ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
---|---|
管理番号 | 1178719 |
審判番号 | 不服2007-5442 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-21 |
確定日 | 2008-05-30 |
事件の表示 | 特願2003-181773「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月25日出願公開、特開2003-334289〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯等 本願は、平成12年2月9日に特許出願した特願2000-31871号の一部を平成15年6月25日に新たな特許出願としたものであって、平成19年1月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年2月21日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成19年3月22日付けで手続補正がされたものであり、当審において平成20年1月4日付けで手続補正を却下すると共に拒絶の理由を通知し、これに対し、平成20年3月4日付けで手続補正がされたものである。 第2.本願発明 平成20年3月4日付けで手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「種々の図柄を可変表示する可変表示手段と、 乱数抽出処理によって所定の内部当選役に当たったか否かを決定する内部当選役決定手段と、 該内部当選役決定手段により決定された内部当選役に基づいて前記可変表示手段の可変表示動作を停止制御する停止制御手段と、 該停止制御手段によって停止された可変表示手段に停止表示された図柄の組合せが入賞か否かを判定する入賞判定手段と、 該入賞判定手段によって入賞と判定された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、 遊技音を出音する音発生手段と、 前記入賞判定手段の判定結果が特定入賞であれば、遊技者にとって有利な特定遊技状態を発生させる遊技制御手段と、 電源が投入された後、遊技者に付与された遊技価値のカウントを開始し、そのカウント値に応じて前記音発生手段により出音される遊技音が変化するように前記音発生手段を制御する音制御手段と、を備え、 前記遊技音は、前記入賞判定手段の判定結果が前記特定入賞である場合に出音される特定入賞音である、ことを特徴とする遊技機。」(以下、「本願発明」という。)と補正された。 第3.引用文献について (1)引用文献1について 当審において通知した拒絶の理由の<理由2>に引用された特開平7-265494号公報(公開日:平成7年10月17日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1-1 「フロントパネルに設けたカラー画像表示装置に、図柄を表示する図柄表示部と図柄以外を表示する非図柄表示部とを備え、前記図柄表示部に表示された複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合せである場合に、遊技者に所定数の賞メダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりするスロットマシンにおいて、 上記スロットマシンは、遊技者に対し賞メダルとして払い出されたメダル枚数をカウントする払出メダル枚数カウント手段と、遊技者がゲームを行うために遊技メダルとして投入するメダル枚数をカウントする遊技メダル枚数カウント手段と、払出メダル枚数カウント手段でカウントされた賞メダル枚数から、遊技メダル枚数カウント手段でカウントされたメダル枚数を減算することにより遊技者が獲得した賞メダル枚数を算出する獲得メダル枚数算出手段と、獲得メダル枚数表示信号を出力する獲得メダル枚数表示スイッチと、遊技の状況を把握する遊技状況把握手段と、前記遊技状況把握手段からの遊技状況信号にもとづいて、遊技メダルの投入が行われてから、当該遊技メダルの投入により行われるゲームの結果が確定するまでの間は、表示態様変更信号を出力する表示態様決定手段と、獲得メダル枚数表示スイッチからの獲得メダル枚数表示信号が出力された場合には、前記カラー画像表示装置の図柄表示部に獲得メダル枚数を表示するとともに、前記表示態様決定手段からの表示態様変更信号が出力された場合には、カラー画像表示装置内の非図柄表示部に獲得メダル枚数を表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) ・記載事項1-2 「獲得メダル枚数算出手段240は、図1に示すように、スロットマシン10の電源をオンとしてから現在までの通算の獲得メダル枚数を算出する通算枚数算出手段241と、前記ゲーム開始時点特定スイッチ90が操作された直後から現在までの個人の獲得メダル枚数を算出する個人枚数算出手段242とからなる。 上記個人枚数算出手段242は、スロットマシン10に電源を投入した時点では、前記通算枚数算出手段241と同様に、電源を投入した時点から現在までの通算の獲得メダル枚数を算出する。しかし、上記ゲーム開始時点得点スイッチ90が操作されると、ゲーム開始時点特定スイッチ90からのリセット信号の出力を条件に、それまでに算出した個人の獲得メダル枚数をリセットして「0枚」とするとともに、ゲーム開始時点特定スイッチ90が操作された時点から新たに、個人の獲得メダル枚数の算出を行う。したがって、スロットマシン10の遊技者が変わった場合に、変わった遊技者がゲーム開始時点特定スイッチ90を操作すれば、自己が遊技を行った範囲内での個人の獲得メダル枚数を算出することができる。また、ゲーム開始時点特定スイッチ90を操作しない場合であっても、通算枚数算出手段241によって、スロットマシン10に電源を投入した時点から現在までの通算の獲得メダル枚数が算出される。」(段落【0027】) ・記載事項1-3 「遊技者がスタートスイッチ81を操作すると、図柄表示部30の移動表示部31?33に、縦3列の図柄列において、それぞれ複数の図柄が順次、高速で移動表示される。」(段落【0040】) ・記載事項1-4 「その後、遊技者が各ストップスイッチ80・・を操作すると、移動表示部31?33に高速で移動表示されていた図柄が、各ストップスイッチ80・・に対応して各々停止する。 そして、カラー画像表示装置20の移動表示部31?33に表示された図柄の停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数の賞メダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりすることにより、ゲームの結果が確定する。具体的には、賞メダルを払い出す場合には、払い出されるべき賞メダルのメダル枚数の払出の終了時点でゲーム結果が確定し、特別の遊技、例えばボーナスゲームの場合には、ボーナスゲームの中の入賞によってメダルが払い出されるが、各々の払い出される賞メダルの払出の終了時点でゲームが確定する。」(段落【0042】) ・記載事項1-5 「獲得メダル枚数をグラフGに示すとともに、図4に示すように、グラフGによる表示の上部位置に、表示カウンター部Kを設け、この表示カウンター部Kに具体的な獲得メダル枚数を数字で表示してもよい。このように、獲得メダル枚数を具体的な数字で表示することにより、遊技者は現在の獲得メダル枚数を正確に知ることができ、特に、図4に示すように、個人の獲得メダル枚数を表示カウンター部Kに表示させれば、現在遊技を行っているスロットマシンの遊技の止め時を容易に判断することができる。」(段落【0048】) 以上の記載事項1-1?1-5及び図1?5によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。 「複数の図柄を順次、高速で移動表示する移動表示部31?33と、 ストップスイッチ80・・に対応して移動表示部31?33に高速で移動表示されていた図柄を停止させる手段と、 移動表示部31?33に表示された図柄の停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数の賞メダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりする手段と、 遊技者に対し賞メダルとして払い出されたメダル枚数をカウントする払出メダル枚数カウント手段と、 遊技者がゲームを行うために遊技メダルとして投入するメダル枚数をカウントする遊技メダル枚数カウント手段と、 払出メダル枚数カウント手段でカウントされた賞メダル枚数から、遊技メダル枚数カウント手段でカウントされたメダル枚数を減算することにより遊技者が獲得した賞メダル枚数を算出する獲得メダル枚数算出手段と、 スロットマシン10に電源を投入した時点から現在までの通算の獲得メダル枚数を算出する通算枚数算出手段241と、 獲得メダル枚数をカラー画像表示装置にグラフGとして表示させる表示制御手段と、 を備えたスロットマシン。」(以下、「引用発明1」という。) (2)引用文献2について 当審において通知した拒絶の理由の<理由2>に引用されたパチスロ必勝ガイド1998年7月号、株式会社白夜書房、平成10年7月1日、第9巻第8号、p.24-25(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項2-1 「本機は集中役を搭載したAICタイプ。集中とボーナスの確率をほぼ均等にし、バランスを重視したスペックとなっている。」(24頁中段左部分) ・記載事項2-2 「集中中は獲得枚数によって流れるサウンドが変わる。つまり、その音を聞いているだけで、自ずと集中の獲得枚数が分かってしまう…これが、業界初の「ロータリーサウンドシステム」である。ちなみにサウンドは3種類。メーカーからの情報によれば、獲得枚数約350枚毎にサウンドが変わるということであったが、実戦上では250?400枚程度の開きがあった。よって「音が1周すれば約千枚」という風に、あくまでも目安としてとらえておこう。」(24頁下段左部分) 第4.対比 本願発明と引用発明1を対比する。 引用発明1の「複数の図柄を順次、高速で移動表示する移動表示部31?33」、「遊技者が獲得した賞メダル枚数」は、本願発明の「種々の図柄を可変表示する可変表示手段」、「遊技者に付与された遊技価値」に相当する。 そして、引用発明1について、以下のことがいえる。 (1)引用発明1はスロットマシンに関するものであるが、遊技機に関するものであるともいえる。 (2)「通算枚数算出手段241」及び「表示制御手段」は、「電源を投入した時点から現在までの通算の獲得メダル枚数を算出」し、「獲得メダル枚数をカラー画像表示装置にグラフGとして表示させる」ものであって、遊技者に現在の獲得メダル枚数を正確に報知するためもの(上記記載事項1-5参照)である。一方、本願発明において、音制御手段は「電源が投入された後、遊技者に付与された遊技価値のカウントを開始し、そのカウント値に応じて前記音発生手段により出音される遊技音が変化するように前記音発生手段を制御する」ものであるが、それは「画一的な音による報知の単調さを回避する」に加えて「遊技者が付与された遊技価値についても音で把握できる」ようにするためである。したがって、「電源が投入された後、遊技者に付与された遊技価値のカウントを開始し、そのカウント値に応じて報知を行う手段」を有するという点で、引用発明1と本願発明は共通するといえる。 そうすると、両者は、 「種々の図柄を可変表示する可変表示手段と、電源が投入された後、遊技者に付与された遊技価値のカウントを開始し、そのカウント値に応じて報知を行う手段と、を備えた遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明が、乱数抽出処理によって所定の内部当選役に当たったか否かを決定する内部当選役決定手段と、該内部当選役決定手段により決定された内部当選役に基づいて前記可変表示手段の可変表示動作を停止制御する停止制御手段と、該停止制御手段によって停止された可変表示手段に停止表示された図柄の組合せが入賞か否かを判定する入賞判定手段と、該入賞判定手段によって入賞と判定された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、前記入賞判定手段の判定結果が特定入賞であれば、遊技者にとって有利な特定遊技状態を発生させる遊技制御手段と、を備えているのに対して、引用発明1がそのような構成を備えているか不明な点。 <相違点2> 本願発明が遊技音を出音する音発生手段を備えているのに対し、引用発明1がそのような構成を備えているか不明な点。 <相違点3> 電源が投入された後、遊技者に付与された遊技価値のカウントを開始し、そのカウント値に応じて報知を行う手段が、本願発明では音発生手段により出音される遊技音が変化するように前記音発生手段を制御する音制御手段であり、遊技音は入賞判定手段の判定結果が特定入賞である場合に出音される特定入賞音であるのに対し、引用発明1ではカラー画像表示装置にグラフGとして表示させる表示制御手段である点。 第5.判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1>について 遊技機に「乱数抽出処理によって所定の内部当選役に当たったか否かを決定する内部当選役決定手段と、該内部当選役決定手段により決定された内部当選役に基づいて前記可変表示手段の可変表示動作を停止制御する停止制御手段と、該停止制御手段によって停止された可変表示手段に停止表示された図柄の組合せが入賞か否かを判定する入賞判定手段と、該入賞判定手段によって入賞と判定された場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、前記入賞判定手段の判定結果が特定入賞であれば、遊技者にとって有利な特定遊技状態を発生させる遊技制御手段」を設けることは、例を挙げるまでもなく、従来周知慣用の技術手段である。したがって、引用発明1に上記従来周知慣用の技術手段を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に成し得たことである。 <相違点2>について 遊技機に「遊技音を出音する音発生手段」を設けて演出を行うことは、例を挙げるまでもなく、従来周知慣用の技術手段である。したがって、引用発明1に上記従来周知慣用の技術手段を適用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に成し得たことである。 <相違点3>について 遊技者の獲得枚数に応じて「サウンド」すなわち遊技音を変化させ、遊技者に「自ずと獲得枚数がわかってしまう」ようにすることは、引用文献2(上記記載事項2-2参照)に示されるように従来公知である。ここで、「わかってしまう」ようにすることから、報知をしていることは明らかであり、遊技音を発生させる音発生手段及び遊技音を変化させるために音発生手段を制御する音制御手段を設けることは当然の事項に過ぎない。したがって、引用文献2には、遊技価値のカウント値に応じて報知を行う手段として、音発生手段により出音される遊技音が変化するように前記音発生手段を制御する音制御手段とすることが実質的に記載されている。 一方、入賞判定手段の判定結果が特定入賞である場合に特定入賞音を状況に応じて変化させて出音させることは、下記の周知例A?Cに示されるように従来周知の技術手段である。 そうすると、引用発明1において、電源が投入された後、遊技者に付与された遊技価値のカウントを開始し、そのカウント値に応じて報知を行う手段である、カラー画像表示装置にグラフGとして表示させる表示制御手段に代えて、引用文献2に記載された技術事項である音発生手段により出音される遊技音が変化するように前記音発生手段を制御する音制御手段を採用し、その際に変化させる遊技音を入賞判定手段の判定結果が特定入賞である場合に出音される特定入賞音とすることにより、相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に成し得たことである。 <周知例A>特開平8-280873号公報 段落【0045】には「「S・Bゲーム」の発生時には、まず入賞の発生を報知するために、(中略)その後、下記の表3に示すように、後述のCPU31(図5)内に設定されるR-レジスタの乱数値(これは、後述する図18?図20の入賞判定のための乱数サンプリングとは別で、この例では0?3のいずれか)に応じて、図11(A)?図12(D)に示すリールランプ(W1?W9)による「S・Bゲーム」入賞発生用のデモンストレーション及び音の発生が実行される。」と記載され、段落【0048】には「「B・Bゲーム」の発生時(図16のステップ7)には、下記の表4に示すように、4種類の各入賞図柄の組合せに応じて、それぞれ入賞音(ファンファーレ音)の発生及びリールランプ(W1?W9)によるデモンストレーション(図16のステップ8)が実行される。」と記載されている。 <周知例B>特開平10-323418号公報 段落【0044】には「(効果音記憶手段)前記効果音記憶手段160には、特別遊技、例えばいわゆるビッグチャンスゲームに移行する際の特定のファンファーレ音が複数種類記憶されている。」と記載され、段落【0047】には「第1,第2ファンファーレ音のうち、例えば第1のファンファーレ音が鳴る確率を、出玉率設定値記憶手段100に記憶された、例えば6段階の出玉率設定値に応じて変化させている。すなわち、出玉率設定値が6の場合には、第1のファンファーレ音が鳴る確率を、90%に設定し、設定1の場合には、10%に設定している。設定5?2の間の確率は、90?10%の間で適宜に設定する。」と記載され、段落【0048】には「そして、第1のファンファーレ音が鳴る確率を、乱数抽選手段110により乱数抽選を行い、その結果、第1,第2のファンファーレ音のいずれかをスピーカ81を介して発生させている。」と記載されている。 <周知例C>特開2000-24172号公報 【要約】【課題】には「本発明は図柄の組合せが入賞又は入賞直前のときに流れるメロディを切り替えることを課題とする。」と記載され、【要約】【解決手段】には「制御回路のROMには、レギュラーボーナスやビッグボーナス等の入賞ランク及びテンパイに応じたメロディ(入賞音)が夫々複数種ずつ登録されている。そのため、CPUは、入賞あるいはテンパイとなったとき、停止操作から回胴6A?6Cが停止するまでの時間に基づいて異なるメロディ(入賞音)が発音されるように選択処理を行う。」と記載されている。 そして、本願発明の効果は、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、上記各周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-26 |
結審通知日 | 2008-04-01 |
審決日 | 2008-04-14 |
出願番号 | 特願2003-181773(P2003-181773) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤坂 祐樹 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
▲吉▼川 康史 中槙 利明 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 藤田 和子 |