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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1179620 |
審判番号 | 不服2007-29135 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-25 |
確定日 | 2008-06-12 |
事件の表示 | 特願2000-141150「遊技機、情報記憶媒体及び特定図柄大当発生確率向上方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月20日出願公開、特開2001-321500〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成12年5月15日に出願された特願2000-141150号であって、平成18年8月8日付の拒絶理由が通知され、平成18年9月13日付で意見および手続補正がなされ、平成19年2月16日付の拒絶理由が通知され、平成19年3月22日付で意見および手続補正がなされ、そして、平成19年5月25日付の最後の拒絶理由が通知され、平成19年7月10日付で意見および手続補正がなされ、平成19年10月1日付で平成19年7月10日付の手続補正の却下の決定がなされると同時に拒絶査定がなされ、平成19年10月25日付で拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 2.平成19年10月25日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年10月25日の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成19年10月25日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された下記のとおりに特定されるものである。 「数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲームを開始し、前記図柄が所定の数だけ揃うことにより大当り状態になるとともに、揃った図柄が普通図柄の場合には、大当りゲームの終了後、普通確率状態に移行する一方、揃った図柄が特定図柄の場合には、大当りゲームの終了後、前記普通確率状態よりも大当り確率が向上した確率変動状態に移行する遊技機において、 前記変動表示ゲームの回数をカウントするカウント手段と、 前記変動表示ゲームにおいて、普通図柄や特定図柄での大当りの発生や大当りを発生させる確率をコントロールする中央制御部とを具備し、 前記中央制御部は、前記カウント手段がカウントした回数が所定回数に達した場合、揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後の前記確率変動状態か否かを判断し、前記確率変動状態であれば、前記普通図柄よりも前記特定図柄での大当りが発生する確率を向上させること、 を特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。) 平成19年10月25日付の手続補正は、平成19年3月22日付の手続補正により補正された請求項1に記載された発明の「前記確率変動状態か否かを判断し、」に、「揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後の」なる構成を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当するものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合している。 そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例について 1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-299986号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機等の遊技機に関し、特に、表示状態が変化可能な可変表示装置を含み、可変表示装置における表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機に関する。」 ・記載事項2 「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の遊技機では確変状態になる割合(確変開始率)が一定であるために、遊技演出の多様性に欠け、遊技の面白味が不足するという課題がある。」 ・記載事項3 「【0015】停止時の画像表示部9内の画像の組み合わせが確率変動を伴う大当り図柄の組み合わせである場合には、次に大当りとなる確率が高くなる。すなわち、高確率状態という遊技者にとってさらに有利な状態となる。また、可変表示器10における停止図柄が所定の図柄(当り図柄)である場合に、可変入賞球装置15が所定時間だけ開状態になる。さらに、高確率状態では、可変表示器10における停止図柄が当り図柄になる確率が高められるとともに、可変入賞球装置15の開放時間と開放回数が高められる。」 ・記載事項4 「【0021】可変表示開始後所定時間が経過すると3つの図柄が停止するが、停止図柄の組合せが、各図柄揃ったものである場合には、大当りが発生する。また、停止図柄の組合せが確変図柄の揃ったものである場合には、大当りが発生するとともに高確率の状態となる。なお、この実施の形態では、中図柄が最後に確定する。高確率の状態では、次に大当りが発生する確率が高められるとともに、可変表示器10が可変表示開始後図柄が確定するまでの時間が短縮されるとともに、可変表示器10による当り発生時に可変入賞球装置15の開放状態が長く設定される。すなわち、高確率時には、遊技者にとって極めて有利な状態となる。」 ・記載事項5 「【0016】図2は、遊技制御基板(メイン基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。・・・メイン基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路53と、・・・、基本回路53から与えられるデータに従って、大当りの発生を示す大当り情報、・・・、確率変動が生じたことを示す確変情報等をホール管理コンピュータ等のホストコンピュータに対して出力する情報出力回路64とを含む。」 ・記載事項6 「【0030】図6は、この実施の形態で使用される通常時の確変図柄を示す説明図である。図6に示すように、確変図柄は、「三」,「三」,「三」、「五」,「五」,「五」、「七」,「七」,「七」および「ん」,「ん」,「ん」の4種類であるとする。画像表示部9における停止図柄の組み合わせが確変図柄と一致すると、遊技機は、その大当り終了後に高確率状態になり、少なくとも次回の大当りが発生するまで高確率状態は継続する。 【0031】図7は、確変開始率を変化させるための確変開始率変化図柄を示す説明図である。図7に示すように、確変開始率変化図柄は、「0」,「0」,「0」および「十」,「十」,「十」であるとする。画像表示部9における停止図柄の組み合わせが確変開始率変化図柄と一致すると、確変開始率が上げられる。」 ・記載事項7 「【0036】そして、基本回路53は、ステップS51で読み出した値、すなわち抽出されている大当り判定用乱数の値にもとづいて当たり/はずれを決定する(ステップS53)。この実施の形態では、大当り判定用乱数は、図5に示されているように0?249の範囲の値をとる。そして、図11に示すように、低確率時には例えばその値が3である場合に大当りと決定し、それ以外の値である場合にはずれと決定する。高確率時には例えばその値が3,7,79,103,107のいずれかである場合に大当りと決定し、それ以外の値である場合にはずれと決定する。高確率状態であるか否かは、確変中フラグがセットされているか否かによって判定される。確変中フラグは、前回の大当り時に停止図柄の組み合わせが確変図柄であった場合にセットされる。」 ・記載事項8 「【0044】以上のような処理によって、非確変図柄のうち特定の図柄(この例では、「0」,「0」,「0」または「十」,「十」,「十」)で大当りしたときには、次回の大当り時において高確率状態になる確率が上げられる。従って、従来の遊技機とは異なり、確変開始率が停止図柄の組み合わせに応じて変化する。よって、遊技者は、確変図柄とともに確変開始率変化図柄の発生を強く期待する。すなわち、この実施の形態の遊技機は、従来の遊技機に比べて、遊技者に与えられる興趣を一層向上させたものとなっている。 ・記載事項9 「【0048】以上のような処理によって、非確変図柄のうち特定の図柄で大当りしたときには、次回の時において、非確変図柄のうちの所定の図柄(この例では、「四」,「四」,「四」および「九」,「九」,「九」)が除外されて図柄が決定される。よって、結果的に高確率状態に突入する確率が上げられる。従って、このような遊技制御を行っても、遊技機は、従来の遊技機に比べて、遊技者に与えられる興趣を一層向上させたものとなる。」 以上の記載事項1?記載事項9及び図1?図16によれば、 「図柄の表示状態が変化可能な可変表示装置を含み、可変表示装置における停止図柄の組合せが揃ったものである場合には大当り状態になるとともに、停止した図柄が非確変図柄である場合には、大当り状態が発生し、可変表示装置の図柄の変化が終了した後、低確率状態に移行し、停止した図柄の組合せが確変図柄の揃ったものである場合には、低確率の状態よりも大当り確率が向上した確率変動状態に移行するパチンコ遊技機において、 非確変図柄のうち特定の図柄で大当りしたときには、次回の大当り時において、非確変図柄のうちの所定の図柄が除外されて図柄が決定されて、高確率状態になる確率が上げられる基本回路53を備えたパチンコ遊技機。」(以下、「引用例1発明」という。) 2)引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された「パチンコ必勝ガイド ウルトラ」(株式会社白夜書房、平成9年4月13日発行、第9巻第7号(通巻219号)、第105頁(第105頁右上の「エスケープ2」における記載を参照))(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が写真と共に記載されている(以下、「引用例2の記載事項」という。)。 「1・3・5・7で大当りすると2・4・6・8で当るまで確率変動を継続するという強力な変動システムを搭載していたデジパチ。確変突入率が25%で継続率が75%というとてつもない爆発力を秘めていた機種だが、電チューを利用した連チャン打法や体感器で攻略された。」 (3)対比 引用例1発明と本願補正発明を対比すると、引用例1発明の「停止図柄の組合せが各図柄揃ったものである場合には」は、本願補正発明の「図柄が所定の数だけ揃うことにより」に相当し、以下同様に、「停止した図柄」は「揃った図柄」に、「非確変図柄」は「普通図柄」に、「低確率」は「普通確率」に、「確変図柄」は「特定図柄」に、「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、それぞれ相当している。 そして、引用例1発明については、以下ことがいえる。 引用例1の記載事項6の「【0030】・・・確変図柄は、「三」,「三」,「三」、「五」,「五」,「五」、「七」,「七」,「七」および「ん」,「ん」,「ん」の4種類であるとする。画像表示部9における停止図柄の組み合わせが確変図柄と一致すると、遊技機は、その大当り終了後に高確率状態になり、少なくとも次回の大当りが発生するまで高確率状態は継続する。・・・」なる記載に基づけば、引用例1の可変表示装置も、「数字である「三」「五」等や「ん」などの絵柄を有しており、かつその図柄の画像表示を変動させた後停止して停止した図柄によりゲームを行うものであることは明らかであるから、引用例1発明の「図柄の表示状態が変化可能な可変表示装置」は「変動表示ゲーム」と言い換えできるとともに、「数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲームを開始し」なる構成を実質的に具備しているということができる。 また、引用例1発明の「可変表示装置の図柄の変化が終了した後」とは、可変表示装置における大当り時のゲームの終了を意味することに他ならないから、引用例1発明の「可変表示装置の図柄の変化が終了した後」は「大当りゲームの終了後」と言い換えすることができる。 さらに、同記載事項5の「【0016】図2は、遊技制御基板(メイン基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。・・・メイン基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路53と、・・・、基本回路53から与えられるデータに従って、大当りの発生を示す大当り情報、・・・、確率変動が生じたことを示す確変情報等をホール管理コンピュータ等のホストコンピュータに対して出力する情報出力回路64とを含む。」なる記載、同記載事項7の「【0036】そして、基本回路53は、・・・、すなわち抽出されている大当り判定用乱数の値にもとづいて当たり/はずれを決定する(ステップS53)。・・・」なる記載、および同記載事項9の「【0048】以上のような処理によって、非確変図柄のうち特定の図柄で大当りしたときには、次回の時において、非確変図柄のうちの所定の図柄(この例では、「四」,「四」,「四」および「九」,「九」,「九」)が除外されて図柄が決定される。よって、結果的に高確率状態に突入する確率が上げられる。従って、このような遊技制御を行っても、遊技機は、従来の遊技機に比べて、遊技者に与えられる興趣を一層向上させたものとなる。」に基づけば、基本回路53は、非確変図柄のうち特定の図柄で大当りしたときには、次回の時において、非確変図柄のうちの所定の図柄が除外されて図柄が決定されて、高確率状態になる確率が向上させているのであるから、引用例1発明は、非確変図柄よりも確変図柄での大当りの確率を発生する確率を向上させる中央制御装置を備えていることは明らかである。 そして、上記(3)対比の柱書きに示したとおり、引用例1発明の「非確変図柄」は本願補正発明の「普通図柄」に、「確変図柄」は「特定図柄」に相当しているとともに、引用例1発明の「非確変図柄のうち特定の図柄で大当りしたときには」は「所定の条件に応じて」と言い換えできることは、自明の事項にすぎない。 そうすると、引用例1発明は、「所定条件に応じて、普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる中央制御装置」を実質的に具備しているということができる。 以上の点を考慮すると、本願補正発明と引用例1発明は、 「数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲームを開始し、図柄が所定の数だけ揃うことにより大当たり状態になるとともに、揃った図柄が普通図柄である場合には、大当り状態が発生し、大当りゲーム終了後、普通確率状態に移行する一方、揃った図柄が特定図柄の場合には、大当りゲームの終了後、普通確率状態よりも大当り確率が向上した確率変動状態に移行する遊技機において、所定条件に応じて、普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる中央制御装置を備えた遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。 <相違点> 所定条件に応じて普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる中央制御装置の制御は、本願補正発明においては、変動表示ゲームの回数をカウントするカウント手段を用いて、カウント手段がカウントした回数が所定回数に達した場合、揃った図柄が特定図柄の大当りゲーム終了後の確率変動状態であることを条件に行うものであるのに対して、引用例1発明は、そのようなカウント手段を用いておらず、かつ、揃った図柄が特定図柄の大当りゲーム終了後の確率変動状態であることを条件に行うものでない点。 (4)判断 上記相違点について、検討する。 引用例2の記載事項の「1・3・5・7で大当りすると2・4・6・8で当るまで確率変動を維持するという強力な変動システムを搭載していたデジパチ。確変突入率が25%で継続率が75%というとてつもない爆発力を秘めていた機種だが、電チューを利用した連チャン打法や体感器で攻略された。」なる記載に基づけば、ゲームを開始し、2・4・6・8の図柄のいずれかの図柄が3つ揃うと大当りになってゲームを終了する際には、確変状態にならない一方で、1・3・5・7の図柄のいずれかの図柄が3つ揃って大当りになってゲームを終了すると確変状態になり、その確変状態の下で、1・3・5・7のいずれかの図柄が3つ揃うと大当たりになってゲームを終了する際には、次のゲームは75%の確率で確変状態を維持する制御を行っているものである。また、引用例2の記載事項は、デジパチであるからパチンコ遊技機であること、およびパチンコ遊技機の制御技術の常識に照らせば、そのパチンコ遊技機が、表示図柄、確率変動や大当り等の制御を担う中央制御装置を備えていることも自明な事項にすぎない。 そして、引用例2の記載事項の「ゲーム」は本願補正発明の「変動表示ゲーム」に、以下同様に、「2・4・6・8の図柄のいずれかの図柄」は「普通図柄」に、「1・3・5・7の図柄のいずれかの図柄」は「特定図柄」に、「2・4・6・8の図柄のいずれかの図柄が3つ揃うと大当りになってゲームを終了する」は「図柄が所定の数だけ揃うことにより大当り状態となるとともに、揃った図柄が普通図柄である場合には」に、「1・3・5・7の図柄のいずれかの図柄が3つ揃って大当りになってゲームを終了すると確変状態になり」は「揃った図柄が特定図柄の場合には、大当りゲームの終了後、確率変動状態か否かを判断し、確率変動状態であれば、普通図柄よりも大当り確率が向上した特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる」に、それぞれ相当していることは、引用例2の記載事項や写真、パチンコ遊技機の機能から見て、自明な事項である。 したがって、引用例2の記載事項は、「変動表示ゲームを開始し、図柄が所定の数だけ揃うことにより大当り状態になり、揃った図柄が普通図柄である場合には、普通確率状態に移行する一方で、所定条件がとして、揃った図柄が特定図柄の場合には、大当りゲームの終了後、普通確率状態よりも大当り確率が向上した確率変動状態に移行する遊技機において、所定条件が成立すると、揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後に、確率変動状態であるか否かを判断し、確率変動状態であれば、普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる中央制御装置を備えた遊技機。」と言い換えることができる(以下、「引用例2発明」とい。)。 ところで、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-37515号公報(引用文献3)と特開平11-253627号公報(引用文献2)、および特開平7-68028号公報等に示されるように、遊技機技術分野において、カウンタ手段を設け、カウンタ手段によりカウントされた回数が所定回数に達した時を所定条件の成立判断に利用することは、周知な技術に過ぎない(以下、「周知技術」という。) そして、引用例1発明と引用例2発明は、ともに、所定条件が成立すると、普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる中央制御装置を備えたパチンコ遊技機で関連するのであるから、両者の間で相互に技術利用することに格別の困難性はない。 そうすると、引用例1発明の所定条件に、引用例2発明の「中央制御装置が、揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後に、確率変動状態であるか否かを判断し、確率変動状態であれば」なる条件を採用する際に、上記周知技術を参酌して、「変動表示ゲームの回数をカウントするカウント手段を用いるとともに、中央制御装置が、カウント手段がカウントした回数が所定の回数に達した場合、揃った図柄が特定図柄の大当りゲーム終了後の確率変動状態であるか否かを判断し、確率変動状態であれば、普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させるようにすること、すなわち本願補正発明の上記相違点に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。 なお、請求人は、引用例1発明には、確変図柄のうちの特定の図柄で大当りしたときには、次回の時において、高確率状態に突入する確率を下げるとの記載しかないから、引用例1発明は、引用例2発明を採用する際の主引用たり得ないと主張しているが、上記に示したように、引用例1発明と引用例2発明は、ともに、所定条件が成立すると、揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後に、確率変動状態であるか否かを判断し、確率変動状態であれば、普通図柄よりも特定図柄での大当りが発生する確率を向上させる中央制御装置を備えたパチンコ遊技機で関連するのであるから、両者の間で相互に技術利用することに格別の困難性はないのであるから、その主張は採用できない。 (5)作用効果およびむすび よって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、本願補正発明によって奏する効果も、引用例1発明、引用例2発明および周知技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められないから、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。 (6)補正却下の判断 上記のとおり、本願補正発明は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、平成19年10月25日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成19年10月25日付の手続補正は上記のとおり却下され、かつ、平成19年7月10日付の手続補正も補正却下されているので、平成19年3月22日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、その請求項1?6に記載されたとおりと認められ、その請求項1に係る発明は、次のとおりに特定されるものである。 「数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲームを開始し、前記図柄が所定の数だけ揃うことにより大当り状態になるとともに、揃った図柄が普通図柄の場合には、大当りゲームの終了後、普通確率状態に移行する一方、揃った図柄が特定図柄の場合には、大当りゲームの終了後、前記普通確率状態よりも大当り確率が向上した確率変動状態に移行する遊技機において、 前記変動表示ゲームの回数をカウントするカウント手段と、 前記変動表示ゲームにおいて、普通図柄や特定図柄での大当りの発生や大当りを発生させる確率をコントロールする中央制御部とを具備し、 前記中央制御部は、前記カウント手段がカウントした回数が所定回数に達した場合、前記確率変動状態か否かを判断し、前記確率変動状態であれば、前記普通図柄よりも前記特定図柄での大当りが発生する確率を向上させること、 を特徴とする遊技機。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用例について 引用例1、引用例2およびそれら記載事項は、上記2.(2)引用例についてに記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記2.(4)判断で検討した本願補正発明において、「揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後の前記確率変動状態か否かを判断し、」から、「揃った図柄が特定図柄の大当りゲームの終了後の」を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)判断?(5)作用効果およびむすびに記載したとおり、引用例1発明、引用例2発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明、引用例2発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-14 |
結審通知日 | 2008-04-15 |
審決日 | 2008-05-01 |
出願番号 | 特願2000-141150(P2000-141150) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西村 仁志、小河 俊弥 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
中槙 利明 太田 恒明 |
発明の名称 | 遊技機、情報記憶媒体及び特定図柄大当発生確率向上方法 |