ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
---|---|
管理番号 | 1178650 |
審判番号 | 不服2005-20810 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-27 |
確定日 | 2008-05-28 |
事件の表示 | 特願2001-541433号「ステントとカテーテルの集合体および分岐箇所の処置方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年6月7日国際公開、WO01/39697、平成15年 5月 7日国内公表、特表2003-515385号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2000年11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年12月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年7月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年10月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年6月1日付けの誤訳訂正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「横分枝導管と主導管を有する分岐した導管にY形ステントを移植するステント送給集合体において、 近位端および遠位端を有する第一の膨張可能な部材を含み、近位端および遠位端を有する第二の膨張可能な部材を更に含み、近位端と遠位端を有する2バルーンY形カテーテルと、 前記第一の膨張可能な部材を含む前記カテーテルの少なくとも一部を貫通して延び、マンドレルを受け入れる第一管腔と、 前記第二の膨張可能な部材を含む前記カテーテルの少なくとも一部を貫通して延び、案内ワイヤを受け入れる第二管腔と、 前記第一管腔内に配置されたマンドレルと、 を備え、 前記第一の膨張可能な部材と前記第二の膨張可能な部材は、通常は、偏倚して離れているが、このステント送給集合体が前記第2管腔内で延びるガイドワイヤに沿って前進するときには、前記マンドレルにより拘束されて一緒にされて低姿勢となることを特徴とするステント送給集合体。」 3.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-57019号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「別の実施の形態では、遠位角度を有するステントが、主血管に移植される。側枝血管に接近し直ぐ隣接している、疾患のある主血管の部分においては、ステントが疾患領域を被覆し側枝血管の開口を被覆しないように、本発明の新規なカテーテルを使用して遠位端角度付きステントが移植される。更に別の実施の形態では、分岐部にステントを取付けるため、Y形カテーテルとY形ステントが提供される。この実施の形態では、二重バルーンカテーテルが、バルーンに取付けられたY形ステントを有し、バルーンは、送出し易いように並設して位置決めされている。バルーンは通常、別々に付勢されるが、ステントの送出の際、小形となるように拘束され一緒に保持されている。まず、ガイドワイヤを、主血管内の分岐部の遠位箇所に位置決めする。第2のガイドワイヤルーメンが、カテーテルの第2ガイドワイヤルーメン内に保持され、バルーンとステントが分岐部の遠位箇所に達するように、カテーテルをトラッキングガイドワイヤ上で前進させる。次いで、トラッキングガイドワイヤを近位方向に取り出し、これにより別々に付勢されているバルーンを解放する。カテーテルを近位方向に回収するとき、一方のガイドワイヤを主血管内に残す。次いで、他方のガイドワイヤを側枝血管内で前進させる。次いで、バルーンとステントが分岐部に固定されるまで、カテーテルを両方のガイドワイヤ上で前進させる。バルーンを萎ませ、ステントを膨張させて分岐部に移植する。」(段落【0015】) イ.「・・・(略)・・・図70?図79に示される更に別の実施の形態では、分岐部にステントを取付けるため、二重バルーンのY形カテーテル組立体が提供される。この実施の形態では、分岐部を被覆するのに、Y形ステントが移植される。カテーテル90は、第1および第2の膨張部材91、92を有しており、これらの膨張部材は、小形送出のため(Y形)並置され、ステントを移植するため別々に曲がるように構成されている。膨張部材を一緒に保持するのを助けるため、配置の直前まで、係止リング93を使用することができ、その時点で係止リング93を取り外すことができる。ガイドワイヤルーメン95が、少なくともカテーテルの一部を通って延びており、ガイドワイヤ96を摺動可能に受け入れる。第2のガイドワイヤルーメン98は、少なくともカテーテルの一部を通って延びており、第2のガイドワイヤ99を摺動可能に受け入れる。第2のガイドワイヤルーメン98は、遠位部分98A、98Bを有している。Y形ステント100が、第1および第2の膨張部材91、92に取付けられている。」(段落【0049】) ウ.「分岐血管にステントを取付ける好ましい方法では、図73?図79に示されるように、分岐の一方の肢節(おそらく、ワイヤの再交差の課題に最も弱い肢節)の遠位位置に上述のように位置決めされた第2のガイドワイヤ99をルーメン98A、98Bに装填し、カテーテルが分岐部を超えて遠位方向に進められるように、カテーテル90を第2のガイドワイヤ99上で前進させる。この箇所までルーメン95に収容されていたガイドワイヤ96を、ガイドワイヤ99の側部に沿って前進させる。次いで、遠位端が第2のガイドワイヤルーメン98の遠位部分98Aから引っ張り出されるまで、ガイドワイヤ99が回収される。ガイドワイヤ99が(近位方向に)引っ張り戻されると、通常は互いに付勢している第1および第2の膨張部材91、92は、解放され、別々に曲げられる。・・・(略)・・・」(段落【0050】) エ.図70には、Y形併置された第1および第2の膨張部材91、92を有するカテーテル90が示されており、第1の膨張部材91、第2の膨張部材92及びカテーテル90は、それぞれ、近位端及び遠位端を有している様子が図示されている。 また、上記ア?ウの記載、図73、75及び78から、第2の膨張部材92と第1の膨張部材91は、通常は、別々に曲げられているが、二重バルーンのY形カテーテル組立体が第2のガイドワイヤルーメン98内で延びる第2のガイドワイヤ99上で前進するときには、第2のガイドワイヤ99により小形となるように拘束され一緒に保持されているものと認められる。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「分岐血管にY形ステントを移植する二重バルーンのY形カテーテル組立体において、 近位端および遠位端を有する第2の膨張部材92を含み、近位端および遠位端を有する第1の膨張部材91を更に含み、近位端と遠位端を有するカテーテル90と、 前記第2の膨張部材92を含む前記カテーテルの少なくとも一部を通って延び、第2のガイドワイヤ99を受け入れる第2のガイドワイヤルーメン98と、 前記第1の膨張部材91を含む前記カテーテルの少なくとも一部を通って延び、ガイドワイヤ96を受け入れるガイドワイヤルーメン96と、 前記第2のガイドワイヤルーメン98に配置された第2のガイドワイヤ99と、 を備え、 前記第2の膨張部材92と前記第1の膨張部材91は、通常は、別々に曲げられているが、この二重バルーンのY形カテーテル組立体が前記第2のガイドワイヤルーメン98内で延びる第2のガイドワイヤ99上で前進するときには、前記第2のガイドワイヤ99により小形となるように拘束され一緒に保持されている二重バルーンのY形カテーテル組立体。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「分岐血管」は、本願発明の「横分枝導管と主導管を有する分岐した導管」に相当し、以下同様に、「二重バルーンのY形カテーテル組立体」は「ステント送給集合体」に、「第2の膨張部材92」は「第一の膨張可能な部材」に、「第1の膨張部材91」は「第二の膨張可能な部材」に、「カテーテル90」は「2バルーンY形カテーテル」に、「通って」は「貫通して」に、「第2のガイドワイヤルーメン98」は「第一管腔」に、「ガイドワイヤ96」は「案内ワイヤ」及び「ガイドワイヤ」に、「ガイドワイヤルーメン96」は「第二管腔」に、「通常は、別々に曲げられている」は「通常は、偏倚して離れている」に、「小形となるように拘束され一緒に保持されている」は「拘束されて一緒にされて低姿勢となる」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「第2のガイドワイヤ99」とは、本願発明の「マンドレル」とは、ワイヤ状の部材という点で共通している。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「横分枝導管と主導管を有する分岐した導管にY形ステントを移植するステント送給集合体において、 近位端および遠位端を有する第一の膨張可能な部材を含み、近位端および遠位端を有する第二の膨張可能な部材を更に含み、近位端と遠位端を有する2バルーンY形カテーテルと、 前記第一の膨張可能な部材を含む前記カテーテルの少なくとも一部を貫通して延び、マンドレルを受け入れる第一管腔と、 前記第二の膨張可能な部材を含む前記カテーテルの少なくとも一部を貫通して延び、案内ワイヤを受け入れる第二管腔と、 前記第一管腔内に配置されたワイヤ状の部材と、 を備え、 前記第一の膨張可能な部材と前記第二の膨張可能な部材は、通常は、偏倚して離れているが、このステント送給集合体が前進するときには、前記ワイヤ状の部材により拘束されて一緒にされて低姿勢となるステント送給集合体。」 そして、両者は次の相違点で相違する。 (相違点) 本願発明は、ワイヤ状の部材がマンドレルであり、第一の膨張可能な部材と第二の膨張可能な部材は、ステント送給集合体が第2管腔内で延びるガイドワイヤに沿って前進するときには、マンドレルにより拘束されて一緒にされて低姿勢となるのに対し、引用発明は、ワイヤ状の部材が第2のガイドワイヤ99であり、第一の膨張可能な部材と第二の膨張可能な部材は、ステント送給集合体が第一管腔内で延びる第2のガイドワイヤ99上で前進するときには、第2のガイドワイヤ99により拘束されて一緒にされて低姿勢となる点。 5.相違点の判断 上記相違点について検討する。 引用発明において、ガイドワイヤ96(案内ワイヤ及びガイドワイヤ)と第2のガイドワイヤ99(マンドレル)という2つのガイドワイヤを有するものであり、前進する際、2つのガイドワイヤのうちのどちらを使うかは、二者択一の事項に過ぎず、また、第2の膨張部材92(第一の膨張可能な部材)と第1の膨張部材91(第二の膨張可能な部材)を拘束するためには、第2のガイドワイヤ99は、マンドレル等のワイヤ状の部材で良いことは、明らかである。 したがって、引用発明において、前進する際のガイドワイヤをガイドワイヤ96(案内ワイヤ及びガイドワイヤ)とし、第2のガイドワイヤ99をマンドレルとし、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-25 |
結審通知日 | 2008-01-04 |
審決日 | 2008-01-16 |
出願番号 | 特願2001-541433(P2001-541433) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高田 元樹 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
八木 誠 中田 誠二郎 |
発明の名称 | ステントとカテーテルの集合体および分岐箇所の処置方法 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 森 秀行 |