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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1179919
審判番号 不服2005-11558  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-20 
確定日 2008-06-17 
事件の表示 平成11年特許願第356873号「半導体デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月 7日出願公開、特開2000-311899〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年12月16日(パリ条約による優先権主張 1998年12月16日 米国(US))の出願であって、平成16年10月28日付け手続補正を平成17年3月14日付けで補正却下するとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月20日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成18年8月1日付けで審尋がなされ、これに対し、指定期間内である平成19年2月2日に回答書が提出されたものである。

第2 平成17年7月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年7月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 (A) 半導体基板(1)上に、金属層(3)を堆積するステップと、
(B) 前記導電層(3)上に、ハードマスク層(5)をプラズマ堆積するステップと、
(C) 前記ハードマスク層(5)上に、厚さが0.86μm以下のホトレジスト層(7)を堆積するステップと、
(D) 前記ホトレジスト層(7)をパターン化して前記ハードマスク層の一部を露出するステップと、
(E) 前記ハードマスク層の露出した部分をハードマスク用エッチング剤でもってエッチングして、前記導電層(3)の一部を露出するステップと、
(F) 前記パターン化したホトレジスト層及び前記ハードマスク層を介して、前記導電層(3)の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップであって、前記ホトレジスト層と前記ハードマスク層を組合せることは、両方の厚さの低減を可能にする
からなることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「(F) 前記導電層(3)の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップ」を「(F) 前記パターン化したホトレジスト層及び前記ハードマスク層を介して、前記導電層(3)の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップであって、前記ホトレジスト層と前記ハードマスク層を組合せることは、両方の厚さの低減を可能にする」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1:特開平8-203911号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、「Al系金属層のプラズマエッチング方法」(発明の名称)に関して、図1とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所などのうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体装置の電極・配線等に用いるAl系金属層のプラズマエッチング方法に関し、さらに詳しくは、Fを含む無機系材料をエッチングマスクとして用いたAl系金属配線の新規なプラズマエッチング方法に関する。」
「【0008】一方、サブハーフミクロンクラスの高集積化した微細なデザインルールのもとでは、フォトリソグラフィにおける露光時の解像度を向上するためにも、レジストの塗布厚を低減することが要求される。しかも、露光波長の短波長化にともない、KrF等のエキシマレーザリソグラフィが採用されつつあるが、これらエキシマレーザリソグラフィ対応の化学増幅型レジストはイオン入射耐性が必ずしも充分でない。したがって、レジスト塗布厚低減による微細加工性の確保と、対レジストマスク選択比の確保とはトレードオフの関係にあり、特に段差下地上のAl系金属層のパターニングにおいて段差部の残渣を除去するオーバーエッチング工程では、レジストマスクの膜減りによるパターン変換差の問題は無視できないレベルとなっている。」
「【0019】Fを含む無機系材料層としては、SiOFおよびSiONFを例示できる。これらは、SiO_(x)F_(y)およびSiO_(x)N_(y)F_(z)の形で表記されるべき化合物であり、必ずしもストイキオメトリ組成を有するものではない。すなわち、通常の無機誘電体材料であるSiO_(2)やSiON中ににFが含まれた構造とみるべきである。・・・」
「【0030】本発明で採用するSiOFあるいはSiONF等の無機系材料マスクは、Fを含有するとは言え、もともとはSiO_(2)系ないしはSiON系の材料であるから、Al系金属層のプラズマエッチングにおいては対エッチングマスク選択比は充分に確保することが可能である。」
「【0035】本実施例で用いた試料は、図示しないSi等の半導体基板上のSiO_(2)からなる層間絶縁膜1上に形成したTi層およびTiN層の積層による密着層兼バリアメタル層2、Al-0.5%CuからなるAl系金属層3およびSiOFからなる無機系材料層4およびレジストマスク5が順次形成されたものである。各層の厚さは一例として層間絶縁膜1は600nの厚さに減圧CVDにより形成したものであり、密着層兼バリアメタル層2は下層のTi層が30nm、上層のTiN層が70nmで合計100nmをいずれもスパッタリングないし反応性スパッタリングにより形成したものである。Al系金属層4はこれもスパッタリングにより500nmの厚さに堆積したものである。無機系材料層4は、一例として基板バイアス印加が可能なECRプラズマCVD装置により、ソースガスであるSiH_(4)/N_(2)O混合ガスに加えて、プラズマ発生チャンバにSiF_(4)を添加することにより100nmの厚さに形成した。またレジストマスク5は無機系材料層4をパターニングするためのマスクであり、化学増幅型レジストとKrFエキシマレーザリソグラフィにより0.35μm幅のパターンに選択的に形成したものである。なお、層間絶縁膜1には図示しない接続孔が開口されており、これも図示しない半導体基板の拡散層等の能動層と密着層兼バリアメタル層2がオーミックコンタクトを形成している構造であってもよい。この場合には密着層兼バリアメタル層2はコリメータ等を用いた垂直入射成分の多いスパッタリング条件により接続孔をコンフォーマルに被覆するように形成する。この状態を図1(a)に示す。
【0036】つぎにレジストマスク5をマスクとし、無機系材料層4をF系ガスを用いてパターニングした後、レジストマスク5はアッシング除去する。この工程は、インラインのアッシング装置を連接したRIE装置等、公知のプラズマエッチング装置を用いればよい。無機系材料層4によるエッチングマスクが形成された状態を図1(b)に示し、これを被エッチング基板とする。
【0037】この被エッチング基板を基板バイアス印加型のヘリコン波プラズマエッチング装置の基板ステージ上にセッティングし、Al系金属層の一般的なエッチングガスであるBCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層3およ密着層兼バリアメタル層2を含む積層膜を一例として下記条件により連続的にパターニングした。
BCl_(3)流量 50 sccm
Cl_(2)流量 50 sccm
ガス圧力 0.13 Pa
ヘリコン波電源パワー 2500 W(13.56MHz)
基板バイアスパワー 100 W(13.56MHz)
基板温度 20 ℃
なお基板温度は、温度制御された基板ステージの上面より被処理基板裏面に向けて熱伝導ガスとしてのHeを10sccm流出させて一定温度を保った。プラズマエッチング進行中の被エッチング基板の状態を図1(c)に示す。通常、SiO_(2)やSiON等の無機系材料をエッチングマスクとし、BCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層をプラズマエッチングする場合には、側壁保護膜の供給源が存在しないので、パターニングされたAl系金属層は大きくサイドエッチングされる。しかしながら本実施例では、SiOFからなる無機系材料層4からなるマスクがスパッタリングされて放出する活性Fにより、パターニングされつつあるAl系金属層の側面がフッ化され、AlF_(x)からなる側壁保護膜6が形成されるのでサイドエッチングが入ることがない。」
さらに、図1の(a)には、「レジストマスク5をパターン化してSiOFからなる無機系材料層4の一部を露出した」様子が示され、(b)には、「SiOFからなる無機系材料層4の露出した部分をエッチングして、Al系金属層3の一部を露出した」様子が示され、(c)及び(d)には、「パターン化したSiOFからなる無機系材料層4を介して、Al系金属層3及び密着層兼バリアメタル層2の露出した部分をエッチングした」様子が示されている。
以上から、刊行物1には、
「半導体基板上の層間絶縁膜1上に、Ti層及びTiN層の積層による密着層兼バリアメタル層2及びAl-0.5%CuからなるAl系金属層3をスパッタリングにより堆積し、
Al系金属層3上に、SiOFからなる無機系材料層4をECRプラズマCVD装置により、100nmの厚さに形成し、
SiOFからなる無機系材料層4上に、レジストマスク5を形成し、
レジストマスク5は無機系材料層4をパターニングするためのマスクであり、パターン化して、SiOFからなる無機系材料層4の一部を露出し、
次に、レジストマスク5をマスクとし、無機系材料層4の露出した部分をF系ガスを用いてエッチングしてパターニングしAl系金属層3の一部を露出した後、レジストマスク5はアッシング除去し、
パターン化したSiOFからなる無機系材料層4を介して、Al系金属層の一般的なエッチングガスであるBCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層3及び密着層兼バリアメタル層2を含む積層膜の露出した部分をエッチングして連続的にパターニングしたAl系金属層のプラズマエッチング方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)刊行物2:特開平10-256149号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2には、「レジストパターンの形成方法」(発明の名称)に関して、図3とともに以下の事項が記載されている。
「【0026】図3に、以下に説明する本発明の第1、第2の実施例で用いた、KrFエキシマレーザー用レジストのレジスト膜厚によるパターン寸法(CD;Critical Dimention)の変動曲線を示す。図3を参照すると、この変動曲線の極小値のレジスト膜厚は0.66μm、極大値のレジスト膜厚は0.71μmであり、半導体装置における段差の高さは0.03μmである。」
さらに、図3には、「レジスト膜厚として、0.645?0.725μm」の目盛りが記載されている。

(ウ)刊行物3:特開平10-301293号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3には、「パターン形成方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0024】・・・レジスト膜の膜厚は0.8μm であった。・・・」
「【0032】・・・本実施例の場合、ホトレジストの膜厚0.8μmを0.4μmに変えて・・・」

(エ)刊行物4:特開平10-307399号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物4には、「レジスト用感光性樹脂組成物」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0144】・・・この発明の溶液状態のレジスト用感光性樹脂組成物を、スピンコート法により、乾燥(プリベーク)後の厚さが0.4μmのレジスト膜となるように塗布した。・・・」
「【0158】・・・この発明の溶液状態のレジスト用感光性樹脂組成物を、スピンコート法により、乾燥(プリベーク)後の厚さが0.3μmのレジスト膜となるように塗布した。」
「【0173】・・・この発明の溶液状態のレジスト用感光性樹脂組成物を、スピンコート法により、乾燥(プリベーク)後の厚さが0.4μmのレジスト膜となるように塗布した。」

(オ)刊行物5:特開平10-326020号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物5には、「レジストパターンの製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0034】・・・プリベーク後のレジストの膜厚は、0.7μmであった。・・・」

(カ)刊行物6:特開平10-189441号公報
刊行物6には、「基板のホトリソグラフィック処理における精度を改善するための方法及び装置」(発明の名称)に関して、図5(B),図10とともに以下の事項が記載されている。
「【0061】ホトレジスト層225は現像され(ステップ440)、ホトレジスト層225に形成されたパターンがエッチング工程(ステップ450)によってハードマスク250に転写される。そして、ここでの除去が望ましいならホトレジスト層225の残余部分が除去される(ステップ460)。次に下層230はハードマスク250を用いてパターン形成され(ステップ470)、その後ハードマスク250及びARC210が除去される(ステップ480)。これは下層のエッチングの完了より先にホトレジストがエッチングされてなくなる問題を回避する。この様に、マスクパターンは正確にパターン形成層に転写される。
【0062】代わりに、より慣例的な技術に従って、下層230のパターン形成中にはホトレジスト層225を所定の位置に残しておき、その後にハードマスク250及びARC210と共に除去することもできる。・・・」
「【0072】図10はホトレジストの線幅対ホトレジスト層の厚さのグラフである。線幅は、用語が示唆するように、基板に堆積された材料のストリップの幅である。シュミレーションにおいて、ホトレジスト層の厚さは、800?900nm(0.8?0.9ミクロン)の間で変えられた。・・・
【0073】・・・ハードマスクを付加すると、ホトレジスト層の厚さの変化に関連した線幅の変化が更に低減する。・・・」

(キ)刊行物7:特開平10-209134号公報
刊行物7には、「パターン形成方法」(発明の名称)に関して、図1,図2,図6とともに以下の事項が記載されている。
「【0133】次に、図1(f)に示すように、レジストパターン5と有機シリコン膜パターン6をエッチングマスクとして用いて、被加工膜2の加工を行う。レジストパターン5に対する有機シリコン膜パターン6のエッチング選択比(有機シリコン膜のエッチングレート/レジストのエッチングレート)が高いため、レジストパターン5と有機シリコン膜パターン6の残りが十分であるため、エッチングマスク不足による肩落ちや後退を防ぐことができ、寸法制御性よく被加工膜2を加工し、パターン7を形成することができる。」(第56頁)
「【0135】また、図2(a)および(b)に示すように、レジストパターン5を除去して、図2(c)に示すように、有機シリコン膜パターン6のみをエッチングマスクとして用いて、被加工膜2をエッチングし、パターン7を形成してもよい。・・・」(第56頁)
「【0379】また、レジスト膜厚を100?200nmの範囲で変化させてレジストパターン寸法を測定した。その結果を図6に示す。・・・」(第89頁)

(2)本願補正発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「Ti層及びTiN層の積層による密着層兼バリアメタル層2及びAl-0.5%CuからなるAl系金属層3」(以下、「Al系金属層等」という。)、「SiOFからなる無機系材料層4」、「ECRプラズマCVD装置により、100nmの厚さに形成」、「レジストマスク5」、「F系ガス」、「Al系金属層の一般的なエッチングガスであるBCl_(3)/Cl_(2)混合ガス」は、それぞれ本願補正発明の「金属層,導電層」、「マスク層」、「プラズマ堆積」、「ホトレジスト層」、「マスク用エッチング剤」、「金属用エッチング剤」に相当する。
そして、引用発明の「Ti層及びTiN層の積層による密着層兼バリアメタル層2及びAl-0.5%CuからなるAl系金属層3をスパッタリングにより堆積」する工程は、本願補正発明の「金属層を堆積するステップ」に相当する。
引用発明の「Al系金属層3上に、SiOFからなる無機系材料層4をECRプラズマCVD装置により、100nmの厚さに形成」する工程は、本願補正発明の「前記導電層上に、」「マスク層をプラズマ堆積するステップ」に相当する。
引用発明の「SiOFからなる無機系材料層4上に、レジストマスク5を形成」する工程は、本願補正発明の「前記」「マスク層上に、」「ホトレジスト層を堆積するステップ」に相当する。
引用発明の「レジストマスク5は無機系材料層4をパターニングするためのマスクであり、パターン化して、SiOFからなる無機系材料層4の一部を露出」する工程は、本願補正発明の「前記ホトレジスト層をパターン化して前記」「マスク層の一部を露出するステップ」に相当する。
引用発明の「無機系材料層4の露出した部分をF系ガスを用いてエッチングしてパターニングしAl系金属層3の一部を露出」する工程は、本願補正発明の「前記」「マスク層の露出した部分を」「マスク用エッチング剤でもってエッチングして、前記導電層の一部を露出するステップ」に相当する。
引用発明の「Al系金属層の一般的なエッチングガスであるBCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層3及び密着層兼バリアメタル層2を含む積層膜の露出した部分をエッチングして連続的にパターニング」する工程は、本願補正発明の「前記導電層の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップ」に相当する。
さらに、引用発明のAl系金属層等は、半導体装置の電極・配線等に用いるので、引用発明の「Al系金属層のプラズマエッチング方法」は、本願補正発明の「半導体デバイスの製造方法」に相当する。
ゆえに、両者は、
「(A) 金属層を堆積するステップと、
(B) 前記導電層上に、マスク層をプラズマ堆積するステップと、
(C) 前記マスク層上に、ホトレジスト層を堆積するステップと、
(D) 前記ホトレジスト層をパターン化して前記マスク層の一部を露出するステップと、
(E) 前記マスク層の露出した部分をマスク用エッチング剤でもってエッチングして、前記導電層の一部を露出するステップと、
(F) 前記導電層の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップ
からなることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。」で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]金属層を、本願補正発明では、「半導体基板上」に堆積しているのに対して、引用発明では「半導体基板上の層間絶縁膜上」に堆積している点。
[相違点2]本願補正発明では、「ハードマスク層」であるのに対して、引用発明では、「SiOFからなる無機系材料層」である点。
[相違点3]ホトレジスト層の厚さが、本願補正発明では、「0.86μm以下」であるのに対して、引用発明では、特定されていない点。
[相違点4]導電層の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングする際、本願補正発明では、「パターン化したホトレジスト層及びハードマスク層を介して」行い、「ホトレジスト層とハードマスク層を組合せることは、両方の厚さの低減を可能にする」のに対して、引用発明では、「SiOFからなる無機系材料層を介して」行っている点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1]
半導体技術分野では、「半導体基板上に、金属層を堆積する」とは、「半導体基板上に直接接して、金属層を堆積する」場合と「半導体基板の上方ではあるが、別の層を介して、金属層を堆積する」場合の両者を含むことは常識であって、引用発明の場合は、後者に該当するから、Al系金属層等は半導体基板上に堆積されていると言え、相違点1は、実質的には相違点ではない。
仮に、本願補正発明は、「半導体基板上に直接接して、金属層を堆積する」ものであるとしても、引用発明において、半導体基板上に直接接して、Al系金属層等(金属層)を堆積することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

[相違点2]
本願明細書には、「【0006】このような問題は、金属エッチング剤に対し大きな抵抗力を有する他の材料(例えば二酸化シリコン製ハードマスク)を堆積し、その後このハードマスクを薄いホトレジスト層でパターン化することにより解決しうることが見いだされている。」と記載され、「【0018】ハードマスク材料は、・・・シリコン酸素窒化物,・・・二酸化シリコン・・・等が好ましい。」と記載されている。
そして、刊行物1に、「【0030】本発明で採用するSiOFあるいはSiONF等の無機系材料マスクは、Fを含有するとは言え、もともとはSiO_(2)系ないしはSiON系の材料であるから、Al系金属層のプラズマエッチングにおいては対エッチングマスク選択比は充分に確保することが可能である。」と記載されているように、引用発明の「SiOFからなる無機系材料層」は、SiO_(2)系の材料であり、Al系金属層のプラズマエッチングにおいては対エッチングマスク選択比は充分に確保できるものであるから、本願補正発明のハードマスク材料の一つである二酸化シリコンと同等であり、さらに、本願補正発明と同様に金属エッチング剤に対し大きな抵抗力を有する材料である。
ゆえに、引用発明の「SiOFからなる無機系材料層」は、実質的に本願補正発明の「ハードマスク」に相当するものであって、相違点2は、実質的には相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、刊行物1には、「【0037】通常、SiO_(2)やSiON等の無機系材料をエッチングマスクとし、BCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層をプラズマエッチングする・・・」と、F無しのSiO_(2)を用いることも記載されており、引用発明のマスクとして、本願補正発明のハードマスク材料の一つである二酸化シリコン、すなわちハードマスクを用いることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点3]
刊行物1には、「【0008】・・・露光時の解像度を向上するためにも、レジストの塗布厚を低減することが要求される。・・・レジスト塗布厚低減による微細加工性の確保と、対レジストマスク選択比の確保とはトレードオフの関係にあり・・・」との課題(以下、「刊行物1記載の課題」という。)が記載されており、さらに、厚さが0.86μm以下のレジストマスク(ホトレジスト層)を用いることは、例えば、刊行物2(0.66μm、0.71μm、0.645?0.725μm)、刊行物3(0.8μm 、0.4μm)、刊行物4(0.4μm、0.3μm)、刊行物5(0.7μm)、刊行物6(0.8?0.9μm)、刊行物7(100?200nm=0.1?0.2μm)にも示されるように周知技術である。
ゆえに、引用発明において、レジストマスク(ホトレジスト層)の厚さを「0.86μm以下」とすることは、上記刊行物1記載の課題及び上記周知技術であるレジストマスク(ホトレジスト層)の厚さを考慮して、当業者が実験などにより適宜決定し得たことである。

[相違点4]
刊行物6,7にも示されるように、ハードマスク等の層とホトレジスト層を用いてエッチングを行う場合に、ホトレジスト層を残さない場合と残す場合の両方があることは、周知技術であり、引用発明において、レジストマスク(ホトレジスト層)を残してパターン化したレジストマスク(ホトレジスト層)及び無機系材料層(ハードマスク層)を介してAl系金属層等(導電層)をエッチングすることは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、引用発明において、レジストマスク(ホトレジスト層)を残した場合、レジストマスク(ホトレジスト層)と無機系材料層(ハードマスク層)の両方がマスクになるのであるから、レジストマスク(ホトレジスト層)と無機系材料層(ハードマスク層)の両方の厚さの低減が可能になることは、当然のことにすぎない。
仮に、レジストマスク(ホトレジスト層)と無機系材料層(ハードマスク層)の両方の厚さの低減が可能になることは、当然のことでないとしても、引用発明の無機系材料層は100nmの厚さに形成されており、本願補正発明の実験例26(【0032】)の「100nmのハードマスク」と同じ厚さであり、さらに、上記相違点3において検討したとおり、引用発明において、レジストマスク(ホトレジスト層)の厚さを「0.86μm以下」とすることは、上記刊行物1記載の課題及び上記周知技術であるレジストマスク(ホトレジスト層)の厚さを考慮して、当業者が実験などにより適宜決定し得たことであるから、引用発明において、レジストマスク(ホトレジスト層)を残した場合に、レジストマスク(ホトレジスト層)と無機系材料層(ハードマスク層)の両方の厚さの低減を可能とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

また、本願補正発明の効果についても、刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測された範囲内のものであり、格別のものは認められない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成17年7月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年7月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ただし、平成15年7月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には「(A) 半導体基板(1)上に、導電層(3)をマラズマ堆積するステップと、(B) 前記導電層(3)上に、ハードマスク層(5)を堆積するステップ」と記載されているが、「マラズマ」は、明らかに「プラズマ」の誤記である。
さらに、「導電層(3)をプラズマ堆積する」ことは、本願明細書及び図面に記載はなく、平成15年7月16日付け意見書中でも「別途提出した手続補正書において補正された請求項1においては、ハードマスクがプラズマ堆積される工程((B)工程)を規定します。」と主張しており、その後の平成16年10月28日付け手続補正書においても「(A) 半導体基板(1)上に、導電層(3)を堆積するステップと、(B) 前記導電層(3)上に、ハードマスク層(5)をプラズマ堆積するステップ」と補正している。
ゆえに、「(A) 半導体基板(1)上に、導電層(3)をマラズマ堆積するステップと、(B) 前記導電層(3)上に、ハードマスク層(5)を堆積するステップ」は、「(A) 半導体基板(1)上に、導電層(3)を堆積するステップと、(B) 前記導電層(3)上に、ハードマスク層(5)をプラズマ堆積するステップ」の誤記であると認められるので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を以下のとおり認定した。

「【請求項1】 (A) 半導体基板(1)上に、導電層(3)を堆積するステップと、
(B) 前記導電層(3)上に、ハードマスク層(5)をプラズマ堆積するステップと、
(C) 前記ハードマスク層(5)上に、厚さが0.86μm以下のホトレジスト層(7)を堆積するステップと、
(D) 前記ホトレジスト層(7)をパターン化して前記ハードマスク層の一部を露出するステップと、
(E) 前記ハードマスク層の露出した部分をハードマスク用エッチング剤でもってエッチングして、前記導電層(3)の一部を露出するステップと、
(F) 前記導電層(3)の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップと、
からなることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。」

2 刊行物に記載された発明
前記「第2 2(1)」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「Ti層及びTiN層の積層による密着層兼バリアメタル層2及びAl-0.5%CuからなるAl系金属層3」(以下、「Al系金属層等」という。)、「SiOFからなる無機系材料層4」、「ECRプラズマCVD装置により、100nmの厚さに形成」、「レジストマスク5」、「F系ガス」、「Al系金属層の一般的なエッチングガスであるBCl_(3)/Cl_(2)混合ガス」は、それぞれ本願発明の「金属層,導電層」、「マスク層」、「プラズマ堆積」、「ホトレジスト層」、「マスク用エッチング剤」、「金属用エッチング剤」に相当する。
そして、引用発明の「Ti層及びTiN層の積層による密着層兼バリアメタル層2及びAl-0.5%CuからなるAl系金属層3をスパッタリングにより堆積」する工程は、本願発明の「金属層を堆積するステップ」に相当する。
引用発明の「Al系金属層3上に、SiOFからなる無機系材料層4をECRプラズマCVD装置により、100nmの厚さに形成」する工程は、本願発明の「前記導電層上に、」「マスク層をプラズマ堆積するステップ」に相当する。
引用発明の「SiOFからなる無機系材料層4上に、レジストマスク5を形成」する工程は、本願発明の「前記」「マスク層上に、」「ホトレジスト層を堆積するステップ」に相当する。
引用発明の「レジストマスク5は無機系材料層4をパターニングするためのマスクであり、パターン化して、SiOFからなる無機系材料層4の一部を露出」する工程は、本願発明の「前記ホトレジスト層をパターン化して前記」「マスク層の一部を露出するステップ」に相当する。
引用発明の「無機系材料層4の露出した部分をF系ガスを用いてエッチングしてパターニングしAl系金属層3の一部を露出」する工程は、本願発明の「前記」「マスク層の露出した部分を」「マスク用エッチング剤でもってエッチングして、前記導電層の一部を露出するステップ」に相当する。
引用発明の「Al系金属層の一般的なエッチングガスであるBCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層3及び密着層兼バリアメタル層2を含む積層膜の露出した部分をエッチングして連続的にパターニング」する工程は、本願発明の「前記導電層の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップ」に相当する。
さらに、引用発明のAl系金属層等は、半導体装置の電極・配線等に用いるので、引用発明の「Al系金属層のプラズマエッチング方法」は、本願発明の「半導体デバイスの製造方法」に相当する。
ゆえに、両者は、
「(A) 金属層を堆積するステップと、
(B) 前記導電層上に、マスク層をプラズマ堆積するステップと、
(C) 前記マスク層上に、ホトレジスト層を堆積するステップと、
(D) 前記ホトレジスト層をパターン化して前記マスク層の一部を露出するステップと、
(E) 前記マスク層の露出した部分をマスク用エッチング剤でもってエッチングして、前記導電層の一部を露出するステップと、
(F) 前記導電層の露出した部分を金属用エッチング剤でエッチングするステップと、
からなることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。」で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]金属層を、本願発明では、「半導体基板上」に堆積しているのに対して、引用発明では「半導体基板上の層間絶縁膜上」に堆積している点。
[相違点2]本願発明では、「ハードマスク層」であるのに対して、引用発明では、「SiOFからなる無機系材料層」である点。
[相違点3]ホトレジスト層の厚さが、本願発明では、「0.86μm以下」であるのに対して、引用発明では、特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1]
半導体技術分野では、「半導体基板上に、金属層を堆積する」とは、「半導体基板上に直接接して、金属層を堆積する」場合と「半導体基板の上方ではあるが、別の層を介して、金属層を堆積する」場合の両者を含むことは常識であって、引用発明の場合は、後者に該当するから、Al系金属層等は半導体基板上に堆積されていると言え、相違点1は、実質的には相違点ではない。
仮に、本願発明は、「半導体基板上に直接接して、金属層を堆積する」ものであるとしても、引用発明において、半導体基板上に直接接して、Al系金属層等(金属層)を堆積することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

[相違点2]
本願明細書には、「【0006】このような問題は、金属エッチング剤に対し大きな抵抗力を有する他の材料(例えば二酸化シリコン製ハードマスク)を堆積し、その後このハードマスクを薄いホトレジスト層でパターン化することにより解決しうることが見いだされている。」と記載され、「【0018】ハードマスク材料は、・・・シリコン酸素窒化物,・・・二酸化シリコン・・・等が好ましい。」と記載されている。
そして、刊行物1に、「【0030】本発明で採用するSiOFあるいはSiONF等の無機系材料マスクは、Fを含有するとは言え、もともとはSiO_(2)系ないしはSiON系の材料であるから、Al系金属層のプラズマエッチングにおいては対エッチングマスク選択比は充分に確保することが可能である。」と記載されているように、引用発明の「SiOFからなる無機系材料層」は、SiO_(2)系の材料であり、Al系金属層のプラズマエッチングにおいては対エッチングマスク選択比は充分に確保できるものであるから、本願発明のハードマスク材料の一つである二酸化シリコンと同等であり、さらに、本願発明と同様に金属エッチング剤に対し大きな抵抗力を有する材料である。
ゆえに、引用発明の「SiOFからなる無機系材料層」は、実質的に本願発明の「ハードマスク」に相当するものであって、相違点2は、実質的には相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、刊行物1には、「【0037】通常、SiO_(2)やSiON等の無機系材料をエッチングマスクとし、BCl_(3)/Cl_(2)混合ガスによりAl系金属層をプラズマエッチングする・・・」と、F無しのSiO_(2)を用いることも記載されており、引用発明のマスクとして、本願発明のハードマスク材料の一つである二酸化シリコン、すなわちハードマスクを用いることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点3]
刊行物1には、「【0008】・・・露光時の解像度を向上するためにも、レジストの塗布厚を低減することが要求される。・・・レジスト塗布厚低減による微細加工性の確保と、対レジストマスク選択比の確保とはトレードオフの関係にあり・・・」との課題(以下、「刊行物1記載の課題」という。)が記載されており、さらに、厚さが0.86μm以下のレジストマスク(ホトレジスト層)を用いることは、例えば、刊行物2(0.66μm、0.71μm、0.645?0.725μm)、刊行物3(0.8μm 、0.4μm)、刊行物4(0.4μm、0.3μm)、刊行物5(0.7μm)、刊行物6(0.8?0.9μm)、刊行物7(100?200nm=0.1?0.2μm)にも示されるように周知技術である。
ゆえに、引用発明において、レジストマスク(ホトレジスト層)の厚さを「0.86μm以下」とすることは、上記刊行物1記載の課題及び上記周知技術であるレジストマスク(ホトレジスト層)の厚さを考慮して、当業者が実験などにより適宜決定し得たことである。

また、本願発明の効果についても、刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測された範囲内のものであり、格別のものは認められない。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-18 
結審通知日 2008-01-21 
審決日 2008-02-01 
出願番号 特願平11-356873
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 智子松本 貢北島 健次  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 井原 純
齋藤 恭一
発明の名称 半導体デバイスの製造方法  
代理人 朝日 伸光  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 越智 隆夫  
代理人 本宮 照久  
代理人 産形 和央  
代理人 臼井 伸一  
代理人 岡部 正夫  

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