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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1179966 |
審判番号 | 不服2005-22733 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-24 |
確定日 | 2008-06-19 |
事件の表示 | 平成10年特許願第210978号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月15日出願公開、特開2000- 43376〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年7月27日に出願したものであって、平成17年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月24日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年4月6日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のものと認める。 「エラー内容が異なる第1エラー及び第2エラーを含む複数のエラーの、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避処理の中から何れかを選択して実行することが可能な画像形成装置であって、 1つのエラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、該複数の情報の全てを同時に表示できない表示手段により、順次、表示させる表示制御手段と、 前記表示手段に情報が表示されている回避処理を、前記画像形成装置により実行すべき回避処理として選択実行させる制御手段と、を有し、 前記表示制御手段は、 前記画像形成装置にて発生したエラーが前記第1エラーであるならば、該第1エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、前記表示手段により順次表示させ、一方、前記画像形成装置にて発生したエラーが前記第2エラーであるならば、該第2エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、前記表示手段により順次表示させるが、前記第1エラーの複数の回避処理の内容を示す複数の情報を前記表示手段に表示させる場合には、該第1エラーの複数の回避処理の優先順位に基づいた順序で、それら複数の回避処理の内容を示す情報を、前記表示手段により順次表示させ、一方、前記第2エラーの複数の回避処理の内容を示す複数の情報を前記表示手段に表示させる場合には、該第2エラーの複数の回避処理の優先順位に基づいた順序で、それら複数の回避処理の内容を示す情報を、前記表示手段により順次表示させる、ことを特徴とする画像形成装置。」 3.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-42088号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 ア.「リーダ部とプリンタ部とを備える複写処理手段と、所定の通信媒体を介して異なる画像処理を行う複数のデータ処理部を備える画像処理手段と、前記画像処理手段または複写処理手段の動作状態を表示または前記画像処理手段または複写処理手段に対するユーザ入力を表示する操作表示手段と、前記画像処理手段および/または複写処理手段の単一動作状態または複合動作状態を監視して障害発生有無を判断する判断手段と、前記判断手段が障害発生と判断した場合に、回避可能な異なる複数の回避指示項目を前記操作表示手段に表示させる第1の制御手段と、前記第1の制御手段により前記操作表示手段に表示された異なる複数の回避指示項目中からユーザにより指示される回避指示項目に基づいて前記画像処理手段または複写処理手段に対する障害回避動作を制御する第2の制御手段とを有することを特徴とする画像処理システム。」(【請求項1】) イ.「図7は、図4に示したコア部10の内部メモリに確保される用紙無し時の障害回避策テーブル例を示す図である。 図において、S1401は障害内容を示し、用紙無しを検知した場合に、回避策候補S1402としてジョブキャンセル,補給されるまでリトライ,使用されたサイズより大きめの用紙に印刷する,指定されたサイズよりも小さめの用紙に印刷する等の回避策が登録されている。 図8は、図6に示した障害回避選択処理の詳細手順の一例を示すフローチャートである。なお、(1)?(7)は各ステップを示す。 ステップ(1)にて、ステータス情報を参照し、障害回避策テーブルを検索する。この場合、用紙切れのためフォーマッタ部8がエラー状態となっている場合には、図7に示す障害回避策テーブルを対象として、障害内容S1401に基づいてその障害に対する回避策の候補として回避策候補S1402を上記メモリから取得する。 次に、ステップ(2)にて該当エラー内容を示す障害内容S1401に従い、その旨ユーザに対し操作部124を通して通知すると共に、その回避策候補S1402の中から、ユーザに所望とする処理を選択してもらう。続いて、ステップ(3)にてユーザから指示された回避策内容に従いステータス情報を更新する。ステップ(4)にて、ユーザから指示された回避処理を実行する。」(段落【0067】?【0071】) ウ.「図10は、図4に示したコア部10の内部メモリに確保される両面出力指定時における両面機構故障時の障害回避策テーブル例を示す図である。 図において、S1601は障害内容を示し、両面出力指定時における両面機構故障を検知した場合に、回避策候補S1602としてジョブキャンセル,片面印刷,偶数ページ出力後、奇数ページ出力,2in1印刷する等の回避策が登録されている。 図8に示した、ステップ(1)にてステータス情報を参照し、障害回避策テーブルを検索する。この場合、図9のステップ(6)にて、ユーザからは両面印刷の指定がされているにもかかわらず、両面機構の故障のため両面印刷処理が実行できないためにエラーが発生したとすると、図10に示す障害回避策テーブルが明示候補となる。 次いで、ステップ(2)にて障害内容S1601に従い、その旨ユーザに対し操作部124を通して通知すると共に、その回避策候補S1602の中から、ユーザに適当な処理を選択してもらう。続いて、ステップ(3)にてユーザから指示された回避策内容に従いステータス情報を更新する。 次いで、ステップ(4)にて、ユーザから指示された回避処理を実行する。ステップ(5)にて該当処理の終了を判断し、未処理終了と判断した場合にはステップ(4)へ戻り、処理終了と判断した場合にはステップ(6)にて処理が終了した旨ステータス情報を更新する。そして、ステップ(7)にて該当ジョブIDをクリアすることにより、該当ジョブの処理を終了する。」(段落【0079】?【0083】) 上記イ.の「用紙無し時の障害回避策テーブル」及び上記ウ.の「両面機構故障時の障害回避策テーブル」は、それぞれ、複数の回避策を有しており、両テーブルは、コア部10の内部メモリに確保される例示であるから、上記請求項1記載の発明の画像処理システムは、用紙無し及び両面機構故障を含む複数のエラーの、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避策を有する複数の障害回避策テーブルを有しているものと認められる。 よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。 「リーダ部とプリンタ部とを備える複写処理手段と、所定の通信媒体を介して異なる画像処理を行う複数のデータ処理部を備える画像処理手段と、前記画像処理手段または複写処理手段の動作状態を表示または前記画像処理手段または複写処理手段に対するユーザ入力を表示する操作表示手段と、前記画像処理手段および/または複写処理手段の単一動作状態または複合動作状態を監視して障害発生有無を判断する判断手段と、用紙無し及び両面機構故障を含む複数のエラーの、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避策を有する複数の障害回避策テーブルを有し、前記判断手段が障害発生と判断した場合に、回避可能な異なる複数の回避指示項目を前記操作表示手段に表示させる第1の制御手段と、前記第1の制御手段により前記操作表示手段に表示された異なる複数の回避指示項目中からユーザにより指示される回避指示項目に基づいて前記画像処理手段または複写処理手段に対する障害回避動作を制御する第2の制御手段とを有することを特徴とする画像処理システム。」 4.対比 本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「用紙無し」、「両面機構故障」、「回避策」、「画像処理システム」、「異なる複数の回避指示項目」及び「操作表示手段」は、それぞれ本願発明の「第1エラー」、「第2エラー」、「回避処理」、「画像形成装置」、「複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報」及び「表示手段」に相当する。 刊行物記載の発明の「用紙無し」及び「両面機構故障」が、エラー内容が異なるものであることは明らかであり、刊行物記載の発明は、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避策を有する複数の障害回避策テーブルを有しており、刊行物記載の発明が有している第2の制御手段は、操作表示手段に表示された異なる複数の回避指示項目中からユーザにより指示される回避指示項目に基づいて画像処理手段または複写処理手段に対する障害回避動作を制御するものであるから、刊行物記載の発明の画像処理システムは、エラー内容が異なる第1エラー及び第2エラーを含む複数のエラーの、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避処理の中から何れかを選択して実行することが可能な画像形成装置であるといえる。 刊行物記載の発明の「回避可能な異なる複数の回避指示項目」がエラーに対応するものであることは明らかであるから、刊行物記載の発明の「判断手段が障害発生と判断した場合に、回避可能な異なる複数の回避指示項目を操作表示手段に表示させる第1の制御手段」と、本願発明の「1つのエラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、該複数の情報の全てを同時に表示できない表示手段により、順次、表示させる表示制御手段」は、いずれも「エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、表示手段により、表示させる表示制御手段」の点で共通する。 刊行物記載の発明の「操作表示手段に表示された異なる複数の回避指示項目中からユーザにより指示される回避指示項目に基づいて画像処理手段または複写処理手段に対する障害回避動作を制御する第2の制御手段」と、本願発明の「表示手段に情報が表示されている回避処理を、画像形成装置により実行すべき回避処理として選択実行させる制御手段」とは、「選択された回避処理を、画像形成装置により実行すべき回避処理として選択実行させる制御手段」の点で共通する。 刊行物記載の発明は、用紙無し及び両面機構故障を含む複数のエラーの、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避策を有する複数の障害回避策テーブルを有しているから、画像処理システムにて発生したエラーが用紙無し或いは両面機構故障であるならば、それぞれのエラーに対応する複数の回避指示項目を、操作表示手段に表示することは明らかであるから、刊行物記載の発明の「第1の制御手段」の制御内容と、本願発明の「表示制御手段」の行う制御内容である「画像形成装置にて発生したエラーが第1エラーであるならば、該第1エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、表示手段により順次表示させ、一方、前記画像形成装置にて発生したエラーが第2エラーであるならば、該第2エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、前記表示手段により順次表示させるが、前記第1エラーの複数の回避処理の内容を示す複数の情報を前記表示手段に表示させる場合には、該第1エラーの複数の回避処理の優先順位に基づいた順序で、それら複数の回避処理の内容を示す情報を、前記表示手段により順次表示させ、一方、前記第2エラーの複数の回避処理の内容を示す複数の情報を前記表示手段に表示させる場合には、該第2エラーの複数の回避処理の優先順位に基づいた順序で、それら複数の回避処理の内容を示す情報を、前記表示手段により順次表示させる」こととは、「画像形成装置にて発生したエラーが第1エラーであるならば、該第1エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、表示手段に表示させ、一方、前記画像形成装置にて発生したエラーが第2エラーであるならば、該第2エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、前記表示手段に表示させる」点で共通する。 よって、両者は、 「エラー内容が異なる第1エラー及び第2エラーを含む複数のエラーの、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避処理の中から何れかを選択して実行することが可能な画像形成装置であって、 エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、表示手段により、表示させる表示制御手段と、 選択された回避処理を、画像形成装置により実行すべき回避処理として選択実行させる制御手段と、を有し、 前記表示制御手段は、 画像形成装置にて発生したエラーが第1エラーであるならば、該第1エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、表示手段に表示させ、一方、前記画像形成装置にて発生したエラーが第2エラーであるならば、該第2エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、前記表示手段に表示させる、画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]表示手段及び実行すべき回避処理として選択実行させる制御手段に関し、本願発明は、1つのエラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、該複数の情報の全てを同時に表示できない表示手段としていると共に表示手段に情報が表示されている回避処理を画像形成装置により実行すべき回避処理として選択実行させる制御手段としているのに対し、刊行物記載の発明は、本願発明のような特定がなされていない点。 [相違点2]表示制御手段に関し、本願発明は、画像形成装置にて発生したエラーが第1エラーであるならば、該第1エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、表示手段により順次表示させ、一方、前記画像形成装置にて発生したエラーが第2エラーであるならば、該第2エラーに対応する複数の回避処理のそれらの内容を示す複数の情報を、前記表示手段により順次表示させるが、前記第1エラーの複数の回避処理の内容を示す複数の情報を前記表示手段に表示させる場合には、該第1エラーの複数の回避処理の優先順位に基づいた順序で、それら複数の回避処理の内容を示す情報を、前記表示手段により順次表示させ、一方、前記第2エラーの複数の回避処理の内容を示す複数の情報を前記表示手段に表示させる場合には、該第2エラーの複数の回避処理の優先順位に基づいた順序で、それら複数の回避処理の内容を示す情報を、前記表示手段により順次表示させるのに対し、刊行物記載の発明は、本願発明のような特定がなされていない点。 5.判断 上記相違点1について検討する。 画像形成装置において、選択すべき複数の情報の全てを同時に表示できない表示手段により、順次、表示させると共に、当該表示手段に情報が表示されている処理内容を画像形成装置により実行すべき処理として選択実行させる制御手段を設けることは、周知技術(特開平3-168765号公報、第3頁右欄第9行?右下欄第1行、第27図、特開平4-31077号公報、第6頁左上欄第7?末行、第6図、特開平5-301422号公報、段落【0052】、【図8】参照。)であり、表示手段及び実行すべき処理として選択実行させる制御手段をどのようなものとするかは、必要に応じ適宜選択し得るものであるから、刊行物記載の発明に、該周知技術を適用して上記相違点1に係る本願発明のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。 上記相違点2について検討する。 選択すべき複数の情報の全てを同時に表示できない表示手段により、順次、表示させることが容易であることについては前述のとおりであり、複数の情報を順次表示させるに際し、使い勝手が良いように優先順位を考慮することは設計事項にすぎない(例えば、特開平10-149064号公報(頻度順という優先順位に基づいて表示している。))。 そうすると、刊行物記載の発明は、各エラー毎に、それぞれ、エラーを回避する為の複数の回避策を有する複数の障害回避策テーブルを有し、異なる複数の回避指示項目を操作表示手段に表示させる第1の制御手段を有しているのだから、該制御手段を表示手段に相応させ、選択すべき情報である複数の情報を順次表示させるものとし、その際、優先順位を考慮して、上記相違点2に係る本願発明のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。 そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-18 |
結審通知日 | 2008-04-22 |
審決日 | 2008-05-07 |
出願番号 | 特願平10-210978 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 名取 乾治 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
佐藤 宙子 番場 得造 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 内尾 裕一 |
代理人 | 西山 恵三 |