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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1178926
審判番号 不服2006-11562  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-07 
確定日 2008-06-06 
事件の表示 特願2000-133205「記録先決定装置、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-319419〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年5月2日の出願であって、平成18年2月9日付け拒絶理由通知に対して、平成18年4月11日付けで手続補正がなされたが、平成18年5月1日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成18年6月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。

第2 平成18年6月7日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月7日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.手続補正の内容
平成18年6月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に
「 【請求項1】 あらかじめ決められた方法に基づいて、画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個のうちの、前記データの記録先となる前記記録装置を決定する記録先決定手段を少なくとも備え、
前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、前記複数個の記録装置のうちの少なくとも他の一つは、固定設置型の前記記録媒体に前記データを記録する固定型記録媒体用記録装置であり、
前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であって、前記データの記録開始前における所定の場合には、前記固定型記録媒体用記録装置の前記固定設置型の記録媒体に前記データが記録されるように制御する制御手段を有する、記録先決定装置。
【請求項2】 前記所定の場合とは、前記リムーバブル記録媒体用記録装置に前記リムーバブルの記録媒体が装填されていない場合である、請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項3】 前記所定の場合とは、装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合である、請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項4】 前記所定の場合とは、装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合である、請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項5】 前記制御手段は、前記リムーバブル記録媒体用記録装置に、前記リムーバブルの記録媒体が装填された後に、または所定量の残存記録容量を有する前記リムーバブルの記録媒体が装填された後に、または新たなデータの記録が許可されている前記リムーバブルの記録媒体が装填された後に、前記固定設置型の記録媒体に記録された前記データが前記リムーバブルの記録媒体に記録されるように制御することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の記録先決定装置。
【請求項6】 前記あらかじめ決められた方法とは、ユーザによってあらかじめ決定された前記複数個の記録装置のいずれかの選択を意味することを特徴とする請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項7】 前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、
前記ユーザによってあらかじめ選択された前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であることを特徴とする請求項6に記載の記録先決定装置。
【請求項8】 前記データの記録先となる前記記録装置をユーザが任意に選ぶことができるモードを有し、
前記記録先決定手段が決定するモードを選ぶか、前記ユーザが任意に選ぶことができるモードを選ぶかの選択を、前記ユーザから受け付ける選択受付手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項9】 過去における、前記複数個の記録装置それぞれの使用頻度を調べる使用頻度調査手段をさらに備え、
前記記録先決定手段は、前記選択受付手段が前記ユーザから、前記記録先決定手段が決定するモードを選ぶ選択を受け付けた場合に、前記あらかじめ決められた方法として、前記使用頻度調査手段によって調べられた使用頻度が最も高い前記記録装置を選択する
ことを特徴とする請求項8に記載の記録先決定装置。
【請求項10】 前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、
前記あらかじめ決められた方法とは、前記リムーバブル記録媒体用記録装置に前記リムーバブルの記録媒体が装填されている場合には、前記リムーバブル記録媒体用記録装置が選択される方法を意味することを特徴とする請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項11】 前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置における、前記記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合には、または前記記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合には、前記決定された前記記録先となる前記記録装置の前記記録媒体には前記データは記録されないことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の記録先決定装置。
【請求項12】 請求項1に記載の記録先決定装置の、あらかじめ決められた方法に基づいて、画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個のうちの、前記データの記録先となる前記記録装置を決定する記録先決定手段と、前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であって、前記データの記録開始前における所定の場合には、前記固定型記録媒体用記録装置の前記固定設置型の記録媒体に前記データが記録されるように制御する制御手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを担持した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能なことを特徴とする記録媒体。」
とあったものを、

「 【請求項1】 あらかじめ決められた方法に基づいて、画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個のうちの、前記データの記録先となる前記記録装置を決定する記録先決定手段を少なくとも備え、
前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、前記複数個の記録装置のうちの少なくとも他の一つは、固定設置型の前記記録媒体に前記データを記録する固定型記録媒体用記録装置であり、
前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であって、前記データの記録開始前において、装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合には、前記固定型記録媒体用記録装置の前記固定設置型の記録媒体に前記データが記録されるように制御する制御手段を有する、記録先決定装置。
【請求項2】 前記制御手段は、前記リムーバブル記録媒体用記録装置に前記リムーバブルの記録媒体が装填されていない場合に、固定型記録媒体用記録装置の前記固定設置型の記録媒体に前記データが記録されるように制御する、請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項3】 前記制御手段は、前記リムーバブル記録媒体用記録装置に、前記リムーバブルの記録媒体が装填された後に、または所定量の残存記録容量を有する前記リムーバブルの記録媒体が装填された後に、または新たなデータの記録が許可されている前記リムーバブルの記録媒体が装填された後に、前記固定設置型の記録媒体に記録された前記データが前記リムーバブルの記録媒体に記録されるように制御することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の記録先決定装置。
【請求項4】 前記あらかじめ決められた方法とは、ユーザによってあらかじめ決定された前記複数個の記録装置のいずれかの選択を意味することを特徴とする請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項5】 前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、
前記ユーザによってあらかじめ選択された前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であることを特徴とする請求項4に記載の記録先決定装置。
【請求項6】 前記データの記録先となる前記記録装置をユーザが任意に選ぶことができるモードを有し、
前記記録先決定手段が決定するモードを選ぶか、前記ユーザが任意に選ぶことができるモードを選ぶかの選択を、前記ユーザから受け付ける選択受付手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項7】 過去における、前記複数個の記録装置それぞれの使用頻度を調べる使用頻度調査手段をさらに備え、
前記記録先決定手段は、前記選択受付手段が前記ユーザから、前記記録先決定手段が決定するモードを選ぶ選択を受け付けた場合に、前記あらかじめ決められた方法として、前記使用頻度調査手段によって調べられた使用頻度が最も高い前記記録装置を選択する
ことを特徴とする請求項6に記載の記録先決定装置。
【請求項8】 前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、
前記あらかじめ決められた方法とは、前記リムーバブル記録媒体用記録装置に前記リムーバブルの記録媒体が装填されている場合には、前記リムーバブル記録媒体用記録装置が選択される方法を意味することを特徴とする請求項1に記載の記録先決定装置。
【請求項9】 前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置における、前記記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合には、または前記記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合には、前記決定された前記記録先となる前記記録装置の前記記録媒体には前記データは記録されないことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の記録先決定装置。
【請求項10】 請求項1に記載の記録先決定装置の、あらかじめ決められた方法に基づいて、画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個のうちの、前記データの記録先となる前記記録装置を決定する記録先決定手段と、前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であって、前記データの記録開始前において、装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合には、前記固定型記録媒体用記録装置の前記固定設置型の記録媒体に前記データが記録されるように制御する制御手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを担持した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能なことを特徴とする記録媒体。」

と、本件補正前の請求項2,請求項3に記載されていた各事項を、本件補正前の請求項1,請求項12に、「所定の場合」が「装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または、装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合」であると限定して請求項2,請求項3は削除、あわせて請求項1乃至10に項番整理するものである。

すると、本件補正後の請求項1についてみれば、本件補正前の請求項1を補正して「所定の場合」を「装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合」と限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正の特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-182768号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0034】以上の動作によって、実際にカメラ本体に接続されている記録媒体に対応した電源閾値で記録動作の制御がなされると共に、現在、接続されていない記録媒体種についての情報(どの記録媒体種が記録可能か)も得ることができる。
(第2実施例)図5は、同時に複数種の記録媒体が接続可能な記録装置の概略図である。
【0035】同図において、21は、撮像光学系を有し、撮影した画像を電気信号に変換する撮像部、22は、得られた画像信号を処理し後述するハード・ディスクドライブ装置(HDD)、固体メモリ・パック等の記録部に送る信号処理部、23は、撮像部・信号処理部等カメラ全体を制御する制御部、24aは、カメラ本体に着脱可能なハード・ディスク・ドライブ装置(HDD)、24bは、同じくカメラ本体に着脱可能な固体メモリ・パック、25aは、記録媒体が正しく接続されているかを検出する第1媒体検出スイッチ、25bは、同じく第2媒体検出スイッチ、27は、電源電圧と各種記録媒体に対応する電圧閾値を比較した結果を報知する報知手段、28は、カメラ装置本体、29は、接続されている媒体種を判別・認識する媒体認識手段、30は、接続されている媒体の1つを使用記録媒体として指定する指定手段、31はバッテリー等の電源であり、カメラ装置本体28は、同時に複数の記録媒体が接続可能なシステムであり、本実施例において、スロットAにはHDD24aが、スロットBには固体メモリ・パック24bが接続される構造となっている。
【0036】また、正常な記録を行うために、カメラ装置本体側から媒体側に供給しなければならない電圧の限界値は異なるものとし、HDDの場合の限界値(Va)>固体メモリ・パックの場合の限界値(Vb)とする。なお、制御装置23内には、メモリ23aが備えられており、上記の限界値Va,Vbが記憶されている。また、図では、第1及び第2媒体検出スイッチ25a,25bは、機械的なスイッチとして示されているが、電気的な接続状態を検出するスイッチであってもなんら問題はない。
【0037】図6は、同装置における、媒体検出のフローである。媒体検出のフローに入ると、まず、第1媒体検出スイッチ25aによってスロットAに記録媒体が正しく接続されているか、を検出する(S31)。ここで、スロットAには、HDD24aが接続される構造であるため、HDD24aが接続されているか、を検出することになる。
【0038】その次は、第2媒体検出スイッチ25bによって、スロットBに記録媒体が正しく接続されているか、を検出する。ここで、スロットBには、固体メモリ24bが接続されている構造であるため、同様に、固体メモリ24bが接続されているか、を検出することになる(S32)(S33)。そして、以上2つの検出スイッチの出力により、接続されている媒体種を判別・認識する。以下、具体的に
1(刊行物はマル内に1)HDD24a、固体メモリ24bがともに接続されている場合 報知手段27により[HDD:接続]、[固体メモリ:接続]の表示を行う(S34)。次いで、1(刊行物はマル内に1)ルーチンに移る。
2(刊行物はマル内に2)HDD24aが接続され、固体メモリ24bが接続されていない場合
報知手段27により[HDD:接続]、[固体メモリ:非接続]の表示を行う(S35)。次いで、2(刊行物はマル内に2)ルーチンに移る。
3(刊行物はマル内に3)固体メモリ24bが接続され、HDD24aが接続されていない場合
報知手段27により[HDD:非接続]、[固体メモリ:接続]の表示を行う(S36)。次いで、3(刊行物はマル内に3)ルーチンに移る。
4(刊行物はマル内に4)HDD24a、固体メモリ24bがともに接続されていない場合、
報知手段27により[媒体検出不能]の表示手段を行う(S37)。次いで、記録禁止状態に記録装置を制御する(S38)。
【0039】以下、各ルーチンの説明をする。2(刊行物はマル内に2)および3(刊行物はマル内に3)ルーチンのフローを、それぞれ図8、図9に示し説明する。2(刊行物はマル内に2)のルーチンに入ると、記録にあたってどの媒体が指定されているか、を検出し、確認する。2(刊行物はマル内に2)の場合、指定媒体がHDD24aかどうか、確認する(S41)。ここで、使用記録媒体としての媒体指定は、指定手段30により、既になされているものとする。
【0040】指定媒体がHDD24aでない場合は、報知手段27により[指定媒体:非接続]の表示を行い(S43)、記録禁止状態に記録装置を制御する(S51)。指定媒体がHDD24aの場合は、記録動作の禁止を判断するための電源閾値VをHDD24aに対応したVaの値に設定し(S42)、電源電圧Vbatとあらかじめメモリ23aに記憶されている各電源閾値(Va・Vb)との比較を行い(S44),(S45)、現在、どの種類の媒体に記録可能か、を判断し、報知する(S46),(S47),(S48)。この動作は、前述のとおりである。また、次いで、電源電圧Vbatと電源閾値Vとの比較を行い(S49)、装置を記録準備・記録禁止にそれぞれ制御するが(S50)(S51)、これも前述のとおりである。
【0041】3(刊行物はマル内に3)のルーチンに入ると、2(刊行物はマル内に2)と同様、記録にあたってどの媒体が指定されているか、検出し確認する。3(刊行物はマル内に3)の場合、指定媒体が固体メモリ24bかどうか、確認する(S61)。指定媒体が固体メモリ24bでない場合は、報知手段27により[指定媒体:非接続]の表示手段を行い(S63)、記録禁止状態に記録装置を制御する(S71)。指定媒体が固体メモリ24bの場合は、以下2(刊行物はマル内に2)のルーチンと同じ動作を行う。
【0042】1(刊行物はマル内に1)ルーチンのフローを、図7に示し説明する。1(刊行物はマル内に1)のルーチンの場合は、最初に、電源電圧Vbatとあらかじめメモリ23aに記憶されている各電源閾値(Va・Vb)との比較を行い、現在、どの種類の媒体に記録可能か、を判断し、報知する(S81),(S82),(S83),(S84),(S85)。
【0043】その後、記録にあたってどの媒体が指定されているか、を検出し、確認する(S86)。この時、指定媒体がHDD24aかどうか、確認するのだが、接続されている媒体は2種類だけなので、HDD24aでない場合は、固体メモリ24bが接続されているものとする。また、2(刊行物はマル内に2)および3(刊行物はマル内に3)ルーチンと同様、使用記録媒体は、既に指定手段30により指定されているものとする。
【0044】以下に、指定されている媒体に応じて説明する。
(1)固体メモリ24bが指定されている場合
電源電圧Vbatと固体メモリ24bの電源閾値Vbとを比較し(S88)、電源電圧Vbat<固体メモリの電源閾値Vbの場合は、記録禁止状態に記録装置を制御する(S98)。
【0045】電源電圧Vbat≧固体メモリの電源閾値Vbの場合は、報知手段27により[記録媒体:固体メモリ]の表示手段を行い(S93)、記録準備状態に記録装置を制御する(S97)。この記録媒体の表示は、2種類の媒体が接続されているので確認のために行う。
(2)HDD24aが指定されている場合 電源電圧VbatとHDD24aの電源閾値Vaとを比較し(S87)、電源電圧Vbat≧HDDの電源閾値Vaの場合は、報知手段27により[記録媒体:HDD]の表示手段を行い(S91)、記録準備状態に記録装置を制御する(S94)。この記録媒体の表示は、固体メモリ24bが指定されている場合と同様、2種類の媒体が接続されているために確認の意味で行う。
【0046】最後に、電源電圧Vbat<HDDの電源閾値Vaの場合は、続いて電源電圧Vbatと固体メモリの電源閾値Vbとを比較する(S89)。これは、たとえ記録媒体にHDDが指定されていようが、「HDD:記録不可能」、「固体メモリ:記録可能」な状態の場合、記録チャンスを優先して固体メモリ24bに記録する、という動作を意図してのことである。つまり、ここで、電源電圧Vbat<固体メモリの電源閾値Vbの場合は、記録禁止状態に記録装置を制御する(S96)。が、電源電圧Vbat≧固体メモリの電源閾値Vbの場合は、指定されている記録媒体をHDD24aから固体メモリ24bに変更してしまう(S90)。そして、報知手段27により[記録媒体:固体メモリ]の表示を行い(S92)、記録準備状態に記録装置を制御する(S95)。この記録媒体の表示は、あらかじめ指定されていた記録媒体をHDD24aから固体メモリ24bに変更した、という意味である。
【0047】以上の動作によって、電源閾値の高い記録媒体(HDD)で記録不可能な状態であり、且つ、電源閾値の低い記録媒体(固体メモリ)で記録可能な状態の時に、電源閾値の高い記録媒体(HDD)が記録媒体として指定されている場合、記録可能な記録媒体が接続されているにも拘らず、記録不可能になってしまい、撮影チャンスを逃がしてしまう、といった欠点が解決される。」

上記摘示事項を、図面とともに総合整理すると、刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
「カメラ装置本体に同時に複数の記録媒体が接続可能なシステムであり、
撮影した画像を電気信号に変換する撮像部と、
得られた画像信号を処理しハード・ディスクドライブ装置(HDD)、固体メモリ等の記録媒体の記録部に送る信号処理部と、
接続されている複数の記録媒体の1つを使用記録媒体として指定する指定手段と、
バッテリー等の電源と、
電源電圧と各種記録媒体に対応する電圧閾値を比較した結果を報知する報知手段と、
を備え、
スロットAにHDDがスロットBに固体メモリがともに接続され、
記録準備状態は、指定手段によりHDDが指定されている場合で、
電源電圧Vbat≧HDDの電源閾値Vaの場合には、報知手段により[記録媒体:HDD]の表示を行い、
電源電圧Vbat<HDDの電源閾値Vaで、電源電圧Vbat≧固体メモリの電源閾値Vbの場合には、指定されている記録媒体をHDDから固体メモリに変更し、報知手段により[記録媒体:固体メモリ]の表示を行い、あらかじめ指定されていた記録媒体をHDDから固体メモリに変更するように記録装置を制御することにより、
HDDで記録不可能な状態で、且つ、固体メモリで記録可能な状態の時にHDDが記録媒体として指定されていても、固体メモリに記録させることで記録チャンスを優先するカメラ装置本体に同時に複数の記録媒体が接続可能なシステム。」(以下「刊行物発明」という。)

3.対比
(a)刊行物発明の「ハード・ディスクドライブ装置(HDD)」及び「固体メモリ」は「撮影した画像」を記録するものであるから、本願補正発明の「画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個」に相当し、刊行物発明の「接続されている媒体の1つを使用記録媒体として指定する指定手段」は、本願補正発明の「あらかじめ決められた方法に基づいて、画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個のうちの、前記データの記録先となる前記記録装置を決定する記録先決定手段」に相当する。
(b)刊行物発明の「ハード・ディスクドライブ装置(HDD)」は「スロットA」に接続されるリムーバルな媒体であるから本願補正発明の「前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置」に相当する。
(c)刊行物発明は「指定手段によりHDDが指定されている場合」であっても、「電源電圧Vbat<HDDの電源閾値Vaで、電源電圧Vbat≧固体メモリの電源閾値Vbの場合は、指定されている記録媒体をHDDから固体メモリに変更し」、記録開始前である「記録準備状態」に記録装置を制御するのであるから、本願補正発明と「前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であって、前記データの記録開始前において、所定の場合に、他の記録媒体に前記データが記録されるように制御する」機能を備える点で一致する。
(d)刊行物発明の「カメラ装置本体に複数の記録媒体が接続可能なシステム」は「接続されている複数の媒体の1つを使用記録媒体として指定」し決定している点で、本願補正発明の「記録先決定装置」と共通する。

したがって、本願補正発明と刊行物発明との[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。
[一致点]
「あらかじめ決められた方法に基づいて、画像および/または音声を含むデータを所定の記録媒体に記録する記録装置複数個のうちの、前記データの記録先となる前記記録装置を決定する記録先決定手段を少なくとも備え、
前記複数個の記録装置のうちの少なくとも一つは、リムーバブルの前記記録媒体が装填され、そのリムーバブルの記録媒体に前記データを記録するリムーバブル記録媒体用記録装置であり、
前記記録先決定手段によって決定された前記記録先となる前記記録装置が前記リムーバブル記録媒体用記録装置であって、前記データの記録開始前において、所定の場合に、他の記録媒体に前記データが記録されるように制御する制御手段を有する、記録先決定装置。」の点。

[相違点]
(相違点1)
本願補正発明では「複数個の記録装置のうちの少なくとも他の一つは、固定設置型の前記記録媒体に前記データを記録する固定型記録媒体用記録装置」であるのに対して、刊行物発明では、すべての記録装置がリムーバルの記録媒体である点。
(相違点2)
本願補正発明は「装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合」には他の記録媒体に前記データが記録されるように残存記録容量をみて制御しているのに対して、刊行物発明にはそのような記載のない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
固定設置型の記録媒体は周知であって、刊行物発明において、複数個の記憶媒体のうちの一つを固定設置型の記録媒体とすることは当業者が適宜なし得ることで、その際、「固体メモリ」を固定設置型として、上記相違点1の構成とすることは適宜なし得ることである。

(相違点2について)
刊行物発明は、画像データを要するに格納する前に、指定された記録媒体が利用できるか否かを判断し、利用できない場合には、接続されている他の媒体に切り替えて利用していく、即ち画像データを記録媒体に記録する時に、記録媒体が利用可能であるかを判断する技術の開示がある。
そして、記録を格納する媒体の指定を画像データの記録を行う前に、メモリの空領域が充分であるか否かの判断を行うこと、又は、メモリが書込禁止であるか否かの判断を行うことは共に周知技術(例えば、特開平3-3136号公報(第2頁左下欄第16行?右下欄第12行)、特開平3-280235号公報(第2頁右下欄第13行?第3頁右下欄第5行)、特開平11-308562号公報(【0011】,【0042】?【0048】等参照)である。
したがって、刊行物発明においても、前記周知技術に基づいて、記録媒体が利用可能か否かの判断内容として、電源電圧の不足の判断の他に、接続されている記録媒体に充分な空領域が存在するか、または、接続されている記録媒体が書込禁止状態であるか否かの判断を追加して、装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合には他の記録媒体に前記データが記録されるように制御する前記相違点2の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、上記相違点についての判断を総合しても本願補正発明の奏する効果は、刊行物及び上記周知技術から当業者が十分予測可能なもので格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、上記刊行物に記載された発明に上記周知技術を組合せることで当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年6月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至12に係る発明は、平成18年4月11日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」)は、「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明の「所定の場合」が「装填されている前記リムーバブルの記録媒体の残存記録容量があらかじめ決められた容量以下の場合、または装填されている前記リムーバブルの記録媒体への新たなデータの記録が禁止されている場合」である点に関する限定を除したものに相当する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に記載したとおり、刊行物及び上記周知技術に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-04 
結審通知日 2008-04-08 
審決日 2008-04-21 
出願番号 特願2000-133205(P2000-133205)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 卓哉  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 小松 正
漆原 孝治
発明の名称 記録先決定装置、および記録媒体  
代理人 松田 正道  

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