• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1178197
審判番号 不服2006-2859  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-16 
確定日 2008-05-15 
事件の表示 特願2002- 50864「モノパルスレーダ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 5日出願公開、特開2003-248054〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年2月27日付の出願であって、平成18年1月10日付(発送日平成18年1月17日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年3月17日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成18年3月17日付手続補正書による補正(以下、「本願補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本願補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本願補正は、特許請求の範囲の請求項1の内容を、補正前の、
「【請求項1】
送信アンテナから送信信号を放射し、前記送信信号が目標物により反射された反射信号を、二つ以上の受信アンテナで受信し、前記目標物を検知するモノパルスレーダ装置であって、
前記二つ以上の受信アンテナに接続された複数の信号線路と、
前記送信信号を前記二つ以上の受信アンテナに接続された複数の信号線路の夫々へ校正用信号として供給する校正用信号線路と、
前記校正用信号線路を導通又は遮断状態にするスイッチと前記校正用信号に基づいて算出される擬似目標物の方位角がモノパルスレーダの所定の角度になるように調整する信号処理手段とを有し、
前記信号処理手段は、前記送信信号が前記校正用信号線路を介して前記校正用信号として供給される場合に、前記擬似目標物の方位角を算出することを特徴とするモノパルスレーダ装置。」
から、
「【請求項1】
送信アンテナから送信信号を放射し、前記送信信号が目標物により反射された反射信号を、二つ以上の受信アンテナで受信し、前記目標物を検知するモノパルスレーダ装置であって、
前記二つ以上の受信アンテナに接続された複数の信号線路と、
前記送信信号の一部を上記複数の信号線路の夫々へ校正用信号として供給する校正用信号線路と、
前記校正用信号線路を導通又は遮断状態にするスイッチと
前記校正用信号を低周波信号で変調する変調手段と
前記複数の信号線路それぞれに設けられた増幅器と、
前記増幅器の出力を前記送信信号と混合し中間周波数の信号に変換する混合器と
前記混合器の出力を入力とし、前記校正用信号に基づいて算出される擬似目標物の方位角がモノパルスレーダの所定の角度になるように調整する信号処理手段とを有し、
前記信号処理手段は、前記送信信号が前記校正用信号線路を介して前記校正用信号として供給される場合に、前記擬似目標物の方位角を算出することを特徴とするモノパルスレーダ装置。」
と補正する補正事項を含むものである。(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2.補正の適否
上記の補正内容は、請求項1に係る「モノパルスレーダ装置」が、「校正用信号を低周波信号で変調する変調手段」、「複数の信号線路それぞれに設けられた増幅器」、「増幅器の出力を送信信号と混合し中間周波数の信号に変換する混合器」を有するものであるとの限定、及び、その発明特定事項である「信号処理手段」が「混合器の出力を入力」とするとの限定を付加したものである。
したがって、上記補正事項は、平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-257921号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、艦船、航空機などの目標探知あるいはその追尾に使用されるモノパルスレーダ装置の送受信機に関するものである。」(段落【0001】)

(2)「【0002】
【従来の技術】図7は従来のモノパルスレーダ送受信機の受信機周波数特性を測定するための計測系を示すもので、1はモノパルス送受信機、2は標準信号発生器、3はスペクトラムアナライザである。
【0003】図7において、モノパルス送受信機1の受信機周波数特性を計測するには、標準信号発生器2をモノパルス送受信機1の受信信号入力端に、またスペクトラムアナライザ3をモノパルス送受信機1の受信信号出力端に接続する。標準信号発生器2は出力信号周波数を受信機の周波数帯域をスイープして標準信号を発生するよう手動にて設定される。受信信号入力端より入力された前記標準信号はモノパルス送受信機の受信利得だけ増幅されて受信信号出力端より出力される。受信信号出力端より出力された前記標準信号はスペクトラムアナライザ3に入力され、内部で電力検出された後表示される。前記標準信号は受信機帯域をスイープするよう設定されているため、前記スペクトラムアナライザ3の表示を出力することで受信機周波数特性を得ることができる。」(段落【0002】?【0003】)

(3)「【0006】図9は従来のモノパルスレーダ送受信機の構成を示すもので、5はコヒーレント発振器、6は送信周波数変換器、7は局部発振器、8は切換スイッチ、9は送受信機制御器、10は変調器、11は疑似信号発生器、12は送信電力増幅器(以下RFアンプと略す)、13は送受切換器、14はΣ方向性結合器、15はΔ方向性結合器、16はΣ受信周波数変換器、17はΣ中間周波数電力増幅器(以下ΣIFアンプと略す)、18はΣ可変減衰器、19はΣ位相検波器、20はΔ受信周波数変換器、21はΔ中間周波数電力増幅器(以下ΔIFアンプと略す)、22はΔ可変減衰器、23はΔ位相検波器である。
【0007】図9において、コヒーレント発振器5で発生した位相基準信号は、送信周波数変換器6に入力され、局部発振器7で発生した局部発振信号と周波数加算(アップコンバート)されて切換スイッチ8へ入力される。切換スイッチ8は送受信機制御器9からの送受切換タイミングにより入力された信号を送信タイミングでは変調器10へ、受信タイミングでは疑似信号発生器11へ切換える。上記切換スイッチ8により切換えられた送信信号は、変調器10へ入力されパルス変調された後RFアンプ12へ入力される。RFアンプ12は入力された送信信号の電力を一定利得だけ増幅し送受切換器13に送出する。
【0008】送受切換器13は、RFアンプ12からの信号を送受信機外に接続されたアンテナ装置へ送出し、またアンテナ装置から入力されたΣ受信信号はΣ方向性結合器14へ切換えて送出する。一方、前記切換スイッチ8にて切換えられ疑似信号発生器11に入力された送信信号は、送受信機制御器9からの疑似信号レベル制御信号によりレベル制御された後、疑似信号タイミング信号によりパルス変調されてΣ方向性結合器14とΔ方向性結合器15へ入力される。前記送受切換器13にて切換えられたΣ受信信号は、Σ方向性結合器14へ入力され疑似信号発生器11にて発生した疑似信号と混合されて出力される。前記Σ方向性結合器14の出力は、Σ受信周波数変換器16へ入力され、局部発振器7で発生した局部発振信号と周波数減算(ダウンコンバート)されてΣIFアンプ17へ入力される。ΣIFアンプ17は入力された受信信号を一定利得だけ電力増幅した後Σ可変減衰器18へ出力する。Σ可変減衰器18は送受信機制御器9からの利得制御信号により減衰量を変化させΣ受信機の利得を制御する。
【0009】Σ可変減衰器18の出力は、Σ位相検波器19へ入力され、コヒーレント発振器5にて発生した位相基準信号を用いて位相検波され、ΣIビデオ信号とΣQビデオ信号に変換される。また、送受信機外に接続されたアンテナ装置より入力されたΔ受信信号は、Δ方向性結合器15へ入力され疑似信号発生器11にて発生した疑似信号と混合されて出力される。前記Δ方向性結合器15の出力は、Δ受信周波数変換器20へ入力され、局部発振器7で発生した局部発振信号と周波数減算(ダウンコンバート)されてΔIFアンプ21へ入力される。ΔIFアンプ21は入力された受信信号を一定利得だけ電力増幅した後Δ可変減衰器22へ出力する。Δ可変減衰器22は送受信機制御器9からの利得制御信号により減衰量を変化させΔ受信機の利得を制御する。Δ可変減衰器22の出力は、Δ位相検波器23へ入力され、コヒーレント発振機1にて発生した位相基準信号を用いて位相検波され、ΔIビデオ信号とΔQビデオ信号に変換される。」(段落【0006】?【0009】)

(4)「【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1を示す構成図であり、図1において、5?23は前記従来技術と同様であり、24は計測起動スイッチ、25は計測系制御器、26はI切換スイッチ、27はIA/D変換器、28はq切換スイッチ、29はQA/D変換器、30は電力算出器、31はRAM(ランダム・アクセス・メモリ)、32は外部インタフェース器である。
【0016】前記図1のような構成において、計測起動スイッチ24を任意に入とすることで計測系制御器25に計測起動トリガが入力される。計測起動トリガが入力されると、計測系制御器25は疑似信号のドップラ周波数値及び疑似信号発生タイミングを送受信機制御器9に出力する。前記計測系制御器25からの信号により送受信機制御器9は疑似信号発生器11より前記ドップラ周波数と発生タイミングの疑似信号を発生しΣ方向性結合器14とΔ方向性結合器15からΣ受信系とΔ受信系に注入する。前記疑似信号は、Σ位相検波器19にてΣIビデオとΣQビデオに、Δ位相検波器23にてΔIビデオとΔQビデオに変換される。I切換スイッチ26は計測系制御器25からの切換信号によりΣIビデオ信号とΔIビデオ信号からΣIビデオ信号を選択してIA/D変換器27へ出力する。IA/D変換器27はI切換スイッチ26の出力信号をΣIビデオ信号の電圧値に相当するディジタル信号に変換し電力算出器30に出力する。
【0017】一方、Q切換スイッチ28は計測系制御器25からの切換信号によりΣQビデオ信号とΔQビデオ信号からΣQビデオ信号を選択しQA/D変換器29へ出力する。QA/D反感変換器29はQ切換スイッチ28の出力信号をΣQビデオ信号の電圧値に相当するディジタル信号に変換し電力算出器30に出力する。電力算出器30はΣIビデオ信号電圧値とΣQビデオ信号電圧値から“数1”で与えられる計算式に従いΣ受信電力をディジタル演算し、結果をRAM31の指定されたアドレスに保存する。前記RAM31にΣ受信電力値が保存されると直ちに計測系制御器25はI切換スイッチ26とQ切換スイッチ27に対して、ΔIビデオ信号とΔQビデオ信号を選択するよう信号を出力する。
【0018】前記選択信号により前記Σ受信電力と同様にしてΔ受信電力が算出されRAM31に保存される。前記のようにして、あるドップラ周波数に対してΣ受信電力とΔ受信電力がRAM31に保存されると、計測系制御器25はドップラ周波数を一定の周波数間隔だけ変化させて送受信機制御器9に設定する。前記ドップラ周波数を設定し疑似信号を発生した後、前記と同様にしてΣ受信電力とΔ受信電力を算出しRAM31に保存する。計測系制御器25は、ドップラ周波数を受信機の全周波数帯域にわたって一定の周波数間隔で変化させ、変化させるごとにΣ受信電力とΔ受信電力をRAM31に保存し計測を終了する。RAM31内に保存された、全受信帯域に対するΣ受信電力とΔ受信電力すなわちΣチャンネルとΔチャンネルの受信機周波数特性データは、任意に送受信機の外部に接続されたコンピュータによって外部インタフェース部32を経由して読み出される。読み出された前記受信機周波数特性データはデータ処理を施され、たとえば図2に示されるようなグラフとして表示される。」(段落【0015】?【0018】)

上記摘記事項(1)ないし(4)からみて、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

<刊行物1記載の発明>
「コヒーレント発振器5で発生した位相基準信号を周波数変換器6に入力して周波数加算し、切換スイッチ8を介して変調器10に入力してパルス変調し、RFアンプ12に入力して一定利得だけ増幅し、送受切換器13を経た信号を送信信号としてアンテナ装置へ送出し、送信信号が目標物により反射された受信信号を、アンテナ装置で受信し、目標物を検知するモノパルスレーダ装置であって、
受信信号を受けるアンテナ装置からのΣ受信信号の線路及びΔ受信信号の線路とからなる二つの信号線路と、
コヒーレント発振器5からの位相基準信号を周波数変換器6で周波数加算し、疑似信号発生器11を介して上記二つの信号線路にそれぞれ設けたΣ方向性結合器14及びΔ方向性結合器15にそれぞれへ疑似信号として入力する線路と、
周波数変換器6からの信号を変調器10へ入力する経路と疑似信号発生器11に入力する経路とに切り換える切換スイッチ8と、
二つのアンテナ装置からの二つの信号線路それぞれに設けられたΣIFアンプ17、ΔIFアンプ21と、
ΣIFアンプ17、ΔIFアンプ21の出力をコヒーレント発振器5にて発生した位相基準信号を用いて位相検波するΣ位相検波器19、Δ位相検波器23と、
Σ位相検波器19、Δ位相検波器23の出力に接続されるIAD変換器27、QAD変換器29、電力算出器30とを有し、
IAD変換器27、QAD変換器29、電力算出器30は、疑似信号がΣ方向性結合器14及びΔ方向性結合器15に供給された場合のΣ受信電力とΔ受信電力とを算出するモノパルスレーダ装置。」

4.対比
本願補正発明1と刊行物1記載の発明とを対比する。
・後者の「送受切換器13を経た信号を送信信号としてアンテナ装置へ送出」することは、前者の「送信アンテナから送信信号を放射」することに相当する。
・モノパルスレーダ装置は一般に、送信信号を受信する二つのアンテナを設け、これら二つのアンテナの出力信号を演算して目標物の方位角を算出するものである。当該技術事項をふまえると、後者の「受信信号を受けるアンテナ装置」と、前者の「二つ以上の受信アンテナ」とは、「二つの受信アンテナ」である限りで一致し、また、後者の「受信信号を受けるアンテナ装置からのΣ受信信号の線路及びΔ受信信号の線路とからなる二つの信号線路」と、前者の「二つ以上の受信アンテナに接続された複数の信号線路」とは、「二つの受信アンテナに接続された二本の信号線路」である限りで一致する。
・後者の「疑似信号」は、前者の「校正用信号」に相当する。
・後者の「コヒーレント発振器5からの位相基準信号を周波数変換器6で周波数加算し、疑似信号発生器11を介して上記二つの信号線路にそれぞれ設けたΣ方向性結合器14及びΔ方向性結合器15にそれぞれへ疑似信号として入力する線路」と、前者の「送信信号の一部を上記複数の信号線路の夫々へ校正用信号として供給する校正用信号線路」とは、「送信信号に関連した信号を複数の信号線路の夫々へ校正用信号として供給する校正用信号線路」の限りで一致する。
・後者の「周波数変換器6からの信号を変調器10へ入力する経路と疑似信号発生器11に入力する経路とに切り換える切換スイッチ8」は、前者の「校正用信号線路を導通又は遮断状態にするスイッチ」に相当する。
・後者の「二つの信号線路それぞれに設けられたΣIFアンプ17、ΔIFアンプ21」は、前者の「複数の信号線路それぞれに設けられた増幅器」に相当する。
・後者の「ΣIFアンプ17、ΔIFアンプ21の出力をコヒーレント発振器5にて発生した位相基準信号を用いて位相検波するΣ位相検波器19、Δ位相検波器23」と、前者の「増幅器の出力を前記送信信号と混合し中間周波数の信号に変換する混合器」とは、「増幅器の出力を送信信号と関連した信号によって周波数の低い信号に変換する手段」である限りで一致する。
・後者の「Σ位相検波器19、Δ位相検波器23の出力に接続されるIAD変換器27、QAD変換器29、電力算出器30」と、前者の「混合器の出力を入力とし、前記校正用信号に基づいて算出される擬似目標物の方位角がモノパルスレーダの所定の角度になるように調整する信号処理手段」とは、「周波数の低い信号に変換する手段の出力を入力とする信号処理手段」の限りで一致する。
・後者の「IAD変換器27、QAD変換器29、電力算出器30は、疑似信号がΣ方向性結合器14及びΔ方向性結合器15に供給された場合のΣ受信電力とΔ受信電力とを算出する」ことは、前者の「信号処理手段は、前記送信信号が前記校正用信号線路を介して前記校正用信号として供給される場合に、前記擬似目標物の方位角を算出する」ことと、「信号処理手段は、前記送信信号に関連した信号が前記校正用信号線路を介して前記校正用信号として供給される場合に、前記擬似目標物の方位角を算出する」点で一致する。

以上のことから、両者は次の一致点、及び、相違点1ないし4を有している。

<一致点>
「送信アンテナから送信信号を放射し、送信信号が目標物により反射された反射信号を、二つの受信アンテナで受信し、目標物を検知するモノパルスレーダ装置であって、
二つの受信アンテナに接続された複数の信号線路と、
送信信号に関連した信号を複数の信号線路の夫々へ校正用信号として供給する校正用信号線路と、
校正用信号線路を導通又は遮断状態にするスイッチと、
複数の信号線路それぞれに設けられた増幅器と、
増幅器の出力を送信信号と関連した信号によって周波数の低い信号に変換する手段と
周波数の低い信号に変換する手段の出力を入力とする信号処理手段とを有し、
信号処理手段は、前記送信信号に関連した信号が前記校正用信号線路を介して前記校正用信号として供給される場合に、前記擬似目標物の方位角を算出するモノパルスレーダ装置。」

<相違点1>
本願補正発明1においては、校正用信号として「送信信号の一部」を用いており、当該校正信号は、受信アンテナに接続された「信号線路」に供給するのに対し、刊行物1記載の発明においては、疑似信号(校正信号に相当)として「コヒーレント発振器5からの位相基準信号を周波数変換器6で周波数加算し、疑似信号発生器11を介し」て得られる信号を用い、また、この疑似信号を、アンテナ装置からのΣ受信信号の線路及びΔ受信信号の線路とからなる「二つの信号線路にそれぞれ設けたΣ方向性結合器14及びΔ方向性結合器15」に入力している点。

<相違点2>
本願補正発明1においては、「校正用信号を低周波信号で変調する変調手段」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明においては、当該機能を奏する手段を備えていない点。

<相違点3>
本願補正発明1においては、受信アンテナに接続された信号線路に設けられた「増幅器の出力を前記送信信号と混合し中間周波数の信号に変換する混合器」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明においては、「ΣIFアンプ17、ΔIFアンプ21の出力をコヒーレント発振器5にて発生した位相基準信号を用いて位相検波するΣ位相検波器19、Δ位相検波器23」を用いているものの、「増幅器の出力を送信信号と混合し中間周波数の信号に変換する混合器」に相当する手段を備えていない点。

<相違点4>
本願補正発明1においては、信号処理手段が、「前記校正用信号に基づいて算出される擬似目標物の方位角がモノパルスレーダの所定の角度になるように調整する」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明においては、当該機能を備えていない点。

5.判断
上記相違点1ないし4について検討する。

<相違点1について>
レーダ装置において、受信回路の特性を検証するため、送信アンテナから送信する信号と実質的に同じ信号を受信アンテナに接続している信号線に供給することは、例えば、特開2000-193739号公報(その段落【0004】を参照)、あるいは、特開平7-198826号公報(その段落【0023】?【0026】、【0058】?【0060】、及び、図面図4(b)を参照)に記載されるように周知の技術である。
一方、本願発明において、「送信信号の一部」を校正用信号として供給する点の技術的意味は、「送信信号の電力量の一部」であるのか、「継続して送信される送信信号の時間的な一部」であるのか、あるいは他の意味なのかは本願明細書を参酌しても不明であるが、一般にレーダー装置においては、送信信号に比較して、被測定対象にて反射され受信アンテナで受信される信号は弱くなっており、受信回路部分は受信する信号強度に応じて設計されることは技術常識であるから、校正信号として「送信信号の電力量の一部」を用いることに格別困難な点は見いだせない。更に、レーダ装置において、定期的にあるいは任意のタイミングで受信側に校正用信号を供給して受信側の診断をすることは、例えば、上記刊行物1(その段落【0007】、【0016】を参照)、あるいは、上記特開平7-198826号公報(その段落【0025】を参照)に記載されるように周知の技術であることからすれば、校正信号として「継続して送信される送信信号の時間的な一部」を用いることにも格別困難な点は見いだせない。
そうすると、刊行物1記載の発明に対し当該周知の技術を適用して上記相違点1に係る特定事項を得ることは当業者が容易に成し得たものである。

<相違点2について>
特開平9-68568号公報の段落【0032】、【0052】には、モノパルスレーダにおいて、疑似信号発振器12aの周波数を低い周波数の変調信号を発生する低周波信号発振器12b、あるいは、変調信号発生器16a及び16bによって変調するものが記載されている。また、前掲の特開平7-198826号公報の段落【0024】にも、自己診断用の高周波信号を、スイッチ手段19A、19Bを所定の周波数で断続的に連絡することにより、断続する周波数に起因した周波数成分が発生することが記載されている。
このように、レーダ装置において受信回路の特性を検証するための信号を低周波で変調することは周知の技術である。
してみれば、刊行物1記載の発明に対し当該周知の技術を適用して上記相違点2に係る特定事項を得ることは当業者が容易に成し得たものである。

<相違点3について>
刊行物1記載の発明において、「ΣIFアンプ17、ΔIFアンプ21の出力をコヒーレント発振器5にて発生した位相基準信号を用いて位相検波するΣ位相検波器19、Δ位相検波器23」によって位相検波している。この位相検波によって、より低い周波数の信号が得られることは明らかであり、そのために、送信する信号の基となるコヒーレント発振器5にて発生した位相基準信号を用いている。また、刊行物1の段落【0008】?【0009】には、送信信号を形成す回路の一部である局部発振器7の信号を受信周波数変換器16、20へ入力することで周波数減算することについても記載されている。更に、前掲の特開平7-198826号公報の段落【0037】、【0060】には、方向性結合器12Aで分岐した送出波の高周波信号がミキサ12B、ミキサ42Fに供給されることにより、中間周波信号に変換されることが記載されている。
このように、レーダ装置において、送信信号を発生させるための発振器を用いることによって、受信アンテナからの信号線に流れる信号の周波数を低くすることは周知の技術である。
してみれば、刊行物1記載の発明に対し当該周知の技術を適用して上記相違点3に係る特定事項を得ることは当業者が容易に成し得たものである。

<相違点4について>
前掲の特開平9-68568号公報の段落【0009】には、モノパルスレーダにおいて、2チャンネルの前段アナログ信号処理回路及び2チャンネルの後段アナログ信号処理回路の利得及び透過位相をハードウェアで一致させる必要があるところ、その段落【0038】、【0041】には、疑似信号を供給することによってこれら2つのチャンネルの間の振幅誤差、位相誤差を算出し、その値によって前段振幅誤差、前段位相誤差を補正することについて記載されている。また、前掲の特開2000-193739号公報の段落【0002】には、モノパルスレーダにおいて「あらかじめチャンネル間位相差がわかっていればこの値を補正値として用いることが可能である」と記載されている。
このように、モノパルスレーダにおいて、受信チャンネル間の特性の差を算出し、その値によってチャンネル間の特性を補正することは周知の技術である。
そして、刊行物1には、疑似信号を入力することで最終的に算出されたΣ受信電力及びΔ受信電力は受信機チャンネル間の振幅マッチング特性、位相マッチング特性を表すものである旨記載されている(段落【0037】?【0038】)ことからすれば、刊行物1記載の発明に対し当該周知の技術を適用して、算出したマッチング特性を用いてチャンネル間の特性を補正する手段を設けることにより、上記相違点4に係る特定事項を得ることは当業者が容易に成し得たものである。

<本願補正発明1の作用効果について>
そして、本願補正発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明及び上記周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、本願補正発明1は刊行物1に記載の発明、刊行物1に記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
平成18年3月17日付手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び平成17年10月31日付手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
<本願発明1>
「【請求項1】
送信アンテナから送信信号を放射し、前記送信信号が目標物により反射された反射信号を、二つ以上の受信アンテナで受信し、前記目標物を検知するモノパルスレーダ装置であって、
前記二つ以上の受信アンテナに接続された複数の信号線路と、
前記送信信号を前記二つ以上の受信アンテナに接続された複数の信号線路の夫々へ校正用信号として供給する校正用信号線路と、
前記校正用信号線路を導通又は遮断状態にするスイッチと前記校正用信号に基づいて算出される擬似目標物の方位角がモノパルスレーダの所定の角度になるように調整する信号処理手段とを有し、
前記信号処理手段は、前記送信信号が前記校正用信号線路を介して前記校正用信号として供給される場合に、前記擬似目標物の方位角を算出することを特徴とするモノパルスレーダ装置。」

2.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び同刊行物に記載された発明・事項は、前記「第2 3.刊行物記載の発明・事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、本願補正発明1の発明特定事項から、請求項1に係る「モノパルスレーダ装置」が、「校正用信号を低周波信号で変調する変調手段」、「複数の信号線路それぞれに設けられた増幅器」、「増幅器の出力を送信信号と混合し中間周波数の信号に変換する混合器」を有するものであるとの限定、及び、その発明特定事項である「信号処理手段」が「混合器の出力を入力」とするとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明1が前記「第2 5.判断」に記載したとおり、前記刊行物1に記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明1も同様の理由により、刊行物1に記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明が特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2ないし8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-17 
結審通知日 2008-03-18 
審決日 2008-03-31 
出願番号 特願2002-50864(P2002-50864)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 575- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌川瀬 徹也宮川 哲伸  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 下中 義之
上原 徹
発明の名称 モノパルスレーダ装置  
代理人 ポレール特許業務法人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ