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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1179974
審判番号 不服2006-1898  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-03 
確定日 2008-06-19 
事件の表示 平成11年特許願第 66025号「データ処理プロセッサおよびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月22日出願公開、特開2000-259609〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成11年3月12日の出願であって、平成17年3月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月30日付けで手続補正がなされたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月3日に審判請求がなされるとともに同年3月6日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
そして、本件補正は、平成17年5月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項5?請求項12を削除し、請求項1及び請求項3記載の「上記領域毎に」を「該領域毎に」と補正したものであるから、本件補正は請求項の削除及び誤記の訂正を目的としている。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年3月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「複数のデータを格納する領域と、該領域毎にデータが格納されたか否かを示すフラグ情報を格納する領域とを有するレジスタと、
該レジスタのフラグ情報を参照するフラグ参照回路と、
演算命令に従ってデータの演算を実行する演算部と、
前記レジスタから演算すべきデータを読み出して上記演算部へ送る制御部と、
前記フラグ参照回路からのフラグ情報を入力し、前記制御部に前記レジスタのデータを読み出すレジスタリードコマンドと、読み出すレジスタデータを示す要素番号を前記制御部に送るリード同期回路とを備えたことを特徴とするデータ処理プロセッサ。」

2.引用文献

A.原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-202687号公報(以下、「引用文献」という。)には以下の事項が記載されている。(注意:下線は便宜上、当審にて付与したもの。)

(ア)「【0011】
【課題を解決するための手段】図1に本発明の原理構成を図示する。図中、1は本発明を具備するベクトルプロセッサである。
【0012】このベクトルプロセッサ1は、主記憶10と、ベクトルレジスタ11を備えるベクトルレジスタ機構12と、ベクトルロード命令に応答して、主記憶10からベクトルデータを読み出してベクトルレジスタ11にロードするロードパイプライン13と、ベクトルストア命令に応答して、ベクトルレジスタ11からベクトルデータを読み出して主記憶10にストアするストアパイプライン14と、ベクトル演算命令に応答して、ベクトルレジスタ11からベクトルデータを読み出し演算処理を実行してベクトルレジスタ11に書き込む複数の演算パイプライン15とを備える。
【0013】このベクトルレジスタ11は、ベクトルデータの各要素対応に、その要素データの使用可否を表示するフラグを用意する。一方、ベクトルレジスタ機構12は、ベクトルレジスタ11を備える他に、ロードパイプライン13の制御を実行するロードパイプライン制御手段16と、ストアパイプライン14の制御を実行するストアパイプライン制御手段17と、演算パイプライン15の制御を実行する演算パイプライン制御手段18と、リセット時に、ベクトルレジスタ11の持つ全フラグに使用可能を書き込む第5の制御手段19とを備える。」

(イ)「【0018】このようにして、ベクトルレジスタ11の各要素対応に、その要素データの使用の可否を表示するフラグが用意されると、演算パイプライン制御手段18の持つ第2の制御手段22は、ベクトル演算命令の実行時に、読出対象となるベクトルレジスタ11の要素の持つフラグ値を読み取って、そのフラグ値が使用可能を表示するときには、読出要素のアドレスを次要素に進め、一方、そのフラグ値が使用不可能を表示するときには、読出要素のアドレスをそのまま維持するようにと制御する。
【0019】この第2の制御手段22の制御処理を受けて、演算パイプライン15は、ベクトルレジスタ11からベクトルデータを読み出すときに、ベクトルデータの持つフラグ値を要素データに対応付けて伝播するとともに、そのフラグ値が使用可能を表示するときに演算処理を実行し、使用不可能を表示するときには、演算処理を実行せずにフラグ値の伝播処理のみを実行する。あるいは、常に演算処理を実行して、そのフラグ値に従って、その演算結果が有効なものであるのか無効なものであるのかを表示する。」

(ウ)「【0023】
【実施例】以下、実施例に従って本発明を詳細に説明する。上述したように、本発明は、図2に示すように、ベクトルレジスタ11に格納されるベクトルデータの各要素対応に、その要素データの使用の可否を表示するフラグを用意する構成を採って、演算パイプライン15が、そのフラグ値を要素データに対応付けて伝播するとともに、そのフラグ値に従って演算処理を実行するか否かを決定する構成を採ることで、ベクトルロード命令が遅延した場合、その遅延したベクトルロード命令に連鎖しているベクトル命令のみを同期して遅延させ、連鎖関係にない他のベクトル命令は遅延させずに実行できることを実現するものである。
【0024】ベクトルレジスタ機構12は、このフラグ(以下、要素使用可能フラグと称する)の制御処理と、ベクトルレジスタ11のアクセス先の制御処理とを実行する機能を持つものである。
・・・(中略)・・・
【0027】・・・(中略)・・・ ロードパイプライン13の最終ステージのデータを、書込先となるベクトルレジスタ11の要素位置(書込要素アドレスの指す要素位置)に書き込み、続くステップ3で、その要素位置の要素使用可能フラグに「使用可能」を書き込み、続くステップ4で、書込要素アドレスを次の要素に進める。」

(エ)「【0032】これから、ベクトルレジスタ機構12は、ベクトル演算命令が実行されると、図5の処理フローに示すように、先ず最初に、ステップ1で、読出対象となるベクトルレジスタ11の要素位置(読出要素アドレスの指す要素位置)の要素使用可能フラグ値を読み取り、続くステップ2で、その要素使用可能フラグ値が「使用可能」を表示しているのか否かを判断する。
【0033】このステップ2で、要素使用可能フラグ値が「使用可能」を表示していることを判断するときには、ステップ3に進んで、読出要素アドレスの指す要素位置の要素データと、「使用可能」のフラグ値とを演算パイプライン15に投入し、続くステップ4で、読出要素アドレスを次の要素に進める。
【0034】一方、ステップ2で、要素使用可能フラグ値が「使用不可能」を表示していることを判断するときには、ステップ5に進んで、「使用不可能」のフラグ値を演算パイプライン15に投入し、続くステップ6で、読出要素アドレスをそのまま維持する。」

(ア)の記載からすると、引用発明にはベクトルプロセッサに関する発明が記載されている。
また、(ウ)の段落【0023】における記載「図2に示すように、ベクトルレジスタ11に格納されるベクトルデータの各要素対応に、その要素データの使用の可否を表示するフラグを用意する構成を採って」及び段落【0027】における記載「ロードパイプライン13の最終ステージのデータを、書込先となるベクトルレジスタ11の要素位置(書込要素アドレスの指す要素位置)に書き込み、続くステップ3で、その要素位置の要素使用可能フラグに「使用可能」を書き込み、」からすると、
前記ベクトルプロセッサは、複数の要素データを格納する領域と、該領域毎に要素データが書き込まれ使用可能となったか否か(すなわち、格納されたか否か)を示す要素使用可能フラグ値を格納する領域とを有するベクトルレジスタを有すると解される。
また、(イ)の段落【0018】における記載「演算パイプライン制御手段18の持つ第2の制御手段22は、ベクトル演算命令の実行時に、読出対象となるベクトルレジスタ11の要素の持つフラグ値を読み取って、」からすると、
前記ベクトルプロセッサの演算パイプライン制御手段の持つ第2の制御手段は、ベクトルレジスタの要素使用可能フラグ値を読み取る手段(以下、「要素使用可能フラグ読み取り手段」という。)を有すると解される。
また、(ア)の段落【0012】における記載「ベクトル演算命令に応答して、ベクトルレジスタ11からベクトルデータを読み出し演算処理を実行してベクトルレジスタ11に書き込む複数の演算パイプライン15」及び(ウ)の段落【0023】における記載「ベクトルデータの各要素対応に、・・(中略)・・演算パイプライン15が、・・(中略)・・そのフラグ値に従って演算処理を実行するか否かを決定する構成を採る」からすると、
前記ベクトルプロセッサは、ベクトル演算命令に従って要素データの演算を実行する手段(以下、「演算手段」という。)を有すると解される。
そして、(エ)の段落【0033】における記載「読出要素アドレスの指す要素位置の要素データと、「使用可能」のフラグ値とを演算パイプライン15に投入し、」からすると、
前記ベクトルプロセッサは、ベクトルレジスタの読出要素アドレスの指す要素位置から、演算すべき要素データを読み出して、上記演算手段に投入する手段(以下「要素データ投入手段」という。)を有すると解される。
そして、(イ)の段落【0018】における記載「演算パイプライン制御手段18の持つ第2の制御手段22は、ベクトル演算命令の実行時に、読出対象となるベクトルレジスタ11の要素の持つフラグ値を読み取って、そのフラグ値が使用可能を表示するときには、読出要素のアドレスを次要素に進め、一方、そのフラグ値が使用不可能を表示するときには、読出要素のアドレスをそのまま維持するようにと制御する。」及び(エ)の段落【0033】における記載「このステップ2で、要素使用可能フラグ値が「使用可能」を表示していることを判断するときには、ステップ3に進んで、読出要素アドレスの指す要素位置の要素データと、「使用可能」のフラグ値とを演算パイプライン15に投入し、続くステップ4で、読出要素アドレスを次の要素に進める。」からすると、
前記要素使用可能フラグ読み取り手段から読み取られたベクトルレジスタの要素使用可能フラグが、「使用可能」のフラグ値であった場合に、前記要素データ投入手段に前記ベクトルレジスタの読出要素アドレスの指す要素位置から、演算すべき要素データを読み出して、前記演算手段に投入するように制御する手段(以下、「要素データ投入制御手段」という。)を有すると解される。

よって、(ア)?(エ)における記載及び関連する図面からすると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

複数の要素データを格納する領域と、該領域毎に要素データが格納されたか否かを示す要素使用可能フラグ値を格納する領域とを有するベクトルレジスタと、
該ベクトルレジスタの要素使用可能フラグ値を読み取る要素使用可能フラグ読み取り手段と、
ベクトル演算命令に従って要素データの演算を実行する演算手段と、
前記ベクトルレジスタから演算すべき要素データを読み出して、上記演算手段に投入する要素データ投入手段と、
前記要素使用可能フラグ読み取り手段から読み取られた要素使用可能フラグ値が「使用可能」のフラグ値であった場合に、前記要素データ投入手段に前記ベクトルレジスタの読出要素アドレスの指す要素位置から、演算すべき要素データを読み出して、演算手段に投入するように制御する要素データ投入制御手段とを備えたことを特徴とするベクトルプロセッサ。

3.対比
ここで、本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「要素データ」は、本願発明の「データ」、「レジスタのデータ」、及び「レジスタデータ」に相当する。
また、引用発明の「要素使用可能フラグ値」、「ベクトルレジスタ」、及び「ベクトルプロセッサ」は、それぞれ、本願発明の「フラグ情報」、「レジスタ」、及び「データ処理プロセッサ」に相当する。
また、引用発明の「読み取る」及び「要素使用可能フラグ読み取り手段」は、それぞれ、本願発明の「参照する」及び「フラグ参照回路」に相当する。
また、引用発明の「ベクトル演算命令」及び「演算手段」は、それぞれ、本願発明の「演算命令」及び「演算部」に相当する。
また、引用発明の「投入する」及び「要素データ投入手段」は、それぞれ、本願発明の「送る」及び「制御部」に相当する。
また、引用発明の「読出要素アドレスの指す要素位置」は、本願発明の「要素番号」に相当する。

そして、引用発明の「要素データ投入制御手段」と本願発明の「リード同期回路」とは、ともに、フラグ情報を参照し、前記制御部に対して、読み出すデータを示す要素番号から、データを読み出すように制御する読み出し制御手段である点で一致する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
複数のデータを格納する領域と、該領域毎にデータが格納されたか否かを示すフラグ情報を格納する領域とを有するレジスタと、
該レジスタのフラグ情報を参照するフラグ参照回路と、
演算命令に従ってデータの演算を実行する演算部と、
前記レジスタから演算すべきデータを読み出して上記演算部へ送る制御部と、
前記フラグ参照回路からのフラグ情報を参照し、前記制御部に対して読み出すデータを示す要素番号から、データを読み出すように制御する読み出し制御手段とを備えたことを特徴とするデータ処理プロセッサ。

(相違点)
「読み出し制御手段」について、本願発明の「リード同期回路」は、「フラグ参照回路からのフラグ情報を入力し、前記制御部に前記レジスタのデータを読み出すレジスタリードコマンドと、読み出すレジスタデータを示す要素番号を前記制御部に送る」のに対して、引用発明の「要素データ投入制御手段」は、「要素使用可能フラグ読み取り手段から読み取られた要素使用可能フラグ値が「使用可能」のフラグ値であった場合に、前記要素データ投入手段に前記ベクトルレジスタの読出要素アドレスの指す要素位置から、演算すべき要素データを読み出して、演算手段に投入するように制御する」点。

4.判断
相違点について検討する。
引用発明の要素データ投入制御手段は、「要素使用可能フラグ読み取り手段から読み取られた要素使用可能フラグ値が「使用可能」のフラグ値であった場合」という判断を行うものと認められる。
そして、前記「要素使用可能フラグ値」は「要素使用可能フラグ読み取り手段」が読み込むものであることからすると、本願発明のように、要素使用可能フラグ読み取り手段から読み取られた要素使用可能フラグ値を前記要素データ投入制御手段に入力する構成を採ることで、「使用可能」のフラグ値であった場合という判断を行うようにすることは、当業者であれば、適宜なし得たことである。
また、前記要素データ投入制御手段が、要素データ投入手段に「前記ベクトルレジスタの読出要素アドレスの指す要素位置から、演算すべき要素データを読み出して、演算手段に投入する」ように制御するものであることからすると、前記要素データ投入制御手段が、前記要素データ投入手段に対して、前記ベクトルレジスタの読出要素アドレスの指す要素位置を指定して、前記要素データを前記ベクトルレジスタの読出要素アドレスからリードするように指示する構成を採ることは、当業者であれば、自明のことである。
してみると、引用発明の要素データ投入制御手段が、本願発明のように、要素データ投入手段に要素データを読み出すリードコマンドと、読み出す要素データを示す要素番号を前記要素データ投入手段に送る構成を有するものとすることは、当業者であれば、適宜なし得たことである。
よって、相違点は格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

5.結び
以上のとおり、本願発明は、引用文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、上記結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2008-04-17 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-07 
出願番号 特願平11-66025
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 冨吉 伸弥
野仲 松男
発明の名称 データ処理プロセッサおよびシステム  
代理人 井上 学  

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