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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1179564
審判番号 不服2005-17552  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-13 
確定日 2008-06-12 
事件の表示 平成 8年特許願第218034号「映像提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月20日出願公開、特開平10- 51762〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯(手続・査定)

[1]手続の概要
本願は、平成8年7月31日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正(明細書の補正) :平成15年 7月25日
拒絶理由通知 :平成17年 4月22日(起案日)
手続補正(明細書の補正) :平成17年 6月24日
拒絶査定 :平成17年 8月 5日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成17年 9月13日
手続補正(明細書の補正) :平成17年10月12日
前置審査報告 :平成18年 1月27日

[2]査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

[査定の理由]
本願の各請求項に係る発明は、下記に掲げる刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


引用文献1:特開平8-195822号公報
引用文献2:特開平6-113305号公報
引用文献3:特開平4-222189号公報
引用文献4:特開平8-32705号公報
引用文献5:特開昭62-166643号公報
引用文献6:特開平8-97936号公報(査定時に周知例として引用)

【第2】補正却下の決定

平成17年10月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について以下のとおり決定する。

《結論》
平成17年10月12日付けの手続補正を却下する。

《理由》

[1]本件補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲に関する以下の補正事項をその内容とするものである。

(1)請求項1,4,6の各々における
「前記映像信号を受信する通信手段」(補正前)を、
「前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号を受信する通信手段」(補正後)とする補正。
(2)請求項1,4,6の各々における
「該通信手段により受信した映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段」(補正前)を、
「該通信手段により受信した前記映像要求に応じてカメラ側の装置から送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段」(補正後)とする補正。
(3)請求項5における
「前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知及び映像信号をカメラ側の装置から受信し、また、利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信する通信手段」(補正前)を、
「利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信し、前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知及び前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号をカメラ側の装置から受信する通信手段」とする補正。
(4)請求項5における
「映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段」(補正前)を、
「前記カメラ側の装置に蓄積された映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段」(補正後)とする補正。

[2]本件補正の適合性1 補正の範囲(第17条の2第3項)
本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

[3]本件補正の適合性2 補正の目的(第17条の2第4項)
上記補正事項(1)ないし(4)は、いずれも補正前請求項に記載のあった特定事項の内容を限定し減縮するものであって、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題も同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

[4]本件補正の適合性3 独立特許要件(第17条の2第5項)
そこで、独立特許要件について検討するに、補正後の請求項5に記載される事項により特定される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。
本件補正は、特許法第17条の2第5項(同項において準用する同法第126条第5項)の規定に適合しない。

補正後の請求項5に記載される事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由の詳細は、以下のとおりである。

《理由(独立特許要件に適合しない理由の詳細)》

(1)補正後発明

本件補正後の請求項1から請求項6までに係る発明のうち請求項5に記載された発明(以下「補正後発明」という。)は、下記のとおりである。

記 (補正後発明)
カメラ側の装置でスイッチ操作又はセンサによる検出により撮影された映像信号を受信して表示出力する映像提供システムの携帯機であって、
利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信し、前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知及び前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号をカメラ側の装置から受信する通信手段と、
前記映像要求に応じて前記カメラ側の装置から受信した前記カメラ側の装置に蓄積された映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像提供システムの携帯機。

(2)引用刊行物の記載

刊行物1:特開昭62-166643号公報(上記引用文献5)
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-166643号公報(以下、「刊行物1」という)には、「留守番機能付ドアフォン装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

〈実施例〉
(K1)「実施例
以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。第1図は本発明の実施例のブロック構成図である。1は来客の映像信号を入力するためのテレビカメラ(ドアカメラ)、2はドアフォン宅外装置、3は音声入力用のマイクロフォン、4は音声再生用のスピーカ、5は押しボタンスイッチ、6は通話路切替装置、7は留守/在宅モードにより、通話路の切り替えを行うドアフォン制御部、8は留守/在宅モード切り替えを行う留守スイッチ、9はインターフォン装置(ドアフォン宅内装置)、10はインターフォン装置内のスピーカ、11はインターフォン装置内のマイクロフォン、12はメッセージ再生および用件録音用のテープレコーダ、13はテレビカメラから入力された映像信号を静止画データに変換するための静止画変換装置、14は静止画データを記録するためのデータベース装置、15は静止画データを映像信号に復調するための静止画復調装置、16は静止画を再生するためのテレビ(モニタ)、17は電話の着呼を検出して自動的に着信するための自動着信装置、18は公衆電話回線、19は静止画および音声を遠隔で受信するための可搬型画像通信端末、20は静止画を変調して公衆電話回線に送出するためのモデムである。第2図は本発明により記録した静止画データおよび音声を宅外からアクセスし再生するための可搬型画像通信端末の構成図である。21は公衆電話通信回線でデータを送受信するためのモデム、22は可搬型画像通信端末の本体となる制御ブロック、23は各種メニューおよび静止画を表示するためのディスプレイ装置、24は各種コマンドを入力するためのキーボードである。」(2頁左上欄8行?同頁右上欄20行)

(K2)「次に家人が留守の場合の本装置の動作を説明する。本装置を留守時に動作させるためにはまずドアフォン制御部7に設置された留守スイッチ8により留守モードに切り替える。留守モードに切り替えることにより、ドアフォン制御部7は通話路切換装置6を制御しドアフォン宅外装置2をメッセージ再生および用件録音用のテープレコーダ12と接続し、同時にテレビカメラ1を静止画変換装置13と接続する。この操作により、本装置は留守モードに設定される。次にこの留守モードに設定されたドアフォン宅外装置2の押しぼたんスイッチ5を来客が押下することにより、ドアフォン制御部7に来客があったことを通知される。このときドアフォン制御部7はメッセージ再生用のテープレコーダ12にメッセージ再生要求の信号を送り、メッセージ再生を開始すると同時に映像信号変換用の静止画変換装置13に映像信号取込みの信号を送り、来客の映像信号を入力する。静止画変換装置13は入力した映像信号を静止画データに変換し、データベース装置14に転送し記録する。」(2頁左下欄6行?同頁右下欄6行)

(K3)「次に、上記の方法によって記録された静止画データ及び用件の録音を再生する手段は2種類あり、各々について説明する。
第1の手段は宅外から公衆電話回線18を介して可搬型画像通信端末19で受信する方法で、第2の手段は家人が帰宅後テレビ(モニタ)16で再生する方法である。
まず、第1の方法について説明する。
宅外に外出中の者(操作者)が留守中の来客の有無や来客があった場合の用件および来客が誰か知りたい場合、まず留守宅に電話をかける。この場合、本装置は留守モードに設定されているので、自動着信装置17は電話の着呼に対して応答し、モデム20を公衆電話回線18に接続し、データベース装置14と外部との通信が可能な状態とする。操作者はモデム20が公衆電話回線18に接続されたことをモデム20からのキャリア音を聞くことで確認し、可搬型画像通信端末19を公衆電話回線18と接続する。次に操作者は可搬型画像通信端末19の入力装置を使用して暗証番号を入力し、公衆電話回線18を介してデータベース装置14に転送する。データベース装置14は入力された暗証番号が予め設定されていた番号と同一であるかどうかを判断し、適正な暗証番号であれば記録されている静止画データを可搬型画像通信端末19に対して転送する。可搬型画像通信端末19はこの静止画データを受信してディスプレイ上に表示する。またデータベース装置14は静止画データ送出後テープレコーダ12を制御し、録音されている用件を同じく公衆電話回線18に転送し、可搬型画像通信端末19で受信する。以上の操作によって宅外に外出中の操作者は留守中の来客の静止画像を見ることができ、またテープレコーダ12に録音された来客の用件を聞くことができる。」(2頁右下欄9行?3頁右上欄3行)

(3)対比(対応関係)
補正後発明と刊行物1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると、以下の対応が認められる。

(a)「カメラ側の装置でスイッチ操作又はセンサによる検出により撮影された映像信号を受信して表示出力する映像提供システムの携帯機」
前掲(K1)(K2)、特に前掲(K2)によれば、引用発明の「留守番機能付ドアフォン装置」は、留守モードに設定すると、ドアフォン宅外装置2をメッセージ再生および用件録音用のテープレコーダ12と接続し、同時にテレビカメラ1を静止画変換装置13と接続する。この状態で、ドアフォン宅外装置2の押しぼたんスイッチ5を来客が押下することにより、ドアフォン制御部7に来客があったことが通知され、このときドアフォン制御部7はメッセージ再生用のテープレコーダ12にメッセージ再生要求の信号を送り、メッセージ再生を開始すると同時に映像信号変換用の静止画変換装置13に映像信号取込みの信号を送り、来客の映像信号を入力する。静止画変換装置13は入力した映像信号を静止画データに変換し、データベース装置14に転送し記録する。
前掲(K3)によれば、引用発明は、「留守番機能付ドアフォン装置」に記録されている、この静止画データを、可搬型画像通信端末19に転送し、操作者は、外出中にもこの可搬型画像通信端末19で静止画データを受信してディスプレイ上に表示する。
上記「留守番機能付ドアフォン装置」、上記「可搬型画像通信端末19」、その両者を合わせたものは、それぞれ、補正後発明でいう「カメラ側の装置」、「携帯機」、「映像提供システム」といい得るものである。
「来客の映像信号」は、「カメラ側の装置で撮影された映像信号」といえ、「押しぼたんスイッチ5」の「押下」(これが、補正後発明でいう「スイッチ操作」に相当することは明らかである。)すなわち、「スイッチ操作」により、静止画変換装置13に入力され取り込まれ静止画データに変換されて「データベース装置14に転送し記録」される。
したがって、上記「静止画データ」も「カメラ側の装置で撮影された映像信号」といえ、また、「カメラ側の装置に蓄積された映像信号」ともいい得るものである。そして、この蓄積(記録)は、スイッチ操作によりなされるとはいえるものの、撮影が、スイッチ操作によりなされるとの記載はない。
したがって、引用発明は、「カメラ側の装置で撮影された映像信号を受信して表示出力する映像提供システムの携帯機」の発明である点で、補正後発明と一致し、上記「カメラ側の装置で撮影された映像信号」における「撮影」が、「スイッチ操作又はセンサによる検出により」なされるとの記載はない点で相違する。

(b)「利用者入力された・・・通信手段」、「前記映像要求に応じて・・・表示手段」
前掲(K3)によれば、宅外に外出中の操作者が留守中の来客の静止画像を見ることができるようにするため、引用発明の「可搬型画像通信端末19」は以下の様に動作する。
まず、外出中の操作者が留守宅に電話をかけて可搬型画像通信端末19を公衆電話回線18と接続した後、操作者は可搬型画像通信端末19の入力装置を使用して暗証番号を入力し、これを公衆電話回線18を介してデータベース装置14に転送する。
この暗証番号の入力・転送は、記録された「静止画データ」を「可搬型画像通信端末19」に転送させるためのものであるから、補正後発明でいう「利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信し」とする手段に相当する手段の存在が認められる。
次に、データベース装置14は入力された暗証番号が予め設定されていた番号と同一であるかどうかを判断し、適正な暗証番号であれば記録されている静止画データを可搬型画像通信端末19に対して転送し、可搬型画像通信端末19はこの静止画データを受信してディスプレイ上に表示する。
したがって、引用発明も「前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号をカメラ側の装置から受信する」手段に相当する手段を備えている。
以上によれば、引用発明は、「利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信し、前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号をカメラ側の装置から受信する通信手段」を有するといえ、その点では補正後発明と一致する。
もっとも「前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知」については、これをカメラ側の装置から受信するとはしていない点で、補正後発明と相違する。
また、引用発明も「前記映像要求に応じて前記カメラ側の装置から受信した前記カメラ側の装置に蓄積された映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段」を備えるといえるから、この点においても、補正後発明と一致する。

(4)一致点、相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との一致点と相違点は、次のとおりであることが認められる。

【一致点】
カメラ側の装置で撮影された映像信号を受信して表示出力する映像提供システムの携帯機であって、
利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信し、前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号をカメラ側の装置から受信する通信手段と、
前記映像要求に応じて前記カメラ側の装置から受信した前記カメラ側の装置に蓄積された映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像提供システムの携帯機。

【相違点】
[相違点1]
「カメラ側の装置で撮影された映像信号」における「撮影」が、
補正後発明では、
「スイッチ操作又はセンサによる検出により」なされるとするのに対して、
引用発明では、この点につき記載がない点。

[相違点2]
補正後発明の通信手段は、
「前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号」のほかに、「前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知」をカメラ側の装置から受信するとするのに対して、
引用発明の通信手段は、そのような通知をカメラ側の装置から受信するとはしていない点。

(5)相違点の判断

(5.1)相違点1について
〈常套技術〉
一般に、留守録画機能付きのインターホンシステムにおいて、カメラ側の装置での撮影が、「スイッチ操作又はセンサによる検出により」なされるようにすることは、周知の常套技術にすぎない。
これには、例えば、「スイッチ操作」については下記周知例1(既に引用文献2として提示済み)が、「センサによる検出」については下記周知例2(既に引用文献3として提示済み)が参照される。
〈判断〉
上記相違点1に係る構成は、引用発明における「カメラ側の装置」での撮影に、上記常套技術を採用することにより当業者が容易になし得ることである。

(5.2)相違点2について
補正後発明の「前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知」とは、明細書の段落【0012】の記載によれば、「スイッチ操作又はセンサによる検出」を、訪問者ありと捉え、訪問者があったことの通知として行うものと解される。
〈周知技術〉
一般に、ドアフォンやインターフォン等(まとめて「ドアフォン」という。)のシステムにおいて、ドアフォン側の装置から外出先の通信装置(周知例3?5では、携帯する通信装置)に、訪問者があったことを通知すること、また、そのような通知を、ドアフォン側の装置の「スイッチ操作又はセンサによる検出」(前者には周知例3?6、後者には周知例3)により行うことは周知技術である。
これには、例えば下記周知例3?6等が参照される。
〈判断〉
引用発明は訪問者があったことを携帯機側では知ることができないところ、上記周知技術を考慮すれば、引用発明においても同周知技術の機能(訪問者があったことを携帯機側に通知する機能)があれば、訪問者があったことを知った上で留守宅に電話をかけて訪問者(来客)の映像を受信・確認でき有用であることは当業者に自明である。
したがって、上記相違点2に係る構成は、上記周知技術を参照することにより、引用発明の通信手段に、「前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号」のほかに「前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知」をカメラ側の装置から受信する機能を付加して当業者が容易になし得ることである。

(5.3)効果等
以上のように、相違点1および相違点2に係る補正後発明の構成は、いずれも当業者に想到容易でない格別のものであるとはいえず、また、補正後発明の構成を全体としてみても格別のものはなく、その技術的効果も、上記刊行物1の記載及び常套手段、周知技術から当業者に予測し得る範囲内のものである。

(5.4)周知例(周知技術)
以下に周知例を示す。引用箇所は(S1)等で示し、下線は、当審決で付したものである。なお、「○1」、「○2」等の表記は、記号「○の中に数字を入れた記号」を示す。(特許庁の情報処理システムの能力上、同記号を表すことができないことによる。)

(a)周知例1:特開平6-113305号公報(原査定の拒絶理由通知で引用文献2として提示済み)
(S1)「【0012】このような構成のテレビモニター付インターホンの留守録画の動作を以下に説明する。テレビモニター付インターホン親機13の留守録セット釦33(図3)を操作して留守録画モードにしておく。留守録画モードの状態で、来客が有り呼出し釦15が押されると、呼出検知回路17がこれを検知して、チャイム(不図示)等を鳴動させると共に、定電流回路18を立ち上がらせて、カメラ付ドアホン子器12に設けられたカメラ11による撮像を開始させる。これによりドアホン子器12からの来客の画像信号が、平衡/不平衡整合回路16を経て、画像処理回路23で増幅分波され画像合成回路26へ送られる。
【0013】一方、文字発生回路25は、時計回路24が刻む時刻の文字(例えば「PM03:15」)の画像を発生させて、画像合成回路26へ送り込み、画像合成回路26は、この文字画像と上記のドアホン子器12からの画像を合成する。画像合成回路26は、上記の呼出し釦15が押された後、一定時間(カメラ付ドアホン子器12からの画像が安定するのに要する時間)が経過すると、その時点での上記のカメラ付ドアホン子器12からの画像と上記文字画像との合成画像の信号をラッチして、A/D変換回路27へ送り込む。A/D変換回路27は、この合成画像の信号をディジタル信号に変換して、画像メモリ28へ送り、画像メモリ28は、これを記憶しておく。」

(b)周知例2:特開平4-222189号公報(原査定の拒絶理由通知で引用文献3として提示済み)
(S2)「【請求項1】 呼び出し用のスイッチとテレビカメラを有する子機と、モニタテレビと録画装置を有する親機とを備えて、上記呼び出し用のスイッチをオンする来訪者を上記テレビカメラで撮影して、上記テレビカメラが撮影した画像を上記モニタテレビでモニタすると共に、上記テレビカメラが撮影した画像を上記録画装置で録画するモニタテレビ付インターホン装置において、上記子機は、上記テレビカメラが撮影可能な領域まで子機に近ずいた来訪者を検知して、この来訪者を検知しているときに検知信号を発生する来客検知用のセンサーを備え、上記親機は、上記来客検知用のセンサーからの検知信号を受けて、この検知信号を受けたときに上記テレビカメラとモニタテレビとを駆動すると共に、上記検知信号を受けているときに来訪者が上記呼び出し用のスイッチをオンすると、上記録画装置を駆動する制御装置を備えたことを特徴とするモニタテレビ付インターホン装置。」

(c)周知例3:特開平6-164745号公報
(S.3.1)「【請求項1】 少なくとも音声の送受を行える子器と、この子器との間で音声の送受を行える親器からなるインターホンにおいて、外出中に来客があったときに外出中のユーザーに来客の存在を知らせる無線式の報知手段を設けたことを特徴とする遠隔呼出機能付きインターホン。」
(S.3.2)「【0006】
【実施例】図1は本発明の一実施例の概略構成を示しており、図2はその要部ブロック図である。図中、1はインターホン子器であり、来客の様子を撮像するテレビカメラ11と、来客Gの話声を集音するマイク12と、来客Gに応答するためのスピーカ13と、押ボタン又は人体センサーからなる来客検知手段14を備えている。2はインターホン親器であり、来客の様子を映し出すテレビモニタ21と、来客の話声を出力するスピーカ22と、在宅者の話声を集音するマイク23と、ブザー等よりなる呼出手段24を備えている。3は通信手段であり、例えば、オートダイヤル機能付きの電話機で構成されている。6は移動モード設定手段であり、移動モードが設定されていないときには、電話機3はインターホン親器2から切り離されている。また、移動モードが設定されているときには、インターホン子器1の来客検知手段14からインターホン親器2の呼出手段24に入力される来客検知信号が、電話機3のオートダイヤル手段34に入力される。このオートダイヤル手段34には、在宅者が外出するときに、自己のポケットベルPの電話番号を設定しておくものである。
【0007】以下、本実施例の動作について説明する。来客Gが訪問して、インターホン子器1の押ボタン等を操作すると、来客検知手段14が動作して、テレビカメラ11からの映像信号やマイク12からの音声信号がインターホン親器2に送られる。在宅者が居ない場合には、移動モード設定手段6により移動モードが設定されており、オートダイヤル手段34により予め設定されているポケットベルPの電話番号に対して電話される。これにより、基地局8からポケットベルPに対して呼び出しサービスが行われる。・・・(以下略)」
(S.3.3)「【0008】外出先の電話機5にテレビ付きインターホン7が接続されている場合には、電話回線4又は他の専用回線を通じて映像信号を受け取ることも可能としている。・・・(以下略)」
上記「ポケットベルPに対して呼び出しサービス」(段落0007)は、訪問者があったことをリアルタイムに通知するもので、インターホン子器1の「押ボタン又は人体センサーからなる来客検知手段14」による来客検知(段落0006)により行うものであり、上記周知技術を開示している。

(d)周知例4:特開平8-32705号公報(原査定の拒絶理由通知で引用文献4として提示済み)
(S4.1)「【0004】本発明は、このような問題を解消し、屋内はもとより屋外(外出中)であっても訪問者の対応、並びに確認が可能なドアホン装置を提供するものである。」
(S4.2)「【0025】訪問者が玄関子機1の呼び出しボタン(図示省略)を押す。すると、玄関子機1から中継親機2に呼び出し信号が送られる。呼び出し信号は中継親機2の音声コーデック16およびスイッチング回路8を経由して、NCU回路18から電話回線3に出力される。電話回線3に出力された呼び出し信号は電話局の交換機(図示省略)を経由して基地局4に送られ、携帯電話の電波信号に変換された後、アンテナ4aから電波として送信される。
【0026】呼び出し信号を受信した携帯送受信機5(もちろん、このとき、携帯送受信機5の電源ボタン5eはON操作されており、電源は”入”状態になっている)は、この呼び出し信号を、送受共用器30、受信器31、復調器32、TDMA回路33、および音声コーデック39で信号処理したのち、スピーカ5bで呼び出し音(例えば、”ピンポン”)として発声する。これにより、携帯送受信機保持者(使用者)は訪問者があることを知る。【0027】そして、次に、訪問者の映像を携帯送受信機5に送信する。・・・(中略)・・・映像信号記憶記憶動作が完了して、映像読み出しが可能になるまでに要する時間はほんの数秒であり、スピーカ5bが呼び出し音を発声するのとほぼ同時に、映像読み出しが可能な状態になる。」
上記「スピーカ5bで呼び出し音(例えば、”ピンポン”)」(段落00026)との発声は、訪問者があったことをリアルタイムに通知するもので、「呼び出しボタン(図示省略)を押す」(段落0025)ことにより行われるものであり、上記周知技術を開示している。

(e)周知例5:特開平2-92138号公報
(S5.1)「【特許請求の範囲】
(1)訪問者が来訪の旨を入力するための手段及び訪問者と居住者とが対話を行うための手段を備えたドアホーンシステムと、
このドアホーンシステムに来訪の旨の入力があったとき、予め登録された電話番号を有するポケットベルに発呼を行う手段と、
前記ドアホーンシステムに来訪の旨の入力があったとき、このドアホーンシステムを介して訪問者に対し応対を行う手段と、
前記ドアホーンシステムに来訪の旨の入力があったときから所定の時間内に着信があったとき、前記ドアホーンシステムを介して該着信を発した者と訪問者との間に通話路を形成する手段とを具備する不在時連絡システム。」(請求項1)
(S5.2)「一方、テレビカメラ制御部9はプッシュボタン3の押下により発生した信号を受けると、テレビカメラ6によって撮像された画像信号を該テレビカメラ制御部9を介して画像記録部11に送出する。画像記録部11はこの画像信号を再生可能に記録する。」(3頁左上欄6行?11行)
(S5.3)「ここで、居住者が外出するときには、不在時モード設定スイッチ7がオン状態とする。尚、このとき居住者はシステムに登録しているポケットベルを携帯する。
上記の操作により、本システムは不在時モードに設定される。即ち、プッシュボタン3を押下することにより発生した信号がモデム部8及びテレビカメラ制御部9に入力可能な状態となる。
この状態において、例えば訪問者によりプッシュボタン3が押下されると、この押下による信号がモデム部8及びテレビカメラ制御部9に入力され、各部が起動する。
即ち、
○1モデム部8は自動電話機能を使って居住者が登録しているポケットベルの電話番号に自動発信を行う。
○2テレビカメラ制御部9は撮像を開始する。
○3対話処理部10は、訪問者との自動対話を開始する。
○4タイマをセットする。
ここで、外出中の居住者が携帯しているポケットベルに連絡が入ると、その居住者は直に外出先の電話機により自宅に電話をすることになる。
そして、上記タイマによって設定された時間内に居住者からの着信があると、モデム部8は対話処理部6を自動対話モードからドアホーン1(マイクロフォン4及びスピーカ5)と電話回線とを直結する通話モードに切替える。
これにより外出中の居住者と訪問者とが直接会話をすることができる。即ち、本実施例によれば、外出中の居住者の居場所が未確定あるいは不明のときであっても、ポケットベルを通じて不在居住者に訪問者があったことが知らされる。そして、不在居住者がシステムに対して電話を掛ければ、この訪問者と通話ができる。したがって、一般家庭において訪問者と不在居住者との間で遠隔対話が可能となる。」(3頁右上欄12行?同頁右下欄8行)
上記「ポケットベル」への「発呼」(S5.1)、「ポケットベルの電話番号に自動発信」(S5.3)は、訪問者があったことをリアルタイムに通知するもので、「プッシュボタン3が押下される」ことにより行うものであり、上記周知技術を開示している。

(f)周知例6:特開平64-10763号公報
(S6.1)「[発明が解決しようとする問題点]
しかし、上述の装置は、家庭に人が居るときには対応できるが、不在の場合には全く対応できない。このため、ドアホンのうちには、来訪者が訪れたときに留守であった場合、テレビカメラにより来訪者の顔をVTRまたは半導体メモリ等に記録し、帰宅後その記録画像を再生して来訪者が誰かを確認する様構成した装置がある。
しかしこの場合も、後で来訪者の確認はできるが、帰宅するまでは全く来訪者があったことを知ることはできない、このため、緊急を要する来訪者の場合等では用を足さず、非常な不具合を生ずることもあった。
[問題点を解決するための手段]
本発明は上述の問題点を解決することを目的として成されたもので、この問題点を解決する一手段として本発明に係る一実施例は以下の構成を備える。
即ち、公衆回線に接続された母機と呼出し位置に配置された子機とにより構成されるドアホンであって、前記子機に呼出しボタンと、音声を入力する音声入力手段と、音声信号を音響出力する音声出力手段とを備え、前記母機に所定の電話番号を保持する番号保持手段と、呼び出しボタンの入力を検知して接続公衆回線に前記番号保持手段に保持の電話番号に対応する電話番号信号を送出する番号送出手段と、該番号送出手段の送出電話番号信号に対応する電話機が応答すると前記子機の音声入力手段と音声出力手段と接続公衆回線とを接続し、該対応する電話機との間で通話可能とする通話路形成手段とを備える。」(3頁右上欄9行?同頁右下欄7行)
(S6.2)「また外出先の電話機と接続する場合、ドアホンからの電話か普通の電話の呼び出しなのかを区別するため、回線が接続された瞬間に、DTMF信号発生器42を使ってあるDual Toneを発生させ出先の電話の応対者にその区別が付くようにすることも可能である。」(9頁左上欄2行?7行)
上記「Dual Tone」の発生(S6.2)は、訪問者があったことをリアルタイムに通知するもので、「呼び出しボタンの入力」により行われるものであり、上記周知技術を開示している。

(6)まとめ(独立特許要件)
以上によれば、補正後発明は、上記刊行物1に記載された発明および常套手段、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[5]むすび(補正却下)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
【第3】本願発明
平成17年10月12日付けの手続補正は上記のとおり却下した。
本願の特許請求の範囲に係る発明は、平成17年6月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から請求項6までに記載された事項によりそれぞれ特定される各発明であるところ、これら発明のうち、請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。

記(本願発明)
カメラ側の装置でスイッチ操作又はセンサによる検出により撮影された映像信号を受信して表示出力する映像提供システムの携帯機であって、
前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知及び映像信号をカメラ側装置から受信し、また、利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信する通信手段と、
前記映像要求に応じて前記カメラ側の装置から受信した映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像提供システムの携帯機。

【第4】査定の検討

[1]引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-166643号公報(上記刊行物1に同じ)には、前記のとおりの記載がある。
これを援用する。

[2]対比(対応関係)
本願発明と刊行物1記載の発明(引用発明)とを対比する。
本願発明は、前記【第2】で検討した補正後発明の構成要件の一部である「利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信し、前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知及び前記映像要求に応じて送信されたカメラ側の装置に蓄積された映像信号をカメラ側の装置から受信する通信手段」及び「前記映像要求に応じて前記カメラ側の装置から受信した前記カメラ側の装置に蓄積された映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段」から、実質上、それぞれ映像信号が、「カメラ側の装置に蓄積された」ものである点の限定事項を省いたものである。
補正後発明と刊行物1記載の発明との対応関係については前記のとおりであるところ、これを援用することとする。(上記「カメラ側の装置に蓄積された」との限定事項についての対応部分は不要となる)。

[3]一致点・相違点
本願発明と刊行物1記載の発明との一致点および相違点は、以下のとおりである。

【一致点】
カメラ側の装置で撮影された映像信号を受信して表示出力する映像提供システムの携帯機であって、
映像信号をカメラ側装置から受信し、また、利用者入力された映像要求を前記カメラ側の装置へ送信する通信手段と、
前記映像要求に応じて前記カメラ側の装置から受信した映像信号を基に前記カメラの撮影映像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像提供システムの携帯機。

【相違点】
[相違点1]
「カメラ側の装置で撮影された映像信号」における「撮影」が、
本願発明では、
「スイッチ操作又はセンサによる検出により」なされるとするのに対して、
引用発明では、この点につき記載がない点。

[相違点2]
本願発明の通信手段は、
「映像信号」のほかに、「前記カメラ側の装置のスイッチ操作又はセンサによる検出の通知」をカメラ側装置から受信するとするのに対して、
引用発明の通信手段は、そのような通知をカメラ側装置から受信するとはしていない点。

[4]相違点の判断

[4.1]相違点1、相違点2について
上記補正後発明に係る相違点1、相違点2についてした判断と同じである。
[4.2]効果等
本願発明の相違点1及び相違点2に係る各構成は当業者が容易になし得ることであるところ、これら相違点を総合しても格別の作用をなすとは認められない。本願発明の効果も、上記刊行物1の記載及び常套技術、周知技術から当業者に予測し得る範囲内のものである。

[5]まとめ(査定の検討)
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び常套技術、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第5】むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項5に係る発明は、上記刊行物1記載の発明および常套技術、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-14 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-04-28 
出願番号 特願平8-218034
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 伸芳  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 奥村 元宏
五貫 昭一
発明の名称 映像提供システム  
代理人 松本 裕幸  
代理人 守山 辰雄  

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