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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1178704
審判番号 不服2006-6645  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-07 
確定日 2008-05-30 
事件の表示 平成10年特許願第331111号「エアバッグ用基布」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月 6日出願公開、特開2000-153743号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は,平成10年11月20日の出願であって,その請求項1?2に係る発明は,平成18年1月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】 熱可塑性合成フィラメント糸の織布よりなるエアバッグ用基布において、該フィラメント糸の原糸強度が7.0g/d以上であり、該フィラメント糸の繊度が200?250dであり、かつ、厚さが0.15?0.25mmであることを特徴とするエアバッグ用基布。」

2.引用刊行物とその記載事項

これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,特開平4-176750号公報(以下「引用例」という。)には,「エアーバッグ用基布」に関し,次の事項が記載されている。

a.「(1)ヘキサメレンアジパミド成分が95?80重量%とカプラミド成分が5?20重量%からなる共重合ポリアミドからなり、原糸強度が9g/d以上、伸度18%以上で単糸繊度が3.5デニール以上のポリアミド繊維糸条を経糸および/または緯糸として用いたことを特徴とするエアーバッグ用基布。」(第1ページ左欄第5?11行)

b.「本発明はエアーバッグ用基布に関するものであり、詳しくは軽量かつ柔軟で収納性に優れ、機械的特性の優れたエアーバッグ用基布に関するものである。」(第1ページ右欄第2?5行)

c.「エアバッグは通常ステアリングホイールやインストルメントパネルなどの狭い場所に収納されるため、収納容積をより小さくすることが強く求められている。そこでエアーバッグ基布は機械的特性を満足する範囲で可能な限り折畳み性がよく、収納容積を最少にする努力がなされている。
・・・また、ノンコート基布は折畳み性、収納性の点からは更に有利であると云える。
また、基布用原糸も従来840デニールが主体であったが、最近は柔軟で折畳み性にすぐれ、収納容積の点で有利な420デニールへと、細繊度糸の高密度織物化が好まれて移行しつつある。」(第2ページ左上欄第13行?同ページ右上欄第11行)

d.「本発明の目的は、前記の従来技術の課題を解決し、エアバッグの機械的特性を損うことなく、柔軟なエアバッグ基布を提供するものであり、収納容積の小さいエアバッグを実現せしめるものである。」(第2ページ右下欄第4?8行)

e.「本発明のエアバッグ用基布に係るポリアミド繊維糸条は好ましくは150?1000デニール、より好ましくは210?840デニールである。繊維糸条の強度は9.5g/d以上、好ましくは9.0?12.0g/dと高強度で、かつ伸度が18%以上、好ましくは20%以上である。」(第3ページ右上欄第16行?同ページ左下欄第2行)

f.「本発明のエアバッグ基布は、例えば織物、編み物およびその積層体や、シート状物等のものがあるが、エアバッグ基布としての総合性能は等方性織物が好ましい。」(第3ページ左下欄第7?10行)

したがって,上記記載事項a.?f.の記載を総合すると,引用例には,

「ポリアミド繊維糸条の織布よりなるエアバッグ用基布において,該ポリアミド繊維糸条の原糸強度が9.0g/d以上であり,該ポリアミド繊維糸条の繊度が210?840dであるエアバッグ用基布。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比

本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「ポリアミド繊維糸条」は,本願発明の「熱可塑性合成フィラメント糸」に相当する。また,「熱可塑性合成フィラメント糸」の原糸強度については,引用発明の数値範囲は,本願発明のものに包含されるとともに,「熱可塑性合成フィラメント糸」の繊度については,引用発明の数値範囲は,本願発明のものと部分的に一致する。
そうすると,本願発明と引用発明とは,実質的には,「熱可塑性合成フィラメント糸の織布よりなるエアバッグ用基布において,該フィラメント糸の原糸強度が7.0g/d以上であり,該フィラメント糸の繊度が200?250dであるエアバッグ用基布」の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明のエアバッグ用基布は,その厚さが「0.15?0.25mm」であるのに対して,引用発明のエアバッグ用基布は,その厚さが明らかではない点。

4.相違点についての判断

上記相違点について検討するに,一般的に,エアバッグ用基布の技術分野においては,軽量かつ柔軟で収納性に優れたエアバッグ用基布を提供するために,当該基布の厚さを最適化することは,周知の事項(例えば,特開平4-2835号公報の第3ページ右上欄第12行?同ページ左下欄第10行及び第4ページ右上欄第14行?同ページ右下欄第1行,特開平9-309396号公報の第1ページ要約欄,特開平10-194063号公報の第1ページ要約欄を参照。)である。さらに,エアバッグ用基布の厚さについて「0.15?0.25mm」の数値範囲内で設定することも,周知の事項(例えば,上記特開平9-309396号公報の表1(織物基布No.1,3,11),上記特開平10-194063号公報の表1(実施例1),特開平8-11660号公報の表1(実施例1,2),特開平7-48717号公報の段落【0026】を参照。)である。
してみれば,引用発明において,軽量かつ柔軟で収納性に優れたエアバッグ用基布を提供するという課題(上記記載事項b.?d.参照)を解決するために,上記周知の事項に照らして,当該基布の厚さを最適化することは当業者が容易に想到し得たことであり,その数値範囲を本願発明のものと同じように設定することについても,格別の困難性はない。

したがって,上記相違点に係る本願発明のように構成することに格別の困難性はない。

そして,本願発明の奏する効果について検討しても,引用発明及び上記周知の事項から予測可能なものであり,格別なものとはいえない。

なお,審判請求人は,審判請求書において,本願発明は,エアバッグ用基布の厚さを「0.15?0.25mm」に限定することにより,「エアバッグモジュールのコンパクト化及び軽量化に有効な,薄肉かつ軽量で収納性に優れたエアバッグ用基布」を提供することができるという格別の効果を奏する旨主張しているところ,本願の明細書の表1の記載(「折り畳み時嵩(体積比)」の数値につき,「比較例3」(「85」)は,「実施例1?7」(「80」以下)より劣るところ,かかる「比較例3」の厚さが「0.24」mmであることが記載されている。)に照らせば,「0.15?0.25mm」という限定に臨界的意義を見い出し難く,審判請求人の上記主張を採用することは困難であることを付言する。

したがって,本願発明は,引用発明及び上記周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

5.むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,その請求項2に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-26 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願平10-331111
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 平瀬 知明
佐藤 正浩
発明の名称 エアバッグ用基布  
代理人 重野 剛  

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