• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1179648
審判番号 不服2005-8050  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-02 
確定日 2008-06-13 
事件の表示 平成11年特許願第306266号「電力増幅器モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月11日出願公開、特開2001-127701〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年10月28日の出願であって、平成17年3月30日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して平成17年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月1日に手続補正書が提出されたものである。

2.補正却下の決定
平成17年6月1日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

(1)[補正却下の決定の結論]
平成17年6月1日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(2)[補正却下の決定の理由]
(a)補正の内容
本件補正によると、請求項1は、
「シングルエンド出力トランジスタを含む増幅器と、
上記増幅器の出力電圧を制御し、上記出力トランジスタの制御端子に制御電流を供給して上記出力トランジスタのアイドリング電流を設定する制御回路とを具備して成り、
上記制御回路は、上記制御電流を上記制御端子に流す入力トランジスタと、入力制御電圧を受けて上記入力トランジスタに上記入力制御電圧の指数関数となるような電流を流す回路とを含み、
上記入力トランジスタは、上記出力トランジスタと電流ミラー形態を構成することを特徴とする電力増幅器モジュール。」
と補正されている。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「上記増幅器の出力電力を制御するアイドリング電流を上記増幅器の出力トランジスタに供給する制御回路」及び「入力制御電圧を受けて上記アイドリング電流が上記入力制御電圧の指数関数となるように制御する回路」に対し、それぞれ、「上記増幅器の出力電圧を制御し、上記出力トランジスタの制御端子に制御電流を供給して上記出力トランジスタのアイドリング電流を設定する制御回路」及び「入力制御電圧を受けて上記入力トランジスタに上記入力制御電圧の指数関数となるような電流を流す回路」と限定するものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。

(b)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-270650号公報(以下、「引用例」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。

(イ)「【発明の属する技術分野】本発明は、例えばCDMA(符号分割多元接続)方式の携帯電話機の高周波増幅回路に好適な多段可変利得増幅回路に関する。」(段落【0001】第2頁第1欄第36行?第39行)

(ロ)「【0006】ここで、この可変増幅回路としては、差動増幅器が定電流源に接続された電流一定型と電流可変型が知られている。また、1段の可変増幅回路では一般に、利得を直線的に制御できる範囲が20?30dB程度であるので、80dB以上のダイナミックレンジを実現するために同じ型式の可変増幅回路を3?4段、高周波的にカスケード接続し、AGC電圧を各可変増幅回路に並列に印加する方法が採用されている。
【0007】図5、図6はそれぞれバイポーラトランジスタで構成した一般的な電流一定型、電流可変型の可変増幅回路を示し、INは入力、OUTは出力、V_(AGC) がAGC電圧、Vccは電源電圧である。図7はAGC電圧V_(AGC) に対する利得PGを示し、gは電流一定型可変増幅回路における特性、hは電流可変型可変増幅回路における特性である。
【0008】図5に示す電流一定型は、利得可変用トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4と増幅用トランジスタQ5、Q6により差動増幅器を構成し、また、抵抗R1、R2はそれぞれトランジスタQ1、Q4の負荷抵抗、E1はバイアス用電源、CS1は定電流源である。
【0009】図5に示す電流一定型における利得PG〔dB〕は
PG∝PG0+20log (I1/I0) …(1)
但し、PG0はI1がI0のときの利得
の関係にある。また、
I1/I0∝〔1+exp {-VAGC *q/(kT)}〕 …(2)
但し、qは電子の単位電荷
kはボルツマン定数
Tは絶対温度
の関係にある。」(段落【0006】?【0009】第2頁第2欄第45行?第3頁第3欄第15行)

(ハ)「【0030】電流一定型可変増幅回路1において、トランジスタQ1?Q4は利得可変用であり、トランジスタQ5、Q6は増幅用である。トランジスタQ11はトランジスタQ1、Q4とカレントミラー回路を構成し、トランジスタQ11のセルサイズは、トランジスタQ11に流れる電流がトランジスタQ1?Q4のダイナミックレンジを狭めることがないようにトランジスタQ1、Q4のセルサイズの約1/50に設定されている。また、トランジスタQ12、Q13も同様にカレントミラー回路を構成している。インダクタンスL1、L2はRF阻止用であり、代わりに抵抗でもよく、この場合にはトランジスタQ1?Q4の入力インピーダンスが小さいので抵抗値は小さくてもよい。」(段落【0030】第4頁第6欄第47行?第5頁第7欄第9行)

(ニ)「【0032】次に、上記実施例の動作を説明する。先ず、電流一定型可変増幅回路1では、トランジスタQ14のコレクタ電流はAGC電圧V_(AGC) に対して指数関数的に変化する。トランジスタQ13はトランジスタQ14の負荷であるので、トランジスタQ13にはトランジスタQ14と同じ電流が流れる。この場合、トランジスタQ12、Q13はカレントミラー回路を構成しているのでトランジスタQ12にはトランジスタQ13と同じ電流が流れる。
【0033】トランジスタQ11はトランジスタQ12のコレクタの負荷であるので、トランジスタQ11にはトランジスタQ12と同じ電流が流れ、更に、トランジスタQ1、Q4はトランジスタQ11とカレントミラー回路を構成しているので、トランジスタQ1、Q4にもトランジスタQ11と同じ電流が流れる。したがって、トランジスタQ1、Q4には、AGC電圧V_(AGC) が印加されるトランジスタQ14のコレクタ電流に比例したコレクタ電流が流れ、そのコレクタ電流はAGC電圧V_(AGC) に対して指数関数的に変化する。その結果、電流一定型可変増幅回路1の利得PG〔dB〕がAGC電圧V_(AGC) に対して直線的に変化する。」(段落【0032】、【0033】第5頁第7欄第20行?第40行)

(ホ)「【0038】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電流一定型可変増幅回路を前段としてその後段に電流可変型可変増幅回路を接続すると共に、直線的に変化するAGC電圧を指数関数的に変化する電流に変換してその電流を各可変増幅回路の駆動電流として印加することにより各増幅度を制御するので、消費電流を低減し、入力インタセプト・ポイントと利得の直線性を向上させることができる。」(段落【0038】第5頁第8欄第22行?第30行)

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「利得可変用トランジスタQ1?Q4と、増幅用トランジスタQ5、Q6により差動増幅器を構成し、前記利得可変用トランジスタQ1、Q4のコレクタに接続された負荷抵抗R1、R2から、それぞれ出力信号を出力し、
上記差動増幅器の利得を制御し、上記トランジスタQ1、Q4のベースに電流を供給して上記トランジスタQ1、Q4のコレクタ電流を設定するトランジスタQ11?Q14からなる回路を具備して成り、
上記回路は、上記トランジスタQ1、Q4とベースが共通接続されたトランジスタQ11と、AGC電圧V_(AGC)が印可され、AGC電圧V_(AGC)に対して指数関数的に変化するコレクタ電流を上記トランジスタ11に流すトランジスタQ12?Q14からなる回路とを含み、
上記トランジスタQ11は、上記トランジスタQ1、Q4とカレントミラー回路を構成し、利得PG[dB]がAGC電圧V_(AGC)に対して直線的に変化する可変利得増幅回路。」

(c)対 比
本願補正発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「利得可変用トランジスタQ1、Q4」はコレクタに接続された負荷抵抗R1、R2から、それぞれ出力信号を出力するから、本願補正発明の「出力トランジスタ」に相当し、引用例発明の「差動増幅器」は本願補正発明の「増幅器」に相当する。(ただし、本願補正発明の「出力トランジスタ」はシングルエンドである。)
引用例発明の「トランジスタQ11?Q14からなる回路」は差動増幅器の利得を制御し、上記トランジスタQ1、Q4のベースに電流を供給して上記トランジスタQ1、Q4のコレクタ電流を設定するから、本願補正発明の「上記増幅器の出力電圧を制御し、上記出力トランジスタの制御端子に制御電流を供給して上記出力トランジスタのアイドリング電流を設定する制御回路」に相当するといえる。
そして、引用例発明の「上記トランジスタQ1、Q4とベースが共通接続されたトランジスタQ11」は、「上記トランジスタQ1、Q4とカレントミラー回路を構成する」から、本願補正発明の「上記アイドリング電流を上記出力トランジスタに流す入力トランジスタ」及び「上記出力トランジスタと電流ミラー形態を構成する入力トランジスタ」に相当する。
また、引用例発明の「AGC電圧V_(AGC)」は、本願補正発明の「入力制御電圧」に相当し、引用例発明の「トランジスタQ12?Q14からなる回路」は、「上記トランジスタQ1、Q4とベースが共通接続されたトランジスタQ11と、AGC電圧V_(AGC)が印可され、AGC電圧V_(AGC)に対して指数関数的に変化するコレクタ電流を上記トランジスタ11に流すトランジスタQ12?Q14からなる回路を含」むから、本願補正発明の「上記制御回路は、上記制御電流を上記制御端子に流す入力トランジスタと、入力制御電圧を受けて上記入力トランジスタに上記入力制御電圧の指数関数となるような電流を流す回路とを含」む点で本願補正発明に対応し、引用例発明の「可変利得増幅回路」と本願補正発明の「電力増幅器モジュール」は「増幅回路」である点で対応している。

そうすると、両者は、
「出力トランジスタを含む増幅器と、
上記増幅器の出力電圧を制御し、上記出力トランジスタの制御端子に制御電流を供給して上記出力トランジスタのアイドリング電流を設定する制御回路とを具備して成り、
上記制御回路は、上記制御電流を上記制御端子に流す入力トランジスタと、入力制御電圧を受けて上記入力トランジスタに上記入力制御電圧の指数関数となるような電流を流す回路とを含み、
上記入力トランジスタは、上記出力トランジスタと電流ミラー形態を構成することを特徴とする増幅回路。」
で一致するものであり、次の点で相違している。

本願補正発明は、シングルエンド出力トランジスタを含む増幅器を具備する電力増幅器モジュールであるのに対し、引用例発明は、出力トランジスタQ1、Q4を含む差動増幅器を具備する可変利得増幅回路である点。

(d)当審の判断
シングルエンド出力トランジスタを含む増幅器を具備する電力増幅器において、シングルエンド出力トランジスタとカレントミラー対を構成し、シングルエンドトランジスタの制御端子に制御電流を供給してアイドル電流を設定する入力トランジスタを有するバイアス回路を備えることは本出願前周知であり(特開平11-163640号公報、特開昭62-11310号公報参照)、また、電力増幅器においても出力電力を制御電圧に応じて制御することは本出願前周知である(特開平11-214937号公報、特開平10-41768号公報参照)。
したがって、引用例発明において、利得可変用トランジスタQ1?Q4と、増幅用トランジスタQ5、Q6によりなる差動増幅器を、シングルエンド出力トランジスタを含む増幅器に代え、可変利得増幅器ではなく電力増幅器とすることは当業者であれば容易になし得ることであり、その際に該回路を半導体集積回路で構成してモジュール化することも当業者が必要に応じてなし得る設計事項である。

また、前記相違点により奏される効果は当業者であれば引用例発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

(e)結論
そうすると、本願補正発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成17年2月1日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「シングルエンド出力トランジスタを含む増幅器と、
上記増幅器の出力電力を制御するアイドリング電流を上記増幅器の出力トランジスタに供給する制御回路と
を具備して成り、
上記制御回路は、上記アイドリング電流を上記出力トランジスタに流す入力トランジスタと、入力制御電圧を受けて上記アイドリング電流が上記入力制御電圧の指数関数となるように制御する回路とを含み、上記入力トランジスタは、上記出力トランジスタと電流ミラー形態を構成することを特徴とする電力増幅器モジュール。」

4.引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用刊行物、及びその記載事項は、前記「2.(b)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「上記増幅器の出力電圧を制御し、上記出力トランジスタの制御端子に制御電流を供給して上記出力トランジスタのアイドリング電流を設定する制御回路」及び「入力制御電圧を受けて上記入力トランジスタに上記入力制御電圧の指数関数となるような電流を流す回路」から限定を省き、それぞれ「上記増幅器の出力電力を制御するアイドリング電流を上記増幅器の出力トランジスタに供給する制御回路」及び「入力制御電圧を受けて上記アイドリング電流が上記入力制御電圧の指数関数となるように制御する回路」とするものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記2.に記載したとおり、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-11 
結審通知日 2008-04-16 
審決日 2008-04-30 
出願番号 特願平11-306266
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 春樹高木 進  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 和田 志郎
深津 始
発明の名称 電力増幅器モジュール  
代理人 徳若 光政  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ