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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1178257
審判番号 不服2004-20579  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-05 
確定日 2008-05-16 
事件の表示 特願2000- 45021「パチンコ機の景品球払出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月11日出願公開、特開2000-189621〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一、手続きの経緯及び本願発明
本願は、平成5年2月22日に出願した特願平5-57693号の一部を平成12年2月22日に新たな出願としたものであって、平成15年12月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成16年2月13日付けで意見書が提出され、同年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年11月1日付けで手続補正がなされたものであり、その後、当審において、平成19年9月21日付けの補正の却下の決定により上記平成16年11月1日付け手続補正は却下され、当該決定に対する訴えが提起されなかったので、当該決定は確定した。
したがって、本願の請求項1及び2に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。
【請求項1】 リードスクリューと、該リードスクリューを回転させる駆動モータとを備え、前記リードスクリューの回転により供給通路の景品球を1個ずつ排出するようにした景品球払出装置において、前記駆動モータのモータ軸にリードスクリューを一体に固着し、前記供給通路を景品球がリードスクリュー側へ横方向から導かれるように形成し、また、リードスクリューはその外周面に鍔状の球支持部が螺旋状に設けられるとともに、少なくともその球導入側付近の球支持部が球導入側に向かって薄くなるように形成されていることを特徴とするパチンコ機の景品球払出装置。

第二、先願明細書等に記載された事項
原査定の拒絶理由通知に引用された、本願の特許出願の日前の他の実用新案登録出願であって当該特許出願後に出願公開がされた実願平4-11347号(実開平5-70581号のCD-ROM参照)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、パチンコ機における玉払出機に関するものである。」、
(2)「【0005】
本考案は、・・・迅速、且つ、任意な数の玉の払い出し動作を可能にすると共に、組付作業の簡略化及び時間短縮を図ることができる玉払出機を提供することを目的とする。」、
(3)「【0009】
図1及び図2に示すように、玉払出機10を構成する上部基体6には賞品玉12を案内するための案内路16が形成されており、その案内路16は、玉払出機10の下部基体5に四ヶ所設けられた払出口17から上方へ延びて、略十字形状に形成された誘導路18と連通している。この誘導路18内には、軸体1aの周囲に賞品玉12の直径とほぼ等しい幅となるような螺旋状の玉通路1bを備えた流下防止部材1が取り付けられており、その軸体1aの上部は周知のパルスモータ3の回転軸3aに留めネジ4により取り付けられ、下部は軸受2を介して下部基体5の内側底面に回転可能に支持されている。前記パルスモータ3はネジ8により上部基体6に設けられたネジ穴6aを介して下部基体5に切られたタップ5aにネジ留めされる。このパルスモータ3が回転駆動されることにより、流下防止部材1も軸体1aを中心として図2に示す矢印A方向へ回転する。」
(4)「【0011】
図3は、上記のように構成された玉払出機10を、賞品玉12を払い出すための装置としてパチンコ機に取り付けた状態を示すものであり、・・・」、
(5)「【0013】
玉払出機10の動作を制御する玉払い出し制御回路24には前記パルスモータ3を駆動するための駆動パルスを発生するモータ駆動回路25が接続されている。玉払い出し制御回路24は前記カウントセンサ7にも接続されており、カウントセンサ7の出力を検出して賞品玉12の払出個数を計数し、所定数の賞品玉12の払い出しが終了すると、モータ駆動回路25による駆動パルスの発生をストップさせるように構成されている。また、玉払い出し制御回路24は、パチンコ機本体の制御を行う本体制御回路23にも接続されている。この本体制御回路23は、複数の入賞玉検出機21と接続され、入賞玉の発生に伴ってそれぞれの入賞玉によって異なっている賞品玉12の個数データを玉払い出し制御回路24へ送ると共に、・・・」、
(6)「【0015】
入賞玉検出機21により入賞玉の発生が検出されると、・・・玉払い出し制御回路24はモータ駆動回路25へ駆動パルスの発生を指示する。そして、パルスモータ3がモータ駆動回路25により発生させられた駆動パルスにより回転駆動されると、パルスモータ3の回転軸3aに接続されている流下防止部材1の軸体1aが図2に示す矢印A方向へ回転する。それに伴い、賞品玉タンク11から通路13及び案内路16を通って下部基体5に設けられた誘導路18に供給されている賞品玉12は、流下防止部材1の表面に螺旋状に形成された玉通路1bを通って徐々に下方へ移動し、払出口17より落下する。
【0016】
このとき、それぞれの払出口17から落下する賞品玉12が各払出口17に対応したカウントセンサ7の突起7aをはじくことにより、払い出された賞品玉12の個数が玉払い出し制御回路24にて計数される。そして、各払出口17より払い出された賞品玉12の合計個数が該入賞玉に応じた個数に達すると、玉払い出し制御回路24は、モータ駆動回路25への駆動パルスの発生指示をストップし、パルスモータ3の回転が停止する。すると、誘導路18内の賞品玉12は流下防止部材1に螺旋状に形成されている玉通路1b上にて停止する。そして、次の入賞玉が発生して上述のようにパルスモータ3が回転駆動されると、それに伴って、賞品玉12は前記玉通路1bを通って払出口17より落下する。」、
(7)「【0018】
このように構成することにより、入賞玉の種類に応じて賞品玉12の個数が変化した場合でも、一系列の玉払出機10にて簡単にその変化に対応することができ、また連続して入賞玉が生じた場合でも、従来のように賞品玉12の払い出しに遅れが生じるということがなくなり、遊戯客は快適に遊戯を楽しむことができる。」

(8)また、玉払出機の構成を示す説明図である【図1】、及び玉払出機の分解斜視図である【図2】、並びに玉払出機をパチンコ機に取り付けた状態を示す説明図である【図3】に示された事項を併せると、図面には「賞品玉12が流下防止部材1側へ横方向から案内するように形成される案内路16」の事項、及び「軸体1aの外周面に鍔状の玉通路1bが螺旋状に設けられる流下防止部材1」の事項が示されている。

したがって、上記の記載事項及び示された技術事項をまとめると、先願明細書等には、
「パルスモータ3が回転駆動されると、パルスモータ3の回転軸3aに留めネジ4により取り付けられている流下防止部材1の軸体1aが回転し、それに伴い、賞品玉タンク11から通路13及び案内路16を通って下部基体5に設けられた誘導路18に供給されている賞品玉12は、流下防止部材1の表面に螺旋状に形成された玉通路1bを通って徐々に下方へ移動し、払出口17より落下する、玉払出機10において、
前記案内路16を賞品玉12が流下防止部材1側へ横方向から案内するように形成し、また、前記流下防止部材1はその外周面に鍔状の玉通路1bが螺旋状に設けられており、
入賞玉の種類に応じて賞品玉12の個数が変化した場合でも、また連続して入賞玉が生じた場合でも、迅速、且つ、任意な数の玉の払い出し動作を可能にすることができる、パチンコ機の玉払出機10。」の考案(以下「先願考案」という。)が、記載されていると認められる。

第三,本願発明と先願考案との比較・検討
(1)先願考案の「流下防止部材1」は、「その外周面に鍔状の玉通路1bが螺旋状に設けられて」いるのであるから、本願発明の「リードスクリュー」に相当し、以下同様に「パルスモータ3」は「駆動モータ」に、「案内路16」及び「誘導路18」は「供給通路」に、「賞品玉12」は「景品球」に、「払出口17より落下する」は「排出する」に、「玉払出機10」は「景品球払出装置」に、「回転軸3a」は「モータ軸」に、「留めネジ4により取り付け」は「一体に固着」に、「案内する」は「導かれる」に、「玉通路1b」は「球支持部」に、「パチンコ機の玉払出機10」は「パチンコ機の景品球払出装置」に、それぞれ相当する。
(2)先願考案の「誘導路18に供給されている賞品玉12は、・・・徐々に下方へ移動し、払出口17より落下する、玉払出機10」について検討すると、「誘導路18の賞品玉12は、流下防止部材1の回転に伴い落下する、玉払出機」であり、また「入賞玉の種類に応じて賞品玉12の個数が変化した場合でも、任意な数の玉の払い出し動作を可能にすることができる、玉払出機」なのであるから、上記(1)記載の事項と併せると、先願考案の「玉払出機」は、本願発明の「リードスクリューの回転により供給通路の景品球を1個ずつ排出するようにした景品球払出装置」の技術事項を有しているといえる。

したがって、本願発明と先願考案とを比較すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点
リードスクリューと、該リードスクリューを回転させる駆動モータとを備え、前記リードスクリューの回転により供給通路の景品球を1個ずつ排出するようにした景品球払出装置において、前記駆動モータのモータ軸にリードスクリューを一体に固着し、前記供給通路を景品球がリードスクリュー側へ横方向から導かれるように形成し、また、リードスクリューはその外周面に鍔状の球支持部が螺旋状に設けられていることを特徴とするパチンコ機の景品球払出装置。

相違点
球支持部は、本願発明では少なくとも球導入側付近が球導入側に向かって薄くなるように形成されているのに対し、先願考案ではそのような構成を有するかどうか明らかでない点。

そこで、上記相違点について検討する。
パチンコ球側に向かって薄くなるように形成されている部材の駆動によりパチンコ球の流下を制御する技術は、例えば、特公平2-58950号公報に示された「ストツパー部材58」(公報第4頁第7欄第14行乃至第16行、及び第4頁第8欄第14行乃至第16行、並びに【第5図】乃至【第7図】参照)、及び実願平1-114132号(実開平3-53278号)のマイクロフィルムに示された「くさび状の係止爪13,14」(明細書第6頁第18行乃至第19行、及び明細書第9頁第6行乃至第10頁第17行、並びに【第1図】参照)のように、周知・慣用の技術である。
また、螺旋状部を備えた物品搬送装置において、物品導入側附近の螺旋状部が物品導入側に向かって薄くなるように形成されている技術は、例えば、実公昭63-6099号公報に示された「螺旋山部3」(【第1図】乃至【第3図】参照)、及び特公平2-34843号公報に示された「幅が搬送方向に向けて徐々に広がるようにされた、ねじ山10」(公報第1頁第1欄第5行乃至第6行、及び【第1図】乃至【第3図】参照)のように、周知・慣用の技術である。
そうすると、物品を移動させる機構において、物品間に進入する部材の先端を薄くなるように形成することは周知・慣用の技術と認められるから、当該相違点は「球導入側付近の球支持部」に対する、周知・慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないから、当該相違点は実質的な相違点ではない。

第四,むすび
以上のとおり、本願発明は、先願考案と同一であり、しかも、本願の発明者と上記先願の考案をした者が同一の者であるとも、また、本願の出願時に、その出願人と上記先願の実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるとも認められないので、本願発明は、平成6年改正前特許法第29条の2第1項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2008-02-29 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-25 
出願番号 特願2000-45021(P2000-45021)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米津 潔飯野 茂  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 渡部 葉子
川島 陵司
発明の名称 パチンコ機の景品球払出装置  
代理人 伊藤 浩二  

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