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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1180055
審判番号 不服2005-19158  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-05 
確定日 2008-06-26 
事件の表示 特願2000-316249「光情報媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年4月26日出願公開、特開2002-123979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年10月17日の出願であって、拒絶理由通知に対し平成16年12月21日付けで手続補正がされたが、平成17年8月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月2日付けで手続補正がされたものである。

2.平成17年11月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月2日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1) 補正後の本願発明
平成17年11月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】透光性基板(1)と、この透光性基板(1)の表面上に形成された標準ピッチ0.74μmのトラッキング用のグルーブ(3)と、このグルーブ(3)が形成された透光性基板(1)の表面上に形成された光吸収層(12)と、この光吸収層(12)の上に形成され、記録、再生光を反射する反射層(13)とを有し、波長650nmのレーザー光により、光学的に読み取り可能な信号を記録し、再生する光情報媒体において、光吸収層(12)側の透光性基板(1)の界面のグルーブ(3)の部分の深さをdsub、反射層(13)側の光吸収層(12)の界面のプリグルーブ部分の深さをdabs、透光性基板(12)の複素屈折率の実数部をnsub、光吸収層(12)の複素屈折率の実数部をnabs、再生光の波長をλとしたとき、ΔS=2dsub{nsub-nabs(1-dabs/dsub)}/λで表されるグルーブ(3)の部分とそれ以外のランド(4)の部分とで反射層(13)により反射された反射光の光学的位相差ΔSが、0.3≦ΔS≦0.5であることを特徴とする光情報媒体。」
と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「トラックピッチ」について「0.74μm」との限定を付加し、同じく「レーザー光の波長」について「700nm以下」を「650nm」と限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-215508号公報(平成12年8月4日公開。以下、「引用例」という。)には、「光記録媒体及び光記録方法」に関し図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)

ア「【請求項1】 有機色素を主成分とする記録層を有し、波長が700nm以下の記録光照射により反射率を変化させて記録を行うための光記録媒体であって、
記録光とほぼ同じ波長で、強度1?4.5mWより選ばれるいずれかの強度を有する、約382ナノ秒のパルス長の光を、
該光に対して、該媒体の光照射部を相対速度0.3m/sで移動させながら照射した場合に、
反射率が変化し飽和レベルに達するに要する時間が該パルス長の130%以下であることを特徴とする光記録媒体。」(特許請求の範囲)
イ「【0024】なお、溝幅が狭いほど減衰時間が長くなる傾向があると考えられる。
溝深さは好ましくは100?180nmが好ましい。溝深さは、記録時に十分な変化を起こし十分な記録変調度を得るためには100nm以上が好ましい。成形時の基板への溝形状の転写性を高くし、かつ良好な平坦性を持たせるためには180nm以下が好ましい。
溝形状はU字溝が好ましい。U字溝とは、溝の底部が平坦となっており断面形状がU字形をしているものである。
【0025】トラックピッチは、十分な信号品質を保ちつつ高容量化するためには0.7?1.0μmが好ましい。」(4頁右欄?5頁左欄)
ウ「【0028】大きな記録変調度を得るためには、溝間部(ランド部)、溝部の記録層膜厚をある程度厚くするのが好ましく、記録マークがトラック方向やランド方向に広がるのを防ぎジッターやクロストークを低く抑えるためには溝間部、溝部の記録層膜厚をある程度薄くするのが好ましい。従って、記録層膜厚は溝間部で30?100nm程度が好ましく、溝部で80nm?180nmが好ましい。
【0029】記録層上の溝深さは基板の溝深さの50%?80%であることが好ましい。反射率とトラッキングエラー信号を十分に大きくするためには50%以上が好ましく、また、記録変調度を十分に大きくするためには80%以下が好ましい。
記録層の、記録再生光波長±5nmにおける屈折率nと消衰係数kについては、屈折率nは好ましくは2.0?3.0、より好ましくは2.3?2.6である。消衰係数kは0.03以上が好ましく、本願発明が特に効果を発揮する高線速記録仕様の場合は0.03?0.10の範囲がより好ましい。」(5頁左欄?右欄)
エ「【0060】
【実施例】本実施例において、ディスクの評価は以下のように行った。ディスクを波長640nm、対物レンズの開口数NA=0.6の光ヘッドを有する評価機(パルステック社製 DDU-1000)に装着し、線速度0.3m/sで回転させ、このディスクにパルス長383ナノ秒のレーザーを照射し記録を行った。<以下、省略>」(12頁左欄)
「【0062】 実施例1
溝深さ150nm、溝幅0.28μm、トラックピッチ0.80μm(以上、AFMでの測定結果)のU字案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板上に下記構造式<式は省略>で示される含金属アゾ色素0.042gをオクタフルオロペンタノール(OFP)4gに溶解し、1200rpmでスピンコートし、80℃のオーブンで3時間アニール処理し、記録層とした。
<中略>
【0065】この色素単層の640nmでの屈折率n、消衰係数kはそれぞれ、2.43、0.07であり、吸収極大は592.5nmであった。
この記録層の上に銀を100nmの厚さだけスパッタし、その状態で記録層上の溝深さをAFMで測定したところ、基板の溝深さの65%であった。なお、記録層の溝間部膜厚は30nmであった(従って、溝部膜厚は85nm)。この反射層の上にUV硬化樹脂(大日本インキ社製「SD-318」)をスピンコートして紫外線ランプで硬化して厚さ約3μmの保護層を作製した。
【0066】なお、このディスクに用いた反射層の640nmでのn、kは、0.08、4.28であった。
同じ様にして作製したディスク同士をホットメルト接着剤で接着し、この貼り合わせディスクを評価した。<以下、省略>」(12頁左欄?右欄)

上記記載事項によれば、引用例には、
「波長が700nm以下の記録光照射により反射率を変化させて記録を行うための光記録媒体であって、
ポリカーボネート基板上にトラックピッチ0.80μmのU字案内溝と、含金属アゾ色素をスピンコートして形成された記録層と、この記録層の上に銀をスパッタして形成された反射層とを有し、640nmのレーザー光で記録再生される光記録媒体」の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。

(3) 対比
引用例発明の「光記録媒体」は本願補正発明の「光情報媒体」に相当し、以下同様に、引用例発明の「ポリカーボネート基板」、「U字案内溝」、「記録層」、「反射層」は、それぞれ本願補正発明の「透光性基板」、「トラッキング用のグルーブ」、「光吸収層」「反射層」に、それぞれ相当する。

そこで、本願補正発明と引用例発明とを比較すると、両者は、
「透光性基板と、この透光性基板の表面上に形成されたトラッキング用のグルーブと、このグルーブが形成された透光性基板の表面上に形成された光吸収層と、この光吸収層の上に形成され、記録、再生光を反射する反射層とを有し、レーザー光により、光学的に読み取り可能な信号を記録し、再生する光情報媒体」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は、標準ピッチが0.74μmであり、波長650nmのレーザー光で記録、再生するのに対し、引用例発明は、トラックピッチが0.8μmであり、波長640nmのレーザー光で記録、再生する点。
[相違点2]本願補正発明では、ΔSが0.3≦ΔS≦0.5であるのに対し、引用例発明ではΔSの値による限定が付されていない点。

(4) 判断
[相違点1]について
引用例において、波長700nm以下のレーザー光で記録、再生する例として640nmのレーザー光で記録再生しており、トラックピッチは、十分な信号品質を保ちつつ高容量化するためには0.7?1.0μmが好ましいとされている。(上記イ)
そして、本願出願時において再生用DVD(DVDビデオ、DVD-ROM)は、トラックピッチが0.74μmであり、波長650nmのレーザー光で再生を行うことが規格化されていたことは周知であるから、記録型のDVDにおいても再生用DVDと互換性をとるために、標準ピッチを0.74μmとし、波長650nmのレーザー光で記録、再生を行うようにすることは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。

[相違点2]について
物質の屈折率は、当該技術分野では複素屈折率(n+ik)で表され、その実数部nが一般の屈折率に相当し、虚数部のkは一般に消衰係数と称されることは周知である。
引用例における「基板の溝深さ」、「記録層上の溝深さ」、「色素単層の屈折率n」は、それぞれ、本願補正発明の「光吸収層側の透光性基板の界面のグルーブの部分の深さdsub」、「光吸収層の界面のプリグルーブ部分の深さdabs」、「光吸収層の複素屈折率の実数部nabs」に相当する。
引用例記載の実施例において、透明基板としてポリカーボネートを使用しているから基板の屈折率の実数部nsubは1.59であり(例えば、株式会社オプトロニクス社 平成2年5月21日発行「続・わかりやすい光ディスク」の198頁表1参照)、溝深さ(dsub)は150nm、記録層の複素屈折率の実数部(nabs)は2.43、「記録層上の溝深さ」の「基板上の溝深さ」に対する比(dabs/dsub)は65%(0.65)である。(上記エ)

これらの数値を本願補正発明のΔSの式「ΔS=2dsub{nsub-nabs(1-dabs/dsub)}/λ」に代入して計算すると、
2×150{1.59-2.43(1-0.65)}/640≒0.35となり、引用例の実施例1のΔSの値は本願補正発明の0.3≦ΔS≦0.5の条件を満たす。
また、再生光の波長λが650nmの場合ΔSは約0.34となるから、再生光の波長が640nmと650nmとの相違によるΔSの差は微差にすぎない。

本願補正発明の実施例及び比較例についてみると、いずれも基板としてポリカーボネートを使用しており、実施例における基板のグルーブの深さ(dsub)の範囲(160nm(実施例6)?180nm(実施例2、5))、光吸収層の屈折率の範囲(2.15(実施例5)?2.76(実施例4))、「記録層上の溝深さ」の「基板上の溝深さ」に対する比(dabs/dsub)の範囲(110/175≒63%(実施例4)?120/170≒70%(実施例1))は、いずれも引用例における溝深さ100?180nm、屈折率n2.0?3.0、記録層上の溝深さは基板の溝深さの50%?80%とされる好ましい範囲(上記イ、ウ参照)に包含されている。
これに対し、本願明細書の比較例では、比較例1、2、6は「記録層上の溝深さ」の「基板上の溝深さ」に対する比(dabs/dsub)がそれぞれ、55/170=32%、60/170=35%、65/180=36%、比較例5は110/120=91.6%と、いずれも引用例発明で好ましいとされる50%?80%の範囲外である。

そうすると、引用例発明ではΔSの範囲を0.3≦ΔS≦0.5と特定していないが、本願補正発明の実施例における記録層の膜厚や基板の溝深さ等が引用例発明における好ましい範囲と重複しており、引用例発明の実施例の媒体のΔS値は本願発明の範囲に包含されていることからみて、ΔSの数値によって本願補正発明を引用例発明と区別することはできないから、相違点2は、実質的な相違点にはならない。

そして、上記の相違点等について総合的に検討しても、本願補正発明の作用効果は引用例から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年11月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年12月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 透光性基板(1)と、この透光性基板(1)の表面上に形成されたトラッキング用のグルーブ(3)と、このグルーブ(3)が形成された透光性基板(1)の表面上に形成された光吸収層(12)と、この光吸収層(12)の上に形成され、記録、再生光を反射する反射層(13)とを有し、波長700nm以下のレーザー光により、光学的に読み取り可能な信号を記録し、再生する光情報媒体において、光吸収層(12)側の透光性基板(1)の界面のグルーブ(3)の部分の深さをdsub、反射層(13)側の光吸収層(12)の界面のプリグルーブ部分の深さをdabs、透光性基板(12)の複素屈折率の実数部をnsub、光吸収層(12)の複素屈折率の実数部をnabs、再生光の波長をλとしたとき、ΔS=2dsub{nsub-nabs(1-dabs/dsub)}/λで表されるグルーブ(3)の部分とそれ以外のランド(4)の部分とで反射層(13)により反射された反射光の光学的位相差ΔSが、0.3≦ΔS≦0.5であることを特徴とする光情報媒体。」

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(2) 対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から発明を特定するために必要な事項である「トラックピッチ」について「0.74μm」との限定を省き、同じく「レーザー光の波長」について「700nm以下」を「650nm」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、発明を特定事項についてさらに限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.[理由](4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明についてみるまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-30 
結審通知日 2008-05-01 
審決日 2008-05-14 
出願番号 特願2000-316249(P2000-316249)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 横尾 俊一
吉川 康男
発明の名称 光情報媒体  
代理人 北條 和由  
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