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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41K |
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管理番号 | 1180050 |
審判番号 | 不服2005-2231 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-09 |
確定日 | 2008-06-26 |
事件の表示 | 特願2003- 80945「スタンプ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 7日出願公開、特開2003-285523〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年3月24日(優先権主張平成14年4月18日,平成15年2月19日)の出願であって、平成16年2月16日付け拒絶理由通知に対して、同年4月26日付けで手続補正がされたが、同年12月27日付けで拒絶査定され、これに対し、平成17年2月9日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年3月11日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年3月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年3月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正前および本件補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであり、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1及び請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「複数のスタンプ装置」について、「それぞれが直方体に形成された複数のスタンプ装置」と限定するものであることから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。 本願補正発明は、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 それぞれが直方体に形成された複数のスタンプ装置の主面を互いに重ね合わせてなる組スタンプ装置であって、 前記それぞれのスタンプ装置は、 スタンプ本体と、 前記スタンプ本体の一端に装着され、印面が貼り付けられる部分を有する印面部材と、 前記印面部材の長手方向の両端部の2箇所で、押印方向に対してそれぞれ移動可能に前記印面部材を前記スタンプ本体に支持する支持部と、 前記印面部材の長手方向の両端部に設けられ、前記印面部材を前記スタンプ本体から引き離す方向であって前記印面の長手方向に離れた位置間の高さの差が吸収可能なように付勢する弾性部材と、 を有する組スタンプ装置。」 ここで、本件補正後の請求項1には「印面の長手方向の高さを吸収可能なように付勢する弾性部材」と記載されているが、該記載は必ずしも明確なものとはいえないものであるから、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌したところ、段落【0019】等の記載から見て、上記「印面の長手方向の高さを吸収可能なように付勢する弾性部材」は、技術的には「印面の長手方向(に離れた位置間)の高さ(の差)を吸収可能なように付勢する弾性部材」であることを意味すると認められることから、本願補正発明として、上記のとおり認定した。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭53-60269号(実開昭54-162311号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (記載事項A) 「本考案は、印判に関する。」(明細書1ページ9行) (記載事項B) 「軟質多孔性印材よりなる印字体(7)とインキ吸蔵体(14)とを保持枠(20)内に収納させた枠付印材(21)を該印字体(7)の印字面(7’)を枠凾体(4)の下端より若干突出させて嵌装してなる印判主体(8)と、前記突片部(6’)、(6’)の外面を両側板部の内面に突設したストッパー(9)、(9)の先端面に添わせて印判主体(8)をその天蓋部(1)に植設したばね案内管(3)と内部に設けられるばね案内孔(16)との案内下に上下摺動自在に嵌装させる把持筒(10)と、前記枠凾体(4)の高さより若干長い脚板部(11’)、(11’)をもって該枠凾体(4)に跨装される摺動枠体(11)と、印判主体(8)のばね案内杆(3)に嵌装されて前記摺動枠体(11)をその脚板部(11),(11)の下端縁が常時は印字体(7)の印字面(7’)より若干下方に位置するよう押圧するばね(12)と、印判主体(8)を常時下方に押圧するばね(13)とを備えた収納枠体(A)」(明細書2ページ5?20行) (記載事項C) 「(15)はばね案内杆(3)に嵌装されるコイル状のばね(12)の上部止めとして把持筒(10)の内面に設けられるばね案内杆(3)用の案内孔(16)を備えた止板であり、」(明細書3ページ4?7行) (記載事項D) 「ばね案内杆(3)の上方延長部をばね案内孔(16)に案内させるとともに、突片部(6’)、(6’)の外面をストッパー(9)、(9)の先端面に添わせることにより把持筒(10)内に上下摺動自在に嵌装されている印判主体(8)は全印字面に平均した押圧力を加えられた状態としてこれを常時下方に弾圧するばね(13)に抗し円滑に上昇することとなるから印字面(7’)の紙面に対する圧は印字面全面に亘りほぼ均等に緩和されて過剰のインキが浸出することなく鮮明な捺印ができる」(明細書4ページ15行?5ページ3行) (記載事項A)にある「印判」の形状は、引用例の第1?3図から見て、「ほぼ直方体に形成」されているものであると認められる。 (記載事項B)における「印字体(7)」は、「印判主体(8)」を構成する部材の一つである「保持枠(20)」に収納されるものである。したがって、「印判主体(8)」は「印字体(7)」を保持するものであると認められる。 (記載事項B)および(記載事項D)における「印判主体(8)」を上下動自在に嵌装させる「把持筒(10)」は、引用例の第1?3図から見て、「印判主体(8)」をその一端に装着するものであると認められる。 (記載事項B)?(記載事項D)における「ばね案内杆(3)」、「ばね案内孔(16)」、「突片部(6’)、(6’)」および「ストッパー(9)、(9)」は、引用例の第3図から見て、「印判主体(8)」の長手方向の両端部の2箇所に設けられているものであると認められる。さらに、この「ばね案内杆(3)」、「ばね案内孔(16)」、「突片部(6’)、(6’)」および「ストッパー(9)、(9)」は、(記載事項B)、(記載事項C)および引用例の第1?3図から見て、印判主体(8)を把持筒(10)に支持する機能を有するものと認められる。 (記載事項B)および(記載事項D)における「ばね(13)」は、引用例の第3図から見て、「印判主体(8)」の長手方向の両端部に設けられているものであると認められる。かつ、ばねは弾性を有するものであるから、前記「ばね(13)」は、押圧時における印字体(7)の長手方向に離れた位置間の高さの差を吸収可能なように付勢する機能を有しているものであると認められる。 したがって、上記(記載事項A)?(記載事項D)及び引用例の明細書並びに図面全体から、引用例には、次の発明(以下、引用発明という。)が記載されていると認められる。 「ほぼ直方体に形成された印判であって、 把持筒(10)と、 前記把持筒(10)の一端に装着され、印字体(7)を保持する印判主体(8)と、 前記印判主体(8)の長手方向の両端部の2箇所で、押印方向に対してそれぞれ上下摺動自在に前記印判主体(8)を前記把持筒(10)に支持するばね案内杆(3)、ばね案内孔(16)、突片部(6’)、(6’)およびストッパー(9)、(9)と、 前記印判主体(8)の長手方向の両端部に設けられ、前記印判主体(8)を常時下方に押圧するとともに前記印字体(7)の長手方向に離れた位置間の高さの差が吸収可能なように付勢するばね(13)と、 を有する印判。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「印判」は、本願補正発明における「スタンプ装置」に相当する。 引用発明における「把持筒(10)」は、本願補正発明における「スタンプ本体」に相当する。 引用発明における「印字体(7)」は、本願補正発明における「印面」に相当する。 引用発明の「印判主体(8)」と本願補正発明における「印面部材」とは、「印面」を保持する機能を有する「印面保持部材」である点で共通している。 引用発明における「上下摺動自在」は、本願補正発明における「移動可能」に相当する。 引用発明における「ばね案内杆(3)、ばね案内孔(16)、突片部(6’)、(6’)およびストッパー(9)、(9)」は、本願補正発明における「支持部」に相当する。 引用発明における「印判主体を常時下方に押圧する」構成は、本願補正発明における「印面部材をスタンプ本体から引き離す方向」に「付勢する」構成に相当する。 引用発明における「ばね(13)」は、本願補正発明における「弾性部材」に相当する。 してみると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「スタンプ装置であって、 スタンプ本体と、 前記スタンプ本体の一端に装着され、印面を保持する印面保持部材と、 前記印面保持部材の長手方向の両端部の2箇所で、押印方向に対してそれぞれ移動可能に前記印面保持部材を前記スタンプ本体に支持する支持部と、 前記印面保持部材の長手方向の両端部に設けられ、前記印面保持部材を前記スタンプ本体から引き離す方向であって前記印面の長手方向に離れた位置間の高さの差を吸収可能なように付勢する弾性部材と、 を有するスタンプ装置。」 一方で、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願補正発明は「複数のスタンプ装置の主面を互いに重ね合わせてなる組スタンプ装置」であると特定されるのに対し、引用発明は「組スタンプ装置」として使用するものであるのかどうかについて明記がなく、前記特定を有しない点。 <相違点2> 本願補正発明は「それぞれが直方体に形成された複数のスタンプ装置」であると特定されるのに対し、引用発明は「ほぼ直方体に形成されたスタンプ装置」であるものの、「直方体に形成」されているかどうかは定かではなく、前記特定を有しない点。 <相違点3> 印面保持部材に関して、本願補正発明は、「印面が貼り付けられる部分」を有する「印面部材」で構成されるものであると特定されるのに対し、引用発明は「印面」の保持のための構成について明記がなく、前記特定を有しない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 <相違点1について> 単独で使用することができるスタンプ装置を、互いに重ね合わせて一体化して組スタンプ装置とする技術は、拒絶査定の理由においても示したように周知の事項(例えば、実願昭59-29730号(実開昭60-141260号)のマイクロフィルム等を参照。)であり、また、住所や氏名、電話番号等が印面に形成された複数の直方体に形成されたスタンプ装置を、各スタンプ装置の最も広い面、すなわち主面を互いに重ね合わせてゴムやテープ等で固定することにより、組スタンプ装置として使用することは、広く一般に行われている事項である。 したがって、上記周知事項を鑑みて、引用発明のスタンプ装置を、その主面を互いに重ね合わせてなる組スタンプ装置として使用することは、当業者ならば容易に想到することができたものである。 <相違点2について> スタンプ装置を複数用いる点については、相違点1についての判断にて検討済みである。 「直方体に形成された」スタンプ装置も、「ほぼ直方体に形成された」スタンプ装置も、スタンプ装置という技術分野においては例を挙げるまでもなく慣用されているものに過ぎず、かつ、「直方体」であるか「ほぼ直方体」であるかが組スタンプ装置として使用される際に顕著な差異を生じるものでもないことから、引用発明を「直方体に形成」することは、単なる設計的事項にすぎない。 <相違点3について> スタンプ装置という技術分野において、「印面保持部材」を、「印面が貼り付けられる部分」を備えた「印面部材」により構成する技術は、周知の事項(例えば、特開平7-251558号公報,特開平11-240235号公報等を参照。)であると考えられる。 したがって、引用発明において、「印面保持部材」として、「印面が貼り付けられる部分」を備えた「印面部材」を採用することは、当業者ならば容易に想到することができたものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が予測しうるものに過ぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年度改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成17年3月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至9に係る発明は、平成16年4月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のスタンプ装置の主面を互いに重ね合わせてなる組スタンプ装置であって、 前記それぞれのスタンプ装置は、 スタンプ本体と、 前記スタンプ本体の一端に装着され、印面が貼り付けられる部分を有する印面部材と、 前記印面部材の長手方向の両端部の2箇所で、押印方向に対してそれぞれ移動可能に前記印面部材を前記スタンプ本体に支持する支持部と、 前記印面部材の長手方向の両端部に設けられ、前記印面部材を前記スタンプ本体から引き離す方向であって前記印面の長手方向の高さが吸収可能なように付勢する弾性部材と、 を有する組スタンプ装置。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例およびその記載事項は、前記「2.[理由](2)(引用例)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記「2.[理由]」で検討した本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である「複数のスタンプ装置」について、「それぞれが直方体に形成された」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.[理由](4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知事項、慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知事項、慣用事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり,本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-18 |
結審通知日 | 2008-04-22 |
審決日 | 2008-05-12 |
出願番号 | 特願2003-80945(P2003-80945) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41K)
P 1 8・ 575- Z (B41K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國田 正久 |
特許庁審判長 |
番場 得造 |
特許庁審判官 |
上田 正樹 長島 和子 |
発明の名称 | スタンプ装置 |
代理人 | 西出 眞吾 |
代理人 | 前田 均 |
代理人 | 前田 均 |
代理人 | 西出 眞吾 |