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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1179616
審判番号 不服2006-24888  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2008-06-12 
事件の表示 特願2003-338825「ハイブリッド車両におけるパワーユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日出願公開、特開2005-104248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要
本願は、平成15年(2003年)9月29日の出願であって、平成18年9月26日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年11月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年11月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに連結されたクランク軸の回転動力を駆動輪側に伝達する動力伝達手段と、
前記動力伝達手段の従動側に連結されると共に前記駆動輪に連結された駆動軸と、
前記駆動軸に連結されて少なくとも発動機として機能するモータと、
前記動力伝達手段と前記モータを収容するユニットケースとを備えたハイブリッド車両におけるパワーユニットであって、
前記クランク軸に連結されたファンを備え、前記モータと前記ファンは、前記ユニットケース内において前記動力伝達手段に対して共に同側に配置され、
前記クランク軸と前記動力伝達手段との間に、前記クランク軸の回転数が所定値を超えた場合に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する発進クラッチからなる動力断続手段を備え、
前記モータと前記発進クラッチとは、前記動力伝達手段に対して共に同側で、かつ車幅方向外側に配置され、
前記ファンは、前記発進クラッチの部材と一体に構成され、
前記クランク軸に連結された発電機を備え、該発電機からの電力に基づいて前記モータが駆動されることを特徴とするハイブリッド車両におけるパワーユニット。」
と補正された。(なお、下線は、請求人が付与した本件補正による補正箇所を示す。)

上記特許請求の範囲の請求項1に係る補正は、出願当初の明細書及び図面の記載に基づいて、動力断続手段について「発進クラッチからなる」との限定を付加し、また、モータと発進クラッチとの配置関係について「前記モータと前記発進クラッチとは、前記動力伝達手段に対して共に同側で、かつ車幅方向外側に配置され、」との限定を付加し、さらに、ファンの構成について「前記ファンは、前記発進クラッチの部材と一体に構成され、」との限定を付加するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
<刊行物1>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-80956号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「車両用エンジンのエネルギ回収機構」に関して、下記の事項ア?クが図面とともに記載されている。
ア;「【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、エンジン出力を伝達ケース内に収容された動力伝達機構を介して駆動輪に伝達するようにした車両用エンジンのエネルギ回収機構において、上記動力伝達機構を構成する回転部材の外面と伝達ケースの内面との間に、上記駆動輪に駆動力を伝達可能でかつ該駆動輪の回転により発電可能の駆動・発電モータを配設したことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1において、上記動力伝達機構が遠心クラッチを備えており、該遠心クラッチの回転部材の外面と伝達ケースの内面との間に、上記駆動・発電モータを配設したことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項2において、上記駆動・発電モータは、上記遠心クラッチのクラッチアウタの外周面に配設されたロータと、上記伝達ケースの遠心クラッチ収容部の内周面に上記ロータと対向するように配設されコイルが巻回されたステータとを備えていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項3において、上記遠心クラッチに隣接するように配置された従動側プーリに、上記伝達ケースの外側から空気を吸引して上記駆動・発電モータを通過する空気流を生じさせる冷却羽根が形成されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項3において、上記クラッチアウタの側面に、伝達ケースの外側から空気を吸引して上記駆動・発電モータを通過する空気流を生じさせる冷却羽根が形成されていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項3ないし5の何れかにおいて、上記伝達ケースの上記遠心クラッチ収容部の外面に放熱フィンが形成されていることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1において、上記動力伝達機構がVベルト式無段変速機を備えており、該無段変速機の従動側プーリと共に回転する回転部材を設け、該回転部材の外面と伝達ケースの内面との間に、上記駆動・発電モータを配設したことを特徴としている。」(第2頁2欄13行?第3頁3欄1行;段落【0005】?【0011】参照)

イ;「【発明の作用効果】請求項1の発明によれば、回転部材の外周面と伝達ケースの回転部材収容部の内面との間に、上記駆動輪に駆動力を伝達可能でかつ該駆動輪の回転により発電可能の駆動・発電モータを配設したので、従来から備えられている動力伝達機構の回転部材及び伝達ケースを利用して大幅な改造を施すことなく駆動・発電モータを配置でき、高負荷時には補助力を供給でき、かつ減速時には発生するエネルギを回収できる。
請求項2の発明によれば、遠心クラッチの回転部材の外周面と伝達ケースの遠心クラッチ収容部の内面との間に、上記駆動・発電モータを配設したので、従来から備えられている遠心クラッチ及び遠心クラッチ収容部を利用して大幅な改造を施すことなく駆動・発電モータを配置でき、高負荷時には補助力を供給でき、かつ減速時には発生するエネルギを回収できる。
また請求項3の発明によれば、上記駆動・発電モータを、上記遠心クラッチのクラッチアウタの外周面に配設されたロータと、上記遠心クラッチ収容部の内周面に上記ロータと対向するように配設されコイルが巻回されたステータとを備えたものとしたので、従来から備えられている遠心クラッチ及びその収容部を利用して駆動・発電モータを容量の大きいもとすることができ、高負荷時には大きな補助力を供給でき、かつ減速時には発生するエネルギを効率良く回収できる。
請求項4,5の発明によれば、従動側プーリ又はクラッチアウタの側面に冷却羽根を形成したので、外部から取り入れた空気により駆動・発電モータを冷却でき、該モータの過熱を防止できる。
請求項6の発明によれば、遠心クラッチ収容部の外壁面に放熱フィンを形成したので、駆動・発電モータの作動によって発生する熱を確実に放熱でき、該駆動・発電モータの過熱を防止できる。このとき冷却羽根を併用する場合には冷却羽根を小さくでき、機械損失を小さくできる。
請求項7の発明によれば、Vベルト式無段変速機の従動側プーリと共に回転する回転部材を設け、該回転部材の外面と伝達ケースの内面との間に上記駆動・発電モータを配設したので、従来から備えられている従動側プーリと伝達ケースとを利用して大幅な改造を施すことなく駆動・発電モータを配置でき、高負荷時には補助力を供給でき、かつ減速時には発生するエネルギを回収できる。」(第3頁3欄3行?44行;段落【0012】?【0017】参照)

ウ;「【発明の実施の形態】以下本発明を実施形態を添付図面に沿って説明する。
図1?図3は本発明の第1実施形態におけるスクータ用エンジンユニットのエネルギ回収機構を説明するための図であり、図1はシステム構成図、図2はエンジンユニットの平面図、図3は要部の断面平面図である。
図中、1は車体フレームに上下摺動可能に搭載されるエンジンユニットであり、これはエンジン本体2と、後輪3を支持し駆動する減速駆動機構4と、エンジン本体2の出力を減速駆動機構4に伝達するCVT式動力伝達機構5とを備えている。」(第3頁3欄46行?4欄7行;段落【0018】?【0020】参照)

エ;「上記クランク軸8の右端にはフライホイールマグネトー式発電機9が装着されており、また図示しないスタータモータの回転が伝達可能となっている。上記クランク軸8の左端には、上記動力伝達機構5の駆動側プーリ10が装着されており、該駆動側プーリ10はVベルト11により従動側プーリ12に連結されている。
上記従動側プーリ12は自動遠心クラッチ13を介して減速駆動機構4の駆動軸14に連結されている。そしてこの駆動軸14は中間軸15を介して後輪軸16に連結されており、該後輪軸16に上述の後輪3が固定されている。」(第3頁4欄12行?23行;段落【0022】及び【0023】参照)

オ;「そして上記クラッチアウタ24の周壁24bの外面と上記遠心クラッチ収容部25aの周壁25bの内面との間に、上記後輪3に補助駆動力を伝達可能でかつ減速時には該後輪3の回転により発電可能の駆動・発電モータ(DCブラシレスモータ)26が配設されている。この駆動・発電モータ26は、上記クラッチアウタ24の周壁24bの外面に配置固定されたロータ(永久磁石)26aと、上記遠心クラッチ収容部25aの周壁25bの内面に上記ロータ26aと対向するように配設されコイルが巻回されたステータ26bとを備えている。
また上記従動側プーリ12の可動側プーリ半部12bの遠心クラッチ13側の壁面外周部には、クラッチ収容部25aに植設された吸引パイプ27を介して外側から空気を吸引して該クラッチ収容部25a内にて空気の流れを生じさせる冷却羽根12cが形成されている。」(第4頁5欄27行?43行;段落【0030】及び【0031】参照)

カ;「上記駆動・発電モータ26は、交流/直流変換用のインバータ28を介して駆動用バッテリ29に接続されている。なお、この駆動用バッテリ29は上記エンジン側の発電機9にも接続されており、また該発電機9は電装用バッテリ30に接続されている。
また31は駆動・発電モータ26の駆動制御を行なうECUであり、該ECU31は、操向ハンドル32のスロットルグリップ32aの開度を検出するスロットルセンサ33の検出信号、及び後輪軸16における駆動トルクを検出するトルクセンサ34の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて上記駆動・発電モータ26による補助動力の発生状況を制御する。」(第4頁5欄46行?6欄7行;段落【0032】及び【0033】参照)

キ;「なお、上記第1実施形態では、従動側プーリ12に冷却羽根12cを形成したが、この冷却羽根の形成位置はこれに限らない。例えば、図4に示すようにクラッチアウタ24の底壁24aに冷却羽根24eを形成することも可能である。」(第5頁7欄8行?12行;段落【0040】参照)

ク;「本第2実施形態では、駆動側プーリ10側にクラッチ機構41が設けられ、従動側プーリ12側の遠心クラッチ13が廃止されている。そして従動側プーリ12の駆動筒体18に上記クラッチアウタ24と同様の形状を有する回転部材42が固着され、該回転部材42の外周面と伝達ケース25の回転部材収容部25a’との間に上記駆動・発電モータ26が配設されている。
本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、高負荷時には補助力を供給でき、かつ減速時には発生するエネルギを回収できる。」(第5頁7欄25行?8欄1行;段落【0043】及び【0044】参照)

刊行物1に記載された上記記載事項ア?ク及び図面(特に図4及び図5)の記載からみて、刊行物1には、本願補正発明の記載に倣えば、車両用エンジンのエネルギ回収機構(パワーユニット)に係る下記の発明が記載されているものと認めることができるものである。

「エンジン本体2と、
前記エンジン本体2に連結されたクランク軸8の回転動力を後輪3側に伝達するCVT式動力伝達機構5と、
前記動力伝達機構5の従動側に連結されると共に前記後輪3に連結された駆動軸14と、
前記駆動軸14に連結されて少なくとも発電機として機能する駆動・発電モータ26と、
前記動力伝達機構5と前記駆動・発電モータ26を収容する伝達ケース25とを備えた車両用エンジンのエネルギ回収機構であって、
前記クランク軸8と前記動力伝達機構5との間に、前記クランク軸8の回転動力を前記動力伝達機構5に伝達するクラッチ機構41を備え、
前記クランク軸8に連結されたフライホイールマグネトー式発電機9を備え、該発電機9からの電力に基づいて前記駆動・発電モータ26が駆動される車両用エンジンのエネルギ回収機構。」

<刊行物2>
同じく引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-137088号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「車両の伝動ケース冷却装置」に関して、下記の事項ケ及びコが図面とともに記載されている。
ケ;「伝動ケースカバー36の低い前部には空気吸入口43が設けられている。この空気吸入口43は駆動プーリ32の固定プーリ半体32aに対向する位置で伝動ケース18内に開口しており、固定プーリ半体32aの外面には空気吸入口43からの空気を吸引するファン44が形成されている。」(第3頁左下欄16行?右下欄1行)

コ;「伝動ケース18内に導入された空気はファン44を通過した後、第3図で矢印で示すように、無段変速機27の各部を循環してこれを冷却する。そして昇温した空気は伝動ケースカバー36の側面の遠心クラッチ38に対向する部分に設けられた空気排出口49から外部へ排出される。」(第4頁左上欄2行?7行)

<刊行物3>
原査定の備考欄でハイブリッド車両におけるパワーユニットにおいて、クランク軸と動力伝達手段との間に、クランク軸の回転数が所定値を超えた場合に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する動力断続手段を設ける技術が本願出願前に周知の技術であることを例示するために引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-154861号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「並列式二動力ユニット複合動力システム」に関して、下記の事項サ?スが図面とともに記載されている。
サ;「【発明が解決しようとする課題】そこで、内燃機エンジンと電動モーターの両種の動力をV型ベルト変速機構と連接して、両種の動力を平滑に接続し、制御器の操作によって並列式複合動力システムの全ての効果を達成することができて、更に最低コストで提供し、二輪車及び二輪以上の車輌に適用できる並列式二動力ユニット複合動力システムを得るために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、駆動軸を具有している第一動力ユニットと、該駆動軸の駆動を受けて回転する出力軸と、該駆動軸と前記出力軸との間を連結して、前記駆動軸の動力を前記出力軸に伝動するのに用いるV型ベルト変速機構と、該V型ベルト変速機構と前記出力軸及び前記駆動軸の間に設置していて、前記第一動力ユニットの動力が前記出力軸に伝動されているか否かの動作をコントロールするのに用いる遠心クラッチとで構成され、更に、前記出力軸と連結している電動モーターを有し、該電動モーターは動力を発生して前記出力軸を連動して回転させることができるように構成され、或いは、前記出力軸に連動されて回転し発電機の状態となって運転し、又は、空転することができるように構成されたことを特徴とする並列式二動力ユニット複合動力システムを提供するものである。」(第3頁3欄14行?39行;段落【0009】及び【0010】参照)

シ;「この外、前記変速機構30には更に一歩進んでクラッチ60を設置している。前記クラッチ60は前記駆動軸21に、或いは、前記出力軸40に装置することができる。図に示している実施の形態の前記クラッチ60は、前記駆動ベルトプーリ31の前記円錐盤312と前記駆動軸21の間に装置している。又、前記円錐盤312の外側面には環状摩擦面がある。
前記クラッチ60は、前記駆動軸21と固定して結合している固定座61と、前記円錐盤312の摩擦面内側に設置していて、その一端は可動できるように前記固定座61に接続している遠心ブロック62と、前記遠心ブロック62と前記固定座61の間に接続しているスプリング63とを含んでいる。
前記遠心ブロック62はエンジンが一定の回転速度に到達した時、遠心力の作用を受けて外向きに大きく開いて、前記円錐盤312の摩擦面を押しつけ、之によって、摩擦力が発生する。前記駆動軸21の動力はこれにより前記駆動ベルトプーリ31に伝えられる。而して、前記クラッチ60によって前記駆動軸21の回転速度を一定値の状態にコントロールすることができるので、その動力は前記駆動ベルトプーリ31に伝わらない。斯くして、前記駆動軸21の回転速度が増加して前記遠心ブロック62と前記円錐盤312がかみ合う程度に至った時、前記駆動軸21の動力は始めて前記駆動ベルトプーリ31に伝えられる。」(第4頁5欄12行?36行;段落【0015】?【0017】参照)

ス;「【発明の効果】本発明の並列式二動力ユニット複合動力システムは、内燃機エンジンと電動モーターの両種動力をV型ベルト変速装置によって、両種の動力を順調に接続し、制御器の操作により並列式二動力ユニット複合動力システムの全ての効果、即ち、発明の詳細な説明の項の(A)項乃至(L)項に説明した効果を奏することができる。更に、モデル化したエンジン及び電動モーター等の商品化部品の組合せによる複合動力システムの設計を提供し、コストを低減することができる。又、設計者に不同動力規格のエンジン及び電動モーターを弾性的に不同使用条件の製品上に広範囲に応用することができる。」(第6頁10欄24行?35行;段落【0027】参照)

(3)対比・判断
刊行物1に記載された発明の車両用エンジンのエネルギ回収機構を構成する各部材の奏する機能に照らせば、刊行物1に記載された発明の「車両用エンジンのエネルギ回収機構」は本願補正発明の「ハイブリッド車両におけるパワーユニット」に機能的に相当し、以下同様に、「エンジン本体2」は「エンジン」に、「クランク軸8」は「クランク軸」に、「CVT式動力伝達機構5」は「動力伝達手段」に、「後輪3」は「駆動輪」に、「駆動軸14」は「駆動軸」に、「駆動・発電モータ26」は「少なくとも発電機として機能するモータ」に、「伝達ケース25」は「ユニットケース」に、「フライホイールマグネトー式発電機9」は「クランク軸に連結された発電機」に機能的に相当するものと認めることができるものである。
また、刊行物1に記載された発明(図5のもの)の駆動側プーリ10側に設けられる「クラッチ機構41」は本願補正発明の「発進クラッチからなる動力断続手段」と同様の機能を奏するものと認めることができるものである。

そこで、本願補正発明の用語を使用して、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「エンジンと、
前記エンジンに連結されたクランク軸の回転動力を駆動輪側に伝達する動力伝達手段と、
前記動力伝達手段の従動側に連結されると共に前記駆動輪に連結された駆動軸と、
前記駆動軸に連結されて少なくとも発動機として機能するモータと、
前記動力伝達手段と前記モータを収容するユニットケースとを備えたハイブリッド車両におけるパワーユニットであって、
前記クランク軸と前記動力伝達手段との間に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する発進クラッチからなる動力断続手段を備え、
前記クランク軸に連結された発電機を備え、該発電機からの電力に基づいて前記モータが駆動されるハイブリッド車両におけるパワーユニット。」
で一致しており、下記の相違点1及び相違点2で相違している。

相違点1;本願補正発明では、クランク軸に連結されたファンを備え、モータと前記ファンは、ユニットケース内において動力伝達手段に対して共に同側に配置され、前記ファンは、発進クラッチの部材と一体に構成されるものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、駆動軸14に連結された冷却羽根24a(ファン)を備え、駆動・発電モータ26と冷却羽根24aは伝達ケース25内においてCVT式動力伝達機構5に対して共に同側に配置され、前記冷却羽根24aは、遠心クラッチ13のクラッチアウタ24の底壁24aに一体に構成されるものである点。

相違点2;本願補正発明では、クランク軸と動力伝達手段との間に、前記クランク軸の回転数が所定値を超えた場合に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する発進クラッチからなる動力断続手段を備え、モータと前記発進クラッチとは、前記動力伝達手段に対して共に同側で、かつ車幅方向外側に配置されるものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、駆動軸14に設けられる遠心クラッチ13を廃止することに代えて、クランク軸8とCVT式動力伝達機構5との間にクラッチ機構41を設けることができるものではあるが、どのようなクラッチ機構41とするかまでは不明である点。

上記相違点1及び相違点2について検討した結果は次のとおりである。
《相違点1について》
CVT式の動力伝達手段を採用した車両の駆動輪の駆動機構において、クランク軸に連結されたファンを設け、ユニットケース(伝達ケース)内の動力伝達手段を冷却することは、上記刊行物2にも記載されているように本願出願前当業者に知られた事項にすぎないものである。
そして、刊行物1に記載された発明においても、駆動軸14に設けられる遠心クラッチ13を廃止することに代えて駆動側プーリ10側(クランク軸8とCVT式動力伝達機構5の間)にクラッチ機構41を設けることができるものであって、その際、駆動側プーリ10側に設けるクラッチ機構41として上記遠心クラッチ13と同様の構造の遠心クラッチを採用することを妨げる格別の事情がないことは当業者であれば容易に理解できる事項と認めることができるものである。
してみると、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された上記ファンによる冷却構造を知り得た当業者であれば、駆動側プーリ10側に設けるクラッチ機構41として上記遠心クラッチ13と同様の構造のものを駆動・発電モータ26とCVT式動力伝達機構5に対して同側(駆動軸14に対する遠心クラッチ13の配置構造と同様の配置構造)に配置し、この遠心クラッチのクラッチアウタの底壁に冷却羽根(ファン)を設けることにより、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、必要に応じて容易に想到することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。

《相違点2について》
並列式二動力ユニット複合動力システム(ハイブリッド車両におけるパワーユニット)において、クランク軸と動力伝達手段との間に設ける発進クラッチとしての動力断続手段としてクランク軸の回転数が所定値を超えた場合に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する動力断続手段(所謂遠心クラッチ)を車幅方向外側に配置することは、上記刊行物3にも記載されているように本願出願前周知の事項にすぎないものである。
そして、刊行物1に記載された発明においても、駆動軸14に設けられるクラッチとしては遠心クラッチ13を採用していることからみて、駆動軸14に設ける遠心クラッチ13を廃止することに代えて駆動側プーリ10側(クランク軸8とCVT式動力伝達機構5の間)にクラッチ機構41を設ける際、駆動側プーリ10側に設けるクラッチ機構41として上記遠心クラッチ13と同様の遠心クラッチとその取り付け構成を採用することを妨げる格別の事情がないことは当業者であれば容易に理解できる事項と認めることができるものである。
してみると、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された上記周知の事項を知り得た当業者であれば、駆動側プーリ10側に設けるクラッチ機構として上記遠心クラッチ13と同様の構造のものをCVT式動力伝達機構5に対して駆動・発電モータ26と同側で、かつ車幅方向外側(駆動軸14に対する遠心クラッチ13の配置構造と同様の配置構造)に配置することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、必要に応じて容易に想到することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。

また、本願補正発明の効果について検討しても刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに本願出願前周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ところで、請求人は、審判請求書中において「伝動ケース内に収容した発動用モータの冷却性の向上を図るという技術的課題を解決する意図の下に、引用文献1(上記刊行物1)に記載されている構成に周知例1?周知例3(周知例1が上記刊行物3)に記載の構成を採用したとしても、本願発明(本願補正発明)のクランク軸に連結されたファンを備えたために、クランク軸と共にファンが回転し、その回転によりユニットケース内に渦流が発生するので、発熱量の大きな発動用のモータを効果的に冷却することができ、モータと発進クラッチとは、動力伝達手段に対して共に同側で、かつ車軸幅方向外側に配置したため、モータと発進クラッチとを伝動ケースを開けると同じ側に露出させることができるので、メンテナンス性を向上させることができ、ファンは、発進クラッチの部材と一体に構成したため、スペース効率を向上させることができ、特に、自動二輪車のような小型車両においては好適であるという顕著な作用効果は到底奏し得ない。」(平成18年11月21日付け手続補正書(方式)の(3)本願発明が特許されるべき理由の(d)本願発明と引用発明との対比の(v)相違点の検討の項参照)旨主張している。

しかしながら、刊行物1に記載された発明でも、駆動軸14に設けられる遠心クラッチ13を廃止して、駆動側プーリ10側にクラッチ機構41を設けることができるものであって、上記刊行物3に記載された周知事項を参酌すれば、このクラッチ機構41として遠心クラッチ13と同様のクラッチをクランク軸8とCVT式動力伝達機構5との間に設けることは当業者であれば普通に採用することができる程度の事項にすぎないものであることは上記のとおりである。
そして、遠心クラッチ13の駆動軸14に対する取り付け構造と同様の取り付け構造で遠心クラッチを駆動側プーリ10側に設置すれば、その遠心クラッチと駆動・発電モータ26とは、CVT式動力伝達機構5に対して共に同側で、かつ車幅方向外側に配置されるものとなり、また、その遠心クラッチのクラッチアウタの底壁に形成される冷却羽根と駆動・発電モータ26は、伝達ケース25内においてCVT式動力伝達機構5に対して共に同側に配置されるものとなり、請求人が主張する本願補正発明の作用効果と同様の作用効果を奏するものと認めることができるものである。
よって、請求人の上記審判請求書中での主張は採用することができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年11月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、平成18年7月19日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに連結されたクランク軸の回転動力を駆動輪側に伝達する動力伝達手段と、
前記動力伝達手段の従動側に連結されると共に前記駆動輪に連結された駆動軸と、
前記駆動軸に連結されて少なくとも発動機として機能するモータと、
前記動力伝達手段と前記モータを収容するユニットケースとを備えたハイブリッド車両におけるパワーユニットであって、
前記クランク軸に連結されたファンを備え、前記モータと前記ファンは、前記ユニットケース内において前記動力伝達手段に対して共に同側に配置され、
前記クランク軸と前記動力伝達手段との間に、前記クランク軸の回転数が所定値を超えた場合に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する動力断続手段を備え、
前記クランク軸に連結された発電機を備え、該発電機からの電力に基づいて前記モータが駆動されることを特徴とするハイブリッド車両におけるパワーユニット。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-80956号公報(上記刊行物1)及び特開昭63-137088号公報(上記刊行物2)並びに原査定の備考欄でハイブリッド車両におけるパワーユニットにおいて、クランク軸と動力伝達手段との間に、クランク軸の回転数が所定値を超えた場合に、前記クランク軸の回転動力を前記動力伝達手段に伝達する動力断続手段を設ける技術が本願出願前に周知の技術であることを例示するために引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-154861号公報(上記刊行物3)の記載事項は、前記「2.(2)引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の技術事項から、動力断続手段について「発進クラッチからなる」との限定を省き、また、モータと発進クラッチとの配置関係について「前記モータと前記発進クラッチとは、前記動力伝達手段に対して共に同側で、かつ車幅方向外側に配置され、」との限定を省き、さらに、ファンの構成について「前記ファンは、前記発進クラッチの部材と一体に構成され、」との限定を省いたものに実質的に相当するものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに構成を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-09 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-04-28 
出願番号 特願2003-338825(P2003-338825)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60K)
P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 宏和  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 山岸 利治
礒部 賢
発明の名称 ハイブリッド車両におけるパワーユニット  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 高橋 詔男  
代理人 青山 正和  
代理人 鈴木 三義  

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