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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1178698 |
審判番号 | 不服2006-4882 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-16 |
確定日 | 2008-05-30 |
事件の表示 | 特願2002-229227「アンテナユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 72432〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年8月6日の出願であって、平成18年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年3月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月17日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年4月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成17年11月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「それぞれループを形成する複数のループアンテナ素子を有したアンテナユニットにおいて、 前記複数のループアンテナ素子間および給電線を接続する平行線路を有し、該平行線路に沿って固定された平行平板を設け、該平行平板間の対向する面積を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う平行線路部を備えたことを特徴とするアンテナユニット。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「それぞれループを形成する複数のループアンテナ素子を有したアンテナユニットにおいて、 前記複数のループアンテナ素子間および給電線を接続する平行線路を有し、該平行線路に沿って固定された平行平板を設け、前記平行平板間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率を変えるとともに該平行平板間の対向する面積を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う平行線路部を備えたことを特徴とするアンテナユニット。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「平行線路部」の構成に「前記平行平板間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率を変える」という構成を付加することにより特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 (2)引用発明及び周知技術 A.原審の拒絶理由に引用された特開2000-307327号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】 円環状に形成された導体からなる一対のループアンテナと、 該一対のループアンテナへの給電を行う2線式の並行給電線とを備え、偏波面が前記一対のループアンテナの配列方向と直交した直線偏波を送受信する双ループアンテナであって、 前記各ループアンテナは、該ループアンテナの中心点から見て前記直線偏波の偏波面に沿った方向に位置する該ループアンテナ上の一対の地点を接続点とし、該接続点から前記中心点に向けて延設された一対の給電導入部を備え、 前記並行給電線の両端部は、前記一対のループアンテナに設けられた各一対の給電導入部にそれぞれ接続され、且つ前記並行給電線は、前記両端部から等距離の地点が給電点にされていることを特徴とする双ループアンテナ。 【請求項2】(・・・中略・・・) 【請求項3】 前記並行給電線は、前記給電点では該給電点に接続される外部給電線と整合し、前記両端部では前記一対のループアンテナとそれぞれ整合するように、前記両端部と前記給電点との間のインピーダンスが連続的に変化するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の双ループアンテナ。 【請求項4】 前記並行給電線は、該並行給電線を構成する1対の給電線の線路間隔が連続的に変化するよう構成されていることを特徴とする請求項3記載の双ループアンテナ。」(2頁1欄、請求項1?4) ロ.「【0014】また、ループアンテナと外部給電線とでインピーダンスが異なっている場合、並行給電線とループアンテナとでインピーダンスを整合させ、給電点に外部給電線とのインピーダンス整合をとるため、従来の水平偏波用双ループアンテナでは、図11(b)に示すように、給電点Pにトラップ回路TC等を設けることが行われていたが、本発明では、この給電点に設けるインピーダンス整合用の設備が不要となり、装置構成を簡易化できる。」(3頁4欄、段落14) ハ.「【0022】図1に示すように、本実施例の双ループアンテナ2は、円環状に形成された一対のループアンテナ4,6を備えており、各ループアンテナ4,6には、ループアンテナの中心点を挟んで対向する円環部4a,6a上の一対の接続点から前記中心点に向けて、一対の給電導入部4b,6bがそれぞれ延設されている。 【0023】そして、各ループアンテナ4,6は、給電導入部4b,6bの配線方向(図中X方向)とループアンテナ4,6の配列方向(図中Y方向)とが直交するように配置され、両ループアンテナの給電導入部4b,6bは、2線式の並行給電線8により互いに接続されている。 【0024】また、ループアンテナ4,6の背面側には、反射板10が配置されており、並行給電線8は、ループアンテナ4,6と反射板10との間に配線されている。また、並行給電線8は、その中心に給電点Pが設けられている。なお、本実施例の双ループアンテナ2において、各部の寸法は、送受信すべきUHF帯の電波の中心周波数620[MHz]を目標周波数として以下のように設定されている。 【0025】即ち、並行給電線8は、この目標周波数におけるインピーダンスが、給電用の同軸ケーブル(特性インピーダンス:75[Ω])が接続される給電点Pでは150[Ω]となり、ループアンテナ4,6が接続される両端部では300[Ω]となると共に、その間のインピーダンスが連続的に変化するようにされている。 【0026】具体的には、並行給電線8を構成する一対の給電線として、線路幅が10[mm]のものを用い、両給電線の給電点Pでの線路間隔がWp=2[mm],両端部でので線路間隔がWt=15[mm]となり、給電点Pから両端部に向けて徐々に広くなるように傾斜して配線されている。なお、並行給電線8の全長は、給電点Pから両端部までの長さLpt=16[cm]、即ち両ループアンテナ4,6の中心点間の間隔が32[cm]となるように設定されている。この中心点間の間隔32[cm]は、利得,サイドローブ特性から設定されている。」(4頁5欄、段落22?26) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「双ループアンテナ2」を構成する「一対のループアンテナ4,6」はいわゆる「それぞれループを形成する複数のループアンテナ素子」であり、当該「双ループアンテナ2」自体はいわゆる「アンテナユニット」である。また上記「並行給電線8」はいわゆる「平行線路」であり、当該「平行線路」を含む部分はいわゆる「平行線路部」であり、上記「外部給電線」ないし「給電用の同軸ケーブル」はいわゆる「給電線」である。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「それぞれループを形成する複数のループアンテナ素子を有したアンテナユニットにおいて、 前記複数のループアンテナ素子間および給電線を接続する平行線路を有し、該平行線路間の間隔を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う平行線路部を備えたアンテナユニット。」 B.同じく原審の拒絶理由に引用された特開平4-216203号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項4】 電気ダイポールアンテナ素子と、素子インピーダンスと給電系インピーダンスを整合する整合回路とを組み合わせたアンテナ系において、平衡伝送姿態の1段4分の1波長整合回路または多段4分の1波長整合回路またはテーパ線路形整合回路のいずれかの整合回路と、主偏波電界方向の電気的な素子長が共振状態で使用する直線状半波長ダイポール素子の電気的な長さより短くかつ使用する中心周波数において自己共振し前記整合回路の一端に接続された放射素子とを有することを特徴とする整合回路付き小形アンテナ。」(2頁1欄、請求項4) ロ.「【0011】先ず、整合回路としては原理的にはいかなるインピーダンスも整合可能なスタブ整合回路が考えられるがこれはスタブの持つリアクタンスを利用するものであり、このリアクタンス自体が大きな周波数依存特性を持つうえ、給電線上のスタブを接続すべき位置も周波数によって変化するため、この回路は非常に狭帯域となる。そこで本願は、整合回路2としては、スタブ整合回路に比べて広帯域であること、分布定数回路であるから高い周波数でも理想的に動作すること、構造が簡単で設計・製作が容易である等の特徴を有する平衡4分の1波長整合回路のみを用いることとし、他にスタブや集中定数素子は一切用いない構成としている。これにより本願の整合回路は、スタブを用いた整合回路に比べて広帯域な動作が可能となる。例えば入力抵抗0.1Ωの放射素子とインピーダンス50Ωの給電系を接続する場合、誘電体の誘電率を2.6、線路幅を2mm、2導体の間隔を50μm、長さを自由空間での波長の6分の1とした平行線路を用いれば、整合回路が容易に実現できる。なお、この時使用する誘電体としては、誘電損失が小さいものを選定することが重要である。」(3頁3?4欄、段落11) ハ.「【0018】以上の例は4分の1波長整合回路を使用した例であるが、非常に大きなインピーダンス比率を有する回路を整合する場合は1段の整合回路ではクリチカルになりすぎる場合がある。この場合は図4の他の実施例のように多段の整合回路またはテーパ線路形整合回路を使用すれば良い。これらの例では整合回路自体にはバランの機能を持たせていない。図4において5は給電位置を示している。整合回路2として図3(a)は1段4分の1波長整合回路を用いたもの、図3(b)は多段4分の1波長整合回路(この例では2段4分の1波長整合回路)を用いたもの、(c)はテーパ線路形整合回路を用いたものである。 【0019】多段4分の1波長整合回路は1段4分の1波長整合回路を2つ以上従属に接続したもの、テーパ線路形整合回路は線路の特性インピーダンスを徐々に変化させたものであり、それぞれ高い周波数でも理想的に動作する、構造が簡単で・製作が容易である等の特徴を有する。これらの回路は1段4分の1波長整合回路と同様に、被整合インピーダンスのリアクタンスが零でなければならないという制約があるが、いずれも1段4分の1波長整合回路に比べ、更に広帯域な動作が可能である。 【0020】例えば、2段4分の1波長整合回路を用いて、入力抵抗0.1Ωの放射素子とインピーダンス50Ωの給電系を接続する場合、誘電体の誘電率を2.6、線路幅を4mm、全体の長さを自由空間での波長の1/3とし、2導体の間隔は放射素子側の1/2の長さの部分を16μm、残りの1/2の長さの部分を0.4mmとした平行線路を用いれば良い。なお、このとき使用する誘電体としては誘電損失が小さいものを選定することが重要である。」(4頁5?6欄、段落18?20) 上記「テーパ線路形整合回路」は「該平行線路間の間隔を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成であり、上記「平衡4分の1波長整合回路」は「例えば入力抵抗0.1Ωの放射素子とインピーダンス50Ωの給電系を接続する場合、誘電体の誘電率を2.6、線路幅を2mm、2導体の間隔を50μm、長さを自由空間での波長の6分の1とした平行線路」である。 したがって、上記引用例2には「給電線との間のインピーダンス整合を行う整合回路として、平行線路間の間隔を変えるテーパ線路形整合回路又は平行線路間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率と線路幅(即ち、対向する面積)と線路間隔を適宜設定する4分の1波長整合回路のいずれかを用いる整合手段」が開示されている。 C.例えば本件出願の10年以上も前に公開された実願昭60-136517号の願書に添付した明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭62-45822号参照、以下、「周知例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「(1)板状の誘電体の両主面に電極をそれぞれ形成し、かつ各電極にリード線をそれぞれ半田付けして成るコンデンサにおいて、各電極の材質をニッケルとし、かつ各リード線を各電極の下部に配置し、更に各リード線の各電極への半田付けを当該リード線近傍においてのみ行っていることを特徴とするコンデンサ。」(明細書1頁5?11行目) ロ.「このコンデンサにおいては、その上部から順次研削することによって容量を小さい方に調整することができる。」(明細書3頁3?5行目) 例えば上記周知例に開示されているように「一般にコンデンサは、板状の誘電体の両主面に電極を形成し各電極にリード線を半田付けした構造を有しており、その容量調整は研削により行うものであること」は周知である。 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明を対比すると、補正後の発明の「平行線路間に沿って固定された平行平板を設け、前記平行平板間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率を変えるとともに該平行平板間の対向する面積を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成と引用発明の「平行線路間の間隔を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成はいずれも「平行線路間の静電容量を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」という構成の点で一致している。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「それぞれループを形成する複数のループアンテナ素子を有したアンテナユニットにおいて、 前記複数のループアンテナ素子間および給電線を接続する平行線路を有し、該平行線路間の静電容量を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う平行線路部を備えたアンテナユニット。」 (相違点)「平行線路間の静電容量を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成に関し、補正後の発明は「平行線路間に沿って固定された平行平板を設け、前記平行平板間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率を変えるとともに該平行平板間の対向する面積を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成であるのに対し、引用発明は「平行線路間の間隔を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成である点。 そこで、上記相違点について検討するに、例えば上記引用例2には「給電線との間のインピーダンス整合を行う整合回路として、平行線路間の間隔を変えるテーパ線路形整合回路又は平行線路間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率と線路幅(即ち、対向する面積)と線路間隔を適宜設定する4分の1波長整合回路のいずれかを用いる整合手段」(以下、「公知技術」という。)が開示されており、当該公知技術における4分の1波長整合回路の構成を引用発明のいわゆるテーパ線路形整合回路に代えて用いる上での阻害要因は何ら見あたらない。 また、一般にコンデンサは、例えば上記周知例に開示されているように、板状の誘電体の両主面に電極を形成し各電極にリード線を半田付けした構造を有しており、その容量調整は研削により行うものであるところ、当該周知のコンデンサの構造及びその容量調整方法はいわゆる「平行リード線間に沿って固定された平行平板を設け、前記平行平板間に誘電体部材を設け、該平行平板間の対向する面積を変えて」その静電容量を変更するものであり、当該周知の容量変更手段を備えたコンデンサの構造を引用発明における平行線路間の容量形成手段として採用する上での阻害要因も何ら見あたらない。 したがって、上記公知技術ないしは周知技術に基づいて、引用発明の「平行線路間の間隔を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成を補正後の発明のような「平行線路間に沿って固定された平行平板を設け、前記平行平板間に誘電体部材を設け、前記誘電体部材の誘電率を変えるとともに該平行平板間の対向する面積を変えて給電線との間のインピーダンス整合を行う」構成とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び公知技術ないしは周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 審判請求時の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明等に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び公知技術ないしは周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-24 |
結審通知日 | 2008-04-01 |
審決日 | 2008-04-15 |
出願番号 | 特願2002-229227(P2002-229227) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西脇 博志 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 阿部 弘 |
発明の名称 | アンテナユニット |
代理人 | 酒井 宏明 |