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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1180075
審判番号 不服2006-7091  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-13 
確定日 2008-06-26 
事件の表示 平成10年特許願第107866号「オートクルーズ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月 2日出願公開、特開平11-301308〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本件出願は、平成10年4月17日に出願されたものであって、平成17年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年3月6日付けで拒絶査定がなされ、同年4月13日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年5月11日に手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされたものである。

[2]平成18年5月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成18年5月11日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.補正の内容、及び補正の目的
平成18年5月11日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、次の内容を含むものである。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】複数の補助ブレーキを備える車両において、目標車速を設定する手段と、実車速を検出する手段と、エンジンのアクセル開度を調節して前記実車速を前記目標車速に近づけるオートクルーズ制御手段と、前記オートクルーズ制御中に前記実車速が前記目標車速を上回る前記車速差が大きくなるのに伴って前記複数の補助ブレーキを順に作動させる補助ブレーキ連動制御手段とを備え、前記オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合に前記補助ブレーキ連動制御手段が前記補助ブレーキを作動させることを所定の強制オフ時間だけ解除することを特徴とするオートクルーズ装置。」
から、
「【請求項1】複数の補助ブレーキを備える車両において、目標車速を設定する手段と、実車速を検出する手段と、エンジンのアクセル開度を調節して前記実車速を前記目標車速に近づけるオートクルーズ制御手段と、前記オートクルーズ制御中に前記実車速が前記目標車速を上回る前記車速差が大きくなるのに伴って前記複数の補助ブレーキを順に作動させる補助ブレーキ連動制御手段とを備え、前記オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合に前記補助ブレーキ連動制御手段が前記補助ブレーキを作動させることを前記各補助ブレーキ毎にその制動力に対応して設定した所定の強制オフ時間だけ解除することを特徴とするオートクルーズ装置。」
に補正するものである。

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載されていた発明特定事項である「所定の強制オフ時間」を「前記各補助ブレーキ毎にその制動力に対応して設定した」と限定するものであって、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲を減縮することを目的とするものと認められる。

2.独立特許要件について
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1の「前記オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合に前記補助ブレーキ連動制御手段が前記補助ブレーキを作動させることを前記各補助ブレーキ毎にその制動力に対応して設定した所定の強制オフ時間だけ解除すること」なる記載では、「各補助ブレーキ毎」の「制動力」の大小と「強制オフ時間」の長さの大小との「対応」関係(例えば、該「制動力」が大きいときは該「強制オフ時間」は長くなるのか、それとも短くなるのか等)について、何ら規定されていない。
このため、本件補正後の請求項1において、発明の詳細な説明(特に段落0043)に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、「EXHブレーキ、EEブレーキ、リターダが順に再作動し、制動トルクショックを小さく抑えながら、目標車速に対して実車速を近づけること」なる作用を実現できないものも含まれることとなり、発明の詳細な説明に記載した範囲(態様)を超えて特許を請求するものである。
したがって、本願は、上記補正によって補正された特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)むすび
以上のとおり、平成18年5月11日付けの手続補正書による手続補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

[3]本願発明について
(1) 本願発明
上記のとおり、平成18年5月11日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年6月24日付けの手続補正により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、次のとおりのである。
「【請求項1】複数の補助ブレーキを備える車両において、目標車速を設定する手段と、実車速を検出する手段と、エンジンのアクセル開度を調節して前記実車速を前記目標車速に近づけるオートクルーズ制御手段と、前記オートクルーズ制御中に前記実車速が前記目標車速を上回る前記車速差が大きくなるのに伴って前記複数の補助ブレーキを順に作動させる補助ブレーキ連動制御手段とを備え、前記オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合に前記補助ブレーキ連動制御手段が前記補助ブレーキを作動させることを所定の強制オフ時間だけ解除することを特徴とするオートクルーズ装置。」

(2)引用刊行物記載の発明
1) 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平08-290727号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

ア.「【0010】図1に基づいてオートクルーズ装置の概略構成を説明する。トラック等の車両のコントロールユニット1には、オートクルーズ用のメインスイッチ2が接続され、メインスイッチ2の操作によってコントロールユニット1にオートクルーズ制御の実行用信号が入力される。コントロールユニット1にはセットスイッチ3が接続され、セットスイッチ3はオートクルーズ車速の設定とオートクルーズ車速の減少を行なわせるものとなっている。即ち、メインスイッチ2を操作した後にセットスイッチ3を操作した際、その時の車速がオートクルーズ車速の設定車速となり、オートクルーズ走行中にセットスイッチ3を操作すると、セットスイッチ3が減速スイッチとして働いてセットスイッチ3の操作中は車両の減速状態が維持される。
【0011】また、コントロールユニット1にはリジュームスイッチ4が接続され、リジュームスイッチ4は、オートクルーズ一時解除からの復帰とオートクルーズ車速の増加を行なわせるものとなっている。」

イ.「【0013】また、・・・。また、コントロールユニット1には、車速センサ8からの車速信号が入力され、設定車速と現在の車速とが比較されるようになっている。
【0014】コントロールユニット1は、オートクルーズ制御走行時にクルーズランプ9を点灯させる一方、図示しないディーゼルエンジンの電子ガバナ10に信号を送ってディーゼルエンジンへの燃料供給量を増減させ、車速を設定車速に維持するように制御する。また、コントロールユニット1は、エンジンブレーキの作動中に車速が設定車速を越えた時には、実際の車速を設定車速に近づけるように補助ブレーキ11の作動を制御する。
【0015】補助ブレーキ11は、排気ブレーキ12及び圧縮圧開放式エンジンブレーキ補助装置13及び第1段リターダ14及び第2段リターダ15及び第3段リターダ16及び第4段リターダ17からなっている。・・・。
【0016】図3に示したように、補助ブレーキ11は、実際の車速と設定車速との偏差である車速偏差が大きくなるにしたがって、排気ブレーキ12及び圧縮圧開放式エンジンブレーキ補助装置13及び第1段リターダ14及び第2段リターダ15及び第3段リターダ16及び第4段リターダ17がそれぞれ順次付加的にからの順序に作動して制動力が増大していくようになっている。逆に、実際の車速と設定車速との偏差が小さくなるにしたがって、前述と逆のからの順序でそれぞれの作動が解除されて制動力が減少していくようになっている。即ち、補助ブレーキ11は、車速偏差に応じた複数段階の制動力が得られる。尚、補助ブレーキ11における作動及び作動解除の順序は適宜変更されるものであると共に、補助ブレーキ11の手段や数は種々変更されるものである。」

ウ.「【0019】図2に示すように、オートクルーズ制御中にステップS1でセットスイッチ3がONか否かが判断され、セットスイッチ3がOFF の場合にはステップS2でフラグf(SET)が0か否かが判断される。ここで、フラグf(SET)が1の場合は、補助ブレーキ11の作動中にセットスイッチ3を操作した場合である。このため、最初はステップS2ではフラグf(SET)が0であると判断されるので、ステップS3に進んでリジュームスイッチ4がONか否かが判断される。リジュームスイッチ4がONの場合、設定車速を上げるためにステップS4でディーゼルエンジンの出力調整を実行すると共に、ステップS5で補助ブレーキ制御を解除する。ステップS3でリジュームスイッチ4がOFFであると判断された場合、通常のオートクルーズ制御の実行のために、車速偏差に応じてステップS4でディーゼルエンジンの出力調整を実行すると共にステップS5で補助ブレーキ制御を実行する。」

上記ア?ウ並びに図2(特にS3?S7)及び図3の記載によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。

「複数の補助ブレーキ11を備える車両において、オートクルーズ車速を設定するセットスイッチ3と、実車速を検出する車速センサ8と、ディーゼルエンジンの電子ガバナ10に信号を送ってディーゼルエンジンへの燃料供給量を増減させ、車速を設定車速に維持するように制御するオートクルーズ装置と、前記オートクルーズ制御中に実際の車速と設定車速との偏差である車速偏差が大きくなるにしたがって、複数の補助ブレーキ11(排気ブレーキ12及び圧縮圧開放式エンジンブレーキ補助装置13及び第1段リターダ14及び第2段リターダ15及び第3段リターダ16及び第4段リターダ17)を順次付加的に作動して制動力が増大していくようになっている補助ブレーキ制御とを備え、オートクルーズ制御中にリジュームスイッチ4がONの(設定車速を上げる)間だけ前記補助ブレーキ制御を解除する(前記オートクルーズ制御中にリジュームスイッチ4がONの場合(設定車速を上げる場合)に前記補助ブレーキ制御を解除し、リジュームスイッチ4がOFFの場合に前記補助ブレーキ制御を実行する)オートクルーズ装置。」

(3)対比
本願発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると、引用刊行物記載の発明の「補助ブレーキ11」、「セットスイッチ3」、「車速センサ8」及び「補助ブレーキ制御」が、それぞれ、本願補正発明における「補助ブレーキ」、「目標車速を設定する手段」、「実車速を検出する手段」及び「補助ブレーキ連動制御手段」に相当する。
そして、引用刊行物記載の発明の「ディーゼルエンジンの電子ガバナ10」は、オートクルーズ制御中においてエンジンの出力調整を実行するという機能からみて、本願発明の「エンジンのアクセル」に相当していることから、引用刊行物記載の発明の「ディーゼルエンジンの電子ガバナ10に信号を送ってディーゼルエンジンへの燃料供給量を増減させ、車速を設定車速に維持するように制御するオートクルーズ装置」が、本願発明の「エンジンのアクセル開度を調節して前記実車速を前記目標車速に近づけるオートクルーズ制御手段」に相当する。
また、引用刊行物記載の発明の「リジュームスイッチ4ON」は、オートクルーズ車速の増加を行わせるという機能からみて、本願発明の「目標車速の変更操作」に相当していることから、引用刊行物記載の発明の「オートクルーズ制御中にリジュームスイッチ4がONの(設定車速を上げる)間」が、本願発明の「オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合」に相当する。
してみると、両者は、
「複数の補助ブレーキを備える車両において、目標車速を設定する手段と、実車速を検出する手段と、エンジンのアクセル開度を調節して前記実車速を前記目標車速に近づけるオートクルーズ制御手段と、前記オートクルーズ制御中に前記実車速が前記目標車速を上回る前記車速差が大きくなるのに伴って前記複数の補助ブレーキを順に作動させる補助ブレーキ連動制御手段とを備え、前記オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合に前記補助ブレーキ連動制御手段が前記補助ブレーキを作動させることを解除するオートクルーズ装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点
オートクルーズ制御中に前記目標車速の変更操作が行われることを検出した場合に前記補助ブレーキ連動制御手段が前記補助ブレーキを作動させることを解除する点に関し、本願発明では、「補助ブレーキを作動させることを所定の強制オフ時間だけ解除する」ようにしたのに対し、引用刊行物記載の発明では、「補助ブレーキを作動させることを、リジュームスイッチがONの間だけ解除する」、すなわち、「補助ブレーキを作動させることを、目標車速の変更操作が行われる間だけ解除する」ようにした点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
・相違点について
本願発明において、上記相違点に係る「補助ブレーキを作動させることを所定の強制オフ時間だけ解除する」なる事項を採用したことの技術的意義は、本願の発明の詳細な説明の段落0034に記載される「【0034】次に、・・・、オートクルーズ制御に係わる設定が変更されるのに伴って、補助ブレーキ連動モードが所定の強制オフ時間だけ解除され、補助ブレーキが作動して加速が妨げられることを回避できる。」という点にある。これに対して、引用刊行物に記載された発明において、「目標車速の変更操作が行われる場合だけ解除する」ことを採用したことの技術的意義は、引用刊行物に「【0019】・・・。リジュームスイッチ4がONの場合、設定車速を上げるためにステップS4でディーゼルエンジンの出力調整を実行すると共に、ステップS5で補助ブレーキ制御を解除する。」と記載されているように、本願発明と実質的に同様の作用・効果を奏するものである。
すなわち、両者は、「オートクルーズ制御中に目標車速の変更操作が行われる」際に、設定する走行条件に不要又は不都合な制御である「補助ブレーキ」を解除することにより、「補助ブレーキが作動して加速が妨げられることを回避」するという、作用・効果を奏する点で同様であり、「オートクルーズ制御中に目標車速の変更操作が行われる」際に、設定する走行条件に不要又は不都合な制御を解除するに際して、適宜の時間を設定して簡易的に解除条件とすることや設定変更の操作の検知を解除条件とすることは、いずれも、車両制御において周知の技術的事項であり、当該周知の技術的事項のいずれを採用するかは、当業者が適宜選択・採用する程度のことにすぎない。
したがって、上記相違点に関して、引用刊行物記載の発明において、「目標車速の変更操作が行われる間だけ解除する」ようにしたことに換えて、「補助ブレーキを作動させることを所定の強制オフ時間だけ解除する」ようにし、本願発明のように構成することは、当業者にとって格別の創作力を要することもなく、なし得る程度のことにすぎない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-24 
結審通知日 2008-04-30 
審決日 2008-05-13 
出願番号 特願平10-107866
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 572- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河端 賢  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 早野 公惠
森藤 淳志
発明の名称 オートクルーズ装置  
代理人 後藤 政喜  
代理人 後藤 政喜  

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