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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1178851
審判番号 不服2007-9804  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-05 
確定日 2008-06-02 
事件の表示 特願2004- 10744「カメラ及びビデオカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-202307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年1月19日に出願された特願2004-10744号であって、平成19年3月7日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年4月5日付で拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
その後、当審からの、平成20年1月24日付の拒絶理由通知に対し、平成20年2月15日付で手続補正がされたものである。

2.当審拒絶理由通知書における拒絶の理由
当審において、平成19年4月5日付の手続補正を独立特許要件違反で、補正却下するとともに、以下のような概要の拒絶の理由を通知した。
・拒絶の理由(特許法第29条第2項)
本願の請求項1?3に係る発明は、引用例1?3(下記「4.引用例」の引用例1?3に同じ。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成20年2月15日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「カメラ本体と、
上記カメラ本体と着脱自在に設けられ、オートフォーカスモードとマニュアルフォーカスモードとを交互に切り換えることが可能な交換用レンズと
を具え、
上記交換用レンズには、数字の目盛が設けられているズームリング及びアイリスリング以外に、上記マニュアルフォーカスモードのときフォーカス調整用レンズと連動し、その回転範囲に制限のないフォーカスリングが設けられ、当該フォーカスリングの周囲であって、上記カメラ本体の鏡筒と隣接する境界部分にそれぞれ目盛位置が異なることを想起させる数字以外の順番あるいは方向を示すアルファベットや大きさの異なる○印記号、又は複数種類の図形によって表される目盛が設けられている
ことを特徴とするカメラ。」

4.引用例
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-145978号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.【請求項1】
カメラに用いられるレンズ鏡筒であって、
前記カメラに固定される鏡筒本体部と、
前記鏡筒本体部に対する回転に伴い前記レンズ鏡筒の光学的状態を操作する操作環とを備え、
前記操作環の外周面上には、前記操作環の回転方向についての前記鏡筒本体部に対する位置によって、前記操作環による前記レンズ鏡筒の操作状況を示す、触覚によって認知可能な凸部もしくは凹部が設けられていることを特徴とするレンズ鏡筒。

イ.【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンディビデオカメラ等のカメラのレンズ鏡筒の光学的状態の操作状況の表示に関するものである。
【0002】【従来の技術】
たとえば、従来のハンディビデオカメラのレンズ鏡筒は、図9に示す様に、鏡筒1にカメラのサーボ機構22が連結した構造を有している。また、鏡筒1には、鏡筒1に対する回転に伴い、レンズ鏡筒のフォーカス、ズーム、アイリスを調整するフォーカス操作環11・ズーム操作環12・アイリス操作環13が設けられており、操作環の各々には現在のフォーカス、ズーム、アイリスの状態を表示するための目盛り(文字や記号)が付されている。ここで、鏡筒1に付された指標線14、15の位置にあるメモリが現在のフォーカス、ズーム、アイリスの状態(撮影距離、焦点距離、絞り値等)を示している。この指標線は異なるレンズ機種間での確認時の混乱を招かないように、通常、カメラ側からみて左斜めに設けられている。
【0003】
また、各操作環11、12、13は外周面に複数の歯を備えた、サーボ機構22によって回転させられる歯車となっている。図には、一例としてズーム操作環11をサーボ機構に回転させるときに撮影者によって用いられるズーム制御スイッチ221を示しておいた。ここで、各操作環11、12、13は、手動によっても回転することができ、各操作環11、12、13の外周面の歯は手動によって回転する際の滑りどめの役割も担っている。
【0004】
また、この他、手動による操作環の回転操作の際の滑りどめのために、フォーカス操作環11にフォーカス環滑り止め部材26が、ズーム操作環12にズーム環滑り止め部材27が設けられることもある。
【0005】
次に、サーボ機構外側2aは保持可能な形状をしており、撮影時には、右手で、このサーボ機構外側2aを保持しながら、操作部を左手で操作することによりフォーカス、ズーム、アイリス等のレンズ鏡筒の操作状況の調整が行われるのが一般的である。

上記記載事項、及び【図9】も参照すれば、引用例1には、
「カメラと
カメラに固定されるレンズ鏡筒1と
を備え、
レンズ鏡筒1には、鏡筒1に付された指標線14、15に隣接して文字や記号の目盛が付されている、レンズ鏡筒のフォーカス、ズーム、アイリスを調整するフォーカス操作環11・ズーム操作環12・アイリス操作環13が設けられているハンディビデオカメラ等のカメラ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された実願昭54-151242号(実開昭56-69708号)のマイクロフィルム (以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ウ.ゾーンフォーカシング方式のカメラでは、被写体距離を近景、中景、遠景に分け、これらに対応するゾーンマークをレンズ鏡胴のフォーカシング用操作環の表面に設けるとともにレンズ鏡胴の固定部に指標を設け、焦点調整を行うにあたり、フォーカシング用操作環を回動操作し、これらゾーンマークのうちのいづれか1つを指標に合致させている(明細書第1頁末行?第2頁7行)

また、当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2002-107604号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
エ.【0020】
以上のレンズ装置1において、フォーカス調整は、大きく分けて「MFモード」におけるマニュアルフォーカス(MF)と「AFモード」におけるオートフォーカス(AF)とにより行うことが可能である。「MFモード」は、操作者が所定のフォーカス操作部材を操作することによってフォーカス調整を行うモードであり、MFモードには更に、手動によりフォーカスレンズを駆動するモード(以下、フォーカスレンズを駆動することをフォーカス駆動という)と、電動によりフォーカス駆動を行うモードとがある。

また、本願の出願前に頒布された特開昭63-89825号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の事項が記載されている。
オ.第2図において、1は人の手指で回転操作されるフォーカスリング、6は該フォーカスリング1に連動してパルス信号を発生する第1のパルス発生手段、3はカメラ等の鏡胴内に設けられた合焦用のレンズ、4は該レンズ3を駆動するモータ等の駆動源、7は第1のパルス発生手段6から生じたパルス信号により該フォーカスリング1の回転方向を検出するフォーカスリング回転方向検出手段、8は該パルス信号から該フォーカスリング1の回転量(回転角)を検出するフォーカスリング回転量検出手段、9はフォーカスリング回転方向検出手段7によつて検出された回転方向を駆動源4の駆動方向(回転方向)として設定する駆動方向設定手段、10はフォーカスリング回転量検出手段8によつて検出された回転量に対応する駆動量(回転量)を駆動源4の駆動量として設定する駆動量設定手段、・・・(公報第3頁左下欄13行?右下欄10行)

また、本願の出願前に頒布された特開平3-185411号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている。
カ.次に第1図を用いてその動作について説明する。
操作環17を回転させてマニュアルフォーカスを行なう場合、磁気検出素子20により操作環17の回転方向、回転量及び回転速度が検出される。この検出信号に応じて制御回路52は、フォーカスモーター43の回転方向、回転量と速度を制御し駆動する。(公報第3頁左上欄4?10行)

また、本願の出願前に頒布された特開平6-242361号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の事項が記載されている。
キ.【0028】図1において、1はズーミング操作を行うマニュアルズームリング(以下MZリングと称す)であり、端がなくエンドレスに回転できる回転操作部である。2はMZリング検知手段で、MZリング1の回転方向、操作量(回転角)及び回転速度を検知し、この情報をCPU5に伝達する。3はフォーカシング操作を行うマニュアルフォーカシングリング(以下MFリングと称す)であり、MZリング1と同様にエンドレスに回転できる回転操作部である。4はMFリング検知手段で、MFリング3の回転方向、操作量(回転角)及び回転速度を検知し、この情報をCPU5に伝達する。

また、本願の出願前に頒布された特開平6-265771号公報(以下、「周知例4」という。)には、次の事項が記載されている。
ク.【0002】
【従来の技術】従来より、エンドレス回転の操作環でパワーフォーカスを行うレンズ鏡胴が知られている(特開平3-185411号等)。操作環を中立位置に復帰させるタイプのレンズ鏡胴では、パワーフォーカスの操作において所望の位置で操作環の回転を止めるのは難しいが、回転がエンドレスタイプの操作環ではこのような問題はなく操作が容易である。

5.対比
引用発明の「カメラ」は、本願発明の「カメラ本体」に相当し、以下、同様に「レンズ鏡筒1」は「レンズ」に、「ズーム操作環12」は「ズームリング」に、「アイリス操作環13」は「アイリスリング」に、「鏡筒1に付された指標線14、15に隣接して」は「カメラ本体の鏡筒と隣接する境界部分に」に、「ハンディビデオカメラ等のカメラ」は「カメラ」に、それぞれ、相当する。

引用発明の「固定され」と、本願発明の「着脱自在に設けられ」とは、「取り付けられ」の点で一致する。

引用発明の「文字や記号の目盛」は、【図9】を参照すれば、数字の目盛を含むことは明らかであるから、本願発明の「数字の目盛」に相当する。

引用発明は、上記記載事項イ.の「操作部を左手で操作することによりフォーカス、ズーム、アイリス等のレンズ鏡筒の操作状況の調整が行われるのが一般的である。」の記載から、フォーカス操作環11を操作することにより、フォーカス調整するので、マニュアルフォーカスモードのときフォーカス操作環11と連動するフォーカス調整用レンズを有していることは明らかである。したがって、引用発明は、本願発明の「マニュアルフォーカスモードのときフォーカス調整用レンズと連動する、フォーカスリングが設けられ」の構成を有していることは、明らかである。

引用発明においても、目盛が付されているのは、フォーカス操作環11の周囲であることは、明らかである。

引用発明の文字や記号の目盛は、「鏡筒1に付された指標線14、15に隣接して」付されているが、本願発明の実施例である【図4】から【図9】のものも目盛は基準線30に隣接して付されているので、引用発明の「鏡筒1に付された指標線14、15に隣接して」は、本願発明の「上記カメラ本体の鏡筒と隣接する境界部分に」に相当する。

引用発明の「文字や記号の目盛」も、フォーカス操作環11の周囲の異なる位置に付されているので、「目盛位置が異なることを想起させる」ことは自明であり、引用発明も、本願発明の「目盛位置が異なることを想起させる」の構成を有していることは、明らかである。

引用発明の「文字や記号の目盛」と、本願発明の「数字以外の順番あるいは方向を示すアルファベットや大きさの異なる○印記号、又は複数種類の図形によって表される目盛」とは、「目盛」の点で一致する。

したがって、両者は、
「カメラ本体と、
上記カメラ本体に取り付けられたレンズと
を具え、
上記レンズには、数字の目盛が設けられているズームリング及びアイリスリング以外に、上記マニュアルフォーカスモードのときフォーカス調整用レンズと連動するフォーカスリングが設けられ、当該フォーカスリングの周囲であって、上記カメラ本体の鏡筒と隣接する境界部分にそれぞれ目盛位置が異なることを想起させる目盛が設けられているカメラ。」の点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;
カメラ本体に取り付けられたレンズが、本願発明は、カメラ本体と着脱自在に設けられ、オートフォーカスモードとマニュアルフォーカスモードとを交互に切り換えることが可能な交換用レンズであるのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。

相違点2;
フォーカスリングが、本願発明では、その回転範囲に制限のないのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。

相違点3;
フォーカスリングに設けられている目盛が、本願発明では、数字以外の順番あるいは方向を示すアルファベットや大きさの異なる○印記号、又は複数種類の図形によって表されるのに対し、引用発明は、文字や記号である点。

6.判断
以下、各相違点について検討する。
相違点1について
オートフォーカスモードとマニュアルフォーカスモードとを交互に切り換えることが可能なレンズは、引用例3に記載されている。他に、カメラ本体と着脱自在に設けられ、オートフォーカスモードとマニュアルフォーカスモードとを交互に切り換えることが可能な交換用レンズは、従来周知(例えば、特開平9-211647号公報(段落【0001】、【0023】)、特開平9-90197号公報(段落【0001】、【0007】)、特開平8-320428号公報(段落【0001】、【0009】)、特開平8-248299号公報(段落【0002】)等参照)の技術事項であり、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を限定することは、当業者にとって困難性はない。

相違点2について
本願発明において、フォーカスリングが、その回転範囲に制限のない点に関し、発明の詳細な説明の段落【0019】に「ここで交換用AFレンズ3においては、フォーカスリング9とフォーカス調整用レンズ20Aとは直接連動しているのではなく、ロータリエンコーダ9A及びモータ22を介して間接的に駆動する構成であるため当該フォーカスリング9の回転範囲には制限がなく左右いずれの方向に対しても回転し続けてしまう。」と記載されているが、フォーカス調整用レンズを、フォーカスリングの回転量に応じて、モータを介して間接的に駆動する構成は、上記周知例1?4に示すように従来周知の技術事項であり、本願発明の実施例と同様の構成であるので、フォーカスリングの回転範囲に制限のない点も、従来周知の技術事項と言える。特に、周知例3、4には、それぞれ、「マニュアルフォーカシングリング(以下MFリングと称す)であり、MZリング1と同様にエンドレスで回転できる回転操作部である。」、「従来より、エンドレス回転の操作環でパワーフォーカスを行うレンズ鏡胴が知られている」と記載され、その点が明記されている。
したがって、引用発明のフォーカス操作環11を上記周知技術である回転範囲に制限のないフォーカスリングに置き換え、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を限定することは、当業者にとって困難性はない。

相違点3について
引用例2には、数字以外のゾーンマークをフォーカシング用操作環の表面に設けた点が記載され、このゾーンマークが、本願発明の「複数種類の図形」に相当することは明らかである。また引用発明においても、目盛は、文字や記号であり、数字以外のものを排除するものではないので、引用発明に、引用例2に記載された発明を適用することにより、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を限定することは、当業者にとって困難性はない。

本願発明の効果も、各引用例に記載された発明、及び従来周知の技術事項から予測される範囲のもので格別のものとはいえない。

7.むすび
したがって、本願発明は、引用例1?3に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-03 
結審通知日 2008-04-04 
審決日 2008-04-15 
出願番号 特願2004-10744(P2004-10744)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 安田 明央
江塚 政弘
発明の名称 カメラ及びビデオカメラ  
代理人 田辺 恵基  

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