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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1179750 |
審判番号 | 不服2006-15424 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-18 |
確定日 | 2008-06-11 |
事件の表示 | 特願2001-383146「金属基板を具えた半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月11日出願公開、特開2003-197980〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年12月17日に特許出願したものであって、平成18年4月11日付で拒絶査定がなされ、これに対して同年7月18日付で拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして、その請求項に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲請求項1?35に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「【請求項1】 金属基板を具えた半導体装置の製造方法において、 半導体基板を提供するステップと、 少なくとも一つの半導体層を該半導体基板の上に形成するステップと、 該金属基板を半導体層の上に形成するステップと、 該半導体基板を除去するステップと、 を少なくとも含むことを特徴とする、金属基板を具えた半導体装置の製造方法。」(以下、「本願発明」という。) 2.刊行物の記載事項 原審における拒絶理由に引用した特開2001-339100号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は発光素子とその製造方法に関する。」 (イ)「【0007】本発明の課題は、素子からの光取出し効率が良好であり、加えて素子の端子取出し構造が単純で利便性に優れた発光素子とその製造方法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記の課題を解決するために本発明の発光素子は、導電性基板の第一主表面側に金属層と発光層部と第一電極とがこの順序にて形成され、第一電極と導電性基板とを通じて発光層部への通電が可能であることを特徴とする。」 (ウ)「【0010】図1に示すように、導電性基板2と金属層3と発光層部4からなる積層体9への通電方向は、(a)に示すように、第一電極側が負となる極性でも、また、(b)に示すように、第一電極側が正となる極性でも、いずれも可能である。この場合、発光層部4におけるヘテロ接合構造の積層順序は、(a)と(b)とで逆となる。 【0011】導電性基板2は、シリコン単結晶等の半導体とすることもできるし、Al等の金属とすることもできる。・・・(中略)・・・。他方、導電性基板2を金属とする場合は、第二端子12を導電性基板2に直接形成できるので、第二電極6は省略することも可能である。・・・(略)・・・。」 (エ)「【0013】上記のような発光素子1は、導電性基板2と発光層部4とを接合予定面にて金属層3を介して重ね合わせ、接合処理することにより製造することができる。 【0014】具体的には、以下に示す本発明の製造方法により製造することができる。すなわち、本発明の製造方法は、半導体単結晶基板上に発光層部4をエピタキシャル成長させる工程と、導電性基板2の第一主表面と発光層部4の第一主表面とを金属層3のみを介して接合する接合処理工程と、前記半導体単結晶基板を分離又は除去する工程と、をこの順に行なうことを特徴とする。接合処理は、例えば加熱による接合処理とすることができる。 【0015】上記の方法においては、導電性基板2と発光層部4とを金属層3のみを介して接合する。導電性基板2と発光層部4とを、前記の文献とは異なりSiO2等の絶縁被膜を介さずに金属層3のみで接合することで、接合強度を高めることができるばかりでなく、導電性基板2と金属層3との間の電気的導通状態も良好に確保することができる。特に、導電性基板2がシリコン単結晶や化合物半導体単結晶あるいは混晶である場合、基板と金属層の一部とを合金化させる形で接合を行なうようにすれば、接合強度を一層向上させることができる。」 (オ)「【0027】以下、図1の発光素子1の製造方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、半導体単結晶基板であるGaAs単結晶基板61の第一主表面81に、発光層部4として、p^(+)型AlGaAsP電流拡散層44、p型AlGaInPクラッド層43、AlGaInP活性層42及びn型AlGaInPクラッド層41をこの順序にエピタキシャル成長させる。これら各層のエピタキシャル成長は、有機金属気相エピタキシャル成長(MetalorganicVapor Phase Epitaxy:MOVPE)法により行なうことができる。 【0028】次に、図3(b)に示すように、発光層部4のn型AlGaInPクラッド層41の上に金属層3として、AuGe層(第二金属層)33、Al層(中間金属層)32及びAu層(第一金属層)31をこの順序にて形成する。各層の形成は、例えば真空蒸着法あるいはスパッタ法等の公知の物理蒸着法により行なうことができる。そして、このようにして金属層3を形成した多層基板63の金属層3の側をSi単結晶基板2の第一主表面7に重ね合わせ(図3(c))、300℃?500℃に加熱することにより接合処理を行なう。加熱は、例えば窒素雰囲気中で行なう。これにより、Au層31はSi単結晶基板2の主表面7に接合される。接合処理は、例えばAu-Si共晶温度の直上(例えば370℃?400℃前後)にて行なうことがより望ましい。」 (カ)「【0030】接合処理が終了すれば、図3(d)に示すように、GaAs単結晶基板61を除去することにより、多層構造の発光素子基板1aが得られる。GaAs単結晶基板61の除去は、例えばケミカルエッチングにより行なうことができる。他方、図5(a)に示すように、発光層部4と半導体単結晶基板としてのGaAs単結晶基板61との間に分離用成長層62を予め形成し、発光層部4を、(b)に示すように金属層3を介して導電性基板であるSi単結晶基板2に接合した後、(c)に示すように分離用成長層62を選択的に除去することにより、発光層部4とGaAs単結晶基板61とを分離するようにしてもよい。この場合、分離用成長層62は、GaAs単結晶基板61上にエピタキシャル成長可能であり、かつ発光層部4よりも特定のエッチング液に対する溶解性の高い材質にて構成しておくことが望ましい。」 (キ)「【0032】GaAs単結晶基板61を除去ないし分離した発光素子基板1aは、その電流拡散層44側に第一電極5を、Si単結晶基板2の第二主表面8側に第二電極6をそれぞれ形成してダイシング後、その半導体チップを支持体に固着し、さらにリード線をワイヤボンディングして樹脂封止することにより図2に示す発光素子1が得られる。」 (ク)「【0041】次に、図8に示すように、導電性基板はSi単結晶等の半導体に代えて、金属を用いることも可能である。図8に示す発光素子220では、導電性基板2としてAl基板21が使用されている。金属層3としては、Al基板21側にAu層31を、発光層部4側にAu-Ge合金層33を配置した2層構造のものを採用している。導電性基板2に金属を使用することで第二電極を省略することが可能となる。なお、導電性基板2として用いる金属の材質としては、Al以外にSnを使用することも可能である。」 また、 (ケ)引用刊行物の発光素子を製造する際に、半導体単結晶基板61を提供する工程が存在することは明らかである。 (コ)引用刊行物の発光素子において、半導体単結晶基板61上にエピタキシャル成長される発光層部4はAlGaInP等からなる半導体層であり、該発光層部が複数の半導体層から形成されていることは当業者において明らかである。 (サ)引用刊行物の発光素子は、その発光層部4が半導体層で形成されていることから、該発光素子は「半導体装置」である、ということができる。 (シ)引用刊行物には、導電性基板2の第一主表面と発光層部4の第一主表面とを金属層3を介して加熱して接合処理すること(上記摘記事項(エ)【0014】参照)、さらに、該導電性基板2はAl等の金属とすることができること(同(ウ)【0011】参照。)、がそれぞれ記載されているから、該引用刊行物には、発光層部の半導体層の上にAl等の金属の導電性基板を加熱接合することにより形成することが記載されている、といえる。 よって、上記記載事項等を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている、といえる。 「Al等の金属の導電性基板を具えた半導体装置の製造方法において、 半導体単結晶基板を提供する工程と、 複数の半導体層を該半導体単結晶基板の上に形成する工程と、 該Al等の金属の導電性基板を半導体層の上に加熱接合することにより形成する工程と、 該半導体単結晶基板を除去する工程と、 を含む、Al等の金属の導電性基板を具えた半導体装置の製造方法。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「Al等の金属の導電性基板」、「半導体装置」、「半導体単結晶基板」、「工程」及び「半導体層」は、それぞれ本願発明の「金属基板」、「半導体装置」、「半導体基板」、「ステップ」及び「半導体層」に相当する。 また、引用発明の「複数の」半導体層は、本願発明の「少なくとも一つの」半導体層に一致する。 したがって、両者は、 「金属基板を具えた半導体装置の製造方法において、 半導体基板を提供するステップと、 複数の半導体層を該半導体基板の上に形成するステップと、 該金属基板を半導体層の上に形成するステップと、 該半導体基板を除去するステップと、 を含む、金属基板を具えた半導体装置の製造方法。」 である点で一致する。 してみると、両発明の間には相違点は存在せず、本願発明は引用発明と同一である。 なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、『本申請案は・・・(中略)・・・金属オームコンタクト68上に「蒸着或いはスパッタリング或いは電気メッキ或いは無電極電気メッキの方式」で直接熱さ20μ以上の金属基板70をメッキし、或いは「少なくとも低温溶融の金属を溶融後、該低温溶融の金属を半導体層上に付着させる」など、引用文献1は本案とは異なり、「接合の方式」を利用し永久基板を接合する。本申請案が申請するのは「方法の特許請求の範囲」であるため、両者形成の方法は完全に異なる。』と主張する(第2頁第45行?第3頁第2行)。しかしながら、本願特許請求の範囲の請求項1には、「該金属基板を半導体層の上に形成する」と記載されているだけで、その具体的な形成方法が同請求項1に(蒸着やスパッタリング等)特定されているわけではないから、上記主張については参酌することができない。 4.むすび したがって、上記3.において検討したとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-09 |
結審通知日 | 2008-01-15 |
審決日 | 2008-01-28 |
出願番号 | 特願2001-383146(P2001-383146) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛、門田 かづよ |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
向後 晋一 三橋 健二 |
発明の名称 | 金属基板を具えた半導体装置の製造方法 |
代理人 | 杉山 秀雄 |
代理人 | 手島 直彦 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 魚住 高博 |
代理人 | 湯田 浩一 |