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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41J |
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管理番号 | 1178978 |
審判番号 | 不服2005-20253 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-20 |
確定日 | 2008-06-24 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第190202号「インクジェットプリンタのインクカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月10日出願公開、特開平10- 34952、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成8年7月19日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成17年1月19日付けで手続補正がされたが、同年9月12日付けで拒絶査定がされ、これを不服として同年10月20日付けで審判請求がされるとともに、同年11月14日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。 第2 本願発明の認定 本願の請求項1乃至請求項3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】乃至【請求項3】に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 箱形状に形成され、内面が複数の平面であり、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給孔及び大気連通孔を有すると共に、一面に設けられた開口を通じて内部にインク吸蔵部材が充填されるカートリッジ本体と、該カートリッジ本体の前記開口を閉塞する蓋体とを有するインクジェットプリンタのインクカートリッジにおいて、前記蓋体は、前記カートリッジ本体を閉塞した際に前記カートリッジ本体の前記内面である平面と滑らかに接続する湾曲面を有し、前記インク吸蔵部材は、前記蓋体に接触しかつ圧縮された状態で前記カートリッジ本体に充填され、膨張復帰により前記蓋体の湾曲面とカートリッジ本体の内面との滑らかな接続部分にならっていることを特徴とするインクジェットプリンタのインクカートリッジ。 【請求項2】 前記蓋体は、前記インク吸蔵部材に接触する面全体が湾曲面とされているところの請求項1記載のインクジェットプリンタのインクカートリッジ。 【請求項3】 前記カートリッジ本体は、前記インク吸蔵部材が収容される収容室と、インク液を貯蔵するためのインク室とに区画整理されているところの請求項1又は2記載のインクジェットプリンタのインクカートリッジ。」(以下、「本願発明1」乃至「本願発明3」という。) 第3 本願発明についての当審の判断 1.本願発明1について 本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-148935号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の〈ア〉?〈イ〉の記載が図示とともにある。 〈ア〉「【0017】図1は、本発明が適用されるインクジェットヘッドユニット101の概略構成を示す断面図である。 【0018】ヘッド103とインクタンク102とは、ヘッド103へのインク供給路を構成するインク供給管107が、インクタンク102のインク供給口112にさし込まれて連結されている。 【0019】インクタンク102の内部には、平均孔径の異なる2種類の第1の吸収体104と第2の吸収体105が収納されている。第1の吸収体104は、インク供給口112側に設けられており、第2の吸収体105よりも小さな体積を有している。 【0020】前述したインク供給管107の先端部分にはフィルター106がとりつけられ、インクタンク内に挿入された状態で、フィルター106と第1の吸収体104とは圧接されている。」(【0017】?【0020】) 〈イ〉【図1】の記録ヘッドの概略図において、ヘッド103にインクを供給するための供給口112及び大気連通口111を有し、内部に第1の吸収体104及び第2の吸収体105が充填され、内面に湾曲面を有するインクタンク102が看取できる。 本願発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 〈相違点〉本願発明1が「カートリッジ本体と、該カートリッジ本体の前記開口を閉塞する蓋体とを」有し、かつ「前記蓋体は、前記カートリッジ本体を閉塞した際に前記カートリッジ本体の前記内面である平面と滑らかに接続する湾曲面を有し」と特定されているのに対し、引用例1に記載された発明ではそのような特定がなされていない点。 引用例1に記載された発明では、インクタンク102の内部に第1の吸収体104及び第2の吸収体105が充填されているのであるから、インクタンク102がそれら吸収体を充填するための開口を有するとともに、当該開口を閉塞する蓋体を有することは、たとえ引用例1に明記されていないとしても、当業者にとって自明な事項であるといえる。しかしながら、開口及び蓋体をインクタンク102のどの部分にどのように設けるかについては、引用例1には記載も示唆もされていない。 また、本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-183184号公報(以下、「引用例2」という。)には、インクタンク本体1000に蓋部材1100を設ける点は記載されている(段落【0047】?【0050】、【図1】、【図2】、【図9】、及び【図10】参照)ものの、「前記蓋体は、前記カートリッジ本体を閉塞した際に前記カートリッジ本体の前記内面である平面と滑らかに接続する湾曲面を有し」との点は、記載も示唆もされていない。 してみれば、本願発明1は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 他方、本願の出願前に頒布され、当審において別途発見した刊行物である特開平6-15841号公報(以下、「刊行物1」という。)には、インクタンク主体1と蓋2とからなるインクタンクにおいて、蓋2の一端部に少なくとも一部が湾曲した形状を有する突起5を設ける点が記載されている(段落【0011】?【0013】、【図4】、及び【図5】参照)ものの、その形状からみてインクタンク主体1の内面である平面と滑らかに接続しているとはいえず、「前記蓋体は、前記カートリッジ本体を閉塞した際に前記カートリッジ本体の前記内面である平面と滑らかに接続する湾曲面を有し」との点は、記載も示唆もされていない。 さらに、本願の出願前に頒布され、当審において別途発見した刊行物である特開平8-58106号公報(以下、「刊行物2」という。)には、インク容器101にインク吸収体102を挿入するにあたり、インク容器101の内面である平面と滑らかに接続する突起部105を有する押し込み板104をもってインク吸収体102を押圧する点は記載されている(段落【0007】及び【図1】参照)ものの、押し込み板104はインク容器101の蓋とは異なるものであるから、「前記蓋体は、前記カートリッジ本体を閉塞した際に前記カートリッジ本体の前記内面である平面と滑らかに接続する湾曲面を有し」との点は、記載も示唆もされていない。 してみれば、本願発明1は、引用例1及び引用例2に記載された発明に、さらに刊行物1及び刊行物2に記載された発明を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 以上のように、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。また本願発明1については、他に拒絶の理由を発見しない。 2.本願発明2及び本願発明3について 本願発明2及び本願発明3は、いずれも本願発明1を引用してさらに限定を付すものであるから、上記と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。また本願発明2及び本願発明3についても、他に拒絶の理由を発見しない。 第4 むすび 以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできず、また他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2008-06-12 |
出願番号 | 特願平8-190202 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B41J)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小松 徹三 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
江成 克己 坂田 誠 |
発明の名称 | インクジェットプリンタのインクカートリッジ |