• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625301 審決 特許
不服200717080 審決 特許
不服20062586 審決 特許
不服20072731 審決 特許
不服2006876 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1178808
審判番号 不服2005-15979  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-22 
確定日 2008-06-04 
事件の表示 平成7年特許願第515752号「非CFC噴射剤と共に用いるエアロゾル薬物調剤」拒絶査定不服審判事件〔平成7年6月8日国際公開、WO95/15151、平成9年6月17日国内公表、特表平9-506097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、1994年12月2日(パリ条約に基づく優先権主張1993年12月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1?12に係る発明は、平成17年9月20日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「(a)薬剤、(b)クロロフルオロカーボンではないハロゲン化アルカン噴射剤、及び(c)ラウリル硫酸ナトリウム、コレステロール、トリパルミチン、デカンスルホン酸、ステアリン酸、カプリル酸及びタウロコール酸からなる群から選択される保護コロイドを含むエアロゾル送出用医薬組成物。」

2.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平5-279249号公報(1993年10月26日公開、原査定の引用文献2。以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
<A>「少なくとも1種の医薬有効成分、少なくとも1種の界面活性物質および圧力下に液化されたヘプタフルオロプロパンを含有する医薬エーロゾル調合物。」(【請求項1】)
<B>「一般に、医薬エーロゾル調合物は、有効成分、界面活性物質および圧力下に液化された噴射剤を含有する。それらは、内容物を放出するための弁装置を備えた、通常金属またはガラスで製られた加圧された容器に入れられて市販される。界面活性物質の目的は、噴射剤中に有効物質の微細な粒子が均一に分布された安定な懸濁物をつくりそして同時に弁装置を潤滑することである。」(段落【0003】)
<C>「大気中に放出されたこれらのクロロフルオロカーボンは、それらの生物的および非生物的分解に対する高い安定性のゆえに成層圏に達するのを妨げられず、そこでそれらは、貫通する太陽のUV放射によって、光分解されそして塩素基を失う。これらの塩素基は、複雑な反応順序でオゾンと反応し、かくして紫外線に対する保護幕として作用するオゾン層を弱める結果となりうる。従って、オゾンを劣化することがなく、それにもかかわらず、従来使用されたクロロフルオロカーボンの上記の好ましい性質を有する適当な噴射剤を見出そうとする試みがなされている。」(段落【0005】)
<D>「医薬エーロゾルにおいては、従来使用されたクロロフルオロカーボンを取換えることが特に緊急を要する。………」(段落【0007】)
<E>「ヨーロッパ特許出願A-O372777には、使用されている噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)であって、それに1,1,2-テトラフルオロエタンよりも高い極性を有する少なくとも1種の化合物が添加されている医薬エーロゾル調合物が開示されている。…………医薬調合物において従来使用された界面活性剤および添加剤ならびに通常の弁成分を使用することができるように、R134aと一緒に上記の補助剤がクロロフルオロカーボンを基礎とした噴射剤系に匹敵する性質を有する噴射剤系をもたらすことが示されている。これらの補助剤の効果に関しては、圧力の増減、および密度、粘度および界面張力の調整の可能性が特に言及されている。」(段落【0008】)
<F>「2-ヒドロヘプタフルオロプロパンおよび1-ヒドロヘプタフルオロプロパンの両者を意味するものと解すべきヘプタフルオロプロパン(R227)は、驚くべきことには、医薬エーロゾル調合物において従来しばしば使用された噴射剤混合物であるR11/12およびR12/114に対する代替物としてのR134aよりもはるかに好適である。」(段落【0011】)
<G>「本発明によるエーロゾル調合物は、界面活性物質として、毒物学的に安全なものを含有する。単に例示として、好適な慣用の物質の若干のものに言及すれば、…………、オレイン酸、…………がある。本発明エーロゾル調合物中の界面活性物質の含量は、通常5重量%までである。その量は、界面活性物質、特定の有効成分および調合物中の有効成分の特定の量に依存する。」(段落【0019】)
<H>「…………
例3
以下に示す種々の量の界面活性物質を80mlのガラスのエーロゾルびん内に、所望の混合比に従って分析的に平衡するように計量導入し、そしてこれらのびんを拡散を防ぐように適当なAR弁〔ドイツチエ・アエロゾル-ヴエンティル社(Deutsche Aerosol-Ventil GmbH)〕を用いて閉鎖した。重量を監視しながら、アダプターを用いて圧力下にガラスびん内にR134aまたはR227を導入した。この混合物を次に30分間振り、次に室温において12時間静置しそして次いで試験しそして界面活性物質の分離について評価した。その結果は、表6に対照されている。下記の界面活性物質が検討された:
…………
SS5 オレイン酸
…………
供試混合物は、下記のように評価された:
固形の界面活性物質の沈殿物 PS
大きな滴の分離 +++
小滴の分離 ++
単離された滴の分離 +
分離なし 0
表 6
界面活性 噴射剤 噴射剤中の界面活性物質の重量%
物質 0.05 0.15 0.25 0.5 0.75 1.0
…………
SS5 R134a ++ ++ +++ +++ PS PS
SS5 R227 + ++ ++ +++ +++ +++
…………
これらの結果は、R227が医薬エーロゾルにおいて通常使用される若干の界面活性物質用にはR134aに比較してよりすぐれた可溶化力を有し、そして従ってより安定なエーロゾル調合物をもたらすことを示している。…………」(段落【0023】)

3.引用例に記載された発明
引用例は、「少なくとも1種の医薬有効成分、少なくとも1種の界面活性物質および圧力下に液化されたヘプタフルオロプロパンを含有する医薬エーロゾル調合物」に関するものであり(摘記事項<A>を参照)、該医薬エーロゾル調合物に配合する界面活性物質としてはオレイン酸を選択することができ(摘記事項<G>を参照)、「R227」なる略号で表記された「ヘプタフルオロプロパン」と、「SS5」なる略号で表記された「オレイン酸」とを配合したエーロゾル調合物が具体的に記載されている(摘記事項<H>を参照)から、引用例には、
「少なくとも1種の医薬有効成分、オレイン酸、及び圧力下に液化されたヘプタフルオロプロパンを含有する医薬エーロゾル調合物。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比
引用発明における「少なくとも1種の医薬有効成分」と「医薬エーロゾル調合物」は、それぞれ本願発明における「(a)薬剤」と「エアロゾル送出用医薬組成物」に相当し、また、引用発明における「ヘプタフルオロプロパン」は、本願発明における「(b)クロロフルオロカーボンではないハロゲン化アルカン噴射剤」に該当するものであることは明らかであるから(摘記事項<C>?<F>を参照)、両者は、
「(a)薬剤、(b)クロロフルオロカーボンではないハロゲン化アルカン噴射剤を含むエアロゾル送出用医薬組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明が、「(c)ラウリル硫酸ナトリウム、コレステロール、トリパルミチン、デカンスルホン酸、ステアリン酸、カプリル酸及びタウロコール酸からなる群から選択される保護コロイド」を含むものであるのに対して、引用発明は、「オレイン酸」を含むものである点。

5.判断
(1)相違点について
本願発明において、(c)成分の「保護コロイド」の選択肢として列記されている化合物のうち、「ステアリン酸」は、「オレイン酸」と同じく、代表的なアニオン界面活性剤であり、本願優先日前に当業者にとって周知慣用のものであったと認められ、「ステアリン酸」は、「オレイン酸」とは、長鎖アルケニル基の1つの二重結合が単結合に変わっただけの、構造も極めて類似している化合物である(例えば、藤本武彦著「全訂版新・界面活性剤」三洋化成工業株式会社(1981年)第31?33頁を参照)。
さらに、「ステアリン酸」がエアロゾル製剤に添加し得る成分であることは、本願優先日前に技術常識であったと認められる(例えば、特開昭53-41417号公報には、「ステアリン酸」を「オレイン酸」と同等のものとして添加したエアロゾル製剤が記載されている)。
そして、引用例に、医薬エーロゾル調合物に界面活性剤を添加する目的として、「噴射剤中に有効物質の微細な粒子が均一に分布された安定な懸濁物をつくりそして同時に弁装置を潤滑することである」(摘記事項<B>を参照)と記載されていることからみても、医薬エーロゾル調合物においては、有効成分の薬剤をより安定に分散させることができる界面活性剤を、噴射剤との適合性を含めて種々検討することは、当業者であれば当然に行うことであるといえる。
そこで、引用発明の医薬エーロゾル調合物において、添加する界面活性物質として、「オレイン酸」に代えて、構造が極めて類似した同じく周知慣用のアニオン界面活性剤であり、エアロゾル製剤に添加し得ることも知られていた「ステアリン酸」を採用してみる程度のことは、当業者ならば何ら格別な創意を要さずになし得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願明細書には、本願発明のエアロゾル送出用薬剤調剤は、物理的安定性が改良され、補助溶剤及び/又は乳化キャリアー添加剤を用いずに均一用量を供給する保護コロイド含有調剤であることが記載され(明細書第1頁第3?7行)、実施例1?5として、クロロフルオロカーボンではないハロゲン化アルカン噴射剤である「HFA-134a」(引用例に記載の「R134a」に相当する)を用いて調製したMDI調剤について、薬剤の物理的安定性(分散性)、及び薬剤送出均一性が具体的に示されている。
しかしながら、MDI(計量用量吸入器)調剤は、エアロゾル製剤の態様として本願優先日前に既に周知であり(例えば、国際公開第92/22288号、及び国際公開第92/22287号を参照)、上記したような薬剤の物理的安定性(分散性)や送出均一性等は、アエロゾル製剤における噴射剤と添加物との適合性を検討するに際して、当然確認すべき基本的な性質であるから、これらの点において本願発明が良好な結果を示したとしても、それはエアロゾル製剤に求められる通常の適性を単に確認したものに過ぎず、当業者が予測し得ない程の格別な効果とすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明、及び本願優先日前の周知技術に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-28 
結審通知日 2008-01-08 
審決日 2008-01-21 
出願番号 特願平7-515752
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 星野 紹英
井上 典之
発明の名称 非CFC噴射剤と共に用いるエアロゾル薬物調剤  
代理人 川口 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ