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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1178884
審判番号 不服2005-11163  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-15 
確定日 2008-06-06 
事件の表示 特願2003-379101「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-137720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年11月7日に出願された特願2003-378647号(国内優先権主張 平成14年11月20日)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願(同条4項の規定により、特願2003-378647号と同じ優先権主張がされているものとみなされる。)としたものであって、平成17年5月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月15日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月14日付けで特許請求の範囲についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年7月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】 遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、
前記表示領域の予め定められた一部の表示態様が特定の表示態様である場合に、該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示させる表示制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」(下線部が補正箇所)

2.新規事項追加
上記下線部を含む「前記表示領域の予め定められた一部の表示態様が特定の表示態様である場合に、該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示させる表示制御手段」は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、これら全体を「当初明細書」という。)の何れにも記載されていない。
請求人は審判請求理由において、補正根拠として、当初明細書の段落【0062】,【0063】及び【図10】をあげている。しかし、段落【0062】及び【0063】には、「遊技者が第1停止操作(リール3L,3C,3Rが変動後、停止ボタン11L,11C,11Rのうちから遊技者が任意に選択した1つの停止ボタンを遊技者が最初に押す操作)として停止ボタン11Lを押した場合の図柄表示領域21L,21C,21R及び演出表示領域23の表示態様を示している。ここでは、リール3Lの停止図柄は、「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」となっている。」及び「図10(4)において、図10(3)で説明したBBの内部当選を受けて、リール3Lに対応する表示領域である図柄表示領域21Lには、「ドーン」21aという遊技情報が表示され、遊技者に報知される。」と記載されているところ、この記載における「リール3L」は、遊技者が最初に押した停止ボタンに対応するリールであり、遊技者が最初に押すリールは予め定められていない(「任意に選択した」とある。)から、「リール3L」は「表示領域の予め定められた一部」に該当しない。
当初明細書には「第1表示手段のリール3Lの停止図柄態様の表示(ドンドンドン)に迫力を持たせることができ、興趣向上につながる。」(段落【0064】)との記載があるけれども、これは「ドンドンドン」の停止態様と「ドーン」という遊技情報が合致したときの効果をいうにすぎず、この記載があるからといって、リール3L停止時のみ遊技情報を表示することも、「ドンドンドン」の停止態様のみ遊技情報を表示することも当初明細書に記載されていると認めることはできない。
加えて、【図10】(4)には、リール3Lに対応する表示領域21Lのみに「ドーン」という遊技情報が表示されることが示されており、他方「「ドーン」21aが図柄表示領域21L,21C,21Rや演出表示領域23に表示される」(段落【0090】)等の記載によれば、「ドーン」という遊技情報は表示領域21C,21Rにも表示される旨記載されているのだから、リール3C,3Rの停止時にも、遊技情報が表示領域21C,21Rにも表示されると解するべきである。そうすると、キャラクタ(ドン)の停止表示が「ドーン」という遊技情報の表示条件であることが当初明細書の記載から読み取れると仮にしても、表示領域21C,21Rにキャラクタ(ドン)が停止表示した際にも、「ドーン」の表示がされると解すべきである。さらに、補正後の請求項1によれば、「表示領域の予め定められた一部」に該当するリール3Lが2番目又は3番目に停止した場合であっても、1番目に停止した場合と同じく遊技情報が表示されなければならないが、そのようなことも当初明細書の記載からは読み取れないだけでなく、【図10】(1)(前回遊技終了時に停止図柄と解される。)はリール3Lの停止図柄が「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」であるにもかかわらず、「図10(1)において、・・・停止図柄の組合せがBB役やRB役を発生させる停止態様ではないので、図柄表示領域21L,21C,21Rや演出表示領域23には遊技情報は表示されない。」(段落【0060】)とあるとおり、遊技情報を表示していないこととも整合しない。
そればかりか、段落【0063】の上記記載には「BBの内部当選を受けて」とあり、リール3Lの停止図柄が(ドンドンドン)(【図10】(3)では偶々そのように停止している。)であることが、「ドーン」という遊技情報表示条件であること、換言すれば、キャラクタ(ドン)が停止表示されない場合に「ドーン」という遊技情報が表示されないことも記載されていない。
以上のとおり、本件補正は当初明細書に記載された事項の範囲内でされたものではなく、自明な事項を追加したものと認めることもできないので、特許法17条の2第3項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上によれば、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月19日手続補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、
前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に、該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示させる表示制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-124290号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。
ア.「複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、
上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とするとともに、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態としたことを特徴するスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「センターパネル21のほぼ中央には、図2に示すように、3個の表示窓22?24を横並びに形成している。各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませている。そして、各表示窓22?24には、回転リール30?32を回転させることにより、上下方向に3個のシンボルマークを所定間隔で高速で移動表示させることができる。」(段落【0016】)
ウ.「前記センターパネル21の裏側には、図1に示すように、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置されている。」(段落【0018】)
エ.「液晶パネル40の制御は、スロットマシン10内に設けたマイクロコンピュータ等からなる電気的制御装置(図示せず)により行われている。前記液晶パネル40の裏側には、図1に示すように、液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50が配置されている。」(段落【0019】)
オ.「上記バックライトユニット50は、図1に示すように、各表示窓22?24の位置を除き、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、この乱反射板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている。なお、面発光板51を、各表示窓22?24の位置を除いて配置したことから、液晶パネル40の透光状態では、スロットマシン10の内部に配置された各回転リール30?32のシンボルマークを、センターパネル21を透してスロットマシン10の前面より見ることができる。」(段落【0020】)
カ.「液晶の透光面の一部を遮光状態として、図4に示すように、中央ライン60を液晶表示して、1本の有効ラインを表示する。」(段落【0024】)
キ.「スロットマシン10の前面の図2に示すスタートスイッチ12が操作されると、3個の回転リール30?32がほぼ同時に回転を開始する。・・・3個のストップスイッチ13?15を全て操作し、全ての回転リール30?32を停止させる。その結果、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、特別の賞態様、例えば、図7に示す右下がりの斜めライン63上に「7」の文字から成る図柄が3個揃うと、いわゆる「ビッグボーナス」の役が成立し、15枚のメダルが遊技者に払い出される。」(段落【0027】?【0028】)
ク.「「ビッグボーナス」が成立すると、図8に示すように、上下に長く透光状態となっていた各表示窓22?24が、右下がりの斜めライン63上に揃った「7」の図柄を残して遮光状態となり、「ビッグボーナス」の当たり図柄を遊技者から見易いように強調する。さらに、各表示窓22?24の図7において向かって右側に表示されていた5個のメダル投入表示部70?74が、消灯し、その箇所に、図8に示すように、「ビッグボーナス」の文字が表示され、「ビッグボーナス」が成立したことを遊技者にわかり易く表示する。」(段落【0029】)

3.引用例記載の発明の認定
引用例の記載イ?オ及び【図1】?【図3】によれば、各表示窓22?24の位置に対応する液晶パネル部分にはバックライトユニットが設けられておらず、バックライトユニットと液晶パネルは略同サイズと認めることができ、表現を変えれば、液晶パネルと略同サイズのバックライトユニットに各表示窓22?24該当の開口部があるということができる。
遊技者側からみると、液晶パネル、バックライトユニット(表示窓22?24該当の開口部あり)及び3個の回転リールが並んでいる。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「遊技者側からみて、液晶パネル、バックライトユニット及び3個の回転リールが並んで配置されたスロットマシンであって、
各回転リールは、外周の表面に複数の図柄を所定間隔で表示したものであり、
バックライトユニットには3個の開口部が設けられ、液晶パネルが透光状態であれば、各開口部を通して背後の回転リールを各リールごとに3図柄を視認できるように構成され、
液晶パネルの透光面の一部を遮光状態として、有効ラインを表示し、
スタートスイッチ操作により3個の回転リール回転を開始し、3個のストップスイッチの操作により全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示するスロットマシン。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明の対比
引用発明において、「全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立」したこと(それ以外にも、全ての回転リールが停止後に表示されるリール図柄も同じである。)及び「ビッグボーナスの文字」は「遊技に関する結果」であるから、引用発明の「3個の回転リール」及び「液晶パネル」は本願発明の「第1表示手段」及び「第2表示手段」にそれぞれ相当し、これらを併せたものが本願発明の「遊技結果表示手段」に相当する。
引用発明において「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせ」となることは、本願発明の「遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合」と異ならず、引用発明においても「遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態」となることは明らかであるから、引用発明は本願発明の「利益状態発生手段」を備える。
引用発明における液晶パネルの開口部該当部分は、同部分に有効ラインの表示がされていても、3個の回転リールを視認できることは明らかであるから、上記開口部該当部分は本願発明の「前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域」に相当する。「前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され」ることも、当然一致点である。
引用発明の「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが成立」は本願発明でいう「前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合」に該当し、同じく「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすることは、「該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示」することに該当する。当然、引用発明はそのための「表示制御手段」を備える。
したがって、本願発明と引用発明は、
「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、
前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に、該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示させる表示制御手段を備えた遊技機。」である点で一致し、両者に相違点は存在しない。
すなわち、本願発明は引用発明そのものであるから、特許法29条1項3号の規定に該当する発明であり、特許を受けることができない。

5.予備的判断
仮に、引用発明において「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすることが、本願発明の「該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示」に該当しないとした場合の検討をしておく。
その場合には、「前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に、該図柄表示領域に前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示させる」かどうかが相違点となる。
引用発明では、「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすること以外に、「ビッグボーナスの文字を表示」(問題なく、「前記特定の表示態様に係る遊技情報を表示」に該当する。)しているが、表示位置は「常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分」であって表示領域ではない。しかし、引用発明において、本願発明でいう表示領域にビッグボーナスの文字を表示できない理由はない(そのことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-350805号公報の【図15】及び【図19】に、遊技中に種々の文字が表示される様子が図示されていることからも明らかである。)から、ビッグボーナスの文字の表示位置を表示領域に変更することに困難性はない。
そればかりか、引用発明を出発点とした場合、ビッグボーナス成立を表示するに当たり、表示態様をビッグボーナスの文字に拘泥する必要はない。前掲特開2000-350805号公報の【図20】には、本願発明でいう表示領域を含む部分にフラッシュマークM8が点滅表示される様子が図示されており、このような点滅表示をビッグボーナス成立時の表示として採用し、相違点に係る本願発明の構成に至ることも当業者にとって想到容易である。
そして、相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできないから、結局のところ本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-02 
結審通知日 2008-04-08 
審決日 2008-04-21 
出願番号 特願2003-379101(P2003-379101)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎池谷 香次郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
中槙 利明
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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