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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1178612
審判番号 不服2006-10611  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-24 
確定日 2008-05-26 
事件の表示 平成 9年特許願第147708号「壜体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-338269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成9年6月5日の出願であって、その請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】 ブロー成形により、定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層(2)と、該外層(2)に剥離自在に積層され、内袋を形成する可撓性合成樹脂製の内層(3)とから構成され、下端部の底部(6)に形成した金型喰切り部(7)の前記外層(2)の端縁間に、前記外層(2)と内層(3)との間への外気の侵入口としてのスリット(8)を設けると共に、上端部の口部(4)の外層(2)に、該外層(2)と内層(3)との間への空気取り入れ孔(9)を設けて成る壜体。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-310265号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】 胴部の上部にボトル口部を有するとともに、胴部の下部に底部を有し、合成樹脂製の外側層および可撓性合成樹脂製の内側層の少なくとも二層からなる積層ボトルにおいて、前記ボトルの胴部の内側層とこれと隣接する外側層とを剥離自在とし、前記内側層と外側層の少なくとも一部を接着帯で接着し、前記接着帯は、前記ボトル口部から底部に向かう方向に沿って1本設け、前記ボトルは成形時に形成される底部パーティングライン上のリブにおいて内側層同士は接着し、外側層同士は接着せずに、外側層と内側層との間に空気を流入させるスリットを有し、前記ボトルの底部の少なくとも一部に、外層と内層とを一体に保持する係止部を設けたことを特徴とする積層ボトル。」
「【0025】本実施例のボトルの製造は以下のようにして行う。まず、図2のような断面を有する積層パリソンを押出成型で成型する。……積層パリソンを一対のブロー成型用金型で挟持し、ブロー成型法により図1に示したボトルを成型する。」
「【0026】このとき、ボトル底部は金型によりくい切られる。このくい切り部分(ピンチオフ部)は金型のパーティングライン上にあり、くい切りによりやや外方に突出したリブ11が形成される。ところで、くい切りによるリブ11部分を図5,図6に示すが、このリブ11では、くい切り時に内側層1同士が完全に接着するが、外側層2同士は接着せず、成形後に棒等で底部5を突いたりして衝撃を与えると、外側層2と内側層1との間がパーティングライン上で割れスリット12が形成される。この結果、スリット12から内側層1と外側層2との間に空気が流入する。」
そして、図6には、外側層2の端縁間にスリット12が形成された態様が図示されている。
以上の記載及び図1ないし図6によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。
「ブロー成型法により、合成樹脂製の外側層と、該外側層に剥離自在に積層される可撓性合成樹脂製の内側層とから構成され、下端部の底部に形成した金型によるくい切り部分の外側層の端縁間に、外側層と内側層との間に空気を流入させるスリットを設けて成る積層ボトル。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-77137号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、内容物の減少に伴って内側層が外側層から剥離し収縮する積層プラスチックボトルに関するものである。」
「【0019】図1は本発明による積層プラスチックボトル(以下、ボトルと略称する)の外観斜視図であり……ボトル1は、口筒部4から胴部2の底部5に至るまでその全体が、外側層11と内側層12とを積層して構成されている。外側層11と内側層12は、1本の帯状の接合部13において互いに接合されているが、接合部13以外の部位では外側層11と内側層12が当接しているだけで剥離可能になっている……」
「【0020】……ボトル1の口筒部4における外側層11には、接合部13から周方向180度離れた部位に空気孔14が設けられている。空気孔14は外側層11だけを貫通しており、内側層12には貫通していない。」
「【0022】このボトル1では、口筒部4に図示しない注出ポンプを装着し、注出ポンプの吸い上げ管を口筒部4から内側層12内に挿入して、内側層12の内部に収容した内容物をポンプアップし注出する。」
「【0023】内側層12内の内容物の減少に伴い、内側層12が外側層11から剥離し収縮する……内側層12が収縮する際には、空気孔14から外側層11と内側層12との間に空気が流入し、内側層12の収縮を確実且つスムーズにする。」
以上の記載及び図1ないし図4によれば、引用例2には次の発明が記載されていると認められる。
「外側層と内側層とを剥離可能に積層して構成され、内容物の減少に伴って内側層が外側層から剥離し収縮する積層プラスチックボトルであって、口筒部4の外側層に、外側層と内側層との間に空気を流入させる空気孔が設けられた積層プラスチックボトル。」

3 対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「外側層」、「内側層」、「金型によるくい切り部分」及び「積層ボトル」は、それぞれ本願発明の「外層(2)」、「内層(3)」、「金型喰切り部(7)」及び「壜体」に相当する。そして、引用例1記載の発明の「外側層」が、定形の外殻を形成すること、同「内側層」が、内袋を形成することは、いずれも、引用例1の図1及び図3から明らかな事項であるので、両者は、
「ブロー成形により、定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層と、該外層に剥離自在に積層され、内袋を形成する可撓性合成樹脂製の内層とから構成され、下端部の底部に形成した金型喰切り部の前記外層の端縁間に、前記外層と内層との間への外気の侵入口としてのスリットを設けて成る壜体」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願発明では、上端部の口部の外層に、該外層と内層との間への空気取り入れ孔を設けて成るのに対して、引用例1記載の発明では、上端部の口部の外層に空気取り入れ孔を設けていない点。

4 相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
内側層と外側層が積層されて構成され、内容物の減少に伴って内側層が外側層から剥離し収縮するブロー成形プラスチックボトルにおいて、通気口をボトルの頂部の方と、底部の方にそれぞれ設け、内側層の外側層からの剥離が、部分的に偏ることなく、全体的に行われるようにすることは、本願の出願前に周知の技術的事項(例えば、特表平6-503789号公報、特表平9-504253号公報参照。特に、図8、図9及び対応する記載事項参照。)である。
そして、内容物の減少に伴って内側層が外側層から剥離し収縮する積層プラスチックボトルにおいて、側層と内側層との間に空気を流入させる空気孔を、口筒部の外側層に設けることが、引用例2に記載されているから、引用例1記載の発明において、内側層の外側層からの剥離が、部分的に偏ることなく、全体的に行われるように、底部に設けたスリットに加えて、引用例2に記載の空気孔を採用し、口部の外層にも空気孔を設け、本願発明とすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
しかも、本願発明が奏する効果も、引用例1及び引用例2記載の発明並びに周知の技術的事項から、当業者が予測し得たものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2記載の発明並びに周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-18 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平9-147708
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市野 要助石田 宏之  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 関口 勇
中西 一友
発明の名称 壜体  
代理人 渡辺 一豊  

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