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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H |
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管理番号 | 1180090 |
審判番号 | 不服2006-21842 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-28 |
確定日 | 2008-06-26 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第298088号「車両制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月15日出願公開、特開平10-122348〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年10月21日の出願であって、平成18年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月27日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年10月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年10月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 ナビゲーション装置と、供給されるシフトポジション信号に対応するシフトポジションの範囲で変速比を決定すると共にシフトポジションの変更によるエンジンの過回転を防止するセイフティ構造を備えた自動変速制御装置とを有する車両制御装置であって、 前記ナビゲーション装置は、自車位置から車両の進行方向の前方道路形状に基づき、前記自動変速制御装置が選択可能な変速比を規制する範囲を決定し、その規制信号として、該決定した範囲に対応するシフトポジション信号を前記自動変速制御装置に供給する、 ことを特徴とする車両制御装置。」 と補正された。(なお、下線は、請求人が附したものであって、補正箇所を示すものである。) 上記補正は、実質的にみて、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「自動変速制御装置」について「シフトポジションの変更によるエンジンの過回転を防止するセイフティ構造を備えた」との限定を付加すると共に、「シフトポジション信号」について「その規制信号として」との限定を付加するものであって、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物に記載された発明 (刊行物1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-69449号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「自動変速機の制御装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。(なお、大文字を小文字で表記した箇所がある。) (ア)「少なくとも1つの変速パターンを含む走行レンジを複数備えた自動変速機において、 コーナ走行の、現在までの所定期間に亙る度合を検出する検出手段と、 検出された度合に応じて前記複数の走行レンジから1つのレンジを選択し、このレンジの有する少なくとも1つの変速パターンに従って変速制御する制御手段を備えた自動変速機の制御装置。」(1頁左下欄13行?20行) (イ)「変速歯車機構500には、動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦締結要素及びワンウエイ・クラッチが設けられており、これらにより、走行レンジとしてのD,S,L,Rの各レンジと、Dレンジでの1?4速、Sレンジでの1?3速、Lレンジでの1?2速が得られるようになっている。」(3頁左下欄8行?14行) 以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) コーナ走行の、現在までの所定期間に亙る度合に応じて複数の走行レンジから1つのレンジを選択し、このレンジの有する少なくとも1つの変速パターンに従って変速制御する制御手段を備えた自動変速機の制御装置。 (刊行物2) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-85392号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「自動車の走行制御装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (ウ)「【請求項2】 車両に搭載されたナビゲーションシステムと、ナビゲーションシステムの道路地図データから前方の道路の状態を読み取り、または算出する読み取り算出手段と、読み取り算出手段により読み取りまたは算出された道路の状態と車速との関係から前方の道路を走行するのに不適かどうかを判断する判定手段と、判定手段により不適と判断された場合に警報を発生させる手段と、判定手段の結果に基づき制動または変速を行う制御手段とを備えてなることを特徴とする自動車の走行制御装置。」(【特許請求の範囲】参照) (エ)「【請求項4】 前記読み取り算出手段が前記ナビゲーションシステムの道路地図データから前方道路の半径及び勾配を読み取りまたは算出するものであり、前記制御手段がスロットル制御または変速制御またはブレーキ制御を行うものであることを特徴とする請求項2に記載の自動車の走行制御装置。」(【特許請求の範囲】参照) (オ)「ナビゲーションシステム1からの情報、検出結果はコントロールユニット7に入力される。・・・」(段落【0011】参照) (カ)「A/T制御判定部10では、勾配のある道路や、山間部の屈曲道路にはいってきたら、A/Tの電子判断制御装置16へ、道路条件に合った変速制御を行うよう指令する。・・・」(段落【0023】参照) (3)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能に照らして、引用発明の「走行レンジ」及び「レンジ」は本願補正発明の「シフトポジション」に相当し、以下同様に「制御手段」は「自動変速制御装置」に、「制御装置」は「車両制御装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「コーナ走行の、現在までの所定期間に亙る度合」も一つの「道路形状」と言える。 また、上記摘記事項(イ)からみて、引用発明の「レンジ」も、制御手段が選択可能な変速比を規制する範囲を定めるものと言えるし、「制御手段」はレンジの範囲で変速比を決定する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、本願補正発明の用語を用いて記載すると下記の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「シフトポジションの範囲で変速比を決定する自動変速制御装置を有する車両制御装置であって、 道路形状に基づき、前記自動変速制御装置が選択可能な変速比を規制する範囲を決定する車両制御装置。」である点。 (相違点1) 本願補正発明においては、「自車位置から車両の進行方向の前方道路形状に基づき、前記自動変速制御装置が選択可能な変速比を規制する範囲を決定し、その規制信号として、該決定した範囲に対応するシフトポジション信号を前記自動変速制御装置に供給するナビゲーション装置」を備えているのに対し、引用発明においては、ナビゲーション装置を備えておらず、自動変速制御装置自らが、道路形状に基づき、選択可能な変速比を規制する範囲に対応するシフトポジションを決定する点。 (相違点2) 本願補正発明においては、自動変速制御装置が、「シフトポジションの変更によるエンジンの過回転を防止するセイフティ構造を備え」ているのに対し、引用発明においては、そのような構成を備えていない点。 以下、上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物2には、上記摘記事項及び図2等からみて、ナビゲーションシステムとコントロールユニットとA/Tの電子判断制御装置を備えた走行制御装置において、ナビゲーションシステムが自車位置から車両の進行方向の前方道路形状に基づいた情報、検出結果をコントロールユニットに入力し、コントロールユニットはA/Tの電子判断制御装置に対して、前方道路形状に合った変速制御を行うよう指令する技術手段が記載されている。 そして、ナビゲーションシステム自体に他の装置に対する指令信号を供給するコントロールユニットを備えることは本願出願前周知の技術事項である(例、特開平6-36187号公報、特開平8-255299号公報参照)。 そうすると、引用発明に、道路形状に基づいて変速制御を行う点で共通する技術分野に属する刊行物2に記載された発明及び周知の技術事項を適用して、自動変速制御装置自らが、道路形状に基づき、選択可能な変速比を規制する範囲に対応するシフトポジションを決定することに替えて、ナビゲーション装置が、自車位置から車両の進行方向の前方道路形状に基づき、自動変速制御装置が選択可能な変速比を規制する範囲に対応するシフトポジションを決定し、指令信号を自動変速制御装置に供給することとして、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。 この点に関し請求人は、請求の理由において、「しかし、刊行物1、刊行物2のいずれの技術においても、ナビゲーション装置で決定した規制範囲の規制信号としてシフトポジション信号を自動変速機やA/TECUに供給することについては記載も示唆もない。」(【本願発明が特許されるべき理由】(4)(b))等主張している。 しかしながら、上記のとおり刊行物2にはナビゲーションシステムからの情報、検出結果により、コントロールユニットがA/Tの電子判断制御装置に対して、前方道路形状に合った変速制御を行うよう指令する点が記載されており、ナビゲーションシステム自体に他の装置に対する指令信号を供給するコントロールユニットを備えることは周知の技術事項であることから、ナビゲーション装置で決定した変速制御の指令信号を自動変速制御装置に供給することは刊行物2に記載された発明及び周知の技術事項により当業者が格別の創意を要さず構成し得たことである。そして、変速制御の指令として規制範囲を定めるシフトポジションを用いることはそもそも引用発明に記載されているものであるから、結局引用発明に刊行物2に記載された発明及び周知の技術事項を適用することにより、「ナビゲーション装置で決定した規制範囲の規制信号としてシフトポジション信号を自動変速機やA/TECUに供給すること」も当業者が容易に想到できたことである。 したがって、上記請求人の主張は採用できない。 (相違点2について) 自動変速制御装置において、シフトポジションの変更によるエンジンの過回転を防止するセイフティ構造を備えることは本願出願前周知の技術事項である(例、特開平6-341520号公報、特開平6-323426号公報参照)。 そうすると、引用発明に自動変速制御装置における上記周知の技術事項を適用して、相違点2に係る本願補正発明のように構成することも当業者が容易に想到できたことである。 また、本願補正発明の効果に関して請求人は、請求の理由において、「・・・刊行物2を刊行物1に適用したとしても、・・・『ナビゲーション装置が規制信号としてシフトポジション信号を供給することで、自動変速制御装置が備えているセイフティ構造をそのまま利用することができるので、ナビゲーション装置からの規制に対応する構造や対応アプリケーションの追加、変更等をすることなく、信頼性の高い制御を実現することができる。』という本願請求項1記載発明の効果を得ることはできない。」(【本願発明が特許されるべき理由】(4)(c))等主張している。 しかし、その効果も、引用発明及び刊行物2に記載された発明並びに周知の技術事項の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められず、上記したように引用発明に刊行物2に記載された発明及び周知の技術事項を適用することにより、「ナビゲーション装置が規制信号としてシフトポジション信号を供給する」ように構成されるに伴い、自然と達成される効果にすぎない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成18年10月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成15年10月20日付け及び平成18年3月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 ナビゲーション装置及び自動変速制御装置によって構成される車両制御装置において、 前記ナビゲーション装置は、自車位置から車両の進行方向の前方道路形状に基づき、前記自動変速制御装置が選択可能な変速比を規制する範囲を決定し、該決定した範囲に対応するシフトポジション信号を前記自動変速制御装置に供給するとともに、 前記自動変速制御装置は、前記ナビゲーション装置から供給されたシフトポジション信号に対応するシフトポジションの範囲で変速比を決定することを特徴とする車両制御装置。」 (2)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、2及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明1は、実質的にみて、前記2.で検討した本願補正発明から「自動変速制御装置」の限定事項である「シフトポジションの変更によるエンジンの過回転を防止するセイフティ構造を備えた」との構成を省くと共に、「シフトポジション信号」の限定事項である「その規制信号として」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-17 |
結審通知日 | 2008-04-22 |
審決日 | 2008-05-12 |
出願番号 | 特願平8-298088 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16H)
P 1 8・ 575- Z (F16H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増岡 亘、津田 真吾 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
山岸 利治 礒部 賢 |
発明の名称 | 車両制御装置 |
代理人 | 川井 隆 |
代理人 | 仲野 均 |