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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21M
管理番号 1179981
審判番号 不服2006-5386  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-23 
確定日 2008-06-19 
事件の表示 平成11年特許願第280152号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月13日出願公開、特開2001-101909号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本件出願は、平成11年9月30日の出願であって、平成18年2月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年3月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年4月17日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年4月17日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1. 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「リフレクタと、灯体と、放電灯と、イグナイタと、インバータからなる点灯回路と、ソケットからなり、イグナイタと点灯回路がソケット内にあり、放電灯がソケットに固定され、ソケットに取付け部を設け、リフレクタに被取付け部を設け、取付け部を被取付け部に取付けることでソケットがリフレクタに固定され、放電灯がリフレクタ内に収納されていることを特徴とする照明装置。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ソケットがリフレクタに固定され」ることについて、その取付を限定するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-298190号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の技術的事項が記載されている。
(1) 刊行物1の記載内容
(ア) 「この発明は、車両用前照灯装置等に適用される放電灯点灯装置に関するものである。」(段落【0001】)
(イ) 「この発明の第1の実施の形態を図1ないし図5により説明する。すなわち、この放電灯点灯装置は、車両用前照灯装置に適用したもので、ランプソケット1と、安定化回路2と、始動回路3と、手段4とを有する。ランプソケット1は放電灯49(図3)に接続される。・・・8は放電灯49の口金49aの外周面に設けたランプ保持用の係止ピン49cを、放電灯49の口金49aをランプソケット1に差込回転することにより係止し、放電灯49を保持する取付スリットである。またランプソケット1の内部には始動回路3を配設している。」(段落【0035】)
(ウ) 「安定化回路2は、電源に接続されランプソケット1に電圧を出力するもので、ランプソケット1に接続されて放電灯を安定点灯し、ランプ消灯時にはランプ点灯時に比べて高い電圧を発生する。この実施の形態は図41と同構成のインバータ回路を用い、ランプ消灯時にたとえば300Vの電圧を発生させており、入力端は電源であるバッテリ9に接続され、出力端は後述の始動回路3を介してランプソケット1の中央電極5と外周電極6とに接続されている。矩形波点灯方式におけるインバータ回路は、バッテリ9にスイッチ(図示せず)を介して接続され、ノイズフィルタ,逆接続に対する保護およびサージ吸収の機能を有する入力部と、昇圧および定電力や高束立上げ等の電力制御の機能を有するDC/DCコンバータと、矩形波変換する低周波の矩形波インバータ、およびノイズフィルタを有する出力部により構成されている。さらに、点灯状態を制御するため、安定化回路2をマイコン等により制御する制御部を有する。」(段落【0036】)
(エ) 「始動回路3は、安定化回路2とランプソケット1との間に接続されて放電灯の放電開始前には能動化され、放電灯の放電の開始に必要な高電圧を発生して放電灯を放電させるとともに放電開始後には不能動化される。実施の形態では安定化回路2のランプ消灯時の電圧よりも低くランプ点灯時の電圧よりも高い動作電圧で動作するものであって、ランプソケット1に接続されて放電灯を消灯状態から放電開始させるものである。この安定化回路3はランプソケット1内に設けられ、動作電圧たとえば250V以上で動作する図41と同構成の高圧トランス3aとイグナイタメイン回路3bからなるイグナイタ回路を用いている。そして、イグナイタメイン回路3bの入力端の一方は安定化回路2の出力端の一方に接続されたランプソケット1内の出力線に接続点Aで接続され、他端は補助電極7に接続される。またイグナイタメイン回路3bの出力端は接続点Aと中央電極5との間に接続されている。」(段落【0037】)
(オ) 「図3は図1の内部のランプソケット1のボディ内の配置を示す。ランプソケット1の直ぐ後ろ側に高圧パルストランス3aを配置し、高圧パルストランス3aの後ろ側にイグナイタメイン回路3bを構成するプリント配線板3cを設けている。3dは安定化回路2等に接続するハーネスである。図4は車体に適用した状態を示す。40は車体、41は灯体ハウジング、42はアウターレンズ、43は反射板、44は反射板固定ねじ、45は光軸を調整する反射板エーミング用ボルト、46は反射板43に固定するイグナイタ付ソケット固定ねじ、47は灯体ハウジング41に固定するインバータ固定ねじ、48は電源接続線、41aは灯体カバー、41bは灯体固定ボルト、3eはコネクタ、1aは放電灯49を反射板43に固定するためのランプ固定用金具である。」(段落【0044】)
(カ) 「図5は車両用前照灯装置の組立順序を示す。矢印に付した○記号内の符号の順序にしたがって、組立られる。すなわちまず、○1(以下○記号付きの数字をこのように表記する。),○2のように安定化回路2がインバータ固定ねじ47により灯体ハウジング41に固定される。○3のようにハーネス3dのコネクタ3eが灯体ハウジング41内に導かれる。○4,○5のように反射板43が反射板固定ねじ44により固定される。○6のようにアウターレンズ42が車体40に装着される。○7のように放電灯49が反射板43に挿入され、○8のようにランプ固定用金具1aで放電灯49を反射板43に固定する。この金具1aは、板ばねにより構成され、反射板43のランプ挿入口の係合部と係合し、放電灯49を反射板43に固定する。○9,○10のようにランプソケット1を放電灯49に装着するとともにソケット固定ねじ46で反射板43に固定する。○11のように灯体カバー41aを灯体ハウジング41に固定する。○12のように灯体固定ボルト41bにより灯体ハウジング41を車体40に固定する。」(段落【0045】)
(キ)「この発明の第20の実施の形態を図28および図29に示す。すなわち、この車両用前照灯装置は、点灯回路ブロック203が放電灯201を装着するソケット部202を一体に有して、点灯回路ブロック203の重心をソケット部202のソケット軸213の後方の延長線213aの下方に設定している。」(段落【0077】)
(ク) 「この発明の第21の実施の形態を図30に示す。・・・他は第20の実施の形態と同様である。なお、この実施の形態の点灯回路ブロック203は、点灯回路の構成要素のうちイグナイタすなわち始動回路であったが、点灯回路の全体を含めてもよい。」(段落【0079】-【0080】)
(ケ) 発明の第1の実施の形態の説明図。(【図1】-【図5】)
(コ) 第20の実施の形態の説明図。(【図28】-【図29】)
(サ) 第21の実施の形態の説明図。(【図30】)

ここで、上記記載事項及び図面の図示内容から次のことが明らかである。
・記載事項(イ)における「安定化回路2」は、図1において引出線2の引き出された部位を「インバータ回路部」と記載されていること、及び、記載事項(ウ)に「インバータ回路を用い・・ており」と記載されていることから、インバータからなる安定化回路であると言うことができる。
・記載事項(カ)や、図4,5の記載から、図4,5のランプソケット1の反射板43に固定する部分は取付け部と、反射板43のランプソケット1が固定される部分は被取付け部と言うことができる。
・なお、「ランプソケット1」については、記載事項(オ)、図3、図28、及び図30には、ランプソケット1の後ろ側に始動回路を設けたものとして記載されているが、その他の記載や図1によれば「ランプソケット1の内部には始動回路3を配設」したもの(特に、記載事項(イ)等)が記載されていると言うことができる。

すると、特に、第1の実施の形態に着目し、上記の事項を総合すると刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「反射板(43)と、灯体ハウジング(41)と、放電灯(49)と、始動回路(3)と、インバータからなる安定化回路(2)と、ランプソケット(1)からなり、始動回路(3)がランプソケット(1)内にあり、放電灯(49)が反射板(43)に固定され、ランプソケット(1)に取付け部を設け、反射板(43)に被取付け部を設け、前記取付け部を被取付け部に取付けることでランプソケット(1)が反射板(43)に固定され、放電灯(49)が反射板(43)内に収納されている車両用前照灯装置。」

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1) 両発明の対応関係
・引用発明の「反射板」「灯体ハウジング」「始動回路」「ランプソケット」「車両用前照灯装置」は、本願補正発明の「リフレクタ」「灯体」「イグナイタ」「ソケット」「照明装置」にそれぞれ相当する。
・引用発明の「インバータからなる安定化回路」は、放電灯を点灯するために機能する回路であるので、本願補正発明の「インバータからなる点灯回路」に相当する。

(2) 両発明の一致点
「リフレクタと、灯体と、放電灯と、イグナイタと、インバータからなる点灯回路と、ソケットからなり、イグナイタがソケット内にあり、ソケットに取付け部を設け、リフレクタに被取付け部を設け、取付け部を被取付け部に取付けることでソケットがリフレクタに固定され、放電灯がリフレクタ内に収納されている照明装置。」

(3) 両発明の相違点
(ア) ソケットに関して、本願補正発明が、「イグナイタと点灯回路がソケット内」にあるのに対して、引用発明は、始動回路(3)(本願補正発明の「イグナイタ」に相当)がランプソケット内にあるものの、安定化回路(2)(本願補正発明の「点灯回路」に相当)はソケット内に配していない点。
(イ) 放電灯のリフレクタへの固定に関して、本願補正発明は、「放電灯がソケットに固定され」て「ソケットがリフレクタに固定され」るのに対して、引用発明は、放電灯(49)が反射板(43)(本願補正発明の「リフレクタ」に相当)に固定される点。

4. 容易推考性の検討
(1) 相違点(ア)について
刊行物1の記載事項(ク)に、「この発明の第21の実施の形態の点灯回路ブロック203は、点灯回路の構成要素のうちイグナイタすなわち始動回路であったが、点灯回路の全体を含めてもよい」と記載されている。
そして、第21の実施の形態の点灯回路ブロック203は、第21の実施の形態の前提構成である第20の実施の形態について記載された記載事項(キ)に記載されたように「点灯回路ブロック203が放電灯201を装着するソケット部202を一体に有し」たものであり(さらに、第21の実施の形態に係る図30のものと、引用発明に係る第1の実施の形態の内の図3のものとが、同じようにソケット後部にイグナイタを有すものであることからも)、引用発明においてランプソケット内に配置される始動回路を、上記の示唆にもとづいて点灯回路全体、つまり、始動回路(本願補正発明の「イグナイタ」)と安定化回路(2)(本願補正発明の「点灯回路」)にすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。
さらに、一般に照明装置において、イグナイタとインバータ等の安定化回路とをソケットと一体とすることは、例えば、特開平10-228804号公報、特開平10-228810号公報、特開平7-114819号公報等に記載されているように、本願出願前周知の事項であることからも、引用発明において始動回路と安定化回路(本願補正発明の「点灯回路」)とをソケットと一体として、ランプソケット(1)を始動回路(3)と安定化回路(2)がソケット内にあるものとして、本願補正発明に係る相違点(ア)に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(2) 相違点(イ)について
照明装置の光源固定手法として、光源をソケットに固定し、ソケットをリフレクタに固定する手法は、例えば、実願昭53-111183号(実開昭55-27873号公報)のマイクロフィルムや実公平3-17361号公報に示されているように周知慣用のものである。
そして、上記(1)記載のように、ランプソケット内に始動回路(本願補正発明の「イグナイタ」)と安定化回路(2)(本願補正発明の「点灯回路」)を配置することを前提としても、引用発明における放電灯の固定方法として、上記周知慣用の光源固定手法を採用することに特段の困難性は認識されない。
したがって、引用発明における放電灯の固定方法として、該周知慣用の光源固定手法を採用し、本願補正発明の相違点(イ)に係る構成とすることは、当業者が必要に応じてなし得る設計的事項といえる。

(3) 総合判断
本願補正発明の作用効果は、刊行物1に記載された発明、及び、周知慣用技術から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
すると、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

5. むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

第3 本願発明について
1. 本願発明
平成18年4月17日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1-11に係る発明は、平成18年1月10日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-11に記載された次のとおりの事項により特定されるものであるところ、請求項1には次のとおり記載されている。
(1)「リフレクタと、灯体と、放電灯と、イグナイタと、インバータからなる点灯回路と、ソケットからなり、イグナイタと点灯回路がソケット内にあり、放電灯がソケットに固定され、ソケットがリフレクタに固定され、放電灯がリフレクタ内に収納されていることを特徴とする照明装置。」(以下「請求項1に係る発明」という。)

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3. 対比・判断
本件出願の請求項1に係る発明の構成を全て含むとともに、当該発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件出願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4. むすび
したがって、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-16 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-07 
出願番号 特願平11-280152
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F21M)
P 1 8・ 121- Z (F21M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志柿崎 拓平田 信勝  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 中川 真一
平上 悦司
発明の名称 照明装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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