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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680254 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1180108
審判番号 無効2008-800002  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-01-08 
確定日 2008-06-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3907995号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3907995号の請求項1、2、3、6、7に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3907995号の請求項4、5に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その7分の2を請求人の負担とし、7分の5を被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第3907995号の請求項1?7に係る発明についての出願は、平成13年10月12日に特許出願され、平成19年1月26日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成20年1月8日付で本件の請求項1?7に係る発明についての特許無効の審判請求がなされ、これに対して、同年3月25日付で被請求人から答弁書が提出された。

2 請求人の主張
請求人は、甲第1?7号証を提示して、
本件特許の請求項1,6,7に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであり、
本件特許の請求項2,5に係る発明は、甲第1,2及び5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであり、
本件特許の請求項3,4に係る発明は、甲第1,2,5及び6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである旨、主張している。

甲第1号証:特開平8-23597号公報
甲第2号証:特開2000-279762号公報
甲第3号証:特開平7-154894号公報
甲第4号証:特開平10-23576号公報
甲第5号証:特開2001-95074号公報
甲第6号証:特開平10-51879号公報
甲第7号証:特許第3907995号公報(本件特許公報)

3 本件特許発明
本件特許の請求項1?7に係る発明は、その願書に添付された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、請求項の順に「本件特許発明1」?「本件特許発明7」という)。

【請求項1】 音を発生させる振動体を有し遊技機枠体の前面位置に取り付けられるスピーカ本体を備えてなるスピーカ装置を、遊技者が視認し得る位置に配置してなる遊技機において、
前記スピーカ本体から前方に延びる筒状の内周面を有する筒状体が該スピーカ本体に取り付けられ、
可視光を出力する光源が、前記内周面の内側に配置され、
前記スピーカ装置は、前記光源からの前記可視光を前記スピーカ本体の前記振動体および前記内周面で反射して、前記遊技者に向けて出力するように構成されており、
前記スピーカ本体から前方に延びる支持部材が該スピーカ本体に取り付けられ、前記光源は該支持部材に支持されていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】 前記振動体の表面が、銀色または白色に形成されていることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】 前記振動体の表面が、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の遊技機。
【請求項4】 前記内周面が、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の遊技機。
【請求項5】 前記内周面が、銀色または白色に形成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の遊技機。
【請求項6】 透音孔が形成された有孔板が、前記筒状体の前端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の遊技機。
【請求項7】 前記光源が、前記内周面の内側の複数位置に配置されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の遊技機。」

4 甲各号証に記載された事項
(1)甲第1号証について
甲第1号証(特開平8-23597号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「図2は、本発明のスピーカ装置をパチンコ機に適用した場合の他の実施例を示すものである。同図に示すように、パチンコ機1のパチンコ台2の遊技盤3上には各種の入賞口4?7と、表示部11に対し図柄の変動等を開始させる始動口8?10等が設けられており、ハンドル13を回して上皿14にストックされているパチンコ玉が遊技盤3側に1個づつ弾き出され、入賞口4?7や始動口8?10に入賞すると、パチンコ台2の上端部に配設されている複数のスピーカユニット20から電子音が発せられ、併せてスピーカユニット20が光り出すようになっている。このスピーカユニット20の動作については後述する。」(段落【0009】)
イ.「図3は、上記のスピーカユニット20の詳細を示すもので、振動板25上の一部にEL素子層30が配設されている。なお、EL素子層30の配設にあっては、この例に限らず、振動板25の一部をEL素子層30として一体的に形成するようにしてもよい。」(段落【0011】)
ウ.「図4は、上記のスピーカユニット20の駆動を制御する制御系を簡単に示すものであり、たとえば上記の入賞口4?7や始動口8?10へのパチンコ玉の入賞が制御系40の入賞検出部41によって検出されると、CPU42から駆動回路43に制御信号が出力され、駆動回路43によるコントロールによってスピーカユニット20から電子音が出力されるともに、振動板25の一部に配設されているEL素子層30に駆動電圧が印加されることにより、EL素子層30が発光するようになっている。・・・」(段落【0012】)

上記ア?ウの記載事項及び図1乃至9を参酌すると、甲第1号証には次の発明が記載されている(以下、「甲第1号証発明」という)。
「パチンコ台2の上端部に配設されている複数のスピーカユニット20から電子音が出力されるともに、スピーカユニット20は、振動板25の一部に配設されているEL素子層30に駆動電圧が印加されることにより、EL素子層30が発光するパチンコ機1。」

(2)甲第2号証について
甲第2号証(特開2000-279762号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
エ.「実施の形態2の空気清浄機能付きスピーカ30は、実施の形態1の空気清浄機能付きスピーカ10と短波長LED23の設置部位が異なり、その他の構成は同様である。即ち、空気清浄機能付きスピーカ30は、図3に示すように、音響信号を出力する振動体としての振動板31を有する。振動板31の表面には、実施の形態1と同様にして、光触媒薄膜21が形成されている。」(段落【0027】)
オ.「一方、振動板31の周囲には、円筒状をなし、電子部品を実装自在なフレキシブル基板25が配設される。フレキシブル基板25の内周面には、複数の短波長LED23が周方向に所定間隔で配置される。短波長LED23は、その発光側が振動板31と対向するよう、フレキシブル基板25の面方向(幅方向)に対して傾斜状態で配設される。また、振動板31は、短波長LED23の発光Lを略直交方向に受けるよう、通常のコーン型のものとすることが好ましい。」(段落【0028】)
カ.「更に、上記実施の形態では、短波長LED23は、スピーカのオンにより発光し、オフにより発光停止するようにしているが、これ以外の発光制御の態様により発光制御してもよい。例えば、手動または自動により、任意のタイミングで短波長LED23を発光し、必要時のみ空気清浄機能を発揮するようにしてもよい。また、スピーカグリル12等に蛍光材を塗布し、短波長LED23からの紫外光により蛍光発光させ、上記空気清浄作用と共に、独特のイルミネーション効果を発揮するようにしてもよい。また、紫、青等の可視光短波長を発光する可視光短波長LEDを用いてスピーカに光照射することにより、空気清浄作用と共に、独特のイルミネーション効果を発揮するようにしてもよい。加えて、本発明を自動車のドア5に設けたスピーカ部に採用する場合、可視光短波長LED及び/または短波長LEDと蛍光材との組合わせにより、空気清浄機能付きスピーカ10を蛍光発光させることにより、空気清浄機能と乗員足元のほのかな照明を併せて得るようにしてもよい。」(段落【0036】)

上記エ?カの記載事項及び図3,4を参酌すると、甲第2号証には次の発明が記載されている(以下、「甲第2号証発明」という)。
「光触媒薄膜21が形成された振動板31の周囲に円筒状をなすフレキシブル基板25が配設され、その内周面には、複数の短波長LED23が周方向に所定間隔で配置され、短波長LED23は、その発光側が振動板31と対向するよう、フレキシブル基板25の面方向(幅方向)に対して傾斜状態で配設され、可視光短波長を発光する可視光短波長LEDを用いてスピーカに光照射することにより、空気清浄作用と共に、独特のイルミネーション効果を発揮することもできる空気清浄機能付きスピーカ30。」

(3)甲第3号証について
甲第3号証(特開平7-154894号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
キ.「あるいは、図1の(C)に模式的に示すように、コーンスピーカ30の前側のスピーカボックス32の内側に、ブラックライトから成る照明具34を配置してもよい。」(段落【0041】)
ク.「照明具34に電力を加えることによって、照明具34から射出された光はエッジ12を通過し、あるいはエッジ12やセンターキャップ16によって反射される。これによって、エッジ12やセンターキャップ16に形成された蛍光発色領域20が発色する。尚、コーン14に蛍光発色領域20を設けた場合にも、照明具34によって、かかる蛍光発色領域が発光する。」(段落【0042】)

(4)甲第4号証について
甲第4号証(特開平10-23576号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ケ.「(実施の形態2)(実施の形態1)の実施の形態では外部光9でセンターキャップ8を照明したが、図4?図6に示すこの(実施の形態2)では光源10が内蔵されている。」(段落【0015】)
コ.「光源10は次のように配置されている。スピーカー1の全面を覆うように取り付けられた反射板11に孔12を開け、この孔12から発光ダイオード13a,13b,13cを突出させて(実施の形態1)と同様に形成されているセンターキャップ8を照明する。14は発光ダイオード13a?13cを順次点滅を繰り返すように点灯駆動する電子回路が形成されたプリント配線板、15はプリント配線板14が外部から見えないように覆うカバーである。」(段落【0016】)

(5)甲第5号証について
甲第5号証(特開2001-95074号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
サ.「図1において、照明付ダイナミックスピーカーユニット20は、ボイスコイルボビン6に巻回された駆動力を発生するスピーカー用ボイスコイル1及び磁気回路(永久磁石3、バックプレート2、センターポール4、及びプレート5)と、スピーカー用ボイスコイル1の先端に連結された振動板のコーン紙7と、コーン紙7の中央に周縁が接着されたセンターキャップ17と、スピーカー用ボイスコイル1を磁気回路のギャップに対して一定の位置に保つためのダンパ8と、さらにコーン紙7の周辺を支えるエッジ9と、これらの部品を連結するフレーム10と、を備える一般的なダイナミックスピーカーユニットの構造に加えて、・・・」(段落【0015】)
シ.「上記発光ダイオード14の取付構造によって、発光ダイオード14から発光された光束はその上方のセンターキャップ17の内面17aの概ね全面に当たることになり、スピーカーユニット自体が内側から光ることになる。この際、前記センターキャップ17の材質を透明または乳白色としたポリプロピレン等の合成樹脂製として、内面に光拡散処理(梨地処理や細かい凹凸処理)を施したものとすることで、一層光が拡散してセンターキャップ17全体に拡がり、外側の振動板のコーン紙7まで照らすので、アイキャッチに優れた構造となる。」(段落【0018】)
ス.「さらに、振動板のコーン紙7の表面にコルゲート形状をつける等の工夫や、LEDの光色に染まりやすい金属光沢の塗装(白色塗装または銀色塗装が好ましい)を付加することで、一層イルミネーションの効果を上げることができる。」(段落【0019】)

(6)甲第6号証について
甲第6号証(特開平10-51879号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
セ.「5は振動板(コーン紙)7及びボイスコイル4が巻かれているボビン6を所定位置に保持するダンパで、布等の材料により円形波状に成形されている。6はボイスコイル4が巻かれているボビンで上部に振動板(コーン紙)7が取り付けられている。7は振動板(コーン紙)で、紙や樹脂等から造られ、円錐状の形状をしており、下部はボビン6が取り付けられ、上部(外周)の円周はコーン紙を特定の位置に保ちながら振動板7が振動できるように、つまり振動板7を弾性保持するように弾性体によりフレームに突設された振動板保持リング12に固定されている。8はボビン6の中心開口部をカバーするキャップで防塵の役割を兼ねている。9はパッシブラジエータ振動板で半透明の樹脂や透明板の表面を微細な凸凹を設けて拡散面とした半透光性の板等により成形され、円周は波形の弾性保持部材10により、振動可能な保持を行っている。尚、パッシブラジエータ振動板の厚み、材質等によって低音域の周波数特性を調整できる。又、空間13の空間容量を可変することでも低音域の周波数特性を調整できる。」(段落【0008】)

5 対比・判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第1号証発明を比較すると、甲第1号証発明の「スピーカユニット20」「電子音」「振動板25」「パチンコ機1」は、本件特許発明1の「スピーカ装置」「音」「振動体」「遊技機」にそれぞれ相当し、さらに以下のことがいえる。
甲第1号証発明の「パチンコ台2の上端部に配設されている複数のスピーカユニット20」について、「パチンコ台2」は「パチンコ機1」の「台」部分であり、本件補正発明1の「遊技機枠体」に相当する。また、「パチンコ台2の上端部」が、本件特許発明1の「遊技機枠体の前面位置」及び「遊技者が視認し得る位置」に対応することは明らかである。
甲第1号証発明の「スピーカユニット20は、振動板25の一部に配設されているEL素子層30に駆動電圧が印加されることにより、EL素子層30が発光する」事項について、「EL素子層30」は、駆動電圧の印加により発光するものであるから、本件特許発明1の「可視光を出力する光源」に対応し、スピーカユニット20(スピーカ装置)が「前記光源からの前記可視光を前記遊技者に向けて出力する」ことは本件特許発明1との共通事項である。また、「EL素子層30」は、振動板25の一部に配設されているものの電子音を出力するスピーカ本来の機能に関与していないことは明らかであるから、「スピーカユニット20」から「EL素子層30」を除いた構成が本件特許発明1の「スピーカ本体」に対応する。
したがって、両者は、
「音を発生させる振動体を有し遊技機枠体の前面位置に取り付けられるスピーカ本体を備えてなるスピーカ装置を、遊技者が視認し得る位置に配置してなる遊技機において、
可視光を出力する光源が配置され、
前記スピーカ装置は、前記光源からの前記可視光を前記遊技者に向けて出力するように構成されている遊技機。」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1では、スピーカ本体から前方に延びる筒状の内周面を有する筒状体が該スピーカ本体に取り付けられているのに対して、甲第1号証発明では、かかる構成を備えていない点。
(相違点2)
可視光を出力する光源が配置されるにあたり、本件特許発明1では、筒状体の内周面の内側に配置され、また、スピーカ本体から前方に延びる支持部材が該スピーカ本体に取り付けられ、該支持部材に支持されるのに対して、甲第1号証発明では、振動板25(振動体)の一部に配設される点。
(相違点3)
スピーカ装置が光源からの可視光を遊技者に向けて出力するにあたり、本件特許発明1では、スピーカ本体の振動体および筒状体の内周面で反射して出力するのに対して、甲第1号証発明では、反射して出力するものではない点。

上記相違点1?3について検討する。
甲第2号証発明の「振動板31」「円筒状をなすフレキシブル基板25」「可視光短波長を発光する可視光短波長LED」は、本件特許発明1の「振動体」「筒状体」「可視光を出力する光源」にそれぞれ相当し、さらに以下a?cのことがいえる。
a.甲第2号証の図3を参照すると、円筒状をなすフレキシブル基板25(筒状体)は、振動板31(振動体)を含むスピーカ本体から前方に延びるものであるから、甲第2号証発明は「スピーカ本体から前方に延びる筒状の内周面を有する筒状体が該スピーカ本体に取り付けられている」事項を備えている。
b.甲第2号証発明は、フレキシブル基板25(筒状体)の内周面に、複数の短波長LED23が周方向に所定間隔で配置されるものであり、また、短波長LED23に代えて可視光短波長を発光する可視光短波長LED(可視光を出力する光源)を用いてスピーカに光照射することによりイルミネーション効果を発揮することを選択肢とするものであるから、該選択肢を採用した場合、甲第2号証発明は「可視光を出力する光源」が「筒状体の内周面の内側に配置」される事項を備える。
c.甲第2号証発明は、可視光短波長を発光する可視光短波長LED(可視光を出力する光源)を用いてスピーカに光照射することによりイルミネーション効果を発揮することを選択肢とするものであり、該選択肢を採用した場合、「光源からの可視光」を「スピーカ本体の振動体で反射して出力する」事項を備える。
そして、甲第2号証発明は、スピーカ装置に関するものであり、しかも可視光を出力することにより視覚効果を発揮するものである点で甲第1号証発明と密接に関係するから、甲第1号証発明における可視光を出力するための構成に代えて甲第2号証発明を適用することは、当業者であれば容易になしえるものである。
よって、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明(上記a参照)に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。
また、上記相違点2に関しては、上記bに加えて、光源を筒状体の内周面の内側に配置するにあたり、スピーカ本体から前方に延びる支持部材を取り付けて支持部材で支持することが、部材の前方に他の部材を配置する上での常套手段にすぎないことから、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。
さらに、上記相違点3に関しては、上記cに加えて、甲第2号証発明では、可視光短波長LEDを用いてスピーカに光照射すると、スピーカの周囲に配設されたフレキシブル基板25(筒状体)に対しても、拡散した光の一部、及び、スピーカからの反射光の一部が、副次的であるにせよ、照射されることになり、この照射光は、フレキシブル基板25(筒状体)の内周面で反射して外部に出力されると考えるのが自然であるから、甲第2号証発明は、「光源からの可視光」を「スピーカ本体の振動体および筒状体の内周面で反射して出力する」事項を実質的に備えているといえる。よって、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。
そして、本件特許発明1の作用効果も、甲第1号証発明及び甲第2号証発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、被請求人は、甲第1号証発明と甲第2号証発明の組み合わせの困難性について、「両者が用いられる環境は全く異なり、空気清浄機に用いられている淡いイルミネーション効果をねらった甲2のものと、激しい光演出効果が必要とされる遊技機に係る甲1のものとを結びつけることに格別の困難性はない、とは到底いえないものと思量する。」(答弁書第10頁第15?18行)と主張しているが、上記のとおり、甲第1号証発明と甲第2号証発明は、スピーカ装置に関するものである点で共通するばかりでなく、可視光を出力することにより視覚効果を発揮するものである点でも密接に関係するものであるから、甲第1号証発明における可視光を出力するための構成に代えて甲第2号証発明を適用することは、当業者であれば容易になしえるものである。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に「前記振動体の表面が、銀色または白色に形成されていること」を付加するものである。
そこで、本件特許発明2と甲第1号証発明を比較すると、上記5(1)において示した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

(相違点4)
振動体の表面が、本件特許発明2では、銀色または白色に形成されているのに対して、甲第1号証発明では、何色に形成されているか不明である点。

上記相違点4について検討する。
甲第5号証には、上記4(5)サ?スの記載を参酌すると、「センターキャップ17の内面で拡散した光が外側の振動板のコーン紙7を照らし、振動板のコーン紙7の表面に金属光沢の塗装(白色塗装または銀色塗装が好ましい)を付加することで、一層イルミネーションの効果を上げる」技術、すなわち、振動体の表面を銀色または白色に形成した点が記載されている。
そして、甲第5号証に記載の上記技術事項も、スピーカ装置に関するものであり、しかも可視光を出力することにより視覚効果を発揮するものである点で甲第1号証発明及び甲第2号証発明と密接に関係するから、当業者であれば必要に応じて採用しえるものである。
また、本件特許発明2の作用効果も、甲第1号証発明、甲第2号証発明及び甲第5号証に記載の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証発明、甲第2号証発明及び甲第5号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2に「前記振動体の表面が、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されていること」を付加するものである。
そこで、本件特許発明3と甲第1号証発明を比較すると、上記5(1)において示した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

(相違点5)
振動体の表面が、本件特許発明3では、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されているのに対して、甲第1号証発明では、かかる態様に形成されているか不明である点。

上記相違点5について検討する。
甲第5号証には、上記4(5)サ?スの記載を参酌すると、「発光ダイオード14から発光された光束が当たるセンターキャップ17の内面17aに光拡散処理(梨地処理や細かい凹凸処理)を施した」技術が記載されている。
また、甲第6号証には、上記4(6)セの記載を参酌すると、「パッシブラジエータ振動板9の表面を微細な凸凹を設けて拡散面とした」技術が記載されている。
甲第5号証に記載の上記技術事項における「センターキャップ17」及び甲第6号証に記載の上記技術事項における「パッシブラジエータ振動板9」は何れも「振動体」といえるから、甲第5号証及び甲第6号証に記載の上記技術事項は、何れも「振動体」に細かい凹凸を形成したものであり、「振動体の表面が、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されている」事項を実質的に備えている。
そして、甲第5号証及び甲第6号証に記載の上記技術事項も、スピーカ装置に関するものであり、しかも可視光を出力することにより視覚効果を発揮するものである点で甲第1号証発明及び甲第2号証発明と密接に関係するから、当業者であれば必要に応じて採用しえるものである。
また、本件特許発明3の作用効果も、甲第1号証発明、甲第2号証発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明3は、甲第1号証発明、甲第2号証発明、甲第5号証及び甲第6号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1?3の何れかに「前記内周面が、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されていること」を付加するものである。
そこで、本件特許発明4と甲第1号証発明を比較すると、上記5(1)において示した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

(相違点6)
本件特許発明4では、筒状体の内周面が、梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成されているのに対して、甲第1号証発明では、筒状体及びその内周面を備えていない点。

上記相違点6について検討する。
請求人は、審判請求書において、「「前記スピーカ装置は、前記光源からの前記可視光を前記スピーカ本体の前記振動体および前記内周面で反射して、前記遊技者に向けて出力するように構成されており」との構成は甲1及び甲2から想到容易であることは・・・述べたとおりであり、また「振動体」の表面を「梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成」することが容易であることは・・・述べたとおりであるから、同様に「光源」からの「可視光」を反射する機能を有する「内周面」を「振動体の表面」と同様に「梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成」することは単なる設計事項であり、格別の困難はない。」(審判請求書第23頁第9?17行)と主張している。
しかしながら、上記5(1)で検討したとおり、甲第2号証発明の「フレキシブル基板25」(筒状体)の内周面への光照射はスピーカへの光照射に対する副次的なものであって、内周面での反射を積極的に企図しているとまではいえないから、該内周面を「梨地、しぼ地、あるいはエンボス地に形成」して可視光が反射する際に拡散光を形成するという着想を得るために十分な動機付けがあるとはいえない。また、この点は、甲第3?6号証にも記載も示唆もされていない。
そして、上記相違点6に係る本件特許発明4の構成によって、筒状体の内周面で「可視光が反射する際に拡散光を形成して奥行きのある光の演出効果を奏することができる」という明細書に記載の顕著な作用効果を奏する。
したがって、本件特許発明4は、甲第1号証発明、甲第2号証発明、甲第3?6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1?4の何れかに「前記内周面が、銀色または白色に形成されていること」を付加するものである。
そこで、本件特許発明5と甲第1号証発明を比較すると、上記5(1)において示した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

(相違点7)
本件特許発明5では、筒状体の内周面が、銀色または白色に形成されているのに対して、甲第1号証発明では、筒状体及びその内周面を備えていない点。

上記相違点7について検討する。
請求人は、審判請求書において、「「前記スピーカ装置は、前記光源からの前記可視光を前記スピーカ本体の前記振動体および前記内周面で反射して、前記遊技者に向けて出力するように構成されており」との構成は甲1及び甲2から想到容易であることは・・・述べたとおりであり、また「振動体」の表面を「銀色または白色に形成」することが容易であることは・・・述べたとおりであるから、同様に「光源」からの「可視光」を反射する機能を有する「内周面」を「振動体の表面」と同様に「銀色または白色に形成」することは単なる設計事項であり、格別の困難はない。」(審判請求書第23頁第28行?第24頁第6行)と主張している。
しかしながら、上記5(1)で検討したとおり、甲第2号証発明の「フレキシブル基板25」(筒状体)の内周面への光照射はスピーカへの光照射に対する副次的なものであって、内周面での反射を積極的に企図しているとまではいえないから、該内周面を「銀色または白色に形成」して可視光の反射効率が高い特性を有するようにするという着想を得るために十分な動機付けがあるとはいえない。また、この点は、甲第3?6号証にも記載も示唆もされていない。
そして、上記相違点7に係る本件特許発明5の構成によって、筒状体の内周面が「可視光の反射効率が高い特性を有する」という明細書に記載の顕著な作用効果を奏する。
したがって、本件特許発明5は、甲第1号証発明、甲第2号証発明、甲第3?6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1?5の何れかに「透音孔が形成された有孔板が、前記筒状体の前端部に取り付けられていること」を付加するものである。
そこで、本件特許発明6と甲第1号証発明を比較すると、上記5(1)において示した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

(相違点8)
本件特許発明6では、透音孔が形成された有孔板が、筒状体の前端部に取り付けられているのに対して、甲第1号証発明では、筒状体及び有孔板を備えていない点。

上記相違点8について検討する。
甲第2号証には、図1及び3を参照すると、「スピーカグリル」(符合12,32)に複数の孔が形成されてフレキシブル基板25(筒状体)の先端部に取り付けられた構成、すなわち「透音孔が形成された有孔板が、筒状体の前端部に取り付けられている」点が記載されている。
そして、上記5(1)で述べたとおり、甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用することは、当業者であれば容易になしえるから、上記相違点8に係る本件特許発明6の構成は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。
また、本件特許発明6の作用効果も、甲第1号証発明及び甲第2号証発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明6は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1?5の何れかに「前記光源が、前記内周面の内側の複数位置に配置されていること」を付加するものである。
そこで、本件特許発明7と甲第1号証発明を比較すると、上記5(1)において示した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

(相違点9)
光源が、本件特許発明7では、筒状体の内周面の内側の複数位置に配置されているのに対して、甲第1号証発明では、振動板25(振動体)の一部に配設される点。

上記相違点9について検討する。
甲第2号証発明は、フレキシブル基板25(筒状体)の「内周面には、複数の短波長LED23が周方向に所定間隔で配置され」た構成を備えており、短波長LED23は可視光短波長LEDと置換可能であるから、「筒状体の内周面の内側の複数位置に配置されている」点を備えている。
そして、上記5(1)で述べたとおり、甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用することは、当業者であれば容易になしえるから、上記相違点9に係る本件特許発明7の構成は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。
また、本件特許発明7の作用効果も、甲第1号証発明及び甲第2号証発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明7は、甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1?3,6,7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
他方、本件特許発明4,5についての特許は、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その7分の2を請求人の負担とし、7分の5を被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-21 
結審通知日 2008-04-28 
審決日 2008-05-09 
出願番号 特願2001-315543(P2001-315543)
審決分類 P 1 113・ 121- ZC (A63F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 中槙 利明
太田 恒明
登録日 2007-01-26 
登録番号 特許第3907995号(P3907995)
発明の名称 遊技機  
代理人 川野 宏  
代理人 北口 智英  
代理人 黒田 博道  

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