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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1178451
審判番号 不服2005-18624  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-28 
確定日 2008-05-22 
事件の表示 特願2001-375088号「バルーンカテーテル及びバルーンカテーテルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月24日出願公開、特開2003-175110号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年12月7日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成20年2月6日の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。

「拡張ルーメンとガイドワイヤルーメンを一体的に有するシャフトと、少なくとも近位側にスリーブを有するバルーンを用いてバルーンカテーテルの少なくとも遠位部が形成され、更にバルーン近位側のスリーブと前記シャフトとの接合部から遠位側の拡張ルーメンのみが取り除かれてガイドワイヤルーメンのみがバルーンを貫通して遠位側に伸びているバルーンカテーテルにおいて、拡張ルーメンが取り除かれることで新たに生じた断面とスリーブの端面が、付き当てられて接合され、残されたガイドワイヤルーメンに近位側バルーンスリーブを被せて接合されているバルーンカテーテルであって、テーパー状に取り除かれた遠位側拡張ルーメン端部に対して、テーパー状にカットした前記近位側スリーブを付き当て、拡張ルーメン側の接合部がガイドワイヤールーメン側の接合部より近位側に配置されて接合したことを特徴とする、バルーンカテーテル。」

II.引用例の記載事項
A.これに対して、当審の拒絶の理由で引用した、特開平5-154203号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。
1.「バルーン5は、公知の方法でバルーン拡張カテーテル1の2管腔軸17に連結される。図2に示すように、軸17とガイドワイヤー2は、挿入カテーテル4の末端で出現する。軸17は、バルーン5の遠位及び近位のいずれにおいてもそれぞれ多くの側孔を有する。これらの孔12と13は、軸17の管腔18を介して互いに連結されている。これらの側孔により拡張中であっても狭窄箇所の上流及び下流間の相応の圧力差により血漿の潅流が可能となる。」(【0010】段落)

2.「可撓性軸103は、その末端でバルーン5に連結される。図9は、バルーン5を示し、該バルーン5は、孔115を介して第2管腔12に連結される。バルーン5は、上記の圧力吸引装置により畳んで管内に挿入出来且つ狭窄の治療に当たり膨張することが出来る。図9に示すように、ガイドワイヤー2は、その末端が孔116を通り抜けてまさに拡張バルーン5を貫通して前進出来る。公知のように、ガイドワイヤーの末端は、特に可撓性を有し且つ捻じれに強くなっている。
軸103は、近位部103aと遠位部103bより成り、これらの部分103aと103bは、別個に製造されて、連結点113で互いに連結される。図11と図12に示すように、これらの2つの部分103aと103bの断面は異なっている。近位部103aは、2つの同軸チューブ片109と110から成っており、内側チューブ片110は、ガイドワイヤー2用の管腔111aを形成する。チューブ片109と110間のスペースが管腔112aを形成し、該管腔中で圧力流体がバルーン5と圧力吸引ポンプ間を循環する。チューブ片109と110は、円形断面を有し且つ熱可塑性材料より成る。
軸部103bは、2つの管腔より成る押出チューブ片で構成され、該チューブ片は公知の方法でバルーン5に連結される。第1の略円形管腔111bは、ガイドワイヤー2を収納する機能を果たし、第2の三日月状の管腔112bは、圧力流体を収容する機能を果たす。双方の管腔は、部分103b上に形成された分離壁114cにより互いに分離される。」(【0020】?【0022】段落)(なお、「第2管腔12」は「第2管腔112b」の誤記と認められる。)

そして、図2,9,8には、バルーン拡張カテーテル1の遠位領域の縦断面図が図示されている。これらの図より、バルーン5が遠位端と近位端とにスリーブを有し、スリーブを接合部として軸17,103に接合されていることが認められる。また図12には、図10に示すバルーン拡張カテーテル1のXII-XII線に沿った断面図が示されており、該断面図によればバルーン拡張カテーテル1の遠位領域の軸部103bが、一体的に設けられたガイドワイヤー2のための第1の略円形管腔111bと、圧力流体のための第2の三日月状の管腔112bとを有することが認められる。
さらに、これらの図より、バルーン5のスリーブと軸との接続部から遠位側で、圧力流体のための第2の三日月状の管腔112bの側壁が取り除かれ、ガイドワイヤー2のための第1の略円形管腔111bのみがバルーン5を貫通して遠位側に伸びていることが認められる。
なお、記載1.の「2管腔軸17」及び「軸17」は、記載2.の「可撓性軸103」の「遠位部103b」及び「軸部103b」に相当する部材であるので、これらを「軸」と総称する。また、記載1.の「管腔18」は、記載2.の、ガイドワイヤー2を収納する機能を果たす「第1の略円形管腔111b」に相当する部材であるので、両者を「第1の略円形管腔」で代表することにする。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「第2の三日月状の管腔と第1の略円形管腔を一体的に有する軸と、少なくとも近位端側にスリーブを有するバルーンを用いてバルーン拡張カテーテルの少なくとも遠位部が形成され、更にバルーン近位側のスリーブと前記軸との接合部から遠位側の第2の三日月状の管腔のみが取り除かれて第1の略円形管腔のみがバルーンを貫通して遠位側に伸びているバルーン拡張カテーテルにおいて、軸に近位側バルーンスリーブを被せて接合されているバルーン拡張カテーテルであって、取り除かれた遠位側第2の三日月状の管腔端部に対して前記近位側スリーブを接合したバルーン拡張カテーテル。」

B.また、同じく原査定の拒絶(当審の拒絶)の理由で引用した、実願昭61-165748号(実開昭63-71050号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。
3.「第1図は本考案の一実施例となるバルーンカテーテルの構造を示す全体の概要図である。本考案によるカテーテルは、本体チューブ(3)、該本体チューブ(3)の内側中心部に設けられた中心チューブ(4)、及びカテーテルの先端部(2)近傍に固着されたバルーン(1)より基本的に構成されており、・・・中略・・・本体チューブ(3)と中心チューブ(4)の間に形成されたカテーテル内空間(5)を通じて、バルーン(1)内に膨張用液体を注入し、加圧力が伝達される。バルーン(1)は、先端部(2)と本体チューブ(3)とに平滑な外面を有し固着されている事が好ましい」(6ページ1?17行)

第1図には、本体チューブ3の遠位側が取り除かれ、中心チューブ4のみが先端部2まで伸びており、バルーン1が先端部と本体チューブ3の遠位側端部に接合されたカテーテルが示されており、バルーン1の近位側端面と本体チューブ3の遠位側端部の断面とが「平滑な外面を有し固着されている」、すなわち突き当てて接合されていることが示されている。

III.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「第2の三日月状の管腔」は、バルーン拡張のための圧力流体をとおすものであるので、本願発明の「拡張ルーメン」に相当し、以下同様に、「第1の略円形管腔」は、ガイドワイヤをとおすものであるので、「ガイドワイヤルーメン」に、「軸」は「シャフト」に、「バルーン」は「バルーン」に、「スリーブ」は「スリーブ」に、「バルーン拡張カテーテル」は「バルーンカテーテル」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
(一致点)
「拡張ルーメンとガイドワイヤルーメンを一体的に有するシャフトと、少なくとも近位側にスリーブを有するバルーンを用いてバルーンカテーテルの少なくとも遠位部が形成され、更にバルーン近位側のスリーブと前記シャフトとの接合部から遠位側の拡張ルーメンのみが取り除かれてガイドワイヤルーメンのみがバルーンを貫通して遠位側に伸びているバルーンカテーテルにおいて、近位側バルーンスリーブを被せて接合されているバルーンカテーテルであって、取り除かれた遠位側拡張ルーメン端部に対して、前記近位側スリーブを接合した、バルーンカテーテル。」

そして、両者は、次の相違点で相違する。
相違点a.
本願発明では、拡張ルーメンが取り除かれることで新たに生じた断面とスリーブの端面が、付き当てられて接合され、残されたガイドワイヤルーメンに近位側バルーンスリーブを被せて接合されているのに対し、引用発明では、近位側バルーンスリーブが被せて接合されている点。

相違点b.
本願発明は、テーパー状に取り除かれた遠位側拡張ルーメン端部に対して、テーパー状にカットした近位側スリーブを付き当て、拡張ルーメン側の接合部がガイドワイヤールーメン側の接合部より近位側に配置されて接合したものであるのに対し、引用発明はそうではない点。

IV.判断
上記相違点について検討する。
相違点a.について
バルーンを被せて接合することによる段差の発生や柔軟性の低下等を改善する目的で、引用発明に引用例2記載の事項を適用し、軸の周方向の第2の三日月状の管腔を取り除いて生じた断面と近位側バルーンスリーブの端面とを突き合わせて接合し、周方向で第1の略円形管腔が残っている部分では、そもそも突き合わすべき断面がないので、そのままバルーンスリーブの近位端部を被さるように接合して、相違点a.に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点b.について
一般に、端面の突き合わせ接合において、端面を傾斜状、すなわちテーパー状に形成することは、当該技術分野においても、例えば、特開平10-43301号公報(【0021】段落参照)、特開平8-112352号公報(当審拒絶理由で引用した引用例5:図3,4,8参照)、特開平6-277296号公報(【0096】段落参照)、特開平8-84776号公報(4ページ6欄30?32行参照)、米国特許第5772641号明細書(FIG.7,8等参照)、米国特許第6197015号明細書(FIG.4,6等参照)にそれぞれ示すように周知である。
そこで、引用発明において、拡張ルーメンに相当する第2の三日月状の管腔の遠位側端部に、バルーンの近位側スリーブを突き当てて接合するにあたり、かかる周知技術を勘案して、拡張ルーメン側の接合部がガイドワイヤールーメン側の接合部より近位側に配置されるような傾斜で両者をテーパー状に切断して突き当て接合するようにし、相違点b.に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

V.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-18 
結審通知日 2008-03-25 
審決日 2008-04-07 
出願番号 特願2001-375088(P2001-375088)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高田 元樹  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 中田 誠二郎
北村 英隆
発明の名称 バルーンカテーテル及びバルーンカテーテルの製造方法  
代理人 関口 久由  
代理人 柳野 隆生  
代理人 森岡 則夫  

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