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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1178454
審判番号 不服2005-22215  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-17 
確定日 2008-05-22 
事件の表示 特願2001-341841「携帯無線端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月16日出願公開、特開2003-143274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成13年11月7日の出願であって,その請求項2に係る発明は,平成20年1月30日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりのものと認められるところ,その請求項2に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「アンテナを有し,無線回路を収容した筐体を有する携帯無線端末装置において,前記筐体のうち,通話中に耳が当たる筐体部分が非導電性材料で,その筐体部分より下部の筐体部分に前記アンテナと直流的に接続されておらず,高周波的に間接的に接続されている導電体を有する携帯無線端末装置。」

第2 引用発明
(1)当審における拒絶の理由に引用された,本願出願前公知の特開2000-101338号公報(平成12年4月7日公開,以下「引用文献」という。)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 金属筐体(12)にアンテナ電流が流れることで,該筐体(12)がアンテナ(14)の一部を構成している携帯電話において,
携帯電話の使用時に,その使用者の頭部側に位置する前記筐体(12)に関して,該筐体(12)に流れる表面電流密度が最も大きくなる個所にフェライトシート(14)を装着することで局所ピークSARを低減させるようにしたことを特徴とする携帯電話。」(第2頁第1欄)。
(イ)「【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を克服し,所期の目的を好適に達成するため本発明は,金属筐体にアンテナ電流が流れることで,該筐体がアンテナの一部を構成している携帯電話において, 携帯電話の使用時に,その使用者の頭部側に位置する前記筐体に関して,該筐体に流れる表面電流の密度が最も大きくなる個所にフェライトシートを装着することで局所ピークSARを低減させるようにしたことを特徴とする。」(第2頁第2?第3頁第3欄)。
(ウ)「【0010】この観点に立って,図1で説明した如く携帯電話の金属筐体12にフェライトシート14を装着して,該フェライトシート14による頭部内SARと該金属筐体12の表面電流密度との関係を,FDTD(Finite Difference Time Domain 有限差分時間領域)法で解析した。この携帯電話としては,図1で述べたと同様に,1/4波長(周波数:900MHZ)のモノポールアンテナ10を金属筐体12に設置したものを使用し,フェライトシート14の材料特性も図1に関して述べたと同じものを使用した。」(第3頁第3欄)
(エ)「【0012】図3は,携帯電話の頭部側筐体における表面電流密度の2乗値の抑制量J2s1と,それに対応する頭部表面SARの低減量SARR1との相関関係をドットで示したグラフである。この図3から,抑制量J2s1と低減量SARR1との相関係数γは0.73と求められ,これらJ2s1とSARR1との間に強い相関関係があることが分かる。そこで,図1における筐体12へのフェライトシート14の装着領域を位置Aとし,この位置Aを基準として下方へ3cm(12セル)ずらした領域を位置B,位置Aから下方へ6cm(24セル)ずらした領域を位置C,位置Aから下方へ9cm(36セル)ずらした領域を位置Dとして,これらフェライトシート14の装着位置と局所ピークSARの低減量との関係を調べた。
【0013】図4は,前述したシート装着位置と局所ピークSARの低減量との関係を示すグラフである。ここで薄墨色の着色を施したグラフは,1グラム平均でのピークSAR(SAR1g)を示し,白抜きのグラフは,10グラム平均でのピークSAR(SAR10g)を示している。この図4から,フェライトシート14の装着位置によるSAR1gとSAR10gの低減量は,D,C,A,Bの順になっており,従って人体の頭部側における筐体の表面電流密度の大きさ(図2参照)と対応的に大きくなっていることが分かる。すなわち該結果は,局所ピークSARを低減させるには,頭部側における筐体の表面電流密度の最も大きい箇所に,前記フェライトシート14を装着することが有効であり,従って携帯電話の設計段階でこれを考慮するべきである旨を示している。」(第3頁第3?4欄)
(オ)「【0014】前述した如く,携帯電話における人体頭部側の筐体の表面電流密度を抑制する・・・頭部側の金属筐体12にアンテナ電流を出来るだけ流さないように設計すべきである。・・・低局所SARとアンテナ10からの電波の高放射効率とを両立させ得るものである。」(第3頁第4欄)

上記摘記事項(ア)によれば,請求項1に係る発明は,携帯電話であり,アンテナに電流を流す以上,筐体内には無線回路があり,
上記摘記事項(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)及び図1,2,4によれば,通話中には側頭部の耳がフェライトシートが装着された部分に当たっていることも自明であり,
上記摘記事項(ウ)によれば,1/4波長のモノポールアンテナに係る発明であるから,金属からなる筐体は,アンテナと直流的に接続されておらず,高周波的に間接的に接続されているものである。

したがって,上記引用文献には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。
「アンテナを有し,無線回路を収容した筐体を有する携帯電話において,前記筐体のうち,通話中に耳が当たる筐体部分にフェライトシートが装着され,前記アンテナと直流的に接続されておらず,高周波的に間接的に接続されている金属からなる筐体を有する携帯電話。」

第3 対比
本願発明と引用発明を対比検討する。
引用発明の「携帯電話」は無線により通話するものであるから,携帯無線端末装置の一種であり,金属は導電体であるから,両者は,
「アンテナを有し,無線回路を収容した筐体を有する携帯無線端末装置において,前記筐体部分に前記アンテナと直流的に接続されておらず,高周波的に間接的に接続されている導電体を有する携帯無線端末装置。」の点で一致し,次の点で相違する。
筐体の構造に関して,本願発明は,「通話中に耳が当たる筐体部分が非導電性材料」であり,「筐体部分より下部の筐体部分」に導電体を有しているのに対し,引用発明は,筐体全体が導電体であり,側頭部に「フェライトシートが装着され」ている点。

第4 当審の判断
そこで,上記相違点について検討する。
上記摘記事項(エ)の「頭部側における筐体の表面電流密度の最も大きい箇所に,前記フェライトシート14を装着することが有効であり」との記載,及び,上記摘記事項(オ)の「頭部側の金属筐体12にアンテナ電流を出来るだけ流さないように設計すべき」との記載によれば,このフェライトシートの装着は,装着された部分の金属筐体のアンテナ電流を抑制することにある。
してみると,引用発明において,フェライトシートを装着した部分の金属を直接取り除いて,アンテナ電流自体を流せなくする程度のことを想起するのに格別な困難性はなく,また,耳が当たる受話部分にスピーカの取付が必要なことを配慮すると,当然に,通話中に耳が当たる筐体部分を非導電性材料とすることも自明的に導ける事項でしかない。
また,非導電性材料の筐体に導電体を付加した携帯無線端末装置は,本願出願前から,例えば,特開平8-18478号公報,特開平4-318701号公報,特開2001-53522号公報等に記載されているように,周知といえるものであるから,この周知の携帯無線端末装置において,引用発明を参酌して,耳が当たる筐体部分を非導電性材料とすることも,格別な創意工夫を要するものとはいえない。
したがって,筐体の構造に関して,「通話中に耳が当たる筐体部分が非導電性材料」とし,「筐体部分より下部の筐体部分」を導電体にする程度のことは,単なる設計的変更の域を出ない。
そして,本願発明によって奏せられる「アンテナ特性の確保」との作用・効果も,SARと明らかに相関する技術的事項であるから,自明といえるものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項2に係る発明は,引用文献記載の発明,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-11 
結審通知日 2008-03-18 
審決日 2008-04-08 
出願番号 特願2001-341841(P2001-341841)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志藤原 敬利  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 阿部 弘
土居 仁士
発明の名称 携帯無線端末装置  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  
代理人 谷澤 靖久  

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