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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1178897
審判番号 不服2005-20339  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-20 
確定日 2008-06-06 
事件の表示 平成 8年特許願第193125号「枚葉印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月10日出願公開、特開平10- 34891〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成8年7月23日の出願であって、平成17年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月20日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「走行する搬送チェーンと、この搬送チェーンに支持され枚葉紙を把持する爪と爪台とを有する爪竿と、この爪竿によって搬送される枚葉紙を検査する検査装置と、この検査装置によって検査する位置で被検査枚葉紙を案内する紙案内部材とを備えた枚葉印刷機において、前記紙案内部材は、枚葉紙を案内する案内面と、この案内面に枚葉紙を添接させる吸気孔と、前記爪の走行経路に対応する溝とを備えるとともに、前記紙案内部材を、前記爪竿によって搬送される枚葉紙の搬送経路と案内面とが略同じ高さとなるように配設したことを特徴とする枚葉印刷機。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-254091号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「【請求項1】 シート輪転印刷機で印刷されたシートを品質コントロールするための装置であって、制御可能なグリッパ(7)を支持した、チエーンで案内されるグリッパビーム(8)を備えた形式のものにおいて、相互間隔を置いて位置していてその間をグリッパビーム(8)が通過走行する、2つの処理装置の間の中空間(1)内のグリッパ(7)の上側の移動路の上方に、シート(5)側に平らな吸引面(3)を備えたサクションボックス(2)が設けられており、サクションボックス(2)の下方であり、かつグリッパ(7)の下側の移動路の下方に光学/電子式撮影装置(16)が配置されており、この撮影装置(16)が同期化装置と接続されていることを特徴とする、シート輪転印刷機が印刷されたシートをコントロールするための装置。」
イ.「【0004】 【実施例】 例えば印刷機とデリバリ(両方とも図示せず)との間の中空間1内にはサクションボックス2が配置されている。サクションボックス2は平らな、下側の吸引面3を有し、吸引面は多数の開口4を有している。サクションボックス2は多数の管を介して吸引空気源と接続されている。サクションボックス2の長さはその都度このシート輪転印刷機で印刷すべきシート型の長さにほぼ等しい。サクションボックス2のシート走行方向が(矢印で示される方向)でみて前方に吸引ロール6を配置することができる。吸引ロール6の最下位点と吸引面3とはチェーンで案内されるシートグリッパ7の最高隆起部の移動路の直近に位置している。シートグリッパ7はグリッパ機構にまとめられていて、それぞれグリッパビーム8に配置されている。各グリッパビーム8は公知の形式で2つの搬送チェーン9間にあり、かつこれに固定されている。搬送チェーン9は多数のグリッパビーム8を支持し、その数は、グリッパビームが例えば印刷機からデリバリまで進んで戻るべき距離に依存する。2つのグリッパビーム間の距離は公知の形式で印刷可能な最大シート長よりもそれぞれ若干大きい。
【0005】 シートグリッパ7の移動路からサクションボックス2までの距離は、シートグリッパ7によって搬送されるシート5がサクションボックス2の吸引面3によって吸引され、これに沿って引張られ、かつこれによってピンと張った状態で引張られるように設計されている。シートが例えばCCD-ラインカメラまたはCCD-面カメラ16を用いた光学/電子式の品質コントロールを受ける間はシートはピンと張って、折り目のない状態に整えられていることが重要である。」
ウ.「【0011】 撮影すべき、あないしは走査すべきシート5はフラッシュおよび走査の時点に完全に折り目のない状態になければならずまたシートはまだサクションボックス2の吸引面3を去り始めてはならない。撮影装置16から走査すべきシート5の下面までの距離aは一定であり、その水平位置は固定されている。」
エ.「【図面の簡単な説明】・・・5 枚葉紙・・・」
オ.【図1】からは、枚葉紙5が移動する搬送チェーン9に設けられたグリッパビーム8によって図面の右から左へ搬送される点及びサクションボックス2の吸引面3の下部にグリッパビーム走行路12があり、シートグリッパ7はグリッパビーム走行路12の上部でサクションボックス2の吸引面3に近い位置にある点が看取できる。

ア.及びオ.の記載より、搬送チェーン9は「走行する」ものといえる。
イ.の「シートグリッパ7はグリッパ機構にまとめられていて、それぞれグリッパビーム8に配置されている。」及び「シートグリッパ7によって搬送されるシート5」の記載より、グリッパビーム8はシートグリッパ7を有するといえ、また枚葉紙5はグリッパビーム8によって搬送されるといえる。
ア.の「シート輪転印刷機で印刷されたシートを品質コントロールするための装置であって」、イ.の「シートが例えばCCD-ラインカメラまたはCCD-面カメラ16を用いた光学/電子式の品質コントロールを受ける間は」の記載より、光学/電子式撮影装置16は枚葉紙5を検査するものといえる。
イ.の「シートグリッパ7によって搬送されるシート5がサクションボックス2の吸引面3によって吸引され、これに沿って引張られ、かつこれによってピンと張った状態で引張られるように設計されている。シートが例えばCCD-ラインカメラまたはCCD-面カメラ16を用いた光学/電子式の品質コントロールを受ける間はシートはピンと張って、折り目のない状態に整えられていることが重要である。」及びウ.の「撮影すべき、あないしは走査すべきシート5はフラッシュおよび走査の時点に完全に折り目のない状態になければならずまたシートはまだサクションボックス2の吸引面3を去り始めてはならない。」の記載より、光学/電子式撮影装置16によって検査する位置で、枚葉紙5がサクションボックス2の吸引面3によって吸引されているといえる。
イ.の「吸引面は多数の開口4を有し、」及び「シート5がサクションボックス2の吸引面3によって吸引され、これに沿って引張られ」の記載より、開口4は「吸引面3に枚葉紙5を添接させる」ものといえる。
イ.の「シートグリッパ7の最高隆起部の移動路」、「シートグリッパ7によって搬送されるシート5」及びオ.の記載より、枚葉紙5は、シートグリッパ7の最高隆起部の移動路近傍において搬送されているといえ、「シートグリッパ7の最高隆起部の移動路」は「枚葉紙の搬送経路近傍」といえるから、「サクションボックス2を枚葉紙の搬送経路近傍の上部に吸引面3が位置するように配設した」ものといえる。

この記載事項を含む刊行物1全体の記載によると、刊行物1には、
「走行する搬送チェーン9と、この搬送チェーン9に支持されシートグリッパ7を有するグリッパビーム8と、このグリッパビーム8によって搬送される枚葉紙5を検査する光学/電子式撮影装置16と、サクションボックス2とを備えたシート輪転印刷機であって、サクションボックス2は、吸引面3と、吸引面3に枚葉紙5を添接させる多数の開口4を有し、枚葉紙の搬送経路近傍の上部に吸引面3が位置するように配設され、光学/電子式撮影装置16によって検査する位置で、枚葉紙5をサクションボックス2の吸引面3に沿って引っ張るようにしたシート輪転印刷機。」(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-16331号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

カ.「【0013】 図2は反転機構10とシート体排出ユニット5の拡大図である。反転機構10は反転倍胴18と反転渡し胴19より構成され、反転倍胴18はくわえ爪21とサッカー22を搭載している。尚、図には反転倍胴18のくわえ爪しか図示してないが他の胴も各々くわえ爪を搭載している。シート体排出ユニット5はチェーンスプロケット13、14の間を回転している搬送チェーン15と、搬送チェーン15に設けられているシート体保持手段16を中心に構成され、搬送チェーンを挟むように上側にガイド11、下側に搬送中のシート体をガイドに非接触で圧接する手段が設けられている。
【0014】 図示してはいないが搬送チェーン15は手前と奥に各一本づつ設けられており、その間に爪竿と呼ばれる支持体を渡し、その支持体にシート体保持手段16が設けられている。シート体保持手段16はくわえ爪を採用しており(以下、くわえ爪16と記す)、シート体の幅方向に複数のくわえ爪16を配置しシート体の端をくわえることでシート体を保持し、搬送チェーン15の回転にともないシート体を保持したまま移動する。
【0015】ガイド11は間隔をおいて幅方向に配置された複数のクロムメッキを施した鉄板より構成され、その間隔は前記搬送チェーン15のくわえ爪16の位置に対応し、搬送チェーン15のくわえ爪16が前記間隔の間を移動することでガイド11と接触しないようにしている。また、ガイド11は搬送チェーン15の進行方向に対応して曲げてあり、その両端は搬送チェーン15と反対方向に丸めてシート体表面にキズがつかないようにしてある。ガイド11は移動するシート体に近い位置にセットすることが望ましく、1mmから50mmの間、好ましくは3mmから10mmの間隔をあける。」
キ.「【0021】 更にまた、ガイドにシート体を吸着する機構を設ければ一層確実にシート体をガイドに圧接させることができる。吸着する機構としては各ガイドに複数個の吸着口を設け、真空圧を発生させる真空ポンプと各吸着口をホースで結ぶと供に、各々の吸着口には複数個のローラーを設け、シート体を吸着すると同時にシート体の移動に合わせてローラーが回転するようにすればシート体を傷つけることなく吸着することが可能となり、印刷スピードを低下させることなく吸着出来るので、印刷能率を低下させる事もない。尚、前記ローラーはシート体の移動に合わせて回転すれば良いので独自の駆動機構を必要としていない。また、ローラーの表面に前記滑剤を塗布すればシート体の表面保護の効果が一層向上する。」

この記載事項を含む刊行物2全体の記載によると、刊行物2には、
「ガイド11が、間隔をおいて幅方向に配置された複数のクロムメッキを施した鉄板より構成され、その間隔は前記搬送チェーン15のくわえ爪16の位置に対応し、搬送チェーン15のくわえ爪16が前記間隔の間を移動することでガイド11と接触しないようにし、更にガイドにシート体を吸着する機構を設けた点」が記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「グリッパビーム8」、「光学/電子式撮影装置16」、「シート輪転印刷機」はそれぞれ本願発明の「爪竿」、「検査装置」、「枚葉印刷機」に相当する。
検査装置によって検査する位置にある枚葉紙5は「被検査枚葉紙」と称することができる。
サクションボックス2の吸引面3によって枚葉紙5が吸引され、サクションボックス2の吸引面3に沿って引張られるものであるから、サクションボックス2を「紙案内部材」、吸引面3を「案内面」と称することができる。
本願発明の「紙案内部材を、爪竿によって搬送される枚葉紙の搬送経路と案内面とが略同じ高さとなるように配設した」及び引用発明の「シートグリッパ7を有するグリッパビーム8と、このグリッパビーム8によって搬送される枚葉紙5」、「サクションボックス2は、・・・枚葉紙の搬送経路近傍の上部に吸引面3が位置するように配設され」から、本願発明と引用発明とは、「紙案内部材を、爪竿によって搬送される枚葉紙の搬送経路と案内面とが特定の距離になるように配設した点」で共通する。

してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違している。

<一致点>
走行する搬送チェーンと、この搬送チェーンに支持される爪竿と、この爪竿によって搬送される枚葉紙を検査する検査装置と、この検査装置によって検査する位置で被検査枚葉紙を案内する紙案内部材とを備えた枚葉印刷機において、前記紙案内部材は、枚葉紙を案内する案内面と、この案内面に枚葉紙を添接させる吸気孔を備え、紙案内部材を、爪竿によって搬送される枚葉紙の搬送経路と案内面とが特定の距離になるように配設した枚葉印刷機の点。

<相違点1>
本願発明では、爪竿が「枚葉紙を把持する爪と爪台とを有する」と特定されているのに対して、引用発明では、そのような特定がされたものではない点。
<相違点2>
本願発明では、案内面に「爪の走行経路に対応する溝とを備える」と特定されているのに対して、引用発明では、そのような特定がされたものではない点。
<相違点3>
本願発明では、「紙案内部材を、爪竿によって搬送される枚葉紙の搬送経路と案内面とが略同じ高さとなるように配設した」と特定されているのに対して、引用発明では、そのような特定がされたものではない点。

4.相違点についての検討
<相違点1>について検討する。
爪竿が「枚葉紙を把持する爪と爪台とを有する」点は、例えば実願昭60-15357号(実開昭61-132360号)のマイクロフィルム(第4ページ第15行目?第5ページ第3行目、第1図)、実願平3-54532号(実開平4-137843号)のマイクロフィルム(【0004】、【0005】、【図11】)等に示されるように、爪竿の構成としてごく一般的なものであるから、爪竿を枚葉紙を把持する爪と爪台とを有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。

<相違点2、3>について検討する。
刊行物1において、紙案内部材は「枚葉紙の搬送経路近傍の上部に案内面が位置するように配設」されており、「枚葉紙の搬送経路と案内面とが略同じ高さとなるように配設した」ものではない。しかしながら、引用発明においても、上記イ.に「シートグリッパ7の移動路からサクションボックス2までの距離は、シートグリッパ7によって搬送されるシート5がサクションボックス2の吸引面3によって吸引され、これに沿って引張られ、かつこれによってピンと張った状態で引張られるように設計されている」と記載されているように、検査位置において枚葉紙を確実に紙案内部材の案内面に吸着させることは、正確な検査結果を得る上で自明の課題である。枚葉紙の搬送経路と案内面との距離が近いほど枚葉紙を確実に紙案内部材の案内面に吸着させることができることは明らかであるから、枚葉紙の搬送経路と案内面とが略同じ高さとなるよう紙案内部材を配設することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
その際、枚葉紙の搬送が爪付きの搬送チェーンで行われる場合、爪があることによって枚葉紙の搬送経路と案内面とが離れることになる。刊行物2には、紙案内部材であるガイド11に爪が退避するための空間を設けることによって、枚葉紙の搬送が爪付きの搬送チェーンで行われる場合であっても、紙案内部材と枚葉紙との間隔を小さくする点が記載されている。
そして、引用発明のサクションボックス2と、刊行物2のガイド11とは、いずれもその表面に紙を吸着させながら案内する部材で共通しており、刊行物2に記載の爪の走行経路に対応する部分に爪が退避するための空間を設ける構成を、引用発明のサクションボックス2に適用すること、及び引用発明のサクションボックス2に爪が退避するための空間を、その吸引面3に設けた溝とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。

そして本願発明の作用効果も、刊行物1、2に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-27 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願平8-193125
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國田 正久  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅藤 政明
七字 ひろみ
発明の名称 枚葉印刷機  
代理人 山川 政樹  
代理人 西山 修  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 紺野 正幸  
代理人 山川 茂樹  

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