• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1179942
審判番号 不服2005-2700  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-17 
確定日 2008-06-19 
事件の表示 特願2003- 21439「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-229859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成15年1月30日の出願であって、平成17年1月4日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年2月17日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月18日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成17年3月18日付けの手続補正を却下するとともに、新たな拒絶の理由(いわゆる最後の拒絶理由)を通知したところ、請求人は平成20年4月2日付けで意見書及び手続補正書(以下、この手続補正を「本件補正」という。)を提出した。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年4月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、補正前後の特許請求の範囲は次のとおりである。
(本件補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】 複数の図柄を変動表示する変動表示手段と、複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段と、この内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技である場合に,複数の小役が発生する一般遊技およびこの一般遊技中に前記変動表示手段に所定の図柄組み合わせが停止表示されると所定の配当を付与して行う高配当ゲームを実行する遊技処理手段とを備えた遊技機において、
前記遊技処理手段は、前記特典遊技における一般遊技中に、所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた新たな図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示されると、複数の前記小役とは異なる役の入賞を発生させ、所定の配当を付与して、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行することを特徴とする遊技機。
【請求項2】 前記変動表示手段は複数の前記図柄を複数列に変動表示し、新たな前記図柄組み合わせはこの複数列のうちの一列の図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なり、前記遊技処理手段は、この一列の図柄が前記変動表示手段に最後に停止表示された場合に、図柄組み合わせが所定の前記図柄組み合わせか新たな前記図柄組み合わせであるかを判断することを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】 前記遊技処理手段は、前記一列に変動表示される図柄であって新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄が入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者によって前記一列の変動表示停止操作が行われて、新たな前記図柄組み合わせが前記一列に停止表示されると、所定の前記配当を付与して前記特典遊技における一般遊技を続行することを特徴とする請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】 前記遊技処理手段は、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄から一定間隔をあけて後続して前記一列に変動表示される、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄を含まない所定範囲の図柄が前記一列に停止表示されると、所定の前記配当を付与せずに前記特典遊技における一般遊技を続行することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の遊技機。

(本件補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】 複数の図柄を複数列に変動表示する変動表示手段と、
複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段と、
この内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技に対応した特典遊技役であり、この特典遊技役に対応する図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示された場合に、前記複数の内部当選役のうち複数の小役の入賞が発生する一般遊技、およびこの一般遊技中に前記内部当選役抽選手段によって所定の図柄組み合わせに対応する内部当選役が決定され、かつ、前記変動表示手段に所定の前記図柄組み合わせが停止表示されると所定の配当を付与して行う高配当ゲームを実行する遊技処理手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技処理手段は、
前記特典遊技における一般遊技中に限り、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって、前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる予め定められた新たな図柄組み合わせが、前記一列の図柄が前記変動表示手段に前記複数列の中で最後に停止表示され、かつ、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄が前記一列において所定の入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者により変動表示停止操作が行われて、前記変動表示手段に停止表示されると、複数の前記小役とは異なる新たな前記図柄組み合わせに対応する役の入賞を発生させ、
新たな前記図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示されると、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役である場合であっても、所定の配当を付与して、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行し、
前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって、前記一列の図柄が前記変動表示手段に前記複数列の中で最後に停止表示され、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄を含まない前記一列の所定範囲の図柄が前記一列において所定の前記入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者により変動表示停止操作が行われて、所定の前記図柄組み合わせおよび新たな前記図柄組み合わせのいずれも前記変動表示手段に停止表示されない場合には、所定の前記配当を付与せず、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行することを特徴とする遊技機。

2.補正目的違反
「新たな前記図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示されると、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役である場合であっても、所定の配当を付与して、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行」が「遊技処理手段」の限定であることは認める。
しかし、補正前の請求項1?4の何れにも、内部当選役が高配当ゲーム実行条件(所定の図柄組み合わせ)に対応する内部当選役である場合であっても、「新たな前記図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示される」ことを許容する旨の記載はなく、この限定事項は、「所定の配当を得つつ、リプレイ外し(審決注;特典遊技中に高配当ゲーム実行条件の内部当選役に内部当選した場合に、内部当選を無効とすることを意味する。)、つまり、高配当ゲームを開始させることなく特典遊技における一般遊技を続行することが出来る。」(段落【0008】)との、補正前請求項1?4には存在しない課題を追加するものであるから、平成18年改正前特許法特許法17条の2第4項2号には該当しない。
上記限定が、請求項削除、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明の何れにも該当しないことも明らかである。
したがって、本件補正は平成18年改正前特許法特許法17条の2第4項の規定に違反している。

3.独立特許要件欠如
(1)補正発明の認定
仮に上記限定事項が平成18年改正前特許法特許法17条の2第4項2号に該当するとした場合の検討を予備的に行う。その場合、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができなければならない。補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は前項で記したとおりである。

(2)引用刊行物記載の発明の認定
本件出願前に頒布された「パチスロ必勝ガイドMAX2月号増刊」(株式会社白夜書房より平成14年2月1日発行)の73頁(当審における拒絶の理由に引用した文献の1つであり、以下「引用例1」という。)の中央部には、「キングオブファイア」の正面写真、絵柄配置図、ボーナス確率&機械割表及び各役払い出し表並びにリプレイハズシ攻略法手順が掲載されており、その内容は次のとおりである。
各役払い出し表には、「BIG BONUS」、「REG BONUS」、「BONUS IN」、「JAC GAME」等の用語が記載されており、特に「BONUS IN」は「R」]の文字のある青色絵柄(以下「R絵柄」という。)が3つ揃った状態であることが示されている。
リプレイハズシ攻略法手順としては、「リプレイをハズす場合」として、中段テンパイ(中リール及び右リールの中段にR絵柄が停止した状態であることが図示されている。)であれば「左リール枠内に黒7を狙う」と、下段テンパイ(中リール及び右リールの下段にR絵柄が停止した状態であることが図示されている。)であれば「左リール中段に黒7をビタ押し」とそれぞれ記載されている。
絵柄配置図には、左リールの絵柄配置として、6番絵柄が黒7であり、4番、8番、10番、16番及び19番絵柄がR絵柄であり、5番絵柄がスイカであり、7番絵柄が王冠であることが示されている。

引用例1は「パチスロ必勝ガイドMAX2月号増刊」の特定の1頁であり、正面写真等からみて、「キングオブファイア」が、3つのリール(それぞれに絵柄配置図のとおり、21個の絵柄が配されている。)を有するパチスロであることは明らかである。
「BIG BONUS」(以下「BIG」と略記する。)及び「REG BONUS」(以下「REG」と略記する。)が入賞であり、「BONUS IN」がBIG中にREGに入賞することを意味し、「JAC GAME」がREG中の遊技であることは技術常識に属する。引用例1にボーナス確率の記載があることから、ボーナスに入賞するかどうかは抽選により行われることが読み取れる。その他の役が抽選により入賞するかどうかについて、引用例1に直接記載されていないものの、パチスロの技術常識から見て自明である。
また、「リプレイハズシ」が、BIG中に「BONUS IN」入賞しても、R絵柄を3つ揃えさせないことを意味することも技術常識に属する。
各役払い出し表によれば、R絵柄以外-R絵柄-R絵柄の組み合わせで配当が付与されるのは、JAC GAMEのみであり、赤7-R絵柄-R絵柄及び青7-R絵柄-R絵柄がこれに割り当てられている。
したがって、引用例1には次のようなパチスロが記載されていると認めることができる。
「3つのリールを有するパチスロであって、
各リールには21個の絵柄を配し、左リールの6番絵柄が黒7であり、4番、8番、10番、16番及び19番絵柄がR絵柄であり、5番絵柄がスイカであり、7番絵柄が王冠であり、
BIG、REG及びその他の役に入賞可能であり、BIG中にはR絵柄が3つ揃うことによりREGに入賞するように構成されており、各役に入賞するかどうかは抽選により決定され、
REG中の遊技における赤7-R絵柄-R絵柄又は青7-R絵柄-R絵柄の組み合わせを除けば、R絵柄以外-R絵柄-R絵柄の組み合わせで配当を付与せず、
BIG中にREGに入賞しても、中リール及び右リールの中段にR絵柄が停止した場合には左リールの黒7を枠内に停止することによりR絵柄が3つ揃うことを阻止でき、同じく中リール及び右リールの下段にR絵柄が停止した場合には左リールの黒7を中段にビタ押しすることによりR絵柄が3つ揃うことを阻止できるパチスロ。」(以下「引用発明1」という。)

(3)補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「絵柄」と補正発明の「図柄」には表現上の相違しかなく、引用発明1の3つのリールは補正発明の「複数の図柄を複数列に変動表示する変動表示手段」に相当する。
引用発明1の「BIG、REG及びその他の役」は補正発明の「複数の内部当選役」に相当し、引用発明1では「各役に入賞するかどうかは抽選により決定」されるのだから、「複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段」を備えることは補正発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の「BIG」は、遊技内容として補正発明の「特典遊技」に相当し、役として「特典遊技に対応した特典遊技役」に相当し、「この特典遊技役に対応する図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示された場合」に特典遊技を実行することは明らかである。
引用発明1において、BIG中にREGに入賞しない場合の遊技は補正発明の「複数の内部当選役のうち複数の小役の入賞が発生する一般遊技」に相当する。引用発明1において、「BIG中にはR絵柄が3つ揃うこと」につき、そのような入賞が「内部当選役抽選手段によって所定の図柄組み合わせに対応する内部当選役が決定され」、かつ「R絵柄が3つ揃う」(補正発明の「所定の前記図柄組み合わせ」又はかかる組み合わせが停止表示することに相当)ことにより行われることも明らかである。そして、引用発明1の「REG」は補正発明の「所定の配当を付与して行う高配当ゲーム」に相当する。以上を整理すると、「内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技に対応した特典遊技役であり、この特典遊技役に対応する図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示された場合に、前記複数の内部当選役のうち複数の小役の入賞が発生する一般遊技、およびこの一般遊技中に前記内部当選役抽選手段によって所定の図柄組み合わせに対応する内部当選役が決定され、かつ、前記変動表示手段に所定の前記図柄組み合わせが停止表示されると所定の配当を付与して行う高配当ゲームを実行する遊技処理手段」を備えることは、補正発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の「左リール」は補正発明の「前記複数列のうちの一列」及び「前記一列」に相当し、引用発明1において「中リール及び右リールの中段にR絵柄が停止した場合には左リールの黒7を枠内に停止」した場合、中段に停止するのは5番のスイカ、6番の黒7又は7番の王冠であり、その際の停止絵柄は絵柄配列により予め定められているとともに、これらの組み合わせは補正発明の「前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる予め定められた新たな図柄組み合わせ」及び「複数の前記小役とは異なる新たな前記図柄組み合わせ」と一致する。同じく、引用発明1において「中リール及び右リールの下段にR絵柄が停止した場合には左リールの黒7を中段にビタ押し」した場合、下段にはスイカ-R絵柄-R絵柄が揃うことになり、これも「前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる予め定められた新たな図柄組み合わせ」及び「複数の前記小役とは異なる新たな前記図柄組み合わせ」と一致する。それらの停止態様はリプレイハズシに成功した結果であるから、高配当ゲームを実行しないことは明らかである。さらに、引用発明1の「BIG中にREGに入賞」は、補正発明の「前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって」に相当するとともに、補正発明の「前記特典遊技における一般遊技中に限り、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって」とは「前記特典遊技における一般遊技中において、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって」と一致する。
したがって、「遊技処理手段」の限定として、「前記特典遊技における一般遊技中において、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって、前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる新たな図柄組み合わせが、前記一列の図柄が前記変動表示手段に前記複数列の中で最後に停止表示され、かつ、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄が前記一列において所定の入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者により変動表示停止操作が行われて、前記変動表示手段に停止表示されると、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役である場合であっても、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行」することは、補正発明と引用発明1の一致点である。
また、「前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって、前記一列の図柄が前記変動表示手段に前記複数列の中で最後に停止表示され、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄を含まない前記一列の所定範囲の図柄が前記一列において所定の前記入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者により変動表示停止操作が行われて、所定の前記図柄組み合わせおよび新たな前記図柄組み合わせのいずれも前記変動表示手段に停止表示されない場合」には、「所定の前記図柄組み合わせ」ではないのだから当然「前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行」せざるを得ず、引用発明1ではREG中の遊技を除けば、R絵柄以外-R絵柄-R絵柄の組み合わせには配当を付与しないのだから、上記の場合に「所定の前記配当を付与せず、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行する」ことも補正発明と引用発明1の一致点である。なお、引用発明1においてリプレイハズシに成功した場合の図柄組み合わせは、黒7-R絵柄-R絵柄、スイカ-R絵柄-R絵柄及び王冠-R絵柄-R絵柄の3通りであり、これらの一部を補正発明の「新たな図柄組み合わせ」に対応させれば、残りのものが「所定の前記図柄組み合わせおよび新たな前記図柄組み合わせのいずれも前記変動表示手段に停止表示されない場合」に対応する。
以上のとおりであるから、補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉「複数の図柄を複数列に変動表示する変動表示手段と、
複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段と、
この内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技に対応した特典遊技役であり、この特典遊技役に対応する図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示された場合に、前記複数の内部当選役のうち複数の小役の入賞が発生する一般遊技、およびこの一般遊技中に前記内部当選役抽選手段によって所定の図柄組み合わせに対応する内部当選役が決定され、かつ、前記変動表示手段に所定の前記図柄組み合わせが停止表示されると所定の配当を付与して行う高配当ゲームを実行する遊技処理手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技処理手段は、
前記特典遊技における一般遊技中において、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって、前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる予め定められた新たな図柄組み合わせが、前記一列の図柄が前記変動表示手段に前記複数列の中で最後に停止表示され、かつ、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄が前記一列において所定の入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者により変動表示停止操作が行われて、前記変動表示手段に停止表示されると、前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役である場合であっても、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行し、
前記内部当選役抽選手段によって抽選された内部当選役が所定の前記図柄組み合わせに対応する内部当選役であって、前記一列の図柄が前記変動表示手段に前記複数列の中で最後に停止表示され、新たな前記図柄組み合わせを構成する図柄を含まない前記一列の所定範囲の図柄が前記一列において所定の前記入賞ライン上に位置するタイミングで遊技者により変動表示停止操作が行われて、所定の前記図柄組み合わせおよび新たな前記図柄組み合わせのいずれも前記変動表示手段に停止表示されない場合には、所定の前記配当を付与せず、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行する遊技機。」
〈相違点〉補正発明の「新たな図柄組み合わせ」は「特典遊技における一般遊技中に限」っての、「所定の配当を付与」すべき「複数の前記小役とは異なる新たな前記図柄組み合わせに対応する役の入賞」であるのに対し、引用発明1のそれは、そのような図柄組み合わせが停止しても所定の配当を付与せず、役の入賞ともいえない点。

(4)相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
引用例1には中央部の「キングオブファイア」だけでなく、右部には「トリプルシューター2」の紹介記事も掲載されており、トリプルシューター2の各役払い出し表には、BONUS INの絵柄が緑色星印絵柄(以下「緑絵柄」という。)-緑絵柄-緑絵柄であること、BIG中のみの役として緑絵柄-緑絵柄-白7が15枚払い出し役とされていることが記載されている。
トリプルシューター2における、緑絵柄-緑絵柄-白7と補正発明の「予め定められた新たな図柄組み合わせ」は、「特典遊技における一般遊技中に限」っての「前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる予め定められた新たな図柄組み合わせ」であること、「複数の前記小役とは異なる新たな前記図柄組み合わせに対応する役」(トリプルシューター2における「緑絵柄-緑絵柄-白7」以外の小役が補正発明の「複数の前記小役」に相当する。)であること及び「所定の配当を付与」する点で一致し、引用発明1の黒7-R絵柄-R絵柄、スイカ-R絵柄-R絵柄及び王冠-R絵柄-R絵柄とは、「前記複数列のうちの一列における図柄が所定の前記図柄組み合わせと異なる予め定められた新たな図柄組み合わせ」の点で一致する。
また、パチスロにおいては、BIG中のリプレイハズシを実行できるかどうかにより、獲得枚数に相当な差が生じること、リプレイハズシに成功した場合に祝福演出をすることが周知である。
そして遊技者が、単なる祝福演出よりも、メダル等の獲得に魅力を感じることは明らかであり、上記のとおり特典遊技における一般遊技中に限って新たな図柄組み合わせを入賞とし、所定の配当を付与することが公知である以上、引用発明1においてリプレイハズシに成功した場合の図柄組み合わせである黒7-R絵柄-R絵柄、スイカ-R絵柄-R絵柄又は王冠-R絵柄-R絵柄の一部を、特典遊技における一般遊技中に限っての入賞とし配当を付与すること、すなわち相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1及び引用例1に記載された他のパチスロの技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定の結論]
以上のとおりであるから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
平成17年3月18日付け手続補正及び本件補正は却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年11月12日で補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、同請求項は「第2 1」に補正前のものとして記したとおりであるが、再掲しておく。
「複数の図柄を変動表示する変動表示手段と、複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段と、この内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技である場合に,複数の小役が発生する一般遊技およびこの一般遊技中に前記変動表示手段に所定の図柄組み合わせが停止表示されると所定の配当を付与して行う高配当ゲームを実行する遊技処理手段とを備えた遊技機において、
前記遊技処理手段は、前記特典遊技における一般遊技中に、所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた新たな図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示されると、複数の前記小役とは異なる役の入賞を発生させ、所定の配当を付与して、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行することを特徴とする遊技機。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-360765号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のア?カの記載又は図示がある。
ア.「所定の入賞条件の成立に基づいて遊技者に遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、予め定められた入賞態様を抽選する抽選手段と、複数の図柄を所定の順序で可変表示する可変表示部を複数有する可変表示ユニットと、所定のタイミングで各可変表示部の可変表示を停止させる表示停止手段と、各可変表示部を跨ぐように設定された入賞ライン上で停止した図柄の組合せが上記抽選手段によって当選した入賞態様に対応する特別な役を構成した場合に、遊技状態を一般遊技状態から特別遊技状態に所定期間だけ切り替える遊技状態切替手段とを備え、該特別遊技状態で該一般遊技状態よりも上記入賞条件の成立に有利となる特典を付与する遊技機において、上記特別遊技状態における遊技実績を集計する集計手段と、該特別遊技状態の終了後に該集計手段による集計結果に基づいて遊技成績情報を報知する報報知手段とを設けたことを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「RB状態においては、「当たり」という入賞態様と、「はずれ」としか定められておらず、この「当たり」を極めて高確率で内部当選させるジャックゲーム専用の上記抽選テーブルが用いられる。このため、「当たり」が極めて高確率で入賞(JAC入賞)して多量のメダルが払い出される。」(段落【0069】)
ウ.「一般遊技状態でBBが入賞すると、遊技状態がまずBB中非RB状態に切り替えられる。このBB中非RB状態では、RBや各種の「小当たり」を極めて高確率で内部当選させるBB中非RB専用の上記抽選テーブルが用いられる。よって、RBや「小当たり」が極めて高確率で入賞して多量のメダルが払い出される。・・・BB中非RB状態でRBが入賞すると、遊技状態がBB中RB状態に移行して、上述のジャックゲームが提供される。」(段落【0070】?【0071】)
エ.「有効な入賞ライン上に一般状態で「BAR役」が成立したり、BB状態で「プラム役」が成立したりしてRBやBB中RBが入賞すると、15枚のメダルが払い出された後(メダルクレジットの加算を含む、以下同様)、遊技状態が上述のRB状態やBB中RB状態に切り替えられる。」(段落【0078】)
オ.「BB中非RB状態では、「プラム役」に対応するBB中RB(中当たり)や、「チェリー役」「スイカ役」、あるいは「ベル役」に対応する「小当たり」が定められている。」(段落【0080】)
カ.【表1】には、一般遊技及び特別遊技の入賞態様、役、図柄組合わせ及び払い出しメダル枚数の表が示されており、同表によれば、「プラム役」はプラムが3つ揃う役であり、「チェリー役」は一般遊技及びBB中非RBに共通の小当たり入賞であり、図柄組合わせが左から順にチェリー、ANY(任意の図柄)、ANYである場合にメダル2枚が払い出されることが読み取れる。

3.引用例2記載の発明の認定
記載イ?オの「BB」及び「RB」の双方が、記載アの「特別な役」(入賞態様として見た場合)及び「特別遊技状態」(遊技状態として見た場合)に該当する。
したがって、記載又は図示ア?カを含む引用例2の全記載及び図示によれば、引用例2には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「所定の入賞条件の成立に基づいて遊技者に遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、予め定められた入賞態様を抽選する抽選手段と、複数の図柄を所定の順序で可変表示する可変表示部を複数有する可変表示ユニットと、所定のタイミングで各可変表示部の可変表示を停止させる表示停止手段と、各可変表示部を跨ぐように設定された入賞ライン上で停止した図柄の組合せが上記抽選手段によって当選したBB又はRBに対応する特別な役を構成した場合に、遊技状態を一般遊技状態からBB又はRB状態に所定期間だけ切り替える遊技状態切替手段とを備え、
BB中非RB状態で、プラムが3つ揃いRBが入賞すると、遊技状態がBB中RB状態に移行して、当たりが極めて高確率なジャックゲームが提供し、
一般遊技及びBB中非RBに共通の小当たり入賞として、図柄組合わせが左から順にチェリー、ANY、ANYとなるチェリー役が設定されている遊技機。」(以下「引用発明2」という。)

4.本願発明と引用発明2の一致点及び相違点の認定
引用発明2の「複数の図柄を所定の順序で可変表示する可変表示部を複数有する可変表示ユニット」は本願発明の「複数の図柄を変動表示する変動表示手段」に相当する。
引用発明2は「予め定められた入賞態様を抽選する抽選手段」を有し、入賞態様又は役は複数するから、この抽選手段は本願発明の「複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段」に相当する。
引用発明2の「BB」、「BB中非RB」及び「RB」は、本願発明の「特典遊技」、「特典遊技における一般遊技」(本願発明の「内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技である場合に,複数の小役が発生する一般遊技」もこれと同じである。)及び「高配当ゲーム」にそれぞれ相当するから、引用発明2が本願発明でいうところの「遊技処理手段」を備えることは明らかである。
引用発明2の「チェリー役」と本願発明の「新たな図柄組み合わせ」は、「特典遊技における一般遊技中」における「所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた図柄組み合わせ」であること、その組み合わせが停止表示されると、「所定の配当を付与して、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行する」点で一致する。
したがって、本願発明と引用発明2の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉「複数の図柄を変動表示する変動表示手段と、複数の内部当選役の中からいずれかの内部当選役を抽選する内部当選役抽選手段と、この内部当選役抽選手段で抽選された内部当選役が特典遊技である場合に,複数の小役が発生する一般遊技およびこの一般遊技中に前記変動表示手段に所定の図柄組み合わせが停止表示されると所定の配当を付与して行う高配当ゲームを実行する遊技処理手段とを備えた遊技機において、
前記遊技処理手段は、前記特典遊技における一般遊技中に、所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた図柄組み合わせが前記変動表示手段に停止表示されると、所定の配当を付与して、前記高配当ゲームを実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行する遊技機。」
〈相違点〉「特典遊技における一般遊技中」の「所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた図柄組み合わせ」につき、本願発明が「新たな図柄組み合わせ」及び「変動表示手段に停止表示されると、複数の前記小役とは異なる役の入賞を発生させ」る旨限定しているのに対し、引用発明2のそれは一般遊技中にも「変動表示手段に停止表示されると、役の入賞を発生させ」るものであり、「新たな図柄組み合わせ」とはいえない点。なお、引用発明2の「チェリー役」以外の小役(スイカ役及びベル役)を「複数の前記小役」に対応させることができるから、引用発明2の「チェリー役」が「複数の前記小役とは異なる役」に該当しないとまではいえない。

5.相違点の判断
「第2[理由]3(4)」で述べたとおり、引用例1には、「トリプルシューター2」の紹介記事が掲載されており、BONUS INの絵柄(本願発明の「所定の図柄組み合わせ」に相当)が緑絵柄-緑絵柄-緑絵柄であること、及びBIG(本願発明の「特典遊技」に相当)中のみの役として緑絵柄-緑絵柄-白7が15枚払い出し役とされていることが記載されている。
引用例1記載の「緑絵柄-緑絵柄-白7」は、「特典遊技における一般遊技中に、所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた新たな図柄組み合わせ」であって、BIG中のみの役であるから、同役の成立は「複数の前記小役とは異なる役の入賞を発生させ」と異ならず(「トリプルシューター2」における「緑絵柄-緑絵柄-白7」以外の小役が、本願発明の「複数の前記小役」に相当する。)、同役成立時には「所定の配当を付与して、前記高配当ゲーム(審決注;引用例1記載の「REG」がこれに相当)を実行することなく前記特典遊技における一般遊技を続行する」こととなる。
すなわち、引用例1記載の「緑絵柄-緑絵柄-白7」は、本願発明の「新たな図柄組み合わせ」に関するすべての要件を満たしており、引用発明2の「チェリー役」と比べても、「新たな図柄組み合わせ」の点を除いては一致している。
そうであれば、引用発明2における「特典遊技における一般遊技中に、所定の前記図柄組み合わせと一部が異なる予め定められた図柄組み合わせ」であって「所定の配当を付与」する組み合わせを、引用例1記載の「トリプルシューター2」同様、「特典遊技における一般遊技中」専用の図柄組み合わせとして設定、すなわち相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、本願発明は引用発明2及び引用例1記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-16 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-07 
出願番号 特願2003-21439(P2003-21439)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 572- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
中槙 利明
発明の名称 遊技機  
代理人 峯岸 武司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ