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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1178676
審判番号 不服2005-2290  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-10 
確定日 2008-05-30 
事件の表示 平成11年特許願第 72381号「携帯電話保守サービスシステム及び保守サービス方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月29日出願公開、特開2000-270376〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年3月17日に出願されたものであって、平成16年12月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項9は、
「【請求項9】 保守サービスセンタからのバックアップ要求信号を、基地局を介して受信した時に、着信に対して呼出音を鳴動させる状態に設定されていても、該バックアップ要求信号を検出して、呼出音を鳴動させない着信処理に移行する受信手段と、
前記バックアップ要求信号に従ってメモリダイヤルデータ,メールアドレスデータ等の入力設定したデータを、前記基地局を介して前記保守サービスセンタに送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする携帯電話機。」
と補正された。

本件補正は、補正前の請求項9に係る発明を特定するために必要な事項である「呼出音を鳴動させない着信処理に移行する受信手段」について、「着信に対して呼出音を鳴動させる状態に設定されていても、該バックアップ要求信号を検出して、」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項9に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-314805号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が認められる。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】無線携帯端末を紛失または盗難され、その端末を第三者が取得して不正に使用することを試みた場合、パスワード機能がなければ自由に無線ネットワークへのアクセスや住所録などの内部データの参照が可能である。またパスワード機能があっても、無制限にパスワード入力を繰り返すことが可能ならば、何らかの手段によってパスワードを解読され、不正使用を防止することはできない。

【0015】
【実施例】以下、本発明を添付の図面に示す好ましい実施例に関連してさらに詳細に説明する。図1は本発明に用いられる無線携帯端末システムの全体構成図であり、図2は本発明に用いられる無線携帯端末のハードウェア構成を示すブロック図であり、図3は本発明の第1実施例の動作を示すシーケンス図であり、図4は本発明の第2実施例の動作を示すシーケンス図である。
【0016】まず、図2を参照して本発明に用いられる無線携帯端末のハードウェア構成が説明される。
【0017】無線携帯端末は、システム全体を制御するCPU21、制御プログラム等が蓄積されているROM24、制御プログラムが使用するワーク用RAM22、住所録やスケジュールなどの個人データが蓄積されているデータ蓄積用RAM23、情報や操作を表示するための表示器25、データを入力するための入力装置26、無線の制御を行なう無線モジュール27で構成されている。
【0018】入力装置26で入力されたデータはデータ蓄積用RAM23に蓄積される。
【0019】一般的にデータ蓄積用RAM23は電池でバックアップされているために、電源を落としても消去されることはない。無線でデータの送信を行なう場合には、RAM22、23、ROM24からシステムバスを通じて、無線モジュール27にデータが送られ、これによってデータの送信が行われる。
【0020】次に無線携帯端末システムの全体構成を図1を用いて説明する。
【0021】いま、所有者以外の第三者が不正使用をしようとしている無線携帯端末を11とする。無線携帯端末11は情報センタ13に登録、管理されていて、有線ネットワーク14に接続されている情報センタ13に対して無線基地局19を通じてアクセスできるようになっている。
【0022】図3のシーケンス図を用いて本発明の第1実施例の動作を説明する。
【0023】今、所有者以外の第三者が無線携帯端末11を不正に用いようとして、パスワード入力を試み、システムで規定されている回数の入力誤りを起こしたとする。この時、無線携帯端末11は、端末が不正使用されようとしていると判断して、これを情報センタ13に通知するために不正使用通知メッセージを情報センタ13に送信する。[301]
不正使用通知メッセージを受信した情報センタ13では、無線携帯端末11の内部データのバックアップコピーをとるためにシステムデータダンプ要求メッセージを送信する。[302]
このメッセージには無線携帯端末11のシステムデータを暗号化するためのキーデータを付加する。無線携帯端末側でこのメッセージを受信すると、システムデータダンプ開始メッセージを送信した後、内部データの送信を開始する。[303]
内部データは無線を通じて不正に取り込まれないように、情報センタ13から送られてきた暗号キーを用いて、暗号化される。
【0024】無線携帯端末11のシステムデータはパケット単位で送られ、情報センタ13ではパケット毎に受信確認メッセージを無線携帯端末11に送信する。[304]
情報センタ13は、バックアップコピーのとり終り後に、システムロック要求メッセージを無線携帯端末11に送信する。無線携帯端末11ではこのメッセージを受信後にシステムロック完了メッセージを送信して、内部データを消去して無線携帯端末を使用不可の状態にしてロックする。[305-306]
本発明の第2実施例として、システムで規定された回数だけパスワードの入力誤りを起こしたことを情報センタで検出する場合の動作が図4のシーケンス図に示される。この第2実施例では、無線携帯端末11の不正使用が情報センタ13において判断されるので、前述の第1実施例における無線携帯端末11から情報センタ13への不正使用通知メッセージの送信動作は不要になる。それ以外は第1実施例と同じ動作が行われるので、重複を避けるためにそれらの説明を省略する。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の無線携帯端末不正使用防止方法は、第三者によって取得された無線携帯端末を不正に用いようとして、誤ったパスワード入力を数回試みると無線携帯端末内部のデータが消去して端末をロック状態にするために、無線携帯端末を紛失したり盗難にあったりした後に、第三者が無線ネットワークへのアクセスや住所録などの内部データを参照することができなくなり、無線携帯端末のセキュリティが保たれる。また内部データを消去する前にデータのバックアップコピーを管理先の情報センタに備えられた記憶装置にとって置くので、正規の持ち主によってなされる再使用時における復旧が容易である。

以上の記載から、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認める。
「無線携帯端末11は、有線ネットワーク14に接続されている情報センタ13に対して無線基地局19を通じてアクセスできるようになっており、
情報センタ13は、無線携帯端末11の内部データのバックアップコピーをとるためにシステムデータダンプ要求メッセージを送信し、
無線携帯端末側で上記メッセージを受信すると、無線ネットワークへのアクセスや住所録などの内部データの送信を開始し、
無線携帯端末では、データを入力するための入力装置26で入力されたデータはデータ蓄積用RAM23に蓄積され、データ蓄積用RAM23には、住所録やスケジュールなどの個人データが蓄積されており、無線でデータの送信を行なう場合には、RAM23からシステムバスを通じて、無線モジュール27にデータが送られ、これによってデータの送信が行われ、
無線携帯端末11のシステムデータはパケット単位で送られ、情報センタ13ではパケット毎に受信確認メッセージを無線携帯端末11に送信する、
無線携帯端末11。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
刊行物1発明の「情報センタ13」、「無線携帯端末11」、「システムデータダンプ要求メッセージ」、「無線基地局19」は、それぞれ本願補正発明の「保守サービスセンタ」、「携帯電話機」、「バックアップ要求信号」、「基地局」に相当する。
刊行物1発明の「無線携帯端末11」は、情報センタ13から無線携帯端末11の内部データのバックアップコピーをとるためのシステムデータダンプ要求メッセージを受信しているから、本願補正発明の保守サービスセンタからのバックアップ要求信号を受信する「受信手段」を備えることは明らかである。
刊行物1発明の「無線携帯端末11」は、「情報センタ13に対して無線基地局19を通じてアクセスできる」ので、情報センタ13から無線携帯端末11の内部データのバックアップコピーをとるためのシステムデータダンプ要求メッセージの受信を「無線基地局19」を通じて行っていることは明らかであるから、刊行物1発明の「無線携帯端末11」は、本願補正発明の「保守サービスセンタからのバックアップ要求信号を、基地局を介して受信する受信手段」及び「基地局を介して前記保守サービスセンタに送信する送信手段」を備えると言える。
刊行物1発明の「無線ネットワークへのアクセスや住所録などの内部データ」あるいは、「住所録やスケジュールなどの個人データ」は、所有者により入力されたデータであることは明らかであるから、本願補正発明の「入力設定したデータ」に相当する。
刊行物1発明では、「無線携帯端末11」は、無線携帯端末11の内部データのバックアップコピーをとるためのシステムデータダンプ要求メッセージを受信すると、内部データの送信を開始し、無線携帯端末11が送ったシステムデータは、情報センタ13で受信され、「無線携帯端末11は、・・・情報センタ13に対して無線基地局19を通じてアクセスできる」から、本願補正発明の「バックアップ要求信号に従って入力設定したデータを、前記基地局を介して前記保守サービスセンタに送信する送信手段」を備えると言える。

したがって、両者は、
「保守サービスセンタからのバックアップ要求信号を、基地局を介して受信する受信手段と、
前記バックアップ要求信号に従って入力設定したデータを、前記基地局を介して前記保守サービスセンタに送信する送信手段と
を備える携帯電話機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「受信手段」が、本願補正発明では「バックアップ要求信号を、基地局を介して受信した時に、着信に対して呼出音を鳴動させる状態に設定されていても、該バックアップ要求信号を検出して、呼出音を鳴動させない着信処理に移行する」のに対して、刊行物1発明では、呼出音について記載されていない点。

[相違点2]
「入力設定したデータ」が、本願補正発明では、「メモリダイヤルデータ,メールアドレスデータ等」であるのに対して、刊行物1発明では、「無線ネットワークへのアクセスや住所録などの内部データ」あるいは、「住所録やスケジュールなどの個人データ」である点。

(4)判断
[相違点1]について
携帯電話機において、着信に対して呼出音を鳴動させる状態に設定されていても、所定の信号を検出して、呼出音を鳴動させない着信処理に移行することは、周知技術(例えば、特開平8-336178号公報(【0030】の「紛失携帯端末は呼び出しを着信し、捜索呼び出しが自分宛てに行われていることを確認すると、呼び出しベルを鳴らさずに交換局への応答信号を送信する。」)、特開平9-172676号公報(【0051】の「次に図1、2および11を参照して移動局7の位置情報を探索するための信号を発信し、位置情報を受けるための手順を以下に示す。まず、センター局1においてキーボード11を操作して、パソコンまたはワークステーション12を制御し、対象となる移動局7のPHS電話番号をオートダイアルする。すると、図1にしめすように、交換局2などを経由して移動局7をそのセル8内に持つ基地局6を経て移動局7へ電話回線が接続される。センター局1と移動局7との間に回線接続がなされると、PHSのデータベースに当該基地局6のコード番号が認識され記憶される。この認識、記憶は一瞬のうちに行なわれるので、センター局1と移動局7との回線は直ちに切断してよい。この基地局6の位置情報は基地局6のコードまたは基地局6の緯度と経度で表現され、PHSのデータベースから直ちにセンター局1にあるモデム13に送られ、パソコンまたはワークステーション12に伝達される。」、【0054】の「また、センター局1から移動局7に電話をすることによって、移動局7の位置情報をデータベースより得る方式もあり得る。この方式では通話の場合はベルを鳴らすが、位置情報を求める場合にはベルを鳴らす必要がなく、むしろ鳴らさない方が運転手等を煩わさないで済むのでその方が好ましい。また、センター局1と移動局7との間に回線が接続され、PHSのデータベースが移動局7をセル8内に持つ基地局のコードをセンター局1に連絡した後直ちに回線を切断する機能が望ましい。」)等参照。)である。
そして、刊行物1発明の「無線携帯端末11」におけるシステムデータダンプ要求メッセージの受信に際して、当該周知技術を用いて、バックアップ要求信号を受信した時に、着信に対して呼出音を鳴動させる状態に設定されていても、システムデータダンプ要求メッセージを検出して、呼出音を鳴動させない着信処理に移行する受信手段を備えるようにすることは、当業者が容易に想到できたものである。

[相違点2]について
一般に、携帯電話機において、入力設定したデータとして、「メモリダイヤルデータ,メールアドレスデータ等」は技術常識であり、刊行物1発明における、「無線ネットワークへのアクセスや住所録などの内部データ」あるいは、「住所録やスケジュールなどの個人データ」において当該技術常識を用いて、「メモリダイヤルデータ,メールアドレスデータ等」とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

また、本願補正発明の作用効果も、刊行物1発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著な効果は認められない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するのものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
平成17年2月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年10月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項9】 保守サービスセンタからのバックアップ要求信号を、基地局を介して受信した時に、呼出音を鳴動させない着信処理に移行する受信手段と、
前記バックアップ要求信号に従ってメモリダイヤルデータ,メールアドレスデータ等の入力設定したデータを、前記基地局を介して前記保守サービスセンタに送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする携帯電話機。」

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記「2.平成17年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「(2)刊行物」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.平成17年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」「(1)補正後の本願発明」で検討した本件補正後の請求項9に係る発明と対比すると、同じく「(1)補正後の本願発明」で指摘した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.平成17年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「(4)判断」に記載したとおり、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2008-03-27 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願平11-72381
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 春樹  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 坂東 博司
深津 始
発明の名称 携帯電話保守サービスシステム及び保守サービス方法  
代理人 眞鍋 潔  
代理人 渡邊 弘一  
代理人 伊藤 壽郎  
代理人 柏谷 昭司  

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