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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1178185
審判番号 不服2005-17056  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-05 
確定日 2008-05-15 
事件の表示 平成10年特許願第159295号「エアベルト及びエアベルト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月21日出願公開、特開平11-348719〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成10年6月8日の特許出願であって、平成17年8月8日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年9月5日に本件審判の請求がなされたものである。
そして、その各請求項に係る発明は、平成17年6月24日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。

【請求項1】
車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、内部にガスが導入されることにより膨張するエアベルトにおいて、
該エアベルトは、内部にガスが導入される袋状ベルトと、該袋状ベルトを覆っているカバーとを有してなり、
該袋状ベルトは、1枚の長方形の布をベルトの長手方向の折り返し線に沿って折り返して結合したものであることを特徴とするエアベルト。

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物とその記載事項は、以下のとおりである。

[刊行物1] 特開平5-85301号公報 (以下「引用例1」)
[刊行物2] 特開平8-244554号公報 (以下「引用例2」)

[刊行物1]
発明の詳細な説明の【0001】段落には、
「【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも一部が袋状に形成されており、通常時は帯状に保形されるとともに、緊急時にガス発生手段からのガスにより膨張展開するウェビングを有するインフレータブルシートベルト装置に関するものである。」と記載され、
同じく【0011】には、
「【作用】このような構成をした本発明に係るインフレータブルシートベルト装置においては、タングがバックル装置に挿入係合したとき、バックル側ガス流動孔とタング側ガス流動孔とが連通して、ガス発生手段とウェビングの袋状部分とを連通するガス流動路が形成されるので、緊急時にはガス発生手段から発生したガスがこのガス流動路を通って、ウェビングの袋状部分に侵入する。したがって、ウェビングは瞬時にかつ確実に膨張展開する。・・・」と記載され、
同じく【0015】?【0019】段落には、
「【0015】図1に示すように、本実施例のインフレータブルシートベルト装置1は、左右一方の片側(図の例では乗員の右側)から他側へ上下方向斜めに延設される肩ベルト2と、左右一方の片側(図の例では乗員の右側)から他側へ延設されるラップベルト3と、車体床部等に配設されたバックル装置4と、ベルト装着時にバックル装置4に挿入係止されるタング5と、肩ベルト2を案内する中間ガイド6とを備えている。
【0016】肩ベルト2は、従来の一般的なシートベルトと同様のノーマルベルト2aと、このノーマルベルト2aの一端に連結された袋状のベルト2bとから構成されている。ノーマルベルト2aは中間ガイド6に摺動自在に案内されるようになっており、その他端が車体に固定されたシートベルトリトラクタ(ELR)7に連結されている。このシートベルトリトラクタ7によりノーマルベルト2aは所定量巻かれている。ノーマルベルト2aを中間ガイド6に貫通させてリトラクタ7によって巻き取るようにすることにより、肩ベルト2のまき取り、引出しが滑らかに行うことができ、ベルトのゆるみが簡単かつ確実に吸収できるようになる。
【0017】袋状ベルト2bは乗員が当接する部分に位置するようになっており、ノーマルベルト2aとの連結端部と反対側の端部がタング5に連結されている。このように、袋状ベルト2bをタング5に直接連結した場合、バックル装置4の位置が一定であるので、袋状ベルト2bの長さを容易に設定することができる。
【0018】また、ラップベルト3は、従来の一般的なシートベルトと同様のノーマルベルトにより形成され、その一端がタング5に連結されているとともに、他端が車体に固定されたシートベルトリトラクタ(ELR)8に連結されている。更にバックル装置4には、車両衝突時等の緊急必要時に作動して高圧のガスを発生するガスジェネレータ(G.G.)9が連結されている。
【0019】肩ベルト2の袋状のベルト2bは、図2に実線で示すように袋状のベルト本体2cを折り畳んで例えばカバー2d(図2では2bとなっているが2dの誤記)により覆うと共にこのカバー2dの両端を縫製2eすることにより、通常時には帯状に保形されている。このカバー2dは、ガスジェネレータ9からの反応ガス導入時には縫製部2eが肩ベルト2の膨張力で簡単に外れて肩ベルト2の膨張を妨げないように設定されており、この時には袋状ベルト2bは二点鎖線で示すように確実に膨張展開するようになっている。・・・」と記載されている。

図1,2とともに上記記載事項を総合すると、引用例1には、
「車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、内部にガスが導入されることにより膨張するインフレータブルシートベルトにおいて、
該インフレータブルシートベルトは、内部にガスが導入される袋状のベルト2bと、該袋状のベルト2bを覆っているカバー2dとを有してなるインフレータブルシートベルト。」
に関する発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。

[刊行物2]
側部用エアバッグの製造方法であって、
「【0013】次に、上記実施例の製造方法では、図3に示す如く、上記補強部2の折り返し片2aを外側にして、上記エアバッグ用布1を2つの長辺1a,1bをほぼ2分する線L_(2)で2つ折りし、上記補強部2を除く開放縁部4,5をL字状の縫製によって縫合する。そしてその後、同図に示す如き袋状に形成されたエアバッグ用布1を開口部6から反転して裏返すことにより、図4に示す如きエアバッグを得る。」
と記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「インフレータブルシートベルト」、「袋状のベルト2b」及び「カバー2d」は、本願発明の「エアベルト」、「袋状ベルト」及び「カバー」に相当するのは明らかであるから、両者は、

「車両の座席乗員を保護するためのベルトであって、内部にガスが導入されることにより膨張するエアベルトにおいて、
該エアベルトは、内部にガスが導入される袋状ベルトと、該袋状ベルトを覆っているカバーとを有してなるエアベルト。」
である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点1>
袋状ベルトを構成する布に関して、本願発明では、当該布(基布)の形状が長方形の布であるのに対して、引用発明では、当該布(基布)の形状が不明である点。
<相違点2>
袋状ベルトに関して、本願発明では、1枚の布をベルトの長手方向の折り返し線に沿って折り返して結合したものであるのに対して、引用発明では、このような構造のものであるのか不明である点。

4.当審の判断(相違点の検討)
上記相違点について検討する。
<相違点1> について
引用例1の図1に記載のシートベルトのベルト自体の形状は帯状であり、この帯状(長い長方形)のベルトに適合するような形状の袋状ベルトを想定する場合、ベルトと同形状の帯状(長い長方形)をした袋状ベルトを想定すること、すなわち、袋状ベルトを構成する布(基布)に関して、当該布(基布)の形状がベルトに適合するような形状の長方形である布を想定することは当業者にとっては普通に思いつくことであり、自然な発想といえるものであるから、布(基布)を長方形の布としたことは技術的に何ら困難性のあることではない。むしろ、本願明細書に添付の図5の形状(非長方形)をした基布11,12を用いた従来の袋状ベルトを想定することの方が特殊ともいえる。
したがって、袋状ベルトを構成する布(基布)に長方形の布を採用して上記相違点1でいう本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点2> について
引用例2の図1?3に示されたエアバッグの製造方法の工程図を参照しつつ同引用例の上記摘記箇所の下線部(当審で付加)を参照すると、「上記エアバッグ用布1を2つの長辺1a,1bをほぼ2分する線L_(2)で2つ折りし、上記補強部2を除く開放縁部4,5をL字状の縫製によって縫合する。」との記載から、引用例2には、エアバッグ用布に関して、1枚の布を折り返し線に沿って折り返して結合するという技術思想が開示されているといえる。
そして、引用発明のシートベルトも引用例2に記載のエアバッグも袋体にガスを充填して乗員を保護する技術であり、ガスを充填する袋体の構造について引用発明のシートベルトに上記エアバッグの技術を転用できないという何らかの阻害要件があるとはいえない。
そうすると、上記相違点1のところで検討したように袋状ベルトを構成する布に関して長方形の布を用いた場合においても、上記引用例2に記載されている折り返して結合するという技術思想を考慮すると、この長方形の布(基布)に対しても折り返し線に沿って折り返して結合したものとすること、そして、折り返すにあたってはベルトの長手方向の折り返し線に沿って折り返すか、ベルトの幅方向の折り返し線に沿って折り返すかは当業者が選択し得る事項であるから、結局、上記相違点2でいう本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことというべきである。

そして、上記相違点1,2を併せ備える本願発明の奏する作用・効果について検討してみても、引用発明並びに引用例2に記載の事項から当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明並びに引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-11 
結審通知日 2008-03-18 
審決日 2008-04-01 
出願番号 特願平10-159295
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 裕治朗  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 佐藤 正浩
柿崎 拓
発明の名称 エアベルト及びエアベルト装置  
代理人 重野 剛  

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