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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1179968
審判番号 不服2005-24683  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-22 
確定日 2008-06-19 
事件の表示 特願2002-312363「表示駆動方法及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月20日出願公開、特開2004-145186〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成14年10月28日にされた特許出願(特願2002-312363号。以下「本件出願」という。)であって、平成17年11月17日付け(発送日:同月22日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月22日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2 本件出願に係る発明
本件出願の請求項に係る発明は、平成17年1月21日付け手続補正書及び同年6月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】PWM制御される単純マトリクスディスプレイの表示駆動方法において、
走査電極が順次走査されるそれぞれの走査期間に、前寄せPWM信号電圧が印加される信号電極と後寄せPWM信号電圧が印加される信号電極とが等しい数になるように設定され、
奇数番もしくは偶数番信号電極へのPWM信号電圧として、奇数番走査電極が選択されている走査期間に対して後寄せであり、偶数番走査電極が選択されている走査期間に対して前寄せである後/前寄せ組み合わせの後/前寄せ信号電圧を発生させる一方、偶数番もしくは奇数番信号電極へのPWM信号電圧として、奇数番走査電極が選択されている走査期間に対して前寄せであり、偶数番走査電極が選択されている走査期間に対して後寄せである前/後寄せ組み合わせの前/後寄せ信号電圧を発生させるとともに、
前記奇数番もしくは偶数番信号電極には、フレーム周期によらずに前記後/前寄せ信号電圧を印加する一方、前記偶数番もしくは奇数番信号電極には、フレーム周期によらずに前記前/後寄せ信号電圧が印加されることを特徴とする表示駆動方法。」

第3 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の一部である特開平4-371995号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに、以下のような記載がされている。
1 「【請求項1】 少なくとも、走査電極の形成された基板と信号電極の形成された基板間に液晶を挾持した液晶素子をマルチプレクス駆動する方法に於て、信号電極に同時に印加する信号電極波形として波形Aと波形Bの数がほぼ同数となるようにしたことを特徴とする液晶素子の駆動方法。」

2 「【0002】 【従来の技術】従来の電圧平均化法によるマルチプレクス駆動でパルス幅変調による駆動方法の駆動波形を図8に示す。
【0003】 【発明が解決しようとする課題】この様な駆動方法では、図8のAやBで示す部分のように一つの走査電極上のほとんどすべての画素が同じ表示だった場合走査電極上に発生するスパイク電圧が非常に大きくなってしまいクロストークが激しくなる。また、スパイク電圧を補正しようとしてもスパイク電圧が大きすぎて補正しきれない。」

3 「【0006】(実施例1)図1及び図2は、実施例1における駆動方法の一例を示す駆動波形であり、図6が各表示データにおける階調パルス波形の一例を示す図でt7で示す期間がONパルスの幅で、データ(0000)の時のONパルスの幅がいちばん狭くなり、データが(0001),(0010)と大きくなるに連れてONパルスの幅がしだいに大きくなりデータが(1111)の時のONパルスの幅がいちばん広い。そして、波形Aでは階調パルス波形の右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにし、波形Bでは階調パルス波形の左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにしている。また、波形Aと波形Bの立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングについて詳しくみると図7に示すようになり、t4の期間が選択期間で、702?707で示す波形が波形Aで702がデータ(0000)、703がデータ(0001)、704がデータ(0010)、705がデータ(1101)、706がデータ(1110)、707がデータ(1111)で、708?713で示す波形が波形Bで708がデータ(0000)、709がデータ(0001)、710がデータ(0010)、711がデータ(1101)、712がデータ(1110)、713がデータ(1111)の時の波形を示し、波形Aの702と波形Bの713、波形Aの703と波形Bの712、波形Aの704と波形Bの711の様に波形Aと波形Bの立ち上がりと立ち下がりのタイミングがほぼ一致するようにしている。そして、液晶素子に印加される電圧の極性が同じ期間は波形Aと波形Bを交互に繰り返している。」

4 「【0008】図5(a)の各画素のうちAで示す画素の表示データは(0111)、Bで示す画素の表示データは(1000)、Cで示す画素の表示データは(1000)、Dで示す画素の表示データは(0111)であるとすると、走査電極ドライバ501の出力504の波形が図1の走査電極波形101で、信号電極ドライバ502の出力505が信号電極波形102、506が信号電極波形103で、信号電極ドライバ503の出力507が信号電極波形104、508が信号電極波形105の様になる。そして、信号電極ドライバ502が波形Aのときは503は波形Bで502が波形Bのときは503は波形Aが出力される。」

5 「【0010】次に、図2に示す駆動波形について説明する。図1の駆動波形との違いは一つの信号電極波形の中で波形Aと波形Bが交互に繰り返されるのではなくて、少なくても一フレ-ム期間の中では波形Aだけあるいは波形Bだけとなる駆動波形である。図2で示す各駆動波形を図5(a)に示す液晶ディスプレイモジュールの各電極に印加したときを例にして説明する。」

6 「【0014】尚、上記の説明では図5(a)の様な構成の液晶ディスプレイモジュールについて説明したが、図5(b)で示すように信号電極ドライバ512から出力される信号電極波形が波形Aの時信号電極ドライバ513から出力される信号電極波形が波形Bで信号電極に対して波形Aと波形Bが交互に印加されるようにしても同じ効果がある。このように、波形Aと波形Bの数がほぼ同じであれば信号電極に印加する順番はどのような組合せでもほぼ同じ効果が得られる。・・・。」

7 図面の図1には、走査電極波形(101)と信号電極波形(102?106)が描かれており、例えば、信号電極波形102においては、n(nは、奇数の自然数。)フレーム周期における走査電極波形が正極性である選択期間t2において、階調パルス波形が右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aを印加し、n+1フレーム周期における走査電極波形が負極性である選択期間においては、階調パルス波形が左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bを印加し、信号電極波形104においては、nフレーム周期における走査電極波形が正極性である選択期間t2において、階調パルス波形が左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bを印加し、n+1フレーム周期における走査電極波形が負極性である選択期間においては、階調パルス波形が右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aを印加するようにしてなる構成が読み取れる。

8 図1記載の駆動波形は、図5(a)に記載された液晶ディスプレイモジュールに対応したものであるが、図5(b)に記載された液晶ディスプレイモジュールに対応した駆動波形として、nフレーム周期における奇数番の信号電極波形においては、走査電極波形が正極性である選択期間t2において、階調パルス波形が右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aを印加し、n+1フレーム周期における走査電極波形が負極性である選択期間においては、階調パルス波形が左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bを印加し、nフレーム周期における偶数番の信号電極波形においては、走査電極波形が正極性である選択期間t2において、階調パルス波形が左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bを印加し、n+1フレーム周期における走査電極波形が負極性である選択期間においては、階調パルス波形が右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aを印加するようにしてなる構成が認められる。

9 図5(a)又は(b)には、単に信号電極(510)と走査電極(509)とが直交して設けられてなる液晶ディスプレイモジュールが記載されていることから、単純マトリクスディスプレイの構成が読み取れる。

上記摘記事項を総合的に勘案すると、刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されている。
「ONパルスの幅で制御される単純マトリクスディスプレイの表示駆動方法において、
走査電極(509)が順次走査されるそれぞれの期間に、右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aが印加される信号電極(510)と、左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bが印加される信号電極(510)とが等しい数になるように設定され、
奇数番信号電極への信号電圧として、奇数番走査電極が選択さている走査期間に対しては右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aを印加し、偶数番走査電極が選択されている走査期間に対しては左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bを印加することにより、波形Aと波形Bを交互に繰り返す信号電圧を発生させる一方、偶数番信号電極への信号電圧として、奇数番走査電極が選択さている走査期間に対しては左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形Bを印加し、偶数番走査電極が選択されている走査期間に対しては右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形Aを印加することにより、波形Bと波形Aを交互に繰り返す信号電圧を発生させるとともに、
前記奇数番信号電極には、nフレーム周期に前記波形Aと波形Bを交互に繰り返す信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には波形Bと波形Aを交互に繰り返す信号電圧を印加する一方、前記偶数番信号電極には、nフレーム周期に前記波形Bと波形Aを交互に繰り返す信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には波形Bと波形Aを交互に繰り返す信号電圧を印加するようにしてなる表示駆動方法。」

第4 対比
本願発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「ONパルスの幅で制御される単純マトリクスディスプレイ」、「左端を基準としてONパルスの幅が右に広がるようにした波形B」、「右端を基準としてONパルスの幅が左に広がるようにした波形A」、「波形Aと波形Bを交互に繰り返す信号電圧」、「波形Bと波形Aを交互に繰り返す信号電圧」は、それぞれ本願発明の「PWM制御される単純マトリクスディスプレイ」、「前寄せPWM信号電圧」、「後寄せPWM信号電圧」、「後/前寄せ信号電圧」、「前/後寄せ信号電圧」に相当するから、両者は、
<一致点>
「PWM制御される単純マトリクスディスプレイの表示駆動方法において、
走査電極が順次走査されるそれぞれの走査期間に、前寄せPWM信号電圧が印加される信号電極と後寄せPWM信号電圧が印加される信号電極とが等しい数になるように設定され、
奇数番信号電極へのPWM信号電圧として、奇数番走査電極が選択されている走査期間に対して後寄せであり、偶数番走査電極が選択されている走査期間に対して前寄せである後/前寄せ組み合わせの後/前寄せ信号電圧を発生させる一方、偶数番信号電極へのPWM信号電圧として、奇数番走査電極が選択されている走査期間に対して前寄せであり、偶数番走査電極が選択されている走査期間に対して後寄せである前/後寄せ組み合わせの前/後寄せ信号電圧を発生させる表示駆動方法」である点で一致し、

<相違点>
本願発明では、「奇数番信号電極には、フレーム周期によらずに後/前寄せ信号電圧を印加する一方、偶数番信号電極には、フレーム周期によらずに前/後寄せ信号電圧が印加される」構成であるのに対して、刊行物発明では、「奇数番信号電極には、nフレーム周期に後/前寄せ信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には前/後寄せ信号電圧を印加する一方、偶数番信号電極には、nフレーム周期に前/後寄せ信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には後/前寄せ信号電圧を印加する」ような構成である点で相違している。

第5 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る本願発明の構成である「奇数番信号電極には、フレーム周期によらずに後/前寄せ信号電圧を印加する一方、偶数番信号電極には、フレーム周期によらずに前/後寄せ信号電圧が印加される(以下「周知技術」という。)」構成は、周知である。
例えば、特開平4-50919号公報(以下「周知技術1」という。)には、「第2図は本発明の液晶表示装置駆動方法の第二の実施例における印加電圧波形図で、同図(a)、(b)は走査電極印加電圧波形図、同図(c)、(d)は信号電極印加電圧波形図、同図(e)、(f)、(g)、(h)は各画素に印加される電圧波形図でそれぞれ第2図の走査電極印加電圧波形図(a)と(c)、(a)と(d)、(b)と(c)、(b)と(d)の電位差である。(公報第2頁右下欄第14行-同頁同欄第20行)」と記載されており、第2図からは、フレーム周期によらずに信号電圧を印加する順序を後/前寄せ信号電圧、又は、前/後寄せ信号電圧に固定したような構成が読み取れる。
特開平8-44317号公報(以下「周知技術2」という。)には、「【0049】液晶パネル1の表示を1水平走査期間毎にON→OFFの順に切り替える場合の信号電圧は、同図の(c)に示すように、ON表示の場合の第1の水平走査期間とOFF表示の場合の第2の水平走査期間とが組み合わされた状態になる。逆に、液晶パネル1の表示を1水平走査期間毎にOFF→ONの順に切り替える場合の信号電圧は、同図の(d)に示すように、OFF表示の場合の第1の水平走査期間とON表示の場合の第2の水平走査期間とが組み合わされた状態になる。 【0050】ここで、上記のように構成される液晶表示装置により、図11に示す表示例のように表示を行なう場合について、走査電極Y3 と信号電極X1 ?X4 との交点の画素の駆動を例にとって説明する。なお、同図において、●はOFF表示を示し、○はON表示を示している。 【0051】まず、走査電極Y3 に印加される走査電圧および信号電極X1 ?X4 に印加される信号電圧は、各表示パターンに応じてそれぞれ図6の(a)ないし(d)に示すようになる。同図から分かるように、第1フレームおよび第2フレームにおいては、信号電圧のONレベル⇔OFFレベルの切り替え箇所の数がほぼ同じになっている。」と記載されており、図6からは、フレーム周期によらずに信号電圧を印加する順序を後/前寄せ信号電圧、又は、前/後寄せ信号電圧に固定したような構成が読み取れる。

してみると、上記刊行物発明と上記周知技術は、ともに液晶素子の駆動方法において、信号電圧を後/前寄せ信号電圧、又は前/後寄せ信号電圧として印加する構成を採用することにより表示品位の向上を図った技術に関する発明である点で共通しているところ、表示品位の向上を図るために、「奇数番信号電極には、nフレーム周期に後/前寄せ信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には前/後寄せ信号電圧を印加する一方、偶数番信号電極には、nフレーム周期に前/後寄せ信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には後/前寄せ信号電圧を印加する」構成とするか、「フレーム周期によらずに信号電圧を印加する順序を後/前寄せ信号電圧、又は、前/後寄せ信号電圧に固定したような構成」とするかは、両構成のどちらの構成を採用したとしても格段の差異はなく、また、必要回路数などにおいても特段の相違を有しているとは認められない。さらに、上記両構成は、表示品位の向上を図るとの技術課題を解決するために取り得ることができる2つの構成のうちのそれぞれ1つの構成にすぎず、どちらの構成を採用したとしても特段に技術的な差異を有するものでもない。
よって、上記刊行物発明において、「奇数番信号電極には、nフレーム周期に後/前寄せ信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には前/後寄せ信号電圧を印加する一方、偶数番信号電極には、nフレーム周期に前/後寄せ信号電圧を印加し、n+1フレーム周期には後/前寄せ信号電圧を印加する」構成に代えて、「フレーム周期によらずに信号電圧を印加する順序を後/前寄せ信号電圧、又は、前/後寄せ信号電圧に固定したような構成」とすることは、実施時において当業者が適宜選択しうる程度の設計的事項にすぎない。よって、上記刊行物発明に上記周知技術の構成を採用して、上記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明である本願発明は特許法第29条第2項の規程により特許をすることができないものであり、その余の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり結審する。
 
審理終結日 2008-04-17 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-08 
出願番号 特願2002-312363(P2002-312363)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 山川 雅也
西島 篤宏
発明の名称 表示駆動方法及び表示装置  
代理人 紋田 誠  
代理人 逸見 輝雄  

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