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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01B |
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管理番号 | 1178356 |
審判番号 | 不服2004-21951 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-25 |
確定日 | 2008-05-21 |
事件の表示 | 特願2000-561126「蒸気改質による合成ガスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月 3日国際公開、WO00/05168、平成14年 7月16日国内公表、特表2002-521295〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1998年7月21日を国際出願日とする出願であって、平成15年12月9日に拒絶理由を発送し、平成16年6月9日付けで手続補正書および意見書が提出されたが、平成16年7月16日付け(発送:平成16年7月27日)で拒絶査定がなされ、これに対し平成16年10月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして本願請求項1に係る発明は平成16年6月9日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲に記載されたものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 反応器の壁に薄膜状に備え付けられた蒸気改質触媒の存在下、炭化水素供給原料を蒸気改質することによって、水素と一酸化炭素とを豊富に含有するガスを調製する方法であって、下記の工程を含む方法。 (a)炭化水素供給原料の処理ガスを第1の反応器(10)に通す工程、この第1の反応器は、煙道ガスの加熱ガス流により熱伝導可能な反応器壁に備え付けられた薄膜状の蒸気改質触媒を有する (b)前記第1の反応器(10)からの流出物を、薄膜状の蒸気改質触媒及び/又は蒸気改質触媒ペレットを有し、かつ燃料の燃焼によって加熱される後続の管状反応器(14)に通し、部分的に蒸気改質されたガス流出物及び煙道ガスの加熱ガス流を得る工程、 (c)前記管状反応器(14)からの流出物を、炎反応によって酸化剤流と部分的に燃焼させるための自動熱改質器(16)に通す工程、及び (d)自動熱改質器(16)から、水素と一酸化炭素とを豊富に含有する生成物ガス(20)の加熱ガス流を回収する工程」 2.引用刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭61-97105号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開昭53-82690号公報(以下、「刊行物2」という。)及び特開昭62-216634号公報(以下「刊行物3」という。)には次の事項が記載されている。ここで、原文で反応及び平衡反応を表す矢印はそれぞれ「→」「←→」と記載する。 2-1.刊行物1 (1a)「原料炭化水素とスチームを、高温水蒸気改質反応器が収められた加熱炉の煙道ガス又は該高温水蒸気改質反応器からの流出ガスで加熱される中温水蒸気改質反応器に供給し、第1の改質条件下に第1の改質触媒と接触させて水素及びメタンを主成分とする一次改質ガスを生成させ、この一次改質ガスを前記の高温水蒸気改質反応器に供給し、第2の改質条件下に第2の改質触媒と接触させて水素を主成分とする二次改質ガスを生成させる炭化水素の水蒸気改質法に於て、前記の中温水蒸気改質反応器の上流側に断熱型低温水蒸気改質反応器を設け、原料炭化水素とスチームを当該反応器に供給して低温で水蒸気改質した後、その生成ガスを前記の中温水蒸気改質反応器に供給することを特徴とする炭化水素の水蒸気改質法。」(特許請求の範囲) (1b)「本発明はLPG、ナフサなどの原料炭化水素から水素リッチガスを製造する水蒸気改質法に関するものであって、さらに詳しくは中温水蒸気改質反応器と高温水蒸気改質反応器を組合わせて使用する2段式水蒸気改質法の改良に係る。 LPG、ナフサなどの原料炭化水素を水蒸気改質して水素リッチガスを製造する方法のひとつとして、原料炭化水素とスチームをまず外部加熱型の中温水蒸気改質反応器で処理し、次いでその生成ガスを高温水蒸気改質反応器で処理する2段式水蒸気改質法が知られている。」(第1頁右欄第3-13行) (1c)「断熱型反応器5に供給された原料炭化水素は低温改質されてCH_(4),H_(2),CO,CO_(2),H_(2)Oに転化し、これらの混合ガスは外部加熱型の中温水蒸気改質反応器6に供給される。 第1図に示す態様では、中温水蒸気改質反応器6が加熱炉3の煙道4を流れる温度600?1000℃の煙道ガスによって加熱され、断熱型反応器5から供給された低温改質ガスは、第1の改質条件下に第1の改質触媒と接触することによって、水素及びメタンを主成分とする一次改質ガスに転化する。・・・・・。中温水蒸気改質反応器6で得られた一次改質ガスは、次いで加熱炉3で加熱される高温水蒸気改質反応器7に供給され、第2の改質条件下に第2の改質触媒と接触して、60モル%以上の水素を含有する二次改質ガスに転化する。」(第2頁左下欄第11行-同頁右下欄第15行) (1d)「実施例 第1図に示すフローに従って、脱硫したLPG5800kg/hrと過熱スチーム18000kg/hrとの混合物を450℃にて断熱低温水蒸気改質反応器5に供給した。 反応器5の改質条件を入口温度450℃、出口温度461℃、圧力17kg/cm^(2)Gとすることにより、表2A欄に示す組成の低温改質ガスを得た。次にこの改質ガスをニッケル系触媒を充填した中温水蒸気改質反応器6に供給し、圧力16kg/cm^(2)G 、出口温度600℃の条件で処理して表2B欄に示す組成の一次改質ガスを得た。 最後にこの一次改質ガスを高温水蒸気改質反応器7に供給し、圧力15kg/cm^(2)G、出口温度830℃の条件下にニッケル系触媒と接触させ、表2のC欄に示す組成の二次改質ガス27114Nm^(3)/hrを得た。」(第3頁左下欄第6行-同頁右下欄第3行) (1e)「 」(第3頁右下欄) 2-2.刊行物2 (2a)「従来からガスあるいはナフサ留分等の炭化水素を原料として水蒸気改質し、これに空気中の窒素を混合してアンモニア合成ガスを製造する方法はよく知られている。」(第1頁右欄第18行-第2頁左上欄第1行) (2b)「(1)水蒸気改質反応 CnHm + nH_(2)O → nCO + (n+m/2)H_(2) CnHm + 2nH_(2)O → nCO_(2) + (2n+m/2)H_(2) CH_(4) + H_(2)O ←→ CO + 3H_(2)-Q_(1) 」(第2頁左上欄第15-18行) (2c)「従来から用いられている外熱式の一次水蒸気改質装置は原料炭化水素と水蒸気を混合し、該混合物を一次改質反応開始に必要な温度(400?500℃)に予熱し、次いで触媒(例えばニッケル系触媒)を充填した反応管、すなわち触媒管に導き、全壁面を耐火レンガで内張りした構築炉内の炉壁に設けられたバーナーにより加熱し、水蒸気改質反応に必要な反応熱および昇温を行なう。通常は未反応のメタンを少なくすることが望まれるので、・・・未反応メタン量は乾容量基準で約10%程度となる。・・・。一方、前記一次改質装置を出た改質ガスは二次改質装置に入り、ここで導入された該空気中の酸素と部分燃焼して、前記酸化反応(3)に伴う発熱によって改質ガス中の未反応メタンはさらに二次の水蒸気改質が行なわれる。その結果、二次改質装置を流出するガスは未反応メタンとして乾容量基準で約0.2%、温度約1000℃のものとなる」(第2頁右上欄第15行-同頁左下欄第17行) 2-3.刊行物3 (3a)「次に、本発明に係る燃料改質器の実施例を添付図面従って詳説する。・・・第4図において、反応管1の内壁面には改質触媒10が、外壁面には燃焼触媒16がそれぞれ溶射もしくは塗布等の手段によって付着されている。反応管1の内部に導入された反応ガス11は、改質触媒10の表面および内部にて改質反応を起こし、水素に富んだ改質ガス12となって反応管1から放出される。一方、反応管1の外部には、反応管1を取り囲むように、空気と可燃ガスの混合燃料ガス17が送り込まれ、その混合燃料ガス17は燃焼触媒16の表面および内部にて燃焼し、燃焼ガス13となって反応管1より離れる。以上の経過において、燃焼触媒16での燃焼反応による発熱分が、反応管1の管壁を通して、改質触媒10での改質反応の吸熱分を充当される。・・・本実施例によれば、前記各実施例の効果に加え、・・・効果がある。」(第2頁右上欄第11行-第4頁左上欄第19行) (3b)「次に、本実施例の動作について説明する。反応ガス11、例えば炭化水素と水蒸気の混合ガスが導管3を介して反応管内に供結される。」(第2頁左下欄第11-13行) (3c)第4図には記載事項(3a)の燃料改質器の例が記載されており、第4図より改質触媒である図番10は薄膜状に反応管1内に形成されていることが窺える。 (3d)「上記本実施例では、触媒粒子が反応管壁面にコーティングされているために、反応流体が反応管壁面を流れる際の流れの乱れる程度が大きくなるとともに、反応管管壁と触媒粒子が接するところの粒子の空隙率は小さくなる。したがって、反応管管壁と触媒粒子との間の接触点の数が増加するため、反応管管壁近傍における伝熱能力が向上する。さらに、反応管管壁コーティングされた触媒それ自身で、吸熱反応が起こるため、加熱媒体13からの熱供結が一層促進し、伝熱がさらに促進される。」(第2頁右下欄第13行-第3頁左上欄第3行) (3e)「上記本実施例によれば、第2図の実施例の効果に加えて、改質ガスがさらに内管の内壁に保持した改質触媒と接触し、実質的にガスと改質触媒との接触時間が長くなるので、改質率を平衡時の改質率、すなわち最大の改質率に近づけることができる。しかも、その効果をほとんど圧力損失の増加なしに実現できることになる。」(第3頁右下欄第8-14行) 3.対比 (1)刊行物1の記載事項(1a)には「原料炭化水素とスチームを、高温水蒸気改質反応器が収められた加熱炉の煙道ガスで加熱される中温水蒸気改質反応器に供給し、第1の改質条件下に第1の改質触媒と接触させて水素及びメタンを主成分とする一次改質ガスを生成させ、この一次改質ガスを前記の高温水蒸気改質反応器に供給し、第2の改質条件下に第2の改質触媒と接触させて水素を主成分とする二次改質ガスを生成させる炭化水素の水蒸気改質法に於て、前記の中温水蒸気改質反応器の上流側に断熱型低温水蒸気改質反応器を設け、原料炭化水素とスチームを当該反応器に供給して低温で水蒸気改質した後、その生成ガスを前記の中温水蒸気改質反応器に供給することを特徴とする炭化水素の水蒸気改質法。」が記載されている。そして記載事項(1b)の「本発明はLPG、ナフサなどの原料炭化水素から水素リッチガスを製造する水蒸気改質方法に関する」の記載から記載事項(1a)の「炭化水素の水蒸気改質法」は原料炭化水素を水蒸気改質して水素リッチガスを製造する方法といえる。 これらの記載を本願発明の記載ぶりに即して整理すると、刊行物1には、「原料炭化水素とスチームを低温水蒸気改質反応器に供給して低温で水蒸気改質した後、その生成ガスを加熱炉の煙道ガスで加熱される中温水蒸気改質反応器に供給し、第1の改質条件下に第1の改質触媒と接触させて水素及びメタンを主成分とする一次改質ガスを生成させ、この一次改質ガスを加熱炉に収められた高温水蒸気改質反応器に供給し、第2の改質条件下に第2の改質触媒と接触させて水素を主成分とする二次改質ガスを生成させる原料炭化水素を水蒸気改質して水素リッチガスを製造する方法」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 (2)そこで引用発明1と本願発明とを対比すると、引用発明1の「原料炭化水素」「水蒸気改質」「生成ガス」「中温水蒸気改質器」「高温水蒸気改質反応器」「一次改質ガス」「水素を主成分とする二次改質ガス」「煙道ガス」は、本願発明の「炭化水素供給原料」「蒸気改質」「炭化水素供給原料の処理ガス」「第1の反応器(10)」「管状反応器(14)」「第1の反応器(10)からの流出物」「ガス流出物」「煙道ガスの加熱ガス流」にそれぞれ相当する。さらに引用発明1の「第1の改質触媒」「第2の改質触媒」は本願発明の「蒸気改質触媒」に相当する。また記載事項(1c)の「加熱炉3で加熱される高温水蒸気改質反応器7」の記載より「高温水蒸気改質反応器」は「加熱炉」で加熱されるものといえる。 また記載事項(1c)の「中温水蒸気改質反応器6が加熱炉3の煙道4を流れる温度600?1000℃の煙道ガスによって加熱され、断熱型反応器5から供給された低温改質ガスは、第1の改質条件下に第1の改質触媒と接触することによって、水素及びメタンを主成分とする一次改質ガスに転化する」ことから、「中温水蒸気改質反応器6」は熱伝導可能な反応器壁を有することは明らかである。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、「蒸気改質触媒の存在下、炭化水素供給原料を蒸気改質することによって、水素を豊富に含有するガスを調製する方法であって、下記の工程を含む方法。 (a)炭化水素供給原料の処理ガスを第1の反応器(10)に通す工程、この第1の反応器は、蒸気改質触媒及び煙道ガスの加熱ガス流により熱伝導可能な反応器壁を有する (b)前記第1の反応器(10)からの流出物を、蒸気改質触媒を有し、かつ加熱される後続の管状反応器(14)に通し、ガス流出物及び煙道ガスの加熱ガス流を得る工程」で一致し以下の(ア)-(カ)の点で相違する。 (ア)本願発明は、第1の反応器は「反応器壁に備え付けられた薄膜状の蒸気改質触媒」、管状反応器は「薄膜状の蒸気改質触媒及び/又は蒸気改質触媒ペレット」をそれぞれ有するのに対して、引用発明1はかかる限定のない点。 (イ)本願発明は「水素と一酸化炭素とを豊富に含有するガスを調製する方法」に対して、引用発明1は「水素リッチガスを製造する方法」である点。 (ウ)本願発明は管状反応器(14)を「燃料の燃焼」によって加熱しているのに対し、引用発明1はかかる限定の記載のない点。 (エ)本願発明は工程(b)で「部分的に蒸気改質された」ガス流出物を得るのに対し、引用発明1は「水素を主成分とする二次改質ガス」を得ている点。 (オ)本願発明は「管状反応器(14)からの流出物を、炎反応によって酸化剤流と部分的に燃焼させるための自動熱改質器(16)に通す工程」を有するが、引用発明1はかかる工程について記載のない点。 (カ)本願発明は「自動改質器(16)から、水素と一酸化炭素とを豊富に含有するガス(20)の加熱ガス流を回収する工程」を有するのに対し、引用発明1にはかかる限定の記載のない点。 4.当審の判断 相違点(ア)-(カ)について検討するに当たって、下記に掲げる従来技術を検討する。 (従来技術1:特開昭52-65190号公報) 上記従来技術1には(a)-(b)の事項が記載されている。 (a)「新しいタイプの接触反応器の構成に用いられる接触管の製法に関する。この接触反応管の壁上には薄い触媒層が密着して形成されており、かかる触媒は「壁上担持触媒」と呼ばれ、」(第1頁左下欄第14-17行) (b)「実施例4 実施例2記載の手法に従って外径42mm、内径30mmの鋼管の内面に金属スポンジ層を析出生成させた。・・・。このようにして得た管の内面に実施例1と同様な手法でセラミック材料および活性物質を附着せしめた。得られた壁上担持触媒はメタンおよび水蒸気から水素を製造するプロセスに良好な活性を示した。」(第3頁右下欄第18行-第4頁左上欄第9行) (c)「新しいタイプの反応器における触媒と周囲との間の伝熱は、熱が反応系に供給されるか反応系から受け取られるかにかかわりなく、触媒を担持せる反応管の壁を通してのみ行われる。・・・さらに、新しいタイプの接触反応器は粒状触媒充填型既知反応器と比較して圧抵抗が低い利点がある。」(第1頁右欄第10-19行) ここで従来技術1について検討すると、従来技術1の記載事項(a)-(b)より、従来技術1には、メタン及び水蒸気から水素を製造する方法において、反応管の壁上に薄い触媒層が密着して形成されたものを用いることが記載されているといえる。また記載事項(c)より、該触媒は触媒への伝熱が反応管の壁を通して行われること及び粒状触媒充填型既知反応器と比較して圧抵抗が低いことが記載されているといえる。 (従来技術2:特公昭48-22905号公報) 上記従来技術2には(a)-(e)の事項が記載されている。 (a)「この発明は主として天然ガス、ナフサ等の飽和炭化水素を、水蒸気を含むガスと共に触媒の存在のもとに反応させて、水素を主成分とするガスをつくるための方法に関するものである。」(第1欄第25-28行) (b)「なお、次の実例に示すように本発明によるガス製造方法によれば残メタン量が減少されて水素の生成量が増加する。」(第3欄第33-35行) (c)「1 触媒を充填した管内を飽和炭化水素と水蒸気を含むガスを流すと共に同管の上流を外部より加熱し、下流側で同管内に酸素を含むガスを導入することを特長とするガス製造方法」(特許請求の範囲) (d)「(III)出口ガス組成」(第4欄第32行-第4欄末行)より、「従来のもの」に比して「本発明」は「CH_(4)」の割合が減少すると共に、「H_(2)」「CO」の割合が増加することが窺える。 (e)「ガス導入管4を通って、入口部6に導入された飽和炭化水素と水蒸気を含むガスは、外熱部7に入り、バーナ3によって加熱されて水素を主成分とするガスに改質される。その際の加熱の程度は外熱部7の管壁最高温度が制限値以下になるように調整する。外熱部7を出て内熱部8に入ったガスは酸素を含むガス吹込管10により吹込まれた酸素を含むガスによって部分酸化され、発熱するので、温度が上昇して、反応がさらに進み、残メタン量が減少する。」(第3欄第2行-第4欄第2行) ここで従来技術2について検討すると、従来技術2の記載事項(a)-(e)より、従来技術1には、飽和炭化水素と水蒸気を含むガスを加熱し水素を主成分とするガスに改質し、さらに酸素を含むガスによって部分酸化する水素を主成分とするガスの製造方法が記載されている。また、該水素を主成分とするガスの製造方法において、酸素を含むガスによって部分酸化することにより、残メタン量が減少し、H_(2)、COが増加することが記載されているといえる。 相違点(ア)について 相違点(ア)を検討するに当たって、本願発明の「反応器の壁に薄膜状に備え付けられた蒸気改質触媒」、第1の反応器の「反応器壁に備え付けられた薄膜状の蒸気改質触媒」、管状反応器(14)の「薄膜状の蒸気改質触媒」について検討する。第1の反応器の「反応器壁に備え付けられた薄膜状の蒸気改質触媒」は、「反応器の壁に薄膜状に備え付けられた蒸気改質触媒」と認められる。また管状反応器(14)の「薄膜状の蒸気改質触媒」は、「反応器の壁に薄膜状に備え付けられた蒸気改質触媒」を含むものと解せるので、以下管状反応器(14)の「薄膜状の蒸気改質触媒」は「反応器の壁に薄膜状に備え付けられた蒸気改質触媒」として検討する。 刊行物3の記載事項(3b)の「反応ガス11、例えば炭化水素と水蒸気の混合ガスが導管3を介して反応管内に供結される」の記載、記載事項(3a)の「反応管1の内壁面には改質触媒10が、・・・がそれぞれ溶射もしくは塗布等の手段によって付着されている。」「反応管1の内部に導入された反応ガス11は、改質触媒10の表面および内部にて改質反応を起こし、水素に富んだ改質ガス12となって反応管1から放出される」の記載及び記載事項(3c)より、刊行物3には炭化水素を水蒸気で改質する水素に富んだ改質ガスを製造する方法に用いられる改質触媒として、反応管の内壁面に薄膜状に形成されたものが記載されているといえる。さらに刊行物3の記載事項(3b)の「燃焼触媒16での燃焼反応による発熱分が、反応管1の管壁を通して、改質触媒10での改質反応の吸熱分を充当される」の記載より、前記反応管の内壁面に薄膜状に形成された改質触媒は、反応壁を通して反応熱を供給されるものといえる。 また従来技術1のようにメタン及び水蒸気から水素を製造する方法、すなわち炭化水素及び水蒸気から水素を製造する方法に用いる触媒として、反応管の壁上に薄い触媒層が密着して形成されたものを用いることは周知技術である。 また刊行物1の記載事項(1c)の「外部加熱型の中温水蒸気反応器6」、「加熱炉3で加熱される高温水蒸気改質反応器」の記載より引用発明1の「中温水蒸気改質反応器」「高温水蒸気改質反応器」は外部から加熱されるものといえる。 してみれば引用発明1と同じ反応である炭化水素を水蒸気で改質し水素リッチガスを製造する方法に用いられる刊行物3に記載の反応管の内壁面に薄膜状に形成された改質触媒、又は従来技術1に記載の反応管の壁上に薄い触媒層が密着して形成された触媒を、引用発明1の外部から加熱する「中温水蒸気改質反応器」及び「高温水蒸気改質反応器」に用いることは当業者が容易に想到し得ることである。 そして効果について検討すると、反応管壁上に薄膜上に形成された触媒は刊行物3の記載事項(3d)(3e)、従来技術1の記載事項(c)より、触媒への伝熱が容易、圧抵抗が低いものであることから、本願発明が格別顕著な効果を奏するものとも認められない。 相違点(イ)について 引用発明1は、記載事項(1b)より原料炭化水素を水蒸気改質して水素リッチガスを製造する方法に係るものである。また引用発明1の「水素を主成分とする二次改質ガス」は、刊行物1記載事項(1e)の記載より「H_(2)」を「66.95」vol%、「CO」を「16.53」vol%含有するものであり、水素と一酸化炭素とを含有するガスといえる。してみれば水蒸気による二次改質の工程を有する引用発明1の「水素リッチガスを製造する方法」は「水素と一酸化炭素とを含有するガスを製造する方法」ということができる。 また本願発明の「水素と一酸化炭素とを豊富に含有するガス」は水素、一酸化炭素の含有割合を発明特定事項とするものでもないため、引用発明1の「水素リッチガス」と本願発明の「水素と一酸化炭素とを豊富に含有するガス」とは相違するものともいえない。 相違点(ウ)について 刊行物2記載事項(2c)に見られるように、炭化水素の水蒸気改質において、触媒を充填した反応管を、炉壁に設けられたバーナーにより加熱し、水蒸気改質反応に必要な反応熱および昇温を行うことは周知の技術的事項であり、引用発明1の加熱炉3において、燃料を燃焼させ、改質反応の反応熱を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。 相違点(エ)について 本願明細書の詳細な説明【0004】、【0005】より、「部分的に蒸気改質されたガス流出物」は、炭化水素原料の一部が水蒸気によって改質されるが、一部は改質されないものと解される。一方引用発明1の「水素を主成分とする二次改質ガス」は、刊行物1記載事項(1d)(1e)より、「中温改質反応器6」により得られる「CH_(4)」を「35.30」vol%含有する「一次改質ガス」を、「高温改質反応器7」に供給し得られるものであり、さらに該「水素を主成分とする二次改質ガス」は「CH_(4)」を「5.95」vol%含有するものである。してみると、高温改質反応器7においては、「一次改質ガス」の一部が改質されたものといえ、相違点(エ)の点で引用発明1と本願発明とが相違するものともいえない。 相違点(オ)について 刊行物1記載事項(1b)より、引用発明1の「二次改質ガス」は刊行物1記載事項(1e)より、「CH_(4)」を「5.95」vol%程度含有するものといえる。また刊行物2の記載事項(2b)の水蒸気改質の反応式より、炭化水素の水蒸気改質により一酸化炭素、水素等が生成するといえ、記載事項(2c)の「一次改質装置を出た改質ガスは二次改質装置に入り、ここで導入された該空気中の酸素と部分燃焼して、前記酸化反応(3)に伴う発熱によって改質ガス中の未反応メタンはさらに二次の水蒸気改質が行なわれる。その結果、二次改質装置を流出するガスは未反応メタンとして乾容量基準で約0.2%、温度約1000℃のものとなる」の記載より、炭化水素を含有する水蒸気改質ガスに酸素を導入し、部分燃焼させることにより未反応の炭化水素がさらに水蒸気改質反応により減少するといえる。してみれば、引用発明1で得られるメタンを含有する「二次改質ガス」の水蒸気改質反応を進めるべく、引用発明1のメタンを含有する「二次改質ガス」に酸化剤を添加し、該ガス含有のメタンガスを部分燃焼させる工程を設けることは当業者が容易に想到し得ることである。また従来技術2に見られるように、飽和炭化水素と水蒸気を含むガスを加熱し水素を主成分とするガスに改質し、さらに酸素を含むガスによって部分酸化する水素を主成分とするガスの製造方法において、部分酸化により、残メタン量が減少し、H_(2)、COが増加することは周知技術であり、相違点(オ)の点で本願発明が格別な効果を奏するものとも認められない。 相違点(カ)について 引用発明1は刊行物記載事項(1b)より、「原料炭化水素から水素リッチガスを製造する水蒸気改質法に関する」ものであり、所望の水素濃度のガスを製造した後回収することは当然行うことであり引用発明1と本願発明とが相違点(カ)の点で相違するものとはいえない。 なお出願人は平成16年11月25日付け審判請求書請求の理由で「引用例3の外熱式改質器は、引用例1の中温改質器及び高温改質器のいずれにも 適用できることとなり、引用例1の中温改質器に適用する必然性はないはずであります。このような点からも、引用例1と引用例3とを組み合わせても、本願発明の構成は得られません。」と主張する。該主張について検討する。本願発明は「第1の反応器」に「反応器壁に備え付けられた薄膜状の蒸気改質触媒」、「第2の反応器」に「薄膜状の蒸気改質触媒」をそれぞれ用い得るものである。一方「第2の反応器」の「薄膜状の蒸気改質触媒」は「反応器の壁に薄膜状に備え付けられた蒸気改質触媒」を含むものと解され、本願発明は「第1の反応器」及び「第2の反応器」に「反応器壁に備え付けられた薄膜状の蒸気改質触媒」を用い得るものであることから出願人の主張は採用できない。 また、「第2の反応器」の触媒を「蒸気改質触媒ペレット」としても、改質触媒として、ペレット状のものを用いることは周知慣用技術であり、当業者が容易に想到し得ることである。また「第2の反応器」の触媒を「蒸気改質触媒ペレット」とする効果の点は、本願明細書の記載をみても、実施例には薄膜状改質触媒の実施例が記載されているのみであり、本願明細書の記載から格別なものともいえない。 また出願人は平成16年11月25日付け審判請求書請求の理由「本願発明と引用例との対比」(ii)で刊行物1と刊行物2とを組み合わせることが困難である旨主張するが、当該主張は刊行物1、刊行物2の装置の構成の組み合わせの困難性を主張するものであり、また本願発明は方法の発明であり、さらに上記「4.当審の判断」で述べたとおり当業者が容易に想到し得るものであることから出願人の主張は採用できない。 また出願人は平成16年11月25日付け審判請求書請求の理由「本願発明と引用例との対比」(iii)で主張する「自動熱改質器」による「合成ガス中のメタン濃度を低減しつつ、CO濃度及びH_(2)濃度(特にCO濃度)を極めて高くできます。」の主張も、本願明細書詳細な説明に「自動改質器」の実施例の記載もないことから、「4.当審の判断」で述べたとおり当業者が容易に想到し得る程度のものであり、出願人の主張は採用できない。 5.むすび したがって、本願発明は、刊行物1-3に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-12 |
結審通知日 | 2007-12-18 |
審決日 | 2008-01-09 |
出願番号 | 特願2000-561126(P2000-561126) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C01B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平塚 政宏、後藤 政博 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
大工原 大二 宮澤 尚之 |
発明の名称 | 蒸気改質による合成ガスの製造方法 |
代理人 | 鍬田 充生 |