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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1178678
審判番号 不服2005-8337  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-06 
確定日 2008-05-30 
事件の表示 平成11年特許願第374031号「移動加入者の移動を制限するサービスを提供する無線交換システム及び、これに適用される移動交換局」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月10日出願公開、特開2001-189950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成11年12月28日の出願であって、平成17年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年5月6日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年5月6日付け手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成17年5月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1と請求項2は削除され、請求項3は請求項1として次のとおり補正された。
「それぞれ無線セルを形成する複数の無線基地局を備えた移動通信システムにおいて、
移動局に対応させてゾーン情報を管理する管理手段と、
該移動局について、ハンドオーバ候補の基地局が前記ゾーン情報で示されるゾーンの範囲内か否かを判断し、範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ候補の基地局へのハンドオーバを制限し、範囲内であるハンドオーバ候補の基地局を抽出し、該抽出した基地局へのハンドオーバを許容して該移動局についての通信を継続する制限手段と、
備えたことを特徴とする移動通信システム。」

上記補正は、請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「制限手段」について、「範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ侯補の基地局へのハンドオーバを制限する制限手段」とあるのを、「範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ候補の基地局へのハンドオーバを制限し、範囲内であるハンドオーバ候補の基地局を抽出し、該抽出した基地局へのハンドオーバを許容して該移動局についての通信を継続する制限手段」と限定して請求項1とするものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平6-189360号公報」(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(イ)「【請求項1】 移動通信網(100)において、
前記移動通信網(100)に登録されている移動加入者の属性を示す加入者データ(SD)に、前記移動加入者が移動通信を許容される地域を決定する利用可能地域(UA)を予め登録し、
前記移動加入者から呼設定の際に送信される呼設定信号に含まれる現存地域を示す情報と、前記加入者データ(SD)に登録済の利用可能地域(UA)とを比較し、前記現存地域が前記利用可能地域(UA)内である場合には前記移動加入者に対する呼設定を許容し、前記現存地域が前記利用可能地域(UA)外である場合には前記移動加入者に対する呼設定を拒否する利用可否判定手段(101)を設けることを特徴とする地域限定移動通信方式。
【請求項2】 前記移動加入者の利用可能地域(UA)は、移動通信網(100)を構成する一乃至複数の無線ゾーンにより指定することを特徴とする請求項1記載の地域限定移動通信方式。」(第2頁)

(ロ)「【0002】
【従来の技術】図6は本発明の対象となる移動通信網の一例を示す図である。図6において、21は移動関門階梯交換局(MGS)、22は移動加入者階梯交換局(MLS)、23は無線回線制御局(MCE)、24は無線基地局(BS)、25は各無線基地局(BS)(24)に対応する無線ゾーン(CZ)である。
【0003】各移動加入者階梯交換局(MLS)(22)には、一乃至複数の無線回線制御局(MCE)(23)が所属しており、また各無線回線制御局(MCE)(23)には、複数の無線基地局(BS)(24)が所属している。」(第2頁)

(ハ)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上の説明から明らかな如く、従来ある移動通信網においては、加入する総ての移動加入者は当該移動通信網(100)のサービス対象全域内で通話を可能としており、同サービスに対応した通信料金を徴収していた。
【0010】然し、加入者によっては、特定の事業所内のみで移動通信を利用する、或いは特定の行政区域内のみで移動通信を利用する等、特定の地域内でしか移動通信を必要としない場合も考慮されるが、この様な特定地域のみで移動通信を利用する加入者にとっては、限定地域のみで利用可能であるが、通信料金の低廉な移動通信サービスが提供されることが大いに期待される所であるが、従来ある移動通信網(100)においては、この様なサービスは提供されていなかった。
【0011】本発明は、限定地域のみで利用可能な移動通信サービスを提供可能とすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理を示す図である。図1において、100は本発明の対象となる移動通信網、(SD)は移動加入者の属性を示す加入者データである。
【0013】(UA)は、本発明により加入者データ(SD)に予め登録された利用可能地域である。101は、本発明により移動通信交換機(102)に設けられた利用可否判定手段である。
【0014】
【作用】利用可能地域(UA)は、移動加入者が移動通信を許容される地域を決定する。
【0015】なお利用可能地域(UA)は、移動通信網(100)を構成する一乃至複数の無線ゾーンにより指定することが考慮される。また利用可能地域(UA)は、移動通信網(100)を構成する一乃至複数の無線ゾーンの予め定められた組合わせにより指定することが考慮される。
【0016】また利用可能地域(UA)は、移動通信網(100)内で移動加入者を呼出す一斉呼出範囲により指定することが考慮される。利用可否判定手段(101)は、移動加入者から送信される呼設定信号に含まれる現存地域を示す情報と、加入者データ(SD)に登録済の利用可能地域(UA)とを比較し、現存地域が利用可能地域(UA)内である場合には移動加入者に対する呼設定を許容し、現存地域が利用可能地域(UA)外である場合には移動加入者に対する呼設定を拒否する。
【0017】従って、移動通信網に加入する任意の移動加入者に対し、所望地域内に限定した移動通信サービスを提供可能となり、当該移動通信網の利便性が大幅に向上する。」(第2?3頁)

(ニ)「【0018】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面により説明する。図2は本発明の一実施例による移動通信交換機を示す図であり、図3は本発明の対象とする呼設定信号の一例を示す図であり、図4は図2における利用可否判定処理の一例を示す図であり、図5は本発明の他の実施例による移動通信交換機を示す図である。なお、全図を通じて同一符号は同一対象物を示す。また対象とする移動通信網は図6に示す通りとする。
【0019】図2および図5においては、図1における利用可能地域(UA)がホームメモリ(HM)(33)内に格納されており、また図1における利用可否判定手段(101)として、図4に示される如き利用可否判定処理を実行する利用可否判定部(321)が中央処理系装置(CP)(32)内に設けられている。
【0020】図2および図5に示される移動通信交換機(3)は、移動加入者階梯交換局(MLS)(22)および移動関門階梯交換局(MGS)(21)に設置可能であり、移動加入者に対する通話路を設定するネットワーク(NW)(31)と、移動加入者に対する呼設定処理を司る中央処理系装置(CP)(32)と、ホームメモリ局において該当する移動加入者の属性を示す加入者データ(SD)を格納するホームメモリ(HM)(33)と、収容される無線回線制御局(MCE)(23)との間で音声信号を送受信する通話チャネルを収容する通話系装置(SPE)(34)と、収容される無線回線制御局(MCE)(23)との間で制御信号を送受信する制御チャネルを収容する信号系装置(SGE)(35)と、他の移動加入者階梯交換局(MLS)(22)或いは移動関門階梯交換局(MGS)(21)との間で音声信号を送受信する通話チャネルを収容する中継線トランク(TRK)(36)と、他の移動加入者階梯交換局(MLS)(22)或いは移動関門階梯交換局(MGS)(21)との間で制御信号を送受信する共通信号線を収容する共通線信号装置(CSE)(37)とを具備している。
【0021】各加入者データ(SD)には、対応する移動加入者の現存位置を示す位置情報(LI)の他に、対応する移動加入者が地域限定サービスを利用しているか否かを示す地域限定サービス情報(SI)〔例えば地域限定サービスを利用していない場合には地域限定サービス情報(SI)を論理“0”に設定し、地域限定サービスを利用している場合には地域限定サービス情報(SI)を論理“1”に設定する〕と、地域限定サービスを利用している場合に〔地域限定サービス情報(SI)=論理“1”〕、移動通信サービスの利用可能地域(UA)とが予め登録されている。
【0022】図2においては、利用可能地域(UA)として、対応する移動加入者が移動通信サービスを利用可能な無線ゾーン(CZ)(25)を指定しており、各無線ゾーン(CZ)(25)を指定する為に、各無線回線制御局(MCE)(23)に付与されている無線回線制御局番号(N_(C) )と、各無線回線制御局(MCE)(23)に収容される各無線基地局(BS)(24)に対応する各無線ゾーン(CZ)(25)に付与されている無線ゾーン番号(N_(Z) )とを使用している。
【0023】図2においては、ホームメモリ(HM)(33)内に示されている加入者データ(SD)に対応する移動加入者が、無線回線制御局(MCE)(23_(1) )〔無線回線制御局番号=(N_(C1))〕に所属する無線ゾーン(CZ)(25_(11))〔無線ゾーン番号=(N_(Z1))〕と、無線回線制御局(MCE)(23_(2) )〔無線回線制御局番号=(N_(C2))〕に所属する無線ゾーン(CZ)(25_(21))〔無線ゾーン番号=(N_(Z1))〕および無線ゾーン(CZ)(25_(22))〔無線ゾーン番号=(N_(Z2))〕とが利用可能地域(UA)として指定されている。
【0024】図2乃至図4において、当該移動加入者が、無線ゾーン(CZ)(25_(11))内で発信し、発信要求信号を送信すると、無線ゾーン(CZ)(25_(11))に対応する無線基地局(BS)(24_(11))および無線回線制御局(MCE)(23_(1))を経由して移動加入者階梯交換局(MLS)(22_(1) )に、図3に示される如き呼設定信号(SU)が転送される。
【0025】図3に示される呼設定信号(SU)には、移動加入者の現存一斉呼出ゾーンを示す位置情報(LI)と、現存無線ゾーン(CZ)(25_(11))に対応する無線回線制御局番号(N_(C1))と、無線ゾーン番号(N_(Z1))とが付加されている。
【0026】移動加入者階梯交換局(MLS)(22_(1) )に設置されている移動通信交換機(3)においては、中央処理系装置(CP)(32)が、無線回線制御局(MCE)(23_(1 ))から転送される呼設定信号(SU)を、信号系装置(SGE)(35)を介して受信すると、利用可否判定部(321)を起動する。
【0027】起動された利用可否判定部(321)は、受信した呼設定信号(SU)を解析し、呼設定信号(SU)の送信元の移動加入者のホームメモリ局が自移動加入者階梯交換局(MLS)(22_(1) )であり、自移動通信交換機(3)内のホームメモリ(HM)(33)に該当移動加入者の加入者データ(SD)が格納されていることを確認すると、ホームメモリ(HM)(33)から送信元の移動加入者に対応する加入者データ(SD)を参照する(図4ステップS1)。
【0028】利用可否判定部(321)は、参照した加入者データ(SD)内の、地域限定サービス情報(SI)が利用状態(論理“1”)に設定されているか否かを解析し(ステップS2)、非利用状態(論理“0”)に設定されている場合には、送信元の移動加入者が地域限定サービスを利用していないと判定し、通常の移動通信通り、地域を限定しない呼設定処理を実行する(ステップS3)。
【0029】一方、地域限定サービス情報(SI)が利用状態(論理“1”)に設定されている場合には、送信元の移動加入者が地域限定サービスを利用していると判定し、抽出した加入者データ(SD)から利用可能地域(UA)を抽出する(ステップS4)。
【0030】図2においては、利用可能地域(UA)として前述の如く、無線回線制御局番号(N_(C1))の無線ゾーン番号(N_(Z1))と、無線回線制御局番号(N_(C2))の無線ゾーン番号(N_(Z1))および(N_(Z2))とが登録されている。
【0031】続いて利用可否判定部(321)は、受信した呼設定信号(SU)から現存地域を示す情報として、利用可能地域(UA)に対応して無線回線制御局番号(N_(C1))および無線ゾーン番号(N_(Z1))を抽出する(ステップS5)。
【0032】続いて利用可否判定部(321)は、呼設定信号(SU)から抽出した無線回線制御局番号(N_(C1))および無線ゾーン番号(N_(Z1))が、加入者データ(SD)から抽出した利用可能地域(UA)〔即ち無線回線制御局番号(N_(C1))の無線ゾーン番号(N_(Z1))、および無線回線制御局番号(N_(C2))の無線ゾーン番号(N_(Z1))、(N_(Z2))〕に含まれているか否かを解析し(ステップS6)、現状では含まれていることを確認すると、送信元の移動加入者が予め登録されている利用可能地域(UA)内に現存すると判定し、呼設定信号(SU)に基づく呼設定を許容する(ステップS7)。
【0033】なお、当該移動加入者が、利用可能地域(UA)以外の地域、例えば無線ゾーン(CZ)(25_(12))から発信した場合には、移動加入者階梯交換局(MLS)(22_(1) )に転送される呼設定信号(SU)には、移動加入者の現存する一斉呼出ゾーンを示す位置情報(LI)と、現存する無線ゾーン(CZ)(25_(12))に対応する無線回線制御局番号(N_(C1))と、無線ゾーン番号(N_(Z2))とが付加されている為、呼設定信号(SU)の受信により起動された利用可否判定部(321)は、前述と同様の利用可否判定処理(図4ステップS1乃至S6)を実行した結果、今回は呼設定信号(SU)から抽出した無線回線制御局番号(N_(C1))および無線ゾーン番号(N_(Z2))が、加入者データ(SD)から抽出した利用可能地域(UA)〔=無線回線制御局番号(N_(C1))の無線ゾーン番号(N_(Z1))、および無線回線制御局番号(N_(C2))の無線ゾーン番号(N_(Z1))、(N_(Z2))〕に含まれていないことを確認すると、送信元の移動加入者が予め登録されている利用可能地域(UA)外に現存すると判定し、呼設定信号(SU)に基づく呼設定を拒否する(ステップS8)。
【0034】以上の説明から明らかな如く、本実施例によれば、移動加入者が予め利用可能地域(UA)〔無線回線制御局番号(N_(C) )および無線ゾーン番号(N_(Z) )〕を加入者データ(SD)に登録して置くことにより、当該移動加入者が発信要求し、呼設定信号(SU)が転送された場合に、呼設定信号(SU)に付加されている現存地域を示す無線回線制御局番号(N_(C) )およひ無線ゾーン番号(N_(Z) )が登録済の利用可能地域(UA)に含まれているか否かを解析し、含まれている場合に限り呼設定処理を実行することとなり、移動加入者が予め登録した呼設定信号(SU)内からのみ呼設定が可能となる。
【0035】なお、図2乃至図4はあく迄本発明の一実施例に過ぎず、例えば利用可能地域(UA)は個々の無線ゾーン(CZ)(25)を無線回線制御局番号(N_(C) )および無線ゾーン番号(N_(Z) )により指定するものに限定されることは無く、例えば同一行政区域に所属する複数の無線ゾーン(CZ)(25)等をパターン化して指定する等、他に幾多の変形が考慮されるが、何れの場合にも本発明の効果は変わらない。また移動加入者は発呼の場合のみに地域限定サービスを提供されるものに限定されることは無く、着呼の場合にも呼設定信号(SU)として位置情報(LI)、無線回線制御局番号(N_(C) )および無線ゾーン番号(N_(Z))を付加されている応答信号を利用することにより、発呼の場合と同様の利用可否判定処理が実行可能となる等、他に幾多の変形が考慮されるが、何れの場合にも本発明の効果は変わらない。
【0036】また加入者データ(SD)に登録する利用可能地域(UA)は、図2に示される如く、無線回線制御局番号(N_(C) )および無線ゾーン番号(N_(Z))に限定されることは無く、例えば図5に示される如く、位置情報(LI)を採用することも考慮される。」(第3?5頁)

これら引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「それぞれの無線ゾーンを形成する複数の無線基地局を備えた地域限定移動通信方式において、
加入者データに対応する利用可能地域が格納されたホームメモリと、
移動加入者(移動局)の発信要求に対し、無線基地局が前記利用可能地域の範囲に含まれているか否かを判定し、含まれている場合は呼を設定し、含まれていない場合は呼設定を拒否する利用可否判定部と、を備えた地域限定移動通信方式。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「無線ゾーン」、「移動通信方式」、「移動加入者(移動局)」、及び「利用可能地域」は、それぞれ、本願補正発明の「無線セル」、「移動通信システム」、「移動局」、及び「ゾーン情報」に相当する。
また、引用発明の「ホームメモリ」には加入者データに対応する利用可能地域が格納されており、利用可能地域が管理されているということができるから、引用発明の「ホームメモリ」は本願補正発明の移動局に対応させてゾーン情報を管理する「管理手段」に相当する。
また、引用発明のゾーンの範囲内か否かに応じて、移動局の呼を設定し、あるいは呼設定を拒否することと、本願補正発明のゾーンの範囲内か否かに応じて、基地局へのハンドオーバーを制限し、あるいはハンドオーバーを許容することとは、ゾーンの範囲内か否かに応じて、基地局への接続を制限し、あるいは接続を許容する点で一致している。

したがって、両者は
「それぞれ無線セルを形成する複数の無線基地局を備えた移動通信システムにおいて、
移動局に対応させてゾーン情報を管理する管理手段と、
該移動局について、基地局が前記ゾーン情報で示されるゾーンの範囲内か否かを判断し、範囲外である場合に、該移動局について該基地局への接続を制限し、範囲内である基地局への接続を許容する、
移動通信システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点
本願補正発明は、移動局について、ハンドオーバ候補の基地局が前記ゾーン情報で示されるゾーンの範囲内か否かを判断し、範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ候補の基地局へのハンドオーバを制限し、範囲内であるハンドオーバ候補の基地局を抽出し、該抽出した基地局へのハンドオーバを許容して該移動局についての通信を継続する制限手段を備えているのに対して、引用発明は、移動局について、基地局がゾーンの範囲内か否かに応じて、基地局への接続を制限し、あるいは接続を許容しているが、ハンドオーバについて記載が無く、制御手段についても記載がない点。

(3)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
移動通信システムにおいてハンドオーバ可能な基地局を抽出してハンドオーバを行うハンドオーバ制御手段を設けることは周知であって、特開平9-9354号公報(第2頁、請求項7には、移動端末の所属セクションと、移動先セクションの一致、不一致等に応じてハンドオーバの規制要否を決定することが記載されている。)、特開平9-312870号公報(第8頁段落【0048】?【0049】には、同一セル別セクタに対するソフトハンドオーバを別セルに対するソフトハンドオーバより開始しやすくして同一セルのハンドオーバーを優先的に行うことが記載されている。)に記載されているように、移動局の位置に応じてハンドオーバを制御することも周知である。
そして、移動局がゾーン情報で示されるゾーンの範囲内にあるか否かにより基地局への接続を制御する引用発明において、当該制御をハンドオーバにも適用して、移動端末が範囲外の場合にハンドオーバを制限し、範囲内の場合に範囲内である基地局を抽出してハンドオーバを許容して本願発明のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年5月6日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年2月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「それぞれ無線セルを形成する複数の基地局を備えた移動通信システムにおいて、
移動局に対応させてゾーン情報を管理する管理手段と、
該移動局について、ハンドオーバ候補の基地局が前記ゾーン情報で示されるゾーンの範囲内か否かを判断し、範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ侯補の基地局へのハンドオーバを制限する制限手段と、
を備えたことを特徴とする移動通信システム。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「制限手段」について、「範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ侯補の基地局へのハンドオーバを制限する制限手段」とあるのを、「範囲外である場合に、該移動局についての該ハンドオーバ候補の基地局へのハンドオーバを制限し、範囲内であるハンドオーバ候補の基地局を抽出し、該抽出した基地局へのハンドオーバを許容して該移動局についての通信を継続する制限手段」とする限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項3に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-26 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願平11-374031
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 春樹高木 進  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 田中 友章
深津 始
発明の名称 移動加入者の移動を制限するサービスを提供する無線交換システム及び、これに適用される移動交換局  
代理人 土井 健二  
代理人 林 恒徳  

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