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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1180311
審判番号 不服2006-6353  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-06 
確定日 2008-06-25 
事件の表示 特願2000-175335号「張地付き家具」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月18日出願公開、特開2001-346648号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年6月12日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月25日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「張地の縁部を、張地取付部に形成される開口内に張った状態で取り付け、その張地に作用する荷重を張地取付部に支持させるようにしたものであって、
前記張地取付部が、背凭れ本体又は座本体であり、前記開口の内縁を、内向きに凸となる部分を含まず且つ折れ曲がる部分を含まないような閉ループ状をなして構成し、前記張地を前記張地取付部にテンションを掛けた状態で適宜の手段で取り付けたものであり、前記張地取付部が、前記開口の内縁の形状に依存せずに外形を規定できるものであり、前記張地が背凭れに凭れる位置又は座に着座する位置に取り付けられるものであることを特徴とする張地付き家具。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、実願平2-108326号(実開平4-64246号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「座体(1)や背体(2)にネット状弾性シート(A)を張設して構成する椅子において、前記座体(1)および背体(2)の周囲枠となるリング杆(1a)(2a)の上面側には横断面が略逆L字状をする環状板(3)を嵌装し、更に該環状板(3)に対し周縁側にひも、ワイヤーなどを挿通してなるネット状弾性シート(A)を張設して構成した椅子の座体および背体構造。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
(イ)「第2図は椅子全体の斜視図を示し、前後左右には各脚杆(6)を垂設し、4本の脚杆(6)の上部間には座体(1)の枠となる円形の丸パイプ製リング杆(1a)の周囲をそれぞれ固着するとともにリング杆(1a)の下方にも補強環状杆(7)を固着して強固な脚まわりとする。」(明細書第4頁第7?12行)
(ウ)「(3)は前記座体の外縁を構成する丸パイプ製リング杆(1a)及び背体の外縁を構成する同じく丸パイプ製リング杆(2a)に添設させて周縁にひも、ワイヤーなどによる屈曲折自在とした補強体(5)を存在させたネット状弾性シート(A)をしつかりと組み付ける様にした環状板体であつて図面特に第4図で示す様に断面略逆L字状で全体が屈曲した環状板体でありその外下面は平坦とする外、複数の突起(4)又は凹凸(7)を設けて弾性シート(A)の外周縁に存在させた補強体を把持させてしつかりとリング杆(1a)又は(2a)に係着させる。なお(8)は止めビスを示す。
(A)は上記の様なネット状弾性シートであるから極めて強靱であると共に座体、背体、及び環状板(3)の形状にあう様容易に変形し得且つ外周縁の折り返し巻曲部(a)内には特にひも、ワイヤーなどの補強体を存在させたことにより全体の保形とともに座体、背体への格好の係止縁となる。」(明細書第4頁第17行?第5頁第14行)
(エ)「このように本考案は、座体、背体の上面に張設するネット状弾性シートの外周縁部分を断面略L字状をする環状板(3)の下面と、座体、背体(1)(2)の周縁(1a)(2a)の上面との間に挟持係着させたのでしつかりと張設され、特にネット状弾性シートの外周縁部分に、ひも、ワイヤー等の補強体を存在させているのでこれが環状板(3)下面と、及び該下面における突起(4)や凹凸(7)と確実な係止効果を発揮することを得て、座面、背当面に美麗且確実なネット状シートを張設した椅子として極めて商品価値をたかめたものとなる。」(明細書第5頁第16行?第6頁第6行)
(オ)第1図には、ネット状弾性シート(A)の外周縁部分を、リング杆(1a)に形成される開口内に張った状態取り付けること、及びネット状弾性シート(A)を環状板(3)に対し張設し、前記リング杆(1a)の開口の内縁に止めビス(8)で取り付けることが図示されている。
(カ)第2図には、リング杆(1a)の開口の内縁が、内向きに凸となる部分を含まず且つ折れ曲がる部分を含まないような閉ループ状をなして構成されること及びネット状弾性シート(A)が座に着座する位置に取り付けられることが図示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、
「ネット状弾性シート(A)の外周縁部分を、リング杆(1a)に形成される開口内に張った状態取り付け、前記リング杆(1a)が、座体(1)の枠であり、前記開口の内縁を、内向きに凸となる部分を含まず且つ折れ曲がる部分を含まないような閉ループ状をなして構成し、前記ネット状弾性シート(A)を環状板(3)に対し張設し、前記リング杆(1a)の開口の内縁に止めビス(8)で取り付けたものであり、前記ネット状弾性シート(A)が座に着座する位置に取り付けられるものである椅子。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
後者における「ネット状弾性シート(A)」が、その機能・構造等からみて前者における「張地」に相当し、以下同様に、「外周縁部分」が「縁部」に、「リング杆(1a)」が「張地取付部」に、「座体(1)の枠」が「座本体」に、「椅子」が「張地付き家具」に、それぞれ相当している。
また、後者は、ネット状弾性シート(A)を「環状板(3)に対し張設し、前記リング杆(1a)の開口の内縁に止めビス(8)で取り付け」るのであるから、ネット状弾性シート(A)に作用する荷重をリング杆(1a)に支持させるようになることは明らかであり、後者は前者の「その張地に作用する荷重を張地取付部に支持させるようにしたもの」に相当する特定事項を実質的に有しているといえる。さらに、ネット状弾性シート(A)を環状板(3)に対し張設した状態は、ネット状弾性シート(A)にテンションを掛けた状態といえ、これをリング杆(1a)の開口の内縁に止めビス(8)で取り付けることは、張地を適宜の手段で取り付けることといえるから、後者は前者の「前記張地を前記張地取付部にテンションを掛けた状態で適宜の手段で取り付けたもの」に相当する特定事項を実質的に有しているといえる。

したがって、両者は、
「張地の縁部を、張地取付部に形成される開口内に張った状態で取り付け、その張地に作用する荷重を張地取付部に支持させるようにしたものであって、
前記張地取付部が、座本体であり、前記開口の内縁を、内向きに凸となる部分を含まず且つ折れ曲がる部分を含まないような閉ループ状をなして構成し、前記張地を前記張地取付部にテンションを掛けた状態で適宜の手段で取り付けたものであり、前記張地が座に着座する位置に取り付けられるものである張地付き家具。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:前者では、張地取付部が、開口の内縁の形状に依存せずに外形を規定できるものであるのに対し、後者では、そのような構成となっているか否かが明確でない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用発明は、ネット状弾性シート(A)(張地)がリング杆(1a)(張地取付部)の開口の内縁に止めビス(8)で取り付けられるものであるから、リング杆(1a)(張地取付部)の外形が開口の内縁の形状に依存していなくとも取り付けには影響のないものであり、また、張地取付部が、開口の内縁の形状に依存せずに外形を規定できるものは、例えば、実願昭58-102354号(実開昭60-10560号)のマイクロフィルム(第1図参照)、特開平2-150321号公報(第6図参照)にも記載されているように周知の事項にすぎないから、必要に応じて張地取付部の外形を開口の内縁の形状に依存せずに規定できるようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願発明の効果も、引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-02 
結審通知日 2008-04-08 
審決日 2008-05-02 
出願番号 特願2000-175335(P2000-175335)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 茂樹  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 豊永 茂弘
八木 誠
発明の名称 張地付き家具  
代理人 赤澤 一博  

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