯状に保形されている。ベルト装着のため、タング5をバックル装置4に係合すると、ガス流動孔4aとガス流動孔5aとが整合して一つのガス流動路を形成するが、通常時にはガス流動孔4aとガス流動孔5aとはキャップ11,12により遮断している。通常時はガスジェネレータ9が作動しないので、インフレータブルシートベルト装置は、従来の一般的なシートベルト装置と同様の乗員拘束機能を発揮する。緊急時に、ガスジェネレータ9から高圧のガスが発生し、発生したガスはキャップ11,12を割って、袋状ベルト2bに侵入する。その結果、袋状ベルト2bはほぼ瞬時にかつ確実に膨張展開する。したがって、乗員はこのように膨張展開した袋状ベルト2bにより確実に受け止められる。」と記載されている。

図面とともに上記記載事項を総合すると、引用例1には、
「車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、ガス流動孔5aからガスが導入されることにより膨張する袋状ベルト2bであり、該袋状ベルト2b内を該ガス流動孔5aに連通した膨張展開可能な袋状部2bを備える袋状ベルト2bにおいて、
膨張展開可能な袋状部2bが袋状ベルト2bの一端側から他端側まで延在しており、該ガス流動孔5aは袋状ベルト2bの一端側に設けられている袋状ベルト2b。」
に関する発明(以下「引用発明」)が記載されているものと認められる。

[引用例2]

ガスバッグ装置用袋体に関するものであって、段落【0036】?【0042】には、以下のように記載されている。
「【0036】(第2実施形態)本第2実施形態のガスバッグ装置用袋体は、図6ないし図9に示すように袋体1を構成する前記前部袋体112の中央部に連通手段としての小孔5を形成するとともに、中央部を重ね合わせて450ないし490デニールの縫合糸によって縫合して第1の破断部31を形成し、前記前部袋体112の外周部121の外側に乗員当接部13を構成する第2の袋体12の外周縁を内側に折り1200デニールの縫合糸で縫合し、該第2の袋体12の外周側部の複数箇所をつまみ重ね合わせて400ないし420デニールの縫合糸によって縫合することにより第2の破断部32を形成するものであり、前記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0037】上記構成の第2実施形態のガスバッグ装置用袋体は、前記インフレータ14より前記第1の袋体11内にガスが噴出され図6に示されるように前記第1の袋体11が膨出し、該第1の袋体11内に作用する内圧が増加して中央部を重ね合わせて縫合している前記第1の破断部31に第1の設定値以上の力が作用すると、該第1の破断部31を縫合している縫合糸が徐々に破断することによりエネルギーを吸収するという効果を奏するものである。
【0038】また第2実施形態のガスバッグ装置用袋体は、前記第1の破断部31の破断によるエネルギーを吸収するとともに、一点鎖線で示すように外方に膨出した前記前部袋体112の中央部に形成された前記連通手段としての前記小孔5を介してガスを前記第2の袋体12内に徐々に放出するので、図7に示されるように折り畳まれていた前記第2の袋体12が外方に徐々に膨出して、該袋体1内の実効容積を徐々に増加させ、図11に示されるように前記第1の袋体11内の内圧の増加を抑制することにより、前記袋体1の乗員への当接を防止するという効果を奏する。
【0039】また第2実施形態のガスバッグ装置用袋体は、乗員が膨出した前記第2の袋体12の前記乗員当接部13に当接した後前記第2の破断部32に第2の設定値以上の力が作用すると、該複数の第2の破断部32を縫合する縫合糸を徐々に破断することによりエネルギーを吸収するとともに、前記袋体133が半径方向外方にさらに拡大して該袋体1内の容積を増加させ、図11に示されるように内圧の増加を抑制することにより、乗員が該袋体1に当接した時の乗員のシート方向への跳ね返りを有効に防止するという効果を奏する。
【0040】さらに第2実施形態のガスバッグ装置用袋体は、前記第2の破断部32が前記前部袋体112によって仕切られた前記第2の袋体12に形成されているので、前記前部袋体112の中央部を縫合する前記第1の破断部31を破断する力より低い力で前記第2の破断部32を破断させて、速いタイミングでのエネルギー吸収を実現するという効果を奏するとともに、前記前部袋体112の中央部に前記小孔5を形成して内圧の高い部屋から低い部屋へのガスの流れを許容するので内圧の異常上昇を抑制して、乗員のシート方向への跳ね返りを防止するという効果を奏する。
【0041】(第3実施形態)本第3実施形態のガスバッグ装置用袋体は、図11に示すように前記第2実施形態における第2の袋体12の外周側部の複数箇所をつまみ重ね合わせて400デニールの縫合糸によって縫合することにより形成した前記第2の破断部32の外側に外部にガスを排出する排出口6を形成するものであり、前記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0042】前記第3実施形態のガスバッグ装置用袋体は、上記第2実施形態と同様の作用効果を奏する他、前記第2の破断部32が前記前部袋体112によって仕切られた前記第2の袋体12に形成されているので、前記前部袋体112の中央部を縫合する前記第1の破断部31を破断する力より低い力で前記第2の破断部32を破断させて、速いタイミングでのエネルギー吸収を実現するという効果を奏するとともに、前記第2の破断部32の外側に外部に形成された前記排出口6が、前記第2の袋体12内のガスを外部に有効に排出するので、図12に示されるように該第2の袋体12内の内圧を減少させ、乗員のシート方向への跳ね返りを一層有効に防止するという効果を奏する。」

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ガス流動孔5a」、「袋状ベルト2b」及び「膨張展開可能な袋状部2b」は、本願補正発明の「ガス導入口」、「エアベルト」及び「第1の室」に相当するものである。
そうすると、両者は、
「車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、ガス導入口からガスが導入されることにより膨張するエアベルトであり、該エアベルト内を該ガス導入口に連通した第1の室を備えるエアベルトにおいて、
第1の室がエアベルトの一端側から他端側まで延在しており、該ガス導入口はエアベルトの一端側に設けられているエアベルト。」
である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点1>
ガスが導入されて膨張可能な室について、本願補正発明では、第1の室に対し離隔部によって離隔された第2の室との少なくとも2室に区画してなり、該離隔部は該第1の室内のガス圧力が所定値以上になったときに第1の室と第2の室とを連通させるものであるのに対して、引用発明では、第1の室しか備えていない点。
<相違点2>
本願補正発明では、該離隔部はエアベルトの長手方向に延在しており、第1の室及び第2の室がそれぞれエアベルトの一端側から他端側まで延在しているのに対して、引用発明では、エアベルトの一端側から他端側まで延在している第1の室しか備えていないので当然このような構成にはなっていない点。

4.当審の判断(相違点の検討)
上記の相違点について検討する。
<相違点1> について
引用例2には、段落【0041】、【0042】及び図11,12に記載されている第3実施形態を参照すると、ガスが導入されて膨張可能な袋体(室)について、第1の袋体11(本願補正発明の第1の室に相当)に対し第1の破断部31(離隔部に相当)によって離隔された第2の袋体12(第2の室に相当)との少なくとも2室に区画してなり、該第1の破断部31(離隔部)は該第1の袋体11(第1の室)内のガス圧力が所定値以上になったときに第1の袋体11(第1の室)と第2の袋体12(第2の室)とを連通させるようにしているガスバッグ袋体(エアバッグ)に関する技術が開示されているから、エアバッグに関するガス充填技術もエアベルトに関するガス充填技術も基本的には相違があるとはいえないから、上記引用例2に記載のガスバッグ袋体(エアバッグ)へのガス充填技術を引用発明における膨張展開可能な袋状部2b(第1の室に相当)を有する袋状ベルト2b(エアベルトに相当)に採用して、第1の室(第1の袋体)に対し離隔部によって離隔された第2の室(第2の袋体)との少なくとも2室に区画してなり、該離隔部は該第1の室内のガス圧力が所定値以上になったときに第1の室と第2の室とを連通させるように構成して上記相違点1でいう本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点2> について
上記相違点1についてで検討したように、第1の室に対し離隔部によって離隔された第2の室とを区画するにあたっては、引用発明では第1の室に相当する膨張展開可能な袋状部2bがエアベルトに相当する袋状ベルト2bの一端側から他端側まで長手方向に延在しているのであるから、第1の室であるこの袋状部2bの膨張展開方向に倣って離隔部及び第2の室も長手方向に延在させるよう沿わして上記相違点2でいう本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

そして、上記相違点1,2を併せ備える本願補正発明の作用・効果について検討しても、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.小括り
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願の発明について
1.本願の発明
平成17年9月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成17年6月17日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」)は、次のとおりである。
【請求項1】
車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、ガス導入口からガスが導入されることにより膨張するエアベルトであり、該エアベルト内を該ガス導入口に連通した第1の室と、該第1の室に対し離隔部によって離隔された第2の室との少なくとも2室に区画してなり、該離隔部は該第1の室内のガス圧力が所定値以上になったときに第1の室と第2の室とを連通させるものであるエアベルトにおいて、
該離隔部はエアベルトの長手方向に延在しており、第1の室及び第2の室がそれぞれエアベルトの一端側から他端側まで延在していることを特徴とするエアベルト。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「ガス導入口」に関しての限定事項である「ガス導入口はエアベルトの一端側に設けられている」との構成を除外したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に上記した構成を付加した本願補正発明が上記「第2 3.」に記載したとおり引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

なお、請求人は審尋回答書で特許請求の範囲の補正案を提示しているが、乗員への衝撃吸収のためにガス抜きを行うべくガスを大気に放出するようにベントホールを設けることはこの技術分野においては従来からの技術常識であるが、引用例2の摘記事項の下線部分の記載からもガス抜きを行うべく排出口6(ベントホールに相当)を設けたものが見てとれる。
したがって、上記補正案で示された「第2の室がベントホールを介して大気に連通している」という技術事項も当業者が容易に想到し得ることであり、その結果として、「ガス発生器が作動してガスがエアベルト内に導入された場合、まず第1の室が膨張し、その後離隔部が開いて第2の室が膨張し、ガスがベントホールから流出する」という作用を生ずるものとすることも当業者にとっては自明な事項であるといわざるを得ない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の2?6に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-04-01 
出願番号 特願平10-159297
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 裕治朗  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 佐藤 正浩
柿崎 拓
発明の名称 エアベルト及びエアベルト装置  
代理人 重野 剛  

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